KADOKAWA・DWANGO 浜村弘一ファミ通グループ代表による講演“ゲーム産業の現状と展望<2015年春季>”が開催 コミュニティを育てる主役は“ユーザー”

2015年4月10日に行われた講演“ゲーム産業の現状と展望<2015年春季>”をリポート。KADOKAWA・DWANGO 浜村弘一ファミ通グループ代表が語る“コミュニティマネジメント”の重要性とは?

●“コミュニティマネジメント”が今後のカギを握る

 2015年4月10日、KADOKAWA・DWANGO 浜村弘一ファミ通グループ代表(以下、浜村代表)による講演“ゲーム産業の現状と展望<2015年春季>”が、東京・中央区の歌舞伎座タワー セミナールームにて実施された。

 業界アナリスト及びマスコミ関係者を対象とする本講演は、ファミ通調べのマーケティングデータをもとに、ゲーム業界の状況を浜村代表が分析するもので、年に二度開催されている。今回は“ユーザーが主役の時代 ~ヒットの条件はCommunity Management~”をテーマに、日本と世界の市場の概況や、プラットフォーマーとコンテンツホルダーの戦略についての解説が行われた。

●世界のモバイルゲーム市場をけん引する日本

 冒頭で語られたのは、スマートフォン用のゲームアプリのさらなる市場拡大について。浜村代表は、2015年1月31日~2月1日に行われたイベント“闘会議2015”にて行った、来場者アンケートの集計結果を示した。来場者の83%が、毎日、もしくはほぼ毎日ゲームをプレイする“ヘビーユーザー”。そんな彼らのうち、76%が基本無料のスマートフォン用アプリを遊んでいるという。そう、“ライト層が遊んでいる”と思われがちなスマホアプリに、多くのヘビーユーザーがいることが明確になったのだ。

 また、世界の中で見ても、日本のモバイルゲームの市場規模は大きく、アプリの収益率も高い。モバイルゲームに関しては、日本は世界の先を行っている、と言える。だが、好調なのは以前から人気のあるタイトルで、新規のタイトルはなかなか成果を挙げられていない。浜村代表は、モバイルゲーム市場は競争の激しい“レッドオーシャン”であり、その激しさはさらに増している、と語った。

●多重的に収益を上げる“コミュニティマネジメント

 拡大するモバイルゲーム市場。一方、家庭用ゲーム機は、かつてプレイステーション2やWiiが盛り上がっていたときほど普及台数は伸びておらず、市場規模も縮小している状況だ。とくに日本は、北米や欧州に比べて最新の据え置きゲーム機が普及していないため、“リッチな大作ゲームを大ヒットさせて収益を得る”ことは年々難しくなっている。

 そのため、プラットフォーマーはビジネススキームを変えざるを得ない状況になった、と浜村代表は解説する。かつてプラットフォーマーは、“ハードを販売して普及させ、ソフトのロイヤリティーで収益を上げる”という形をとっていた。だがいまは、据え置きゲーム機、携帯ゲーム機に加え、スマートフォン、PC、テレビなどでもコンテンツ・サービスを提供し、“ユーザーのIDを獲得し、そのユーザーのコミュニティに、ゲーム・音楽・映像・電子書籍などのコンテンツや各種サービスを投入し、収益を上げる”という形にシフトしている。

 ソニーは“Sony Entertainment Networkアカウント”を持つユーザーのコミュニティを運営し、マイクロソフトは“Xbox Liveアカウント”を持つユーザーのコミュニティを運営している。

 任天堂だけは一種独特の路線を歩んでいるようだ。ディー・エヌ・エーと業務提携を行い、スマートデバイスとゲーム専用機をつなぐ一体型メンバーズサービスの開発を進めている。ここで作られたコミュニティから、スマホ上でも収益を上げることを考えているとは思う。しかしそれ以上に、自社ゲーム専用機に送客を行うことを重要視しているように思える。とはいえ、任天堂のIPに集まるコミュニティのファンをマネジメントして収益を上げていくという意味では、大きな枠組みの中、他のプラットフォーマーと似た方向性を歩んでいるのではないだろうか。

 そして、コンテンツホルダーもまた、コミュニティマネジメントを行う形へと移行している。かつては、“普及しているハード用のソフトを作り、それを販売する”ことで利益を得ていた。だがいまは、家庭用ゲーム機だけではなく、スマートフォン、PCなど、“さまざまなプラットフォームで、ひとつのIPのコンテンツを提供。そのIPのファンのコミュニティを作り、月額課金やダウンロードコンテンツなどで収益を上げる”形へとスキームを変えている。

●コミュニティを育てるためのふたつの方法

 プラットフォーマーにとっても、コンテンツホルダーにとってもカギとなる“コミュニティ”。講演の最後に、浜村代表は、コミュニティを育てる方法をふたつ挙げた。

 ひとつは、“メディアミックスの仕組みを仕込む”。例として挙げられたのは、『妖怪ウォッチ』の一大コミュニティを築き上げたレベルファイブだ。先日、レベルファイブは新規IP『スナックワールド』を発表したが、このIPはニンテンドー3DSとスマートフォンでのゲーム作りが進められているほか、CGアニメ、コミック、映画の制作も予定されている。『妖怪ウォッチ』に続く大ヒットIPになるか、早くも注目が集まっている。

 もうひとつは、“コミュニティの主役の力を借りる。つまり、ユーザーの力を借りる”。ゲーム実況者や、eスポーツのプレイヤーや、UGC(User Generated Content。ユーザーが生み出したコンテンツ)などの力だ。『マインクラフト』などは、まさにユーザーの力で育ったIPだと言える。

 ユーザーが主役となっていくゲーム業界。浜村代表は、「各地に飛び散った主役(ユーザー)のおかげで、ゲーム市場は結果的に、さらに大きなものになると思います。大きく成長するオンライン市場は、立ち止まっている家庭用ゲーム機の市場を補って、さらにユーザーの力を借りて、大きな市場を今後作っていくことになるのではないか」と展望を語り、セミナーを締めくくった。

●記者の目

 おもしろいゲームを作り、そのパッケージを大量に売ることで収益を上げる時代は終わった。だからといって、「低予算でゲームを作れるモバイルゲーム市場ならば利益を上げられるはず」と画策しても、新規タイトルはなかなかランキング上位に食い込めない。“コミュニティをしっかり運営しなければ生き残れない”という現状は、ゲーム業界の人間にとって、厳しいものに違いない。浜村代表も、「スマートフォンの普及が止まり始めれば、いまあるパイの奪い合いが起きる。現状もレッドオーシャンであるのに、家庭用ゲーム機のそこにIPが入ってくることで、熾烈な戦いがくり広げられることは間違いない」と、スマートフォン市場を含む業界全体の競争が激化すると述べている。しかし、“プラットフォームの枷がなくなった”とも言える状況は、これまでにない、新しい形のコンテンツやサービスが生まれる大きなチャンスだとも考えられる。さらなる過渡期を乗り越える力、その時期だからこそ生まれ得る“何か”を持ったものこそ、ゲーム業界を導く大きなヒットコンテンツになるだろう。