開発のキーマンにインタビューを敢行

 プレイステーション4、プレイステーション3用ゲーム『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』(以下、『ジョジョEoH』)の制作キーマンである新野範聰プロデューサー(バンダイナムコエンターテインメント/文中は新野)と中舎健永ゲームディレクター(サイバーコネクトツー/文中は中舎)に“マチ★アソビ”会場でインタビューを敢行。最長で2時間近い待ち時間となった異例のモニター会は、大盛況のうちに終了したが、その裏には開発陣の並々ならぬ情熱とこだわりがあったのだ。本記事では、作品開発のスタンスと、現場の空気を読み解く最新インタビューをお届けする。

『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』開発のキーマンに訊く!【マチ★アソビ vol.14】_01
▲“マチ★アソビ”だけの黄金体験となったモニター会バージョンの『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』は、ファミ通.comライター陣いわく“配信中の体験版とは別ゲー!”とのこと。コアゲーマー揃いのライター陣も納得の出来栄えとなっていたようだ。
『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』開発のキーマンに訊く!【マチ★アソビ vol.14】_02
『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』開発のキーマンに訊く!【マチ★アソビ vol.14】_03
▲“マチ★アソビ”の体験会の熱気にあてられ、ユニークなポーズで撮影に応じる新野範聰氏(右)と中舎健永氏(左)。モニター会の案内や説明を担当していたおふたりは、徳島の気温もあって、汗だくになってしまったとのこと。

――“マチ★アソビ”のモニター会の手応えはいかがでしたか。
新野 今回は、モニター会ということで、遊んでいただいた方の反応や感想を集める場として出展させていただきました。予想していた通り、コアゲーマーの方はもちろん、ゲームをふだん遊ばないような方にも遊んでもらうことができました。
中舎 1時間以上並んで遊んでくれるお客様もいらっしゃったんです。“マチ★アソビ”には、ほかにもいろいろな魅力あるコンテンツがあるなか、我々のブースで足を止めてくれる方が多くいらっしゃいました。お待たせして申し訳ないと思いつつも、今回出展したものに手応えを感じましたね。
新野 じつは、このモニター会に出したバージョンは、“マチ★アソビ”の前日の深夜にビルドを更新したんです(笑)。いいものをお届けしようとギリギリまで粘っていたので、好意的な反応をいただけたのはうれしかったですね。

――新野さん、中舎さんともに、ユーザーの隣に立って説明をしている姿が印象的でした。
新野 私も現場に近いところでゲームをチェックしているので、教える側に立たせていただきました。最初は想像していなかったのですが、教える側にまわることで初めて見えてくるものがたくさんありましたね。お客様に教えながら「ここは難しく感じるかもしれない」と感じた場所などは、今後開発の中で議論してみるつもりです。開発陣にとっても、こういった体験ができるイベントはなかなかないので、有意義な機会になりましたね。
中舎 率直にプレイした感想として好意的な意見が多かったのがうれしかったです。やっぱりお客様からは元気をもらいましたね。自分たちの作っているものを発売前に外に出す機会というのは、それほど多くないので。この反応に感謝しつつも、甘えないように作り込んでいきます。

