誌面に掲載しきれなかった情報をまとめてお届け

 プレイするたびにフィールドの構造が変化する“不思議のダンジョン”に、強制横スクロールの要素を追加したRPG『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』(以下、『フリカツ』)。インディーゲームとして人気を集めた『片道勇者』と、『風来のシレン』などでおなじみの『不思議の』シリーズのコラボレーションにより、新たなゲーム体験が生み出される。そんな『フリカツ』のプロデューサー・齊藤祐一郎氏に、週刊ファミ通6月11日号(2015年5月28日発売)でコメントをいただいたのだが、その際のインタビュー内容を、ファミ通.comにて全文まとめて掲載! 誌面には載せきれなかった情報の数々をぜひチェックしてほしい。

◆『片道勇者』からの追加要素は?

『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_01

――『片道勇者』からの変化というのは、どんなところになるんでしょう?
齊藤 新規地形が追加される点ですね。本作では、“天空”と“大森林”という地形が追加されます

――なるほど。そんな地形ですが、山だと移動のターンに時間が掛かるといった特徴などがあるかと思いますが、入手できるアイテムに変化が出たりもするのでしょうか?
齊藤 そうですね。そもそもアイテムがほとんどドロップしない地形などもあります。たとえばこのゲームはレベルが上がってプレイヤーキャラクターが強力になっても、『シレン』などの満腹度に当たる“EN”がなくなってくると戦力が低下するので、食料の確保も意外と重要になってくるんです。ほかにも、火山地帯だと薬草などの草系のアイテムがすべて“焦げた草”になってしまうという特徴もあります。地形ごとにいろいろな特徴があるので、思わぬハプニングに見舞われるかもしれないですね。

――本作の地形は選べるわけではなくて、ワールドに付けた名前によってランダムで変わるんですよね? 火山がいっぱい出てくることもあれば、平原が続くところもあったり。
齊藤 地形はつぎの地形に進むたびに必ず違う地形になりますが、同じ地形が出てくる頻度が高いことはあるかもしれないですね。ただ、そのあたりはユーザーさんの捉えかた次第なんですよね。たとえば1番最初のスタート地点の王国が火山地帯にあるということもあるのですが、「うわー火山地帯だ……。敵も強いし過酷だからやり直そう」という方法も手段のひとつですし、逆に最初に火山地帯が出たということは、つぎは違う地形なので、余裕があるときにキツいエリアを通過してしまおうという方法もあると思います。けっきょく火山の後は火山よりも環境のゆるいところに行くことはほぼ間違いないですからね。ただ、その後また火山がくる可能性はありますが(笑)。

――(笑)。火山→平原→火山→平原という可能性もなくはないということですよね。
齊藤 生成次第でありえます。そういう不確定な要素も楽しめるポイントかと。

――なるほど。フィールドで出現するトラップは『シレン』のようなものが多いですか?
齊藤 そうですね。とにかくピンチになるシチュエーションを作りたかったので、あと一歩で倒れてしまう、というようなものを用意しています。何回もプレイしているうちに、敵にも負けないし、「もう死ぬこともないよね」となった瞬間にそのゲームをやる必要はなくなってしまうので、どれだけ強くなろうが、予期せぬ事態でピンチに陥るというシチュエーションは絶対的に必要なんですよね。だから、『シレン』シリーズを手掛けているノウハウをうまく落とし込んでいます

――『片道勇者』にはなかった要素を、取り入れたということですか。
齊藤 はい。新たな『不思議の』を謳った以上、『不思議の』であって『不思議のダンジョン』ではない形を生み出したかったので、『片道勇者』のユーザーさん、『不思議のダンジョン』ユーザーさん、双方に楽しんでいただける内容にできました。

――『シレン』ファンにはおなじみなものばかりなんですね。
齊藤 『不思議の』ファンへのサービスという意味合いも含めて、『フリカツ』の世界観に合うものをピックアップして入れています。

――罠を回避する方法として、たとえば『シレン』だと武器にメッキをすれば錆びなかったりとか、おにぎりを壺に入れるといった方法がありますが、そういう手段も用意されているのでしょうか?
齊藤 あります。もともと罠は王国が自衛のために設置したという設定なんですよね。だからなかには、設置されてない罠が落ちていることもあるんです。アイテムとして落ちている罠に関しては、プレイヤーが設置して、敵に踏ませて発動させるといった使いかたもできます。そのあたりをとくに条件がなく行えるのは、『シレン』とは異なる要素ですね。

