業界人必読:実績あるインディークリエイターの本音「インディーゲームの話題性を作るための方法論を……話し合うとかやめませんか?」【TIF 2015】

2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。会場では9日にいくつかの興味深い話題が語られたセッションが開かれた。ここではそんなパネルセッションの中から、インディーシーンで存在感を放つ、4人の実力派のクリエイターが参加した“インディーゲームの話題性を作るための方法”についてのセッションを、現場で交わされたトーク内容をインタビュー形式にてお届けする。

●インディーゲーム作品における、話題作りの方法について

 2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。会場では9日にいくつかの興味深い話題が語られたセッションが開催。ここではそんなパネルセッションの中から、インディーシーンで存在感を放つ、4人の実力派のクリエイターが参加した「インディーゲームの話題性を作るための方法」についてのセッションのレポートをお届けします。
 ……するはずだったのだが、そのセッションの内容は途中から、そのような規定の枠組みには収まらないものに……!?
 セッションはたいへん若いスタッフが司会を担当していましたが、途中からは壮絶な本音トークが飛び交うこととなり、テーマは混迷。話題は次第にインディーゲームクリエイターとしてのスタンスについてのものへと流れていきます。

 それもそのはず。今回登壇したNIGOROの楢村氏、Nyamyamの東江氏、Petit Depotto(プチデポット)の川勝氏、そしてQ-gamesの伊藤氏は、公私ともに語り明かすような仲の4人。初めから、普通のセッションで終わるはずもなかったのでした。
 しかしそれは、まさに自らを主とするインディペンデントな魂に満ち溢れた、TIFの全セッション中で、ある意味最も異端(だが純粋な本音)の言葉が溢れた場だったとも言えるでしょう。
 というわけで、今回はそのトークセッション現場にて語られていた熱気を含んだ言葉のやり取りを、なるべくそのままの形でお届けするべく、レポートではなく、インタビュー形式に構成してお届けします。

 ……たとえるならば、釣った魚をその場でさばいて、醤油をつけて刺身で食うような、そんなリポート記事になってしまっています。
 これは果たして、文字で読むロックライブなのか、プロレスのマイク・パフォーマンスのようなものなのかはわかりません。ただ一つだけお断りしておきたいのは、このセッションで4人の登壇者の方が語った言葉は、嘘やかっこつけの(おそらくほとんど)ない、純度の高いものだったことは保証できます。

 前置きが長くなってすいません。とにかく……このセッションリポートから、ゲームを愛するあなたが、どんなことを考え、感じるのかさえも……誰も真似できないゲームを生み出したクリエイターの生き様のように、あなた自らが主となり一歩踏み出して、ここから掴み取るしかないのかもしれません。お好きなペースで、じっくりお楽しみください。

▲楢村匠(ならむらたくみ)氏(NIGORO)
遺跡探検2Dアクション『LA-MULANA』を生み、その高難易度と謎解きのロマンが生み出す極上のゲーム体験で、世界中の(マゾ)ゲームファンを熱狂させたNIGOROのボス。現在は史上初となるクラウドファンディングによる資金提供を成功させ、『LA-MULANA 2』を鋭意製作中。東江氏とともに、インディークリエイターコミュニティIndie Streamを発足した。

▲東江亮氏(Nyamyam)
イギリスのインディーデベロッパーNyamyamのゲームクリエイター。iOSほかPC、Wii U、そして近日Android版も展開予定の、美しい和の世界を描いた、飛び出す絵本のようなアドベンチャー作品『Tengami』は、世界中で無数のアワードに輝いたほどのゲームとなった。Nyamyamのメンバーとなるまでは、レア社に勤務し、アートディレクターを担当。楢村氏とともにIndie Streamを発足した。

▲川勝徹氏(Petit Depotto)
数々のインディーゲームのアワードを総なめにした『メゾン・ド・魔王』を生んだ、開発集団プチデポットのブレインにして、プロデューサー。Xbox 360から配信を開始した『メゾン・ド・魔王』は、PC、ニンテンドー3DSへと移植。さらには現在PS4、PS Vitaへと展開予定。さらには、作品の世界をライトノベルとして出版するなどインディー業界屈指の名プロデューサーでもある。

▲伊藤雅哉氏(Q-games)
Q-games所属のプロデューサー。また同社のインディー・ブランドPIXELJUNKの広報その他、そしていまや名実ともにインディーの祭典となったBitSummitの公式な裏方として、ゲームの魅力を広げて伝えるために奔走する……まさにインディー業界の影の立役者。PIXELJUNKの名物Twitterの中の人である、との噂もあるが、その真相は謎に包まれている。

■ セッション開始 インディーで実績を残したプロモーション方法を問われて、語り始める

 インディーゲームは、話題をいったいどうやって作るのか、という司会者からのお題に沿って、この前代未聞のセッションの幕が上がった。

――インディーゲームは知名度がないので、それをどのようにみなさんはプロモーションして話題を作られていったのでしょうか。

川勝 僕らは『メゾン・ド・魔王』というゲームを作ったんですが、このゲームは開発メンバーのひとりが、“家賃回収のバイトで踏み倒された体験”から生まれたものなんですよ。なので、引退した魔王になってアパートに住む魔物から家賃を回収するっていう内容になった。それは、話題性とかではなくて、僕らの日常に身近なゲームとして生まれたんです。でも、そういうゲームは周りになかった。なので、そこから結果的にゲーム自体の独創性が話題になることもありますよね。そもそもがプロモーションというよりも、Petit Depottoはまったく無名でしたから。