――“マチ★アソビ”のモニター会に展示されていた体験版は、以前のものとは“別ゲーム”のように感じられるほど、変化が多く見られました。これは体験版の意見などをフィードバックした結果なのでしょうか。
新野 それを感じていただけるとうれしいですね。もはや“体験版との違い”というレベルではないものになっています(笑)。現場のおもしろいものを作ろうという貪欲なスタンスの中に、前回の体験版でいただいたご意見も合わさって、まったく新しいものになろうとしています。前回の体験版は、「こういう作品なんですよ」というお披露目のようなものだったので、これからもいろいろな部分で新しい要素や変化が出てくると思います。
中舎 バンダイナムコエンターテインメントさんとウチの作品は、クラッシュ&ビルド的な作りかたをすることが多いのですが、今回はそういった工程がいままでの作品とは段違いですね(笑)。まずは作って、ダメだと思ったら壊すということも少なくはないです。
新野 ゲームを作るうえで、クラッシュ&ビルドというのは、効率の面もあってあまり推奨されない作りかたなんですね。しっかりと設計書を作って、それに沿って作っていくというのがベストとされる状況が多いんです。ただ、“新しいものを作る”ということを意識したときに、この作品についてはクラッシュ&ビルドという手法を避けては通れないのかなと考えています。最初の設計をおろそかにしているわけではないのですが、ある程度要素が入った時点でプレイしてみたら、じつはぜんぜん違う方向に進めるほうがいいものになりそうだということも起こってくるんですね。今回は、いろいろな声を参考にしながら作品を作り上げていくという道を選びました。弊社の『GOD EATER(ゴッドイーター)』シリーズの手法なども参考にしているのですが、プレイした方から学ばせてもらうことは多いですね。

――体験版でも、今回出展されたバージョンでも、2vs2でのタッグバトルを楽しめました。この2vs2という『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』(以下、『ジョジョASB』)と大きく異なるコンセプトは、どの段階から企画されていたのでしょうか?
新野 2vs2という形は、企画の最初の段階からありました。『ジョジョASB』は1vs1の対戦アクションゲームで、キャラクターどうしの力のぶつかり合いを描いたものなんですが、今回の2vs2の形式では、奇妙な能力を活かした頭脳戦や駆け引き・ドラマを盛り込めるのではと考えていたんです。自分とパートナーとのあいだに生まれる駆け引きや絆を、ドラマを感じながら楽しんでもらいたいという考えがありますね。スタンド能力だけではなく、いろいろな要素を使って戦うのは『ジョジョ』の醍醐味のひとつだと思っているんです。『ジョジョASB』では、ステージギミックという形で取り入れましたが、今回はそれをもっと前面に出してみようと考えて、プレイヤーが能動的に使えるものを多く盛り込みました。ステージについても、その構造を楽しんだり、理解しつつ戦術に加えたりする方向で制作を進めています。

――サイバーコネクトツーの強みのひとつである表現力を活かしつつも、軽妙なテンポの作品になっていると感じました。
中舎 体験版では、ゲームスピードやデュアルコンボなどで、テンポが若干気になるという意見もいただきました。社内でもテンポについては、変えていく必要があるだろうと考えていたので、ゲームスピード以外にもシステム面での調整を加えています。
新野 1vs1形式だった対戦アクションゲームと同じ感覚で、2vs2のバトルに演出を盛り込んでいくと、冗長なものになってしまうというのは最初から意識していたんです。サイバーコネクトツーさんと我々のタッグの長所のひとつに、キャラクターの魅力を引き出す描写や演出があると思っているのですが、それがテンポ面での弱点になってしまわないように繊細にチューニングを進めています。テンポと演出をバランスよく両立させるというのが、今後の開発の目標ですね。

『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』開発のキーマンに訊く!【マチ★アソビ vol.14】_04
▲2vs2という形式に合わせて、演出のありかたを見直したとのこと。『ジョジョ』の魅力溢れる演出がスピーディーに飛び交うバトルが楽しめるのだ。

――最初にふたり対戦と聞いたとき、どこかで遊んだことのある作品に近いものを想像していたのですが、蓋を開けてみると新しさとオリジナリティーに溢れた、いままでにない作品であるということがひしひしと伝わってきました。
新野 せっかく『ジョジョ』でゲームを作るのだから、新しいものをやりたいという考えは最初からありましたね。直接ダメージに結びつかないものの、相手を惑わすようなキャラクターなども、この形式だからこそうまく表現できるのかなと思っています。対戦アクションゲームでは見送った要素なども再度検討しながら、実装するかどうかを決めています。
中舎 カーズの“究極生命体(アルティミット・シイング)”モードなども、この作品ならではの解釈を入れています。対戦アクションゲームで空を飛ぶとなると、戦っていてつまらなくならない範囲で動かすという制約がキツめについてくるのですが、本作では限られた時間であれば多少は逃げ回っていいのかなという考えも調整の際に加えています。もちろん、それだけで勝てるようなバランスにはしませんが、自由度はかなり高くするつもりです。

