開発者によってここまで違う!? インディーゲームの開発スタイルの理想形とは?【TIF 2015】

2015年5月8日~10日、東京・秋葉原UDXにて東京インディーフェス(TIF) 2015が開催。9・10日両日は、PUBLIC DAYとして一般にも公開される。ここでは本日5月9日に行われたパネルセッションの中から、“インディー古今東西”と題されたセッションをリポート。

●インディーゲーム開発の理想形はあるのか?

◆インディー古今東西~皆さんどんな制作スタイルで創ってますか?~
 インディーゲームの開発者たちが、実際どのような制作スタイルでゲームの開発に取り組んでいるかを語ってもらうセッション。ちなみにこのセッションに登壇した3人のクリエイターは初対面で、とくに打ち合わせもせずセッションに臨むことに。「グダグダになると思うが、それゆえのおもしろさもあると思います(笑)」とは登壇者のひとり、北尾雄一郎氏の弁。

▲西健一氏(Route24)
スクウェア、LOVEDELIC、SKIPを経て、2006年にRoute24を設立。40歳になった2007年にフリーランスに。おもな開発関与作品/『moon』、『L.O.L』、『ギフトピア』、『アルキメDS』、『newtonica』など。

▲北尾雄一郎氏(ジェムドロップ)
日本一ソフトウェア、トライエースを経て、2013年にジェムドロップを設立。おもな開発関与作品/『スターオーシャン3』、『ヴァルキリープロファイル』シリーズ、『ガンスリンガー ストラトス2』、『ポポロコ』など。

▲浅瀬石氏(STUDIO ANASTROPHE)
アプリを中心に制作活動を行う。『脱出ゲーム バネーナ』、『脱出4コマ・アンタルチカ』など。ニコニコ自作ゲームフェスで受賞歴あり。

 司会者からの最初の質問は、それぞれの代表作をどのようなスタイルで制作してきたか、というもの。浅瀬石氏の場合、『脱出4コマ・アンタルチカ』を例に挙げ、プログラムと企画を浅瀬石氏が、ほかに画像を作るデザイナーというチーム構成で開発したという。
 北尾氏のジェムドロップは、TIFにも出展している『ポポロコ』というアプリが第1弾。昨年のBitSummitや東京ゲームショウにも出展しており、もう間もなくリリースになる予定。ジェムドロップは、他社からの開発も受託しているため、自社オリジナルの『ポポロコ』1本に集中できていないそうだ。『ポポロコ』は社内2、3名で作っており、内訳はプログラマーとグラフィッカー+αという状況。コアのシステムはすでにでき上がっているが、ゲームの調整に時間をかけて(かかって?)いる状態だ。
 西氏の場合、Route24というのは個人事務所。企画を思いついてから、自分から発信して動くケースと、クライアントから発注があるふたつのケースがあるという。TIFに出展している『まかいピクニック』の場合は前者で、開発資金に関しては共同事業スタイルでファンドを受けている。最初から資金がすべて手元にあるわけではないので、まずプロトタイプを作り、動くものを見てもらい、その内容がよさそうなら本制作に入る。個人事業ということもあり、現在は約10名のスタッフで開発しているそうだが、開発終盤にはさらにヘルプで人員が必要になる見込みだという。「だいだいこんな感じですよね?」と同意を求める西氏に対し、浅瀬石氏、北尾氏の場合はちょっと違うという。
 北尾氏の場合、会社がクライアントから別のソフトの一部分を受託開発して得たお金を資金として、自分たちの作りたいものに回すのだという。「地道な方法で、スポンサーがついてゲームを作っているわけではなく、なんとかお金を捻出して少しずつ作っている」(北尾氏)
 一方浅瀬石氏は、自分+デザイナー2人の計3人で開発をしているが、その資金は自分で3人分を稼ぐという力技。北尾氏から「ひとりで3人分を稼ぐ方法を教えて」と聞かれた浅瀬石氏は、フリーランスでアプリを開発しており、受託以外に、企業とレベニューシェア契約を結び、成功すれば報酬が増えるようにしていて、それによる資金のプールがあるのだそうだ。「受託は正直儲からないですよね?(笑)」と浅瀬石氏は語る。

●三者三様の開発スタイルが浮き彫りに

 続いての質問は、少人数で開発しているケースが多いインディーメーカーに対して、大企業にはないスタイルやメリットがあるか、という質問。西氏は「住んでいる場所が自宅兼事務所なので、飼っている犬がつねにそばにいるのは大企業にはない」と苦笑する。北尾氏は、開発に回せる人が少ないので、そもそもひとりでやる量がハンパないと語る。西氏の話を受け、北尾氏も「うちの会社には炊飯器があります(笑)。同じ釜の飯を食っている感」があり、一体感が生まれるのだという。
 浅瀬石氏も仕事は自宅で行うことが多く、デザイナーもそれぞれ自宅で作業。いわゆる“リモート開発”という環境で、最初の2タイトルは、実際にそのデザイナーとは会ったこともなく、やり取りはメールやSkypeのみ。ネットカフェで作業をすることも多く、入り美っているおかげかプラチナ会員。「お店には、ネトゲ廃人だと思われているはず」(浅瀬石氏)
 リモート開発ではコミュニケーション上の問題がありそうだが、浅瀬石氏によると「最終的には妥協するしかない(笑)」。できるだけ最初に仕様を固めるようにすることで、全体像を具体的にすればするほど、スムーズに開発を進めることができているそうだ。

