KADOKAWA・DWANGOは、本日2015年7月9日、同社が手掛ける新たな教育事業に関する発表会を、東京・ニコファーレにて実施。発表会の模様をリポートする。

●ネット・エンタメを駆使して不登校問題などに着手

 KADOKAWA・DWANGOは、本日2015年7月9日、同社が手掛ける新たな教育事業に関する発表会を、東京・ニコファーレにて実施した。

 発表会には、KADOKAWA・DWANGO代表取締役社長の川上量生氏、同社取締役相談役の角川歴彦氏が登壇。同事業の意図や経緯などを説明した。

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▲KADOKAWA・DWANGO 代表取締役社長 川上量生氏
▲KADOKAWA・DWANGO 取締役相談役 角川歴彦氏

 本事業は、デジタルネイティブ時代の子どもたちへ向けて、KADOKAWA・DWANGOが“ネットの高校”の開校を目指すというもの。既報の通り、本年3月には、沖縄県に学校設置等に係る計画書を提出(審査中)。審査が下り次第、2016年初春に双方向の学習Webサービスをリリースし、同年春に開校することを目標とする。なお今回計画されているのは通信制の高等学校だが、いずれの通信制学校も実際の校舎が必要であるため、その候補地として沖縄に計画書を提出しているとのこと。

 KADOKAWAは2013年に日本のコンテンツ制作ノウハウを世界に伝えるプラットフォーム“KADOKAWA Contents Academy”を始動。ドワンゴも、傘下のMAGES.が声優・ボーカリストの養成学校として“ドワンゴクリエイティブスクール”を運営するなど、KADOKAWA・DWANGO設立以前より、教育事業に高い意欲を示していた。川上氏によると、今回の新教育事業は、MAGES.代表取締役会長の志倉千代丸氏の強い要望により動き出した計画だという。KADOKAWA・DWANGOは、アニメやゲーム、ライトノベルといった、いまの高校生世代が求めるコンテンツに強みを持つことから、これらを活用して、同社ならではの手法で教育の諸問題解決に乗り出す方針だ。

 現在の教育制度の問題のひとつとして挙げられるのが、不登校問題。この社会問題の原因を、角川氏は「現在の学校教育制度が制度疲労を起こしている」と分析。そのうえで川上氏も、「いまの不登校の人たちの多くはネットをやっていて、逆にネットによって救われている部分もある。これからのデジタル世代は、そういった人たちの方が社会人としての適性があるかもしれない。いまの社会には隠れた財産として、そういう人たちが眠っている。ドワンゴも、はじめはネットをやりすぎてドロップアウトした人たちを中心に作られた会社。若い人であればやり直すチャンスがあり、むしろ“ふつうの人たち”よりも仕事ができる部分があるのではないか。そこを引き出していきたい」と語った。

 つぎに挙げられる問題は、就労ロールモデルの崩壊。同社が提示した資料によると、高校入学以降、半数以上が「大学卒業後就職」という“従来の就業レール”から外れてしまっており、「少なくとも、生活をするため、職業を得るための教育機関としての役割が果たされていない現状」(川上氏)にある。この問題に対してKADOKAWA・DWANGOがアプローチできる理由を、「KADOKAWA・DWANGOが、サブカルチャー(ポップカルチャー)を好む人が好む会社であること」と角川氏は語る。現在の社会は、サブカルチャーを好む人がその分野を志そうとしたときに、受け入れるシステムが整っていない。サブカルチャーはいま、メインカルチャーを浸食し、“文化”になりつつある。“文化”として社会貢献をする、そのひとつの提案が学校の設立だという。

