“おもしろいゲームを作る”……日本のゲームが海外で成功する単純明快な理由【TIF 2015】

2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。9・10日両日は、PUBLIC DAYとして一般にも公開される。ここでは本日5月9日に行われたパネルセッションの中から、“日本発、世界へ”と題されたセッションをリポート。

●日本向け、海外向け論争はナンセンス!?

◆日本発、世界へ~ゲーム開発者としてどう海外と接すべき?~
 今回のセッションは、日本のゲーム開発者として、どう世界と接するかがテーマ。外国人クリエイターを交えてのパネルセッションが行われた。


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▲和田康宏氏(TOYBOX)
マーベラス、グラスホッパー・マニファクチュアを経て、2011年にTOYBOXを設立。代表作である『牧場物語』シリーズでは、原案、ディレクション、プロデュースを手掛け、全世界で1000万本以上セールスするシリーズに育て上げた。

▲木村祥朗氏(Onion Games)
スクウェア、LOVEDELIC、マーベラスなどを経て、現在はOnion Games代表取締役社長。代表作には『moon』、『チュウリップ』、『王様物語』などがあり、現在はiOS『Million Onion Hotel』を鋭意制作中。

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▲Alvin Phu氏(Dot Warrior Games)
中国系アメリカ人。以前から日本のゲームのファンで、日本に来る前は、出身地のボストンのインディーメーカー“Subatomic Studios”に所属。『Block Legend』、『Wan Nyan Slash』などがヒット。

▲Matt Smith氏(Friend and Foe)
5年前に来日。PopCap Gameなどで『Bejeweled』や『プラントvsゾンビ』などの開発に携わり、12年以上のゲーム開発のキャリアを持つ。現在は、アドベンチャーゲーム『Vane』を開発中。

●まずはおもしろいゲームを作ることが大前提

 最初に司会者から、ゲームにおける、日本向け・海外向けの違いについての質問があった。和田氏は、それぞれのゲームが海外向けや日本向けと言われることがあるが、それはあくまで外部から見た意見だったり、また大きな開発費を回収するためのマーケティングの観点からで、国内向け・海外向けを意識してゲームを作ったことはほとんどないという。それは「ゲームのおもしろさの根本は世界共通」(和田氏)で、個人的な意見としつつも、グラフィックや音楽をその地域の文化や嗜好性に合わせる必要性はあるものの、アイデアやゲームのおもしろさで勝負するインディーゲームでは意識する必要はないと断言した。Matt氏もその意見には同調し、Alvin氏はいわゆるアニメ調のグラフィックはやはり国内向けになると語った。
 木村氏は、今回のセッションの“日本のゲームを世界に発信する”というテーマとして、世界中にゲームを売ったほうがいいという前提があると切り出した。現在木村氏が作っている『Million Onion Hotel』を作る前に考えたことで、全世界に向けて売るために、意識的にさまざまな“制限”をかけたそうだ。また木村氏は、もともと自分の好きな絵柄やキャラクターが、いわゆる萌え系ではないため、世界でも受け入れられやすく、さらには日本語の演出や表示するのも止め、直感的に遊べるようなゲームとして同作を作り始めた。ゆえに昨年のBitSummitに出展したバージョンは、誰でもすぐに遊べて、瞬間的におもしろさがわかるものを作ったのだが、現在はそうしたアプローチを止め、日本語のひらがな一文字ずつを地道に打っている作業をしているのだという。その理由は、木村氏が日本人で、英語では自分がいいと思う文章が書けるわけでもなく、『Million Onion Hotel』を木村氏が作ったゲームとして出すためには、自分の味を出すしかないと思った、という現状を語ってくれた。以前は全世界同時発売可能と思っていたものが、いまはまずは日本で発売し、海外で遊びたい人にはちょっと待ってもらうことになる。「世界の人には売りたいよ。でも、日本語の言葉をなくして、全部英語にするといった考えは好きじゃないし、自分とは違うかな」(木村氏)
 和田氏は「それでいいと思う。好きなようにするのがインディー。いろいろなものを省いて世界と勝負するのもありだが、それは木村さんらしくないということ」とフォローする。
 また、Matt氏は、Popcap Games時代に、『プラントvsゾンビ』などをローカライズし、日本向けのものを作ったが、日本語にローカライズするのは難しかったと振り返り、Alvin氏もその意見には賛同していた。

