女子中高生が体験するプログラミング学習キャンプ

 スクウェア・エニックスとLife is Tech!(ライフイズテック)が開催している、中高生のためのゲームクリエイター育成プログラム“SQUARE ENIX GAME CAMP(スクウェア・エニックス ゲームキャンプ)”。2014年に引き続き、今回もスクウェア・エニックス本社にて参加費無料で開催された。

 今回の日程は、2015年6月13日~14日、6月20日~21日の計2回が用意され、そのうち第1日程となる6月13~14日は、対象を“女子”に限定した女の子のための講座“Code Girls(コードガールズ)”を実施。講師役を務める大学生スタッフもほぼ全員が女子であり、女の子による、女の子のための新たなプロジェクトとなっているのが特徴だ。

 この記事では、2015年6月13日に開催された、“Code Girls”初日の模様や関係者へのインタビューをお届けする。

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ゲームクリエイターを目指す女子が集結! “スクウェア・エニックス ゲームキャンプ コードガールズ”をリポート_01
▲まったくの初心者は全体の3分の1程度。ライフイズテックが開催しているほかのスクールなどの経験者も多かった。

華やかなれど、熱い1日

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▲講座開始前の会場の模様。スタッフや生徒たちは、全員赤やピンク色のTシャツを着用しており、見た目もとても華やか!

 取材当日は土曜日ということもあって、会場となったスクウェア・エニックス本社にも静けさが漂っていたが、開始時刻が近づくにつれてだんだんと華やかな雰囲気に変わっていく。スタッフや生徒たちは皆お揃いのTシャツを着用することになっているのだが、今回は女子限定なのでTシャツの色も赤やピンクとなっており、見た目にも“カワイイ”感じ。

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▲進行役の小森勇太氏(ライフイズテック副代表)と、原 綾香氏(ライフイズテック Code Girlsマネージャー)。とにかく明るい!

 そんな中始まったオープニングでは、『ファイナルファンタジー』シリーズのムービーや、開発者たちの姿をまとめた映像が流されたり、“Code Girls”の目的や意義、IT関連の雇用状況などが紹介された。

 と、文字にすると堅苦しい印象があるかもしれないが、実際はかなりリラックスした雰囲気で進行していた。司会進行を務めるライフイズテックのスタッフも、日常的にこのような講座を手掛けているため、緊張気味の生徒たちをノセるのもお手のもののようだ。

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▲過去作の映像を流したり、メンター(講師)を務める大学生スタッフの自己紹介も。皆、さまざまなネタを仕込んでいて笑いを取っていた。
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▲2Dゲームコースのテキスト。それぞれがA4用紙数枚で簡潔にまとめられている。

 デザイナーコースではIllustratorやPhotoshopといったグラフィックソフトの使いかたや、それらを駆使したデザイン作業などを学び、2D、3Dの各ゲームコースでは、Unityなど実際の現場でも使われている開発ツールを使って、ゲーム制作が行われた。もちろん、それぞれには簡単なテキストが用意されており、上記のソフトをまったく触ったことがないという人でも、それらにしたがって進めればバッチリ完成まで持って行けるようになっている。

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▲生徒のひとりに“脳内シート”を見せてもらった。“~しなければ(have to)”ではなく、“~したい(want to)”という素直な気持ちがきちんと出ていて、人となりがよくわかるようになっている。

 また、作業に入る前に、それぞれに自分の考えていることを書き連ねた“脳内シート”というものを記入してもらい、それを使って自己紹介をしてもらっていた。大人になるとあれこれ考えて書くのに時間がかかってしまいそうだが、さすが中高生と言うべきか、皆スムーズに書き上げていたのが印象的。

 この日は、スクウェア・エニックスが誇る女性クリエイターたちによる講演や、開発現場の見学ツアーも組まれていたため、作業にかけられる時間は1時間程度しかなかった。そのため、生徒たちはまずは急ピッチでツールへの習熟を進めることに。2014年の男女合同での講座も取材していた記者の印象では、男子と比べると女子生徒たちはきちんとテキストを読みつつ、自分なりのアレンジを加えてしっかりと作り上げていく傾向にあるようだった。また、メンターへの質問はもちろん、同性、同世代という安心感もあるのか、生徒間で積極的にコミュニケーションを取りながら協力し合って進めているのも目についた。

