●単行本の見どころとイベント情報を聞いてみました

 日下一郎作・制作協力ヒューガのコミック『Final Re:Quest ファイナルリクエスト』(以下、『ファイナルリクエスト』)の単行本第1巻(講談社/160ページ/定価920円[税抜])が、2015年5月8日に発売された。ニコニコ静画内のWeb漫画ページ“水曜日のシリウス”で連載中の同作品の、1話から6話が収録されたフルカラーコミックということで、ファンとっては待望の一作だ。ファミコン全盛時代、さまざまなRPGをプレイした“かつての勇者たち”の記憶を刺激するドット絵とストーリーを楽しめる、ありそうでなかったゲーム漫画……ということで、興味がわいた人は、ぜひ読んでみてほしい。

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 今回は、原作者の日下一郎氏と、『ファイナルリクエスト』の担当編集者である小笠原宏氏(講談社)に、2015年5月24日開催予定の出版記念イベントの情報を伺いつつ、単行本制作の裏話や、今後のストーリー展開について迫ってみた。

▲単行本発売を記念し、日下氏がファミ通.comのために描き下ろして(コピペして?)くれた、特別4コマ漫画。何のことやらよくわからない人は、“水曜日のシリウス”で公開中の第9.5話“たんこうぼん とくべつ きかく シロテちゃん”と、週刊化した当時のファミ通(ファミコン通信)のバックナンバーを読むべし(なげやり)。ちなみに、おざなりに合成されている生首は、記者のツイッターアイコン。

■ドット絵の魅力を堪能できる単行本化

──まずは単行本の発売、おめでとうございます。

日下 ありがとうございます!

──単行本化が発表されたときは、「絵も動いて音もある、あの作品を、どうやって本にするんだ!?」と、ファンのあいだで色めきだっていたようです。

小笠原 当初から、単行本化を前提にコマ割りして作られていたので、こちら側からすれば「何を驚いているんだろう」と。

──むしろ、本来あるべき姿に戻ったんですね。

小笠原 画面で見るよりも、各場面をじっくり見られるのは、いいと思います。ここまで力が入ったドット絵を紙媒体で観る機会は、そうないですからね。

──表紙も、ドット絵の魅力が全面に押し出されたものになっています。こちらももちろん、日下さんが手がけたんですよね?

日下 やったんですけど、デザイナーさんにいっぱい修正されました。最初は、奥行きにグラデーションをかけて、靄を入れたりしていたんですけど、「いらない」って取られたり(笑)。

──おもに、アソンテ(※主人公の戦士)に使われている、ビビッドな紫色が、印象的です。

小笠原 じつはこれ、通常のCMYK(※おもに印刷物に用いられるカラー形式)じゃ出ないんですよ。Y(イエロー)とM(マゼンダ)に蛍光を混ぜて出しているんです。

日下 これはデザイナーさんの慧眼ですね。私は、(ファミコンのカラーパターンの制約上)仕方なく使っていたんですけど、デザイナーさんが、「ファミコンの紫が特徴的だから、これを前面に押し出したい」と言うんです。たしかに紫は、中間色がないぶん、目立つんです。

──デザイナーさんも、ファミコン世代だった?

小笠原 それが、ぜんぜん知らない方なんです。単純に画面を見て、「この色がおもしろい」といった発想でデザインされていましたね。むしろ、ファミコンを知っている人だったら絶対にしないビジュアルになりました。

■コピペや並び替えでは済まない、単行本ならではの要素が満載

──単行本のオリジナル要素について、詳しくお聞かせください。

日下 「かわいくない」と不評だった、第1話に登場する王国の姫を描き直したりと、細かい小技をいっぱい入れています。加筆部分に関しては、ニコニコ静画用に入れたカットを改めて作り直して、物語のキーとなるビジュアルとして、全話に盛り込んだりしています。たとえばこの、リカトクのこのシーン。

日下 彼がすがったものと、それによって行き着いたところの象徴として、キービジュアルをつけ加えています。ニコニコ静画では映えない、こういった縦向きの大判の絵は、見どころのひとつになっているんじゃないかと思います。初めて見た人がわかりやすく、ニコニコ静画ですでに見た人も「こんなカット見たことない!」というコマを、あちこちに加えてみました。

──ちょっと無茶ぶりな質問になりますが、『ファイナルリクエスト』の制作中、いままでに何ドット打ちましたか?

日下 ええっと……私、ゲーム業界歴が長いですけど、これまでに描いた量を軽く上回っています。自分自身でここまで打ったことは、ないです。

──これまでのクオリティーを維持しつつ、単行本化の際にはいろいろ加筆修正しつつ……というペースで今後もやっていけるのか、はた目からしても、心配になってきます。

日下 連載当初は、手を抜く方向で考えていたんです。毎回天丼(※同じ絵面や展開をくり返す、ギャグの手法)にして……って思っていたんですけど、いざ、残りの人生で書ける物語はどのくらいだろうと想像したときに、「この1ページを天丼で使っていいのだろうか?」と考えるようになりました。ドット打ちが心底嫌にならない限りは、読者があっと驚く絵作りのため、一生懸命打とうと思います。

小笠原 日下さんの凝り性に、編集側が引きずられている面も、あります(笑)。

日下 とはいえ、計算上では、いずれドットを打ち尽くすので、それ以降はコピペだけで済むはずですが(笑)。