――『シレン』の場合だと循環するので置いておいて引き寄せることもできますけど、本作では一方通行なので難しい気がするのですが。
齊藤 たとえば、自分の攻撃だけだと倒すのに5~6ターン掛かる強敵を、自分のHPも減るけど地雷で処理するというアプローチのしかたができます。あとは自分が圧倒的に強いのであれば経験値稼ぎのために、あえて通路で召喚の罠を踏むということもアリですね

――本当にやりかた次第、工夫次第でさまざまな使いかたができるというわけですね。

『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_03

◆モンスターや仲間も特徴的

――続いてモンスターについて伺えれば。見た目はどれもこれも非常にかわいらしいですけど、実際はかわいくない攻撃をしてきたりするんですよね?(笑)
齊藤 けっこういやらしい攻撃をしてきます(笑)。原案である『片道勇者』では持っていなかった特性の攻撃をしてきたりもします。それも『不思議の』シリーズのキャラクターでおなじみの行動だったりするので、『片道勇者』をプレイされている上級者の方でも、わりと最初は戸惑ったりするんじゃないかと

――たとえば3~5マスぐらい吹き飛ばすような攻撃とか?
齊藤 そうですね。あとは本作は職業によって側面や背面からのダメージの倍率が高くなるので、敵に後ろを取られると危険なんです。だから、後ろを取られるようなシチュエーションが多くなるような攻撃や行動が入っています。たとえば吹き飛ばされた先で、まわりから敵が出てくるとか。あとは1対1で対峙しているときに、目の前の敵が自分を通過して背後にまわり込んで背後を取られてしまうみたいないやらしいことをやってくる敵もいます。でも、それは通路だとピンチになるんですけど、通路ではないところなら、1ターンをムダに消費しているだけなので、通路限定で嫌らしい攻撃という感じですね。

――地形や壁の有無などに応じて、敵の攻撃への対処方法も変わるということですね。
齊藤 はい。火山の中に突き落とされて即死という可能性すらもありますので、敵の行動には注意が必要です。

――即死になるんですね。
齊藤 基本的にはマグマは即死です。

――なるほど。よく『シレン』でも、吹き飛ばされたところに罠があって、それによって敵が召喚されたりとかあったりしますけど、そういうことも。
齊藤 ピタゴラ的なそういうこともありえます。あとは2×2マスやそれ以上のサイズのキャラもいるんですよね。なので、職業によって対処のしやすさが変わったりもします。

――たとえば、仲間といっしょにいれば2×2や2×3のキャラクターは同時に攻撃しやすいということですか?
齊藤 あ、でも仲間は自分の“ビット”に近いような立ち位置になるので、見た目的には違うマスに立っていますが、あくまで自分と同じマスという判定になっています。

――そうなんですね。
齊藤 ただ、正面以外から攻撃をされた場合は、仲間が代わりに攻撃を受けてくれるんです。だから、主人公が同じマスにいたうえで、手数が増えて自分の攻撃を防いでくれるシールドみたいなものが仲間になるという形ですね。

――ということは敵のサイズとは、あまり関係がないということですね。
齊藤 そうですね。仲間はそれぞれに特性が異なるので、どんな仲間と行動するかが重要です。たとえば、戦闘に役立つ仲間とか、遠くの街がつねにわかる状態の仲間(本作では、街がどこにあるかは地図を使うか、“見通し”のキャラクターに話しかけない限り場所はわからない)とか。でも、戦闘では役に立たないので、いろいろ無茶をしていると便利な仲間がすぐに死んじゃったりするんです。かつ、各キャラクターの個別エンディングもあったりします。この個別エンディングは、そのキャラクターとのエンディング条件を達成することで、本筋のエンディングにプラスして観られるんです。