 コミュニケーションについては、北尾氏のジェムドロップは会社形態なので問題ないそうだが、社外の制作スタッフに協力をお願いするときだけ、最初に必ず会いに行くそうだ。都内はもちろん、広島まで飛行機で会いに行ったこともあるという。重要なのは、仕事の話の前にする雑談。お互いの好きなものや嫌いなものがわかるだけでも、お互いの意図を汲んでもらうことができるそうだ。また、翻訳者に文章だけ送って作業をしてもらうのではなく、実際に会社に来てもらって、開発&翻訳作業をしながら作業したことがあるそうだ。すると、仕事のスピードは早いし、ニュアンスも伝わりやすく、翻訳者も喜んでくれたという。
 西氏は、現在スタッフとは別々の場所で作業をしているので、週2回の定例会議を設定。来られる人のみの会議だが、「開発終盤には全然人が来なくなる(笑)。ただ、実際に会って話したほうが、表情などからの情報量が多い」(西氏)という。最近はFacebookのメッセンジャー機能を使ってのやり取りが激増しているので、Facebookが嫌いになりかけている」と笑う。

●やはり先立つものは重要です

 インディーメーカーの課題である資金調達方法についても、3人から意見が出された。
 浅瀬石氏は、最初に語ったように基本的に自己資金。「インディーのいいことろは、口を出されないところ。自分で稼いで、その稼いだお金のサイズでものを作る」(浅瀬石氏) 北尾氏も同調し、「やるなら100%自己資金がいい。最初に口を出さないと言われても、結果的にはいろいろと言われます(笑)」と話す。ただし、やりたいことの内容や規模によっては、パートナーをつけ、資金を捻出したほうがいいケースもある。また、北尾氏はクラウドファンディングに対しては、前向きではないそうだ。その理由として、作り始める前にお金を集めるというのは、その時点で出資者の信頼を買っている状態。ゲームは作っているうちにどんどん変わっていくし、最初にぶち上げた構想どおりにいくほうがすごいことだという認識だ。北尾氏がもしクラウドファンディングをやるなら、ある程度ゲームができてから提案し、その時点で判断してもらいたいという。
 西氏は、自己資金で作ったこともあるが、いい面も悪い面もあると語る。「いちばんいいバランスは、自分の食い扶持は貯金などで何とかなる。自分のギャラを抜いた開発費を出してもらい、自分は売れたぶんのレベニューシェアとして受け取るのがいいのでは」と最近は思い始めているという。

 司会者から、インディーゲームはどこでリリースするのがいいのか、開発の落としどころについて質問があった。
 西氏は、お金や情熱が尽きたタイミングもあれば、タイアップ(たとえばアニメ放映開始など)の影響もあるが、「理想は最初に立てたスケジュール通りで、誰ひとり倒れず、やり残したことがないのがいちばん。まだ、そんな仕事はしたことがない(笑)」そうだ。
北尾氏も当初のスケジュール通りが理想としつつも、インディーは作り込もうと思えばいくらでも作れるが、TIFなど最近は作品を出すイベントが増えてきているので、それを目安にするのがいいのではないかといい、その意見には浅瀬石氏も同調した。きちんとリリースするためには、自分でデッドラインを決める必要があり、お金が尽きてしまうこともあるという。

 セッションの最後に、3人からクリエイターに向けてのアドバイスが送られた。
西氏「人のことを言っている場合ではないのですが、同じ土俵に上がると比べられて負けることが多いんですよ。なるべく、これまでにない新しいものを作ったほうがいい。ただし、“1歩先を行く”ような斬新なもののほうがウケがいいのですが、斬新すぎると受け入れられないこともああります。よく先輩からは「半歩先を行け」と言われてきましたが、いまの時代の流れの速さは尋常ではないので、時代のスピードに負けないような作家性や作品を出していきたいと、心がけています」
北尾氏「インディーは、いい意味で突拍子もないゲームや斬新なアイデアがウリだと思います。とんがっているゲームが生まれるいい土壌だと思っています。ただ個人的には、ひとりでも多くのお客さんに「おもしろいゲームだね」と言ってもらいたいので、飛びぬけた斜め上過ぎるものではなく、パッと見はそれほどではなくても、実際に触ってみるといままでのものと違うし、スリリングだと思うタイトルを作るのがいいと思います。とにかくコンテンツの消費のスピードがものすごく速くなっているので、コンテンツを生み出す速度を上げるために、思いついたアイデアはすぐ形にしてみること。完成形で出すのが理想だが、とりあえず出して、アップデートしていくのも、今後インディーには重要になっていくのかなと思います」
浅瀬石氏「お金を貯めておくことが、どんな場合でもいちばん役に立つと思います。とりあえず貯金するのがいいと思います(笑)」
(一同爆笑)