 では、これらさまざまな課題に対し、どう取り組んでいくのか。ここでは同社ならではの施策として、“IT”を活用したアプローチが発表された。

 ネットを活用することにより、数万人規模での授業も可能となることから、逆に授業に予算や手間をかけられるようになり、質の高い授業を提供できると川上氏は語る。予備校でもビデオを使った授業はあるが、ネットを活用すれば、そこに教師/生徒間での双方向性を加えることができる。映像をただ流すのではなく、生徒が参加でき、コミュニケーションが生まれる――友だちやクラスメイトとともにがんばれることは、学校の大きな魅力のひとつ。こういったコミュニケーション部分の課題も、ネットを活用することで解決できるという。

 また同社ならではの取り組みとして、IT教育にも注力。現在は計画書提出中の段階であることから詳細な内容は公表されていないが、「例えば課外授業のような形で、プログラミングを覚えたりすることができれば」との構想が、川上氏より明かされた。なお、双方向サービス提供のため、現在新たなプラットフォーム(ニコニコの次期バージョン)が制作されている。

 さらに、同社は双方向サービスにとどまらず、ITやエンターテインメントを基盤としたコミュニティーの構築も目指す。「ふつうの通信制高校は“学園生活”ができないが、僕らはその学園生活も、ネットやリアルを使って作る仕組みを考えています」(川上氏)とのことだ。“超会議”や“闘会議”など、リアルイベントの運営に実績のある同社だけに、川上氏も「(生徒が)参加したいと思うものを企画する能力は高い」と自負。このリアルコミュニケーションに関しては、角川氏も「ドワンゴはネットからリアルへ。KADOKAWAはアナログからデジタルへ。この交差点に、学校教育があると感じている」と、教育事業に対する熱意と自信をのぞかせた。

 キャリア教育に関しては、グループ会社で教育事業を手掛けるバンタンと共同で、ファッションやアニメ・イラスト、ビジネスやプログラミング、ゲームや小説など、各業界のプロフェッショナルによる授業も計画中。さらに川上氏は地方自治体との連携にも触れ、「後継者に苦しんでいる職業は地方にたくさんあるが、若い人と触れ合う機会がない。そういうものと、きちんとマッチングできる機会を用意しようと考えている」との構想も明かした。あわせて角川氏も、「現実に地域が傷んでいることは事実。そこで僕らの提供できる文化・カルチャーが地方創生や地方活性化に貢献し、地域に若い人をとどめることができる。そういった取り組みに挑戦したい」と熱弁した。

 教育事業におけるカリキュラムなどの詳細は、認可が下り次第、順次公開予定。

 発表会では、報道陣ほかによる質疑応答も実施された。計画書提出中段階であることから、本発表会では、学費や入学人数といった具体的な内容は明かされなかった。以下、質疑応答の概要をお届けし、本記事を締めくくりたい。回答者はいずれも川上氏。

◆設立に関する計画書を沖縄県に提出中とのことだが、なぜ沖縄なのか。
⇒通信制の学校でもスクーリング(対面授業)を行う必要があるため、「どうせ行かなきゃいけないなら、沖縄がいいんじゃないかと(笑)」。複数の候補地を検討したが、「いろいろな意味で沖縄に作るのがよさそうで、地域のためになるだろう」とのこと。

◆すでに従来の高校に通っている生徒などにも需要はあるはず。システムや授業を外向けに提供する予定は?
⇒ほかの高校生や社会人でも聴講できるよう、授業の公開は「当然考えている」とのこと。

◆志倉千代丸氏も教育事業に関わっていくのか?
⇒教材の作成など、さまざまな形で関わっていくとのこと。志倉氏は「どうしても制服をデザインしたい」と話しているとか。

◆ほかの通信制学校との差異化について
⇒「差異化はできるでしょう! そこに関しては不安に思っていません。僕らはいろいろと派手なことをやりますので、その辺りは大丈夫だと思います」

◆進路で、KADOKAWA・DWANGOへの入社が優遇されることもある?
⇒「そういう目的で作っているわけではありません」

 なお、今回の発表にともない、KADOKAWA・DWANGO教育事業の公式サイトがオープン。発表会冒頭で放映されたオープニングビデオや、各界の第一人者が語る“教育”に関するインタビューも順次公開されている。