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▲全体的に、黙々と進めるのではなく周囲と連携しながら作業をしている生徒が多かった。
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▲真剣なまなざしで講義を聴く生徒たち。ノートにペンではなく、スマートフォンで、ものすごいスピードのフリック入力を駆使してメモを取っている生徒も。

 続いて、現役のクリエイターを招いての講演が行われた。今回、講師役となったのは『ドラゴンクエストX オンライン』の開発スタッフである、イベントプランナーの田中瑞枝氏と、キャラクターデザイナーの天野 尚氏。自身の歩みや業界に入ったきっかけ、現在の仕事内容、そして業界を目指す人に向けたアドバイスなど、ぎっしりと中身の詰まった講演に生徒たちもメモを取りながらかじりついていた。

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▲『ドラゴンクエストX オンライン』イベントプランナーの田中瑞枝(たなか みずえ)氏。子どものころから、インドア、アウトドアなんでもござれだったらしい。

 リケジョで、対戦格闘ゲームやTRPGなども好きだという田中氏。大学卒業後、いくつかのゲーム会社を経てスクウェア・エニックスに入ったという彼女を始め、『ドラゴンクエストX オンライン』の開発チームで働いている人の経歴は、じつにさまざまだという。しかし、そんなバラバラな出自を持つメンバーたちに共通しているのは、“ゲームが大好き”だということ。そんな気の合う仲間とともに、自分が関わったゲームを遊んでくれた人の反応や感想を栄養としながら、季節の移り変わりにも気づかずに夢中になってゲームを作っているのだ。

 そして、田中氏が描く“プランナーにとって大切なこと”とは、“ゲームをおもしろくすること、そのことに責任を持つこと”。そのためには、勉強だけではなく、スポーツや遊び、読書などさまざまな経験、知識を積んで“アイデアの引き出し”を増やしていくことが重要なのだと語る。社会人になると、忙しくて新たな引き出しを作る機会が少なくなっていく。だからこそ、中学生、高校生のうちにできるだけたくさんのことを吸収しておくことが将来に役立つ……という田中氏の言葉を、生徒たちはうなずきながら聴いていた。

 田中氏に続いて講義を行ったのは、キャラクターデザイナーの天野 尚氏。『ドラゴンクエスト』のメニューウィンドウを思わせる、ユニークなレイアウトの資料を使いながら、田中氏同様、自身の経歴から仕事内容などを語ってくれた。

 美大で、油絵専攻にも関わらず、ずっと丸太をチェーンソーで削ってばかりいたと語る天野氏。そんな彼女は、とあるフリーマーケットで攻略本込みで買った『ファイナルファンタジータクティクス』によって、スクウェア・エニックスと衝撃的な出会いを果たすことになる。ゲームが大好きで、現在でも月2本ペースで遊んでおり、その情熱はまったく衰えていないらしい。ゲームでなくても、何かひとつ“情熱”を持てるものがあること、それこそがデザイナーになるために必要なものになる、と天野氏は語る。

 キャラクターというのは、ゲーム内でもっともプレイヤーの目に触れるものであるがゆえに、批判を浴びてしまうことも多い。しかし、それだけに評価されたときの満足感も大きく、キャラクターデザイナーはやり甲斐のある仕事なのだそうだ。そして、つねに人手不足にあえいでいるため、「いますぐにでも来てほしい」と笑いながらアピールしていた。

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▲『ドラゴンクエストX オンライン』キャラクターデザイナーの天野 尚(あまの なお)氏。どこかで見たようなメニューウィンドウを使って講義をしていた。

 その後、質問タイムを経て現場見学へと向かっていった生徒たち。こうして、時間が経つのも忘れてしまうような、濃い内容の1日が過ぎていった。