――なるほど。仲間にするには、どうしたらいいのでしょうか?
齊藤 プレイヤーの“魅力”を消費します。レベルが上がることで溜まっていく魅力のパラメーターを消費して仲間にするのですが、その魅力がとんでもなく低い闇の職業などがあるんですよ。ゾンビなんかは魅力がまったくないです。「さすがに、ゾンビの仲間になりたい人なんていないよね?」ということで、そうなっているんですが(笑)。職業によって、役には立つけど仲間を連れていけないとか、仲間を迎えづらいといった特性があります。そのままにしておくこともできるし、キャラクターメイキングのときに、魅力をいっぱい追加して、なんとか魅力を増した状態にして仲間を迎えるというような戦略ができるわけです。

――くり返しを遊んでは特性を使って魅力を上げる……というようなことも。
齊藤 できますね。逆に魅力はあるけど、そのほかの能力が高くないというキャラクターだったとしても、別の特性に数値を振り分けることで、より強化された状態にできます。短所を消すこともできますし、長所を伸ばすこともできるという感じですね。

――全編フルボイスということですが、イベントの量はけっこうある感じなんですか。
齊藤 イベントの量自体はそこまで多くはないです。物語の要所要所のお話を説明してくれるイベントがいくつか散りばめられてるという形ですね。そもそも本作はイベントを楽しむというよりかは、攻略を楽しんでいくタイプなので。ただそこに彩りをプラスしていると思っていただければ。妖精のメモリアというキャラクターがいるので、そのキャラとの会話イベントなどはあります。あとは道中の仲間であったり、どこのエンディングに向かうかによって、イベントがいろいろと発生しますね。

――ちなみに、話が戻ってしまうのですが、仲間はクエストをクリアーすることで加わる感じですか?
齊藤 まず仲間に出会うところから始まります。それはランダムです。当然、魔物は仲間キャラクターがまだ仲間になっていない状態でも攻撃しにいくので、死なないうちに出会う必要があります。だから、わりと後半のエリアで仲間を見つけたとしても、たどり着く前に死んでしまっていることがあるんです。あと、極端な話、魅力さえあれば魅力でなんとでも仲間にできるキャラクターも多いです。ただ、場合によっては最初から主人公に対して敵対心を持っているキャラクターもいたりするので、それを倒したうえで、さらに主人公に魅力があれば仲間にできたりというキャラクターもいます。

――なるほど。戦って勝たないと仲間にならないキャラクターもいるんですね。エアドーなどが、そういうキャラクターなんでしょうか?
齊藤 そうですね。

――戦力的にいちばん頼りになるキャラクターは?
齊藤 物理的な戦闘力という意味ではエアドーですね。あとはメアルもけっこう使えるキャラクターだと思います。エアドーの場合は、持っている武器が槍なので2マス攻撃できるというのが強みです。ただ、ココ&ツチクレというのも、じつはツチクレが秘めている役割とかもあるので、ふたりを連れていくと、ある特定の場所ですごくいいことがあったりしますね。

―― 一長一短でもあるし、それぞれにメリットがあると。
齊藤 基本的に仲間キャラクターは、仲間にしておいて損になることはないです。

『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_04

◆旅先で出会うNPCにも注目

『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_02

――本作では、旅先でいろいろなNPCに出会いますが、特徴的なNPCもいるのでしょうか?
齊藤 たまに野生動物が出てきたりするのですが、基本的に主人公を攻撃することはないので、手軽に倒せてしまうんです。しかも倒すとレベルが2~3くらい一気に上がるような経験値も貰えるうえに、売れば高価になるし、使えばパラメーターが1個上がるような希少アイテムを落とす野生動物もいるんですよ。ただ、野生動物を倒すと“動物狩りの罪”という数値が上がるんですね。この罪を重ねると、“森の防衛隊”の団員に襲われるようになります。

――団員は強いんですか?
齊藤 団員によります。後半に出てくる団員は倍速行動をしてきたりするので、かなり手強いです。最強の“森の防衛隊”の団員になると腕に自信がある人でもきびしいと思います。やたら堅い団員などもいますね。

――では、ある程度罪を重ねたら止めておくほうがいいと?
齊藤 罪を重ねると、“森の防衛隊”の団員に会ったときに追い詰められてしまうので、本当はやらないほうがいいのですが、攻略という意味では野生動物を倒したり、お店の店員を倒してアイテムを拾ったりするほうが楽ですね。NPCを倒してしまうと、それはそれでまた別の罪を重ねることにはなりますが(笑)。

――なるほど。ということは商人も倒せるんですね。
齊藤 はい。町の人も倒すことができます。

――それは警察みたいなのが出てくるんですが。
齊藤 いや、手配度が高いということで町の人などがみんなで襲ってきます。

――敵が増えるんですね。
齊藤 町にも番兵のようなキャラクターいるので、そういったキャラクターに襲われます。

『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_05
『不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ』齊藤祐一郎プロデューサーに直撃インタビュー_06

◆多彩なクラスを用意――どのクラスでプレイする?