――スタミナという概念も印象的でした。
中舎 これはまだ調整中の要素なのですが、単調な動きをさせないという意味合いがあります。ただ、スタミナに縛られすぎると不自由に感じるところも多いので、なるべく大らかにコストを落とし込みたいと考えています。
新野 入り口は広く、奥は深くというコンセプトで作っています。要素や操作が増えすぎてしまっても難しさの面が強まってしまいますが、少なすぎるとおもしろさの広がりが感じられないかもしれません。いろいろと試しながら、いい塩梅のところに着地できるように制作を進めています。具体的に言うと、コアゲーマーの方にも興味を持ってもらえるところまで、作り込んでいくつもりです

――キャラクター数についてはいかがでしょうか?
新野 具体的にはまだ言えませんが、発表のときに驚いてもらえるような数を用意しています。同じような動きをするキャラクターがひとりとしていないので、制作はたいへんですが(笑)。

――少し遊んで気づいたんですが、承太郎やカーズに『ジョジョASB』にはなかった技やモーション、要素などが多く見られました。今後発表されるであろう『ジョジョASB』にいたキャラクターたちにも、こういった新しさを期待してもいいのでしょうか?
新野 モーションや要素には、新しいものを多く用意しているので、期待していてください。あと、製品の魅力としてアピールするところではないのかもしれませんが『ジョジョASB』と同じモーションでも、すべて本作に合わせて作り直しています。本作では、キャラクターの動作を見る角度がいろいろ変化するので、同じものを流用するというわけにはいかないんですよね。

――たしかに! ものすごい物量になりそうな予感がして、鳥肌が立ちました(笑)。
新野 ゲーム設計を始めた段階では、『ジョジョASB』の素材で使えるものもあるのかもと思っていたのですが、ゲームコンセプトが決まったときには、全部作り直すくらいのことが必要になるとわかりました。
中舎 見た目だけではなく、キャラクターの性能や技の性質も0から考えていきました。対戦アクションゲームとはセオリーがまったく違いますから、同じ性能の技を載せても、いまひとつ使いにくかったり、見た目だけのものになってしまうんです。そこで本作は、対戦アクションゲームにはない性能や性質を盛り込んでいます。そのうえで技の数がもっとほしいという現場の声も上がってきて、いまは“強化必殺技”のチューニングにも着手しました(笑)。

――“マチ★アソビ”のモニター会でプレイできた、最新のビルドをプレイできる機会は、ほかにも設けられるのでしょうか。
新野 前向きに検討しています。それがどういった機会になるかは未定ですが、発売までにできるだけ多くの人に遊んでもらえる機会を作りたいですね。

――『ジョジョEoH』の発表の際に、『ジョジョASB』のアップデートも行われましたが、今後『ASB』の流れを汲む対戦アクションゲームを作る可能性はあるのでしょうか。
新野 現在は『ジョジョEoH』を皆様にお届けできるよう、全力で制作に当たっていますが、『ジョジョASB』についても皆様のお声があれば、前向きに検討を進めます。あくまで個人的な意見ですが、最新ハードなら多彩なモーションを60fpsで表現するタイトルも作れると思います

――最後に『ジョジョEoH』を楽しみにしている読者の皆さんに向けて、ひと言ずつメッセージをお願いします。
新野 発売に向けて、これからどんどん情報をお見せできると思います。ご意見などは、ホームページから受け付けているので、体験版を遊んで気になる点があれば気軽に送ってください
中舎 皆様に喜んでもらえるような作品に仕上げていきますので、発売までは情報をチェックしつつお待ちください。