“ハッカソン”での開発支援も
本日2015年6月12日、“攻殻機動隊 REALIZE PROJECT(リアライズ・プロジェクト)”発表会が行われた。
攻殻機動隊 REALIZE PROJECTは、日本を代表する企業、大学の研究者、製作委員会が一体となり、“『攻殻機動隊』らしい”最先端科学技術の実現(REALIZE)に向けた情報発信、研究開発、起業活動支援を目的としているプロジェクトだそうだ。
プロダクション・アイジー代表取締役社長であり、攻殻機動隊 REALIZE PROJECT 実行委員長でもある石川光久氏は、『攻殻機動隊』が25周年を迎え、作品の舞台である2029年が迫っているいま、原作者の士郎正宗氏がいかに緻密に『攻殻機動隊』の世界を作り上げてきたか、いかに先見性があったかを、現実に存在する、またはこれから実現可能な技術を見て実感していたという。
石川氏によると、本プロジェクトの方向性は(1)いまの技術ではできない『攻殻機動隊』の技術を実現していくこと、(2)『攻殻機動隊』らしい技術を支援し、社会に役立つものとして還元することだそうだ。
以下からは、紹介された支援および具体的な技術についてについて紹介しよう。
■リアルな素子を3Dで再現した“Avatta”とは!?
カメラマンの桐島ローランド氏がプレゼンしたのは、“フォトグラメトリー”のひとつであるAvatta(アバッタ)だ。フォトグラメトリーとは、物体を複数のアングルから撮影し、そこから得たデータを解析して、3次元に起こしていくという先端技術とのこと。
Avattaでは、人物を84台の一眼レフを使い撮影、データ化し、リアルな3Dモデルを作ることができる。いったん3Dモデルにしてしまえば、ポーズを変えたり、服を着替えさせたりすることも自由自在なのだとか。
ここで、モデルの有馬綾香さんが、草薙素子のコスプレで登場。有馬さんはAvattaで作られた自分の3Dのモデルを見て「こんなポーズはしたことないです!」と、あらゆる動きができることに驚いていたようだ。
桐島氏によると、Avattaはスキャンの精度が上がるだけでなく、撮った写真を瞬時にデータ化できるため、いままでの3Dモデル化の技術に比べ、大幅に予算や時間を削減できるのだそうだ。いままでゲーム開発において2ヵ月近くかかっていた3Dモデル化が、手直しを含め10日くらいで完了するのだという。
桐島氏は「それがいいことかどうかはわかりませんが、これからは亡くなった有名女優を3Dモデルとして残しておけば、“復活”ができます。一度データをスキャンしておけば、役者がいらなくなる日が来るかもしれません」とも語っていた。また、桐島氏はフォトグラメトリーができる場所は限られているので、もっと世の中にこの技術が広まっていくことも希望しているようだ。
■プロジェクトの具体的な施策とは?
攻殻機動隊 REALIZE PROJECTの技術顧問であり、国際公認投資アナリストである庄司真史氏は本プロジェクトを、メディアとのタイアップ、コンテストおよびハッカソン、アワード事業、Avattaを始めとした関連事業を通じて進めていくと語った。なお、ハッカソンとは、“ハック”と“マラソン”を組み合わせた言葉で、技術者がマラソンのごとくアイディやテクノロジーを競う合うイベントとのことだ。
アワードのテーマは、“電脳”、“人工知能”、“義体”、“ロボット”、“都市”となっている。一般参加部門では、これを3つのテーマに分けて作品を募集し、優秀な作品を送り出した個人やチームには記念品のほか、開発資金などを得るチャンスが与えられる。
また、本プロジェクトではそれぞれのテーマにおける記事を厳選し、独自の評価軸“攻殻係数”を算出したうえで、記事をニュースとして配信することが予定されているそうだ。FacebookやTwitterなどのSNSと連動したプロモーションも積極的に行っていくとのこと。
関連事業のひとつとして、“LiVEEARTH”も紹介された。これは、世界の産業用ロボットの取引額をWEBの地球儀上に可視化をするというもの。モニターでは2013年の産業ロボットの取引額および輸出額を見ることができ、そのどちらにおいても日本が高いレベルにあることが確認できた。
攻殻機動隊 REALIZE PROJECT 統括顧問の武藤博昭氏は本プロジェクトのアワードについて、東京、神戸、福岡という3都市の連携で進めていくこと、休眠特許(事業に活用されていない特許)も復活させて活用していくこと、ベンチャー企業や大学とも連携を行うことなどを宣言した。なお、具体的なアワードのスケジュールは、8月に公募をスタート、10月よりコンテストおよびハッカソンを開催、2月上旬にアワードを解禁という流れになるそうだ。
NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長 秋元信行氏は、「初めて『攻殻機動隊』という作品を観てから頭から離れなかったのは、“『攻殻機動隊』こそ未来のビジョンなのではないか”ということでした。ウェアラブル端末やAI(人工知能)など、いまは現実世界が『攻殻機動隊』の世界を追いかけている状態です。この“攻殻機動隊 REALIZE PROJECT”を本気で盛り上げていきたいと考えております」と語った。