――クラス(職業)は、週刊ファミ通2015年6月11日号までに紹介した14クラスで全部ですか?
齊藤 これで7割ほどです。現時点ではまだお伝えできませんが、スパイク・チュンソフトにちなんだクラスも用意しています。クラスによっては、ポイントで解放していく以外に、物語を進めると解放シナリオみたいなものが発生して、それをクリアーした場合にそのクラスがオープンされるというものもあります。ある種の別エンディングというか。魔王との戦いという目的とは完全に別で、物語が進む感じです。

――クラスには、それぞれ特徴がありますが、上級職というイメージではなく、どれも同じランクのものという感じなんでしょうか?
齊藤 内部的には上級職という概念でパラメーター設定をしています。なんだかんだで、パラメーターの伸びがよくなったりとか、スキルも変わってきます。最初の目的である堕天使を倒すためのエンディングに関していうと、剣士などの最初から選べるクラスでもあまり遜色はないですけど、ほかのエンディングを観ようとすると、このクラスだけではカバーしづらくなってくるシチュエーションが生まれてきます。400~500キロくらいの旅だったら、ぜんぜん初期のクラスでも大丈夫ですが、1000キロ以上の旅になった瞬間にやっぱり上位クラスじゃないと対応できなくなってきたりしますね。

――齊藤さんが使うことが多いのはどれですか?
齊藤 いちばん多いのは、まだあまり実装できていなかったりするので、剣士ですね(笑)。

――開発の進捗の問題で(笑)。
齊藤 でも、おそらくいちばん使っていくのは、ガンナーやレンジャーになるかと思います。敵との戦闘を避けて長い距離を走破するのが目的なのか、敵をゴリゴリ倒してとにかく無双スタイルでいくのか。プレイスタイルで変わってくると思います。ただ、敵にやられる前にやるというのが基本の推奨スタンスではあるので、遠距離系のクラスは役に立ちますね。

――そうなると、たしかにガンナーは強そうですね。
齊藤 あっ! あと、コラボダウンロードコンテンツで“片道勇者”というクラスがあります

――おお!
齊藤 原作の『片道勇者』を、そのままよろしくという感じのクラスです。とくに欠点がない強さを持っているのですが、左右と後ろからの攻撃に極端に弱い。勇者なので横を向いてどうこうとかなくて、真正面からガチンコで戦うんです。あとは『片道勇者』ファンにはおなじみの“ゼヌーラ”という魔法を覚えてます。

――それはどんな魔法なんでしょう?
齊藤 ゼヌーラを使うと全裸になるんですよ。

――ダジャレだった(笑)。
齊藤 防具を一切装備できなくなって、使命を果たすためならどうなってもかまわないという覚悟を決めて使うと「もう後戻りはできない」みたいな。

――自分を追い込むスタイルですね。
齊藤 片道です。

――なるほど! そういう意味なんですね。
齊藤 ただ、回避率や連続攻撃率がすごく上がるので、やられる前にやる自信があるなら、かなり強くなるクラスです。

――ゼヌーラを使ったあとに、防具を着ることは不可能なんですか?
齊藤 使ってしまうと、もう着れなくなります。脱いだら最後です。それで町の人からも仲間からも、全裸になったことに対するリアクションが見られます。

――専用のリアクションが(笑)。
齊藤 仲間キャラクターも、戦いに負けたときに「こんな変態に負けるなんて悔しい」みたいなことを言うので、ぜひほかの仲間キャラクターの反応も楽しみにしていただければ。


不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ
メーカー スパイク・チュンソフト
対応機種 PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4
発売日 2015年7月30日発売予定
価格 PS Vita版は3480円[税別](3759円[税込])、PS4版は3980円[税抜](4299円[税込])
ジャンル RPG
備考 プロデューサー:齊藤祐一郎、ゼネラルプロデューサー:寺澤善徳