 ここから、木村氏が現在感じているゲーム制作の持論が展開される。
「誰のために、何のために作るのか。ターゲットの年齢を決めるのはナンセンス。何歳だろうが、アスパラガスの絵が好きな人は好き。いまは僕が作ったものを直接届けられれば、それなりの人数がいるはずなんですよ(笑)。いちばん嫌なのは、世界に向けたほうが需要が増えますよね、という論法。僕らは好きなものを作って、好きな人に届ける。ただ、それは難しい。だから好きになってくれた人は、好きだと僕たちに意思表示してほしい」(木村氏)

 Matt氏は、(木村氏の作るゲームを)好きな人は世界に必ずいるので、仮にローカライズが中途半端でも出したほうがいいとアドバイスすると、木村氏は「じゃあ、ひらがなのままで出すか。「このゲームには日本語が出ます」と最初に英語で入れておくとか(笑)。できたらいろいろな国の人にやってほしいと思うが、最近はよくわからん(笑)」
 最後に和田さんが、ここまでの内容を「好きなものを作るしかないということですね」と、簡潔にまとめた。自分が本当に好きなもので、自信を持っているものを軸に訴えていくことが、国境を越え、世界中の人の心に届くポイントだと分析してくれた。


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 続いて司会者は、少人数で開発するインディーについて、海外に向けての宣伝やサポートはどのようにするのかという質問があった。木村氏からは、「とりあえず好きなものを作って、出した後に考えればいいんじゃないかと(笑)」と話し、会場の笑いを誘う。サポートは売れたゲームだけの話だと一刀両断。宣伝したり、売るのが難しいとよく言われるが、木村氏からみれば、いま売れているインディーゲームの中で、おもしろくないものはひとつもない、と断言。ゆえに、おもしろいゲームを作るのがいちばん大事だという。
 Alvin氏もマーケティングの話はすごく嫌いだと言い、宣伝効果としてはTwitterがいちばん強いという。Matt氏は「宣伝するよりも、自分のゲームのオーディエンスを探すこと」が重要だと語る。TwitterやYouTubeのPVなど、おもしろいゲームを作っているはずだから、それを見せる必要があり、和田氏もおもしろいものを作って、SNSなどで発信すれば可能性が広がるのがいまの時代だと感じているそうだ。Matt氏の「オーディエンスを探す」というのはいい言葉だと絶賛。おもしろいゲームを作ったら、それを伝えたくなるはずだと。木村氏も「宣伝を否定しているわけではなく、SNSの効果は本当に大きい」と実感しているという。ちなみに、Onion Gamesの英語版Twitterは忙しくていま止めているそうだが、Twitterは便利なツールゆえに、続けて発信していくことも重要だと感じているそうだ。

 続いての質問は、海外のメディアに向けて、自分から発信しているかというもの。和田氏は、BitSummitなどの印象として、おもしろいゲームが出展されていれば、海外のメディアは勝手に遊んでくれると感じているという。一方、木村氏は昨年のBitSummitでは、出展ブースの前を外国人が通るたびに試遊をすすめたうえに、「Media?」と聞いていたそうだ。ちなみにそのときに名刺交換した海外メディアには、IndieCade Festivalに行く際には連絡をしたそうだ。その際は英語でメールするそうだが、木村氏曰く「日本人でも書いたり読むぶんにはなんとかなる」そうで、“とりあえずgoogle翻訳”(英語→日本語)は活用しているといい、Matt氏もその姿勢は賞賛していた。和田氏は、インディーゲーム開発者に対して、仮にイベントなどに出展できなくても、直接Webサイトなどからメディアにアクセスすることが効果的だと語った。


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 最後に登壇者からインディーゲーム開発者に向けて、いまからさらに一歩前進できるようなアドバイスが送られ、セッションは終了した。
和田氏「ゲームを作るにあたって、自分は何がおもしろいと思っているのか、本当にそれが実現できるのかが原点だと思います。その原点に立ち返って、“おもしろさとは何か”を見つめ直して、おもしろいゲームを作っていただければと思います」
木村氏「ひとりでも、開発チームででも、長い期間黙々とゲームを作って、たまにイベントに出展して、また黙々とゲームを作る……ということをくり返していくうちに、何かが開けて来ます。いいものを作ることができれば、パブリッシャーも見てくれるし、お仕事の話も来るでしょう。黙々とゲームを作るのと、イベントで外に出るのをくり返せばいいと思います。僕もやります」
Alvin「プログラムがわからない、アートができないといった言い訳もあると思いますが、最近はゲームも作りやすくなり、誰でも作ることができる環境があります。Make Games! それだけです」
Matt「一歩ずつ、必ずできることがあると思うので、目の前の目標を達成しようとするのがいいと思います。とりあえず前に進んだほうがいいと思います」