▲『メゾン・ド・魔王』

――なるほど。つまり意外性のあるゲームを作ることが、話題性を生むということですね。楢村さんはいかがですか。

楢村 僕らは『LA-MULANA』という、広い遺跡を探検する、高難易度の2Dアクションのゲームを作ったので、これをプロモーションしなくてはならなかったわけなんです。インディーとしてやっていこうと考えたときの戦略として、当時ちょうどWiiのダウンロードゲーム・プラットフォームのWiiウェアというものが立ち上がるときだったんですね。任天堂がついにDLサービスを始める、ということもあって「じゃあもうリリースすればいいことばっかりだ!」と思ったわけです。……結果的にはそうではなかったんですけれど。

――なるほど。

楢村 それに、正攻法でプロモーションをしたとしても、すでに大手メーカーさんなどがランキング上にはひしめいていて、やるはやるんですが、なかなか成果が出ない。僕らのNIGOROというチームは3人しかいませんでしたので、そこでしかたないので「それ以外の何か」を考えなくちゃいけないと。

――それでどのようなことを……?

楢村 もう開発者が前に出るしかないと。日本人って、ネットでもとにかく自分の顔を出さない文化じゃないですか。でも、そうしているとインディー開発者はずっと篭って開発をしているわけなので、まったく外にでなくなっちゃうんですよ。外にでなくちゃプロモーションもなにもないし話題もなくなるので。とにかくイベントなどいろいろな場面で外にでていきました。ぶっちゃけて言えば、僕がいまここで裸になって、刀を振り回してここを血の海にすれば……それはもう話題性はバツグンなんですけど。まあ、家族もいるのでそこまではできないですが(笑)。

一同 (笑)

楢村 とにかく、そうして“作っている人たち自身が出ていく”というのを戦略としては意識してやっていますね。

▲『LA-MULANA2』

――東江さんはいかがですか。

東江 ……えーとですね。僕らは『Tengami』という、和の世界を描いた飛び出す絵本をモチーフにしたゲームを作りました。でもですね、チームが3人しかいなかったんですね。だから、プロモーションに必要なすべてのことに対して全力を尽くすというのは無理だったんですね。

――なるほど……。

東江 だから、僕らの場合は「こんなゲーム見たことねーよ!」って思わせるゲームを作れば……それはもう話題にならざるを得ないだろう。と、それだけの発想でやりました。以上です。

▲『Tengami』

伊藤 えー、僕らQ-gamesのほうでは、PIXELJUNKというインディーゲームのブランドで『Nom Nom Garaxy』というサンドボックス型のSF・2Dアクションで、未開の惑星でスープ工場を作るというゲームを作っています。PCのSteamというプラットフォームとPS4で展開しているんですけど、このSteamでは、“アーリーアクセス”と言う、開発中の段階のものを、先行して販売して、随時更新しながら完成させていくのを、ユーザーといっしょに楽しむという試みをしました。

――“アーリーアクセス”での話題作りですか。

伊藤 ええ。Steamというプラットフォームは、開発者がとても楽に配信しているゲームに手を加えることができるものなので、ある意味で開発者がゲームをやりたい放題に作り変えられるプラットフォームなんですね。それはユーザーさんにとっても、どんどん意見を出すことでゲームが変わっていくという体験になっているわけなので、そうした“アーリーアクセス”を通じてのユーザーさんと開発とのやりとりで、コミュニティが広がっていったって感じです。

▲『Nom Nom Garaxy』

楢村 “アーリーアクセス”で思い出したんですけれど、僕らも目立つためには人がやっていないことをしなくちゃいけないと考えて、kickStarterというクラウドファンディング(ファンや一般のお客さんたちから資金提供を募る方法)を使って資金集めをしたりしました。たぶん、日本のインディーデベロッパーではいちばん最初に成功したんじゃないかな。

――初めてクラウドファンディングで成功したとは……! 確かに話題になりますね。

楢村 まあクラウドファンディングにしても、稲船敬二さんがインディー2Dアクション『Mighty No.9』で、出資を募るためのものすごくクオリティーの高いトレーラーを作ってしまっていたので、僕らはそこで2Dアクションとして『Mighty No.9』とぶつかったら、僕たちのゲームはきっと見てもらえなくなってしまう。だから、ここでも正攻法でやってちゃだめだろうと考えるしかなく……結果的に、鳥取砂丘にロケで行って、僕が砂丘の頂上から転げ落ちる動画を撮ったりしました(笑)。
※参考資料
LA-MULANA2』クラウドファンディング用のトレーラーにて
砂丘を転がる楢村氏の動画(砂丘を転がる場面は約04:20頃)

――『Mighty No.9』とぶつかるのは、話題性としてはたいへんなことですね。

楢村 ええ。だから奇行に走るしかなくて(笑)。僕ら規模の小さいインディーは、大きなところとぶつかったら絶対に勝てないというのがあるんです。それに、お金もかけられません。でも、砂丘を転がるのはお金もかかりませんから。そういう部分に活路を見出していました。