開発の経緯から今後の展開まで、忍者増田がいろいろ突っ込んで聞きました!

 世界三大RPGのひとつ『ウィザードリィ』と、“ローグライクゲーム”が融合した『ウィズローグ -ラビリンス オブ ウィザードリィ-(以下、『ウィズローグ』)がスマートフォン用ゲームアプリとして登場し、約3ヵ月が経ちました。そろそろ頃合いもいい感じだろうと、ディレクターの前田明彦氏にインタビューを決行。インタビュアーは『ウィザードリィ』大好きフリーライターとして知られる忍者増田。温和な前田氏を相手に、制作の経緯や今後の展望をうかがうのはもちろん、個人的な要望まで押しつけてきましたとさ。最後まで読んだら、忍者増田の連載“ウィズローグでござるよ”もチェックしてあげてね。

『ウィズローグ』のディレクター前田明彦氏を直撃 2大RPGが合体した、まさに“東映まんがまつり”!?な本作の魅力に迫る_04

前田明彦氏

【プロフィール】
タイトー所属。『ウィズローグ』のディレクターを務める。

■前田さんへの『ウィザードリィ』アンケート
・好きなシナリオ:ファミコン版『1』と『2』、プレイステーション版『5』(『ニュー エイジ オブ リルガミン』)
・好きな種族:エルフ
・好きな職業:侍
・好きなアイテム:Ring of Death
・好きなモンスター:MAELIFIC
・好きな呪文:マピロ マハマ ディロマト

キャラクターをフィギュアという形状にした理由

――まずは、『ウィズローグ』を作ることになった経緯を教えてください。

前田 2013年の秋ぐらいに、“ローグライク”のゲームを作ろうと思っていたんですよ。じゃあ、モチーフは何がいいのかと考えたときに、最初は“ローグライク”のシステムのなかにホラー要素を入れたゲームを作ろうということで動いたんです。でも、個人的にはそれがピンとこなかったんですね。そのとき、以前版元のGMOゲームポット様とのあいだでお話をしていたことがあったのを思い出して、「これだ!」と。

――そこで『ウィザードリィ』と“ローグライク”を合体させることを考えたわけですね。ということは、やはり前田さんご自身も『ウィザードリィ』が好きだったのですね?

前田 もちろんそうです。で、GMOゲームポッドさんに詳細をご相談したら、快諾していただけたんです。そのあたりがスタートラインです。

――最初に聞いたときはやはり驚きましたよ。『ウィザードリィ』と『ローグ』が合体するのって、東映まんがまつりで、グレートマジンガーとゲッターロボが手を組んだみたいなものじゃないですか。

前田 はははは(笑)。

――前田さんは“ローグライクゲーム”もお好きだったんですか?

前田 僕は“ローグライクゲーム”より『ウィザードリィ』の人です(笑)。ほかのスタッフに“ローグライクゲーム”が好きな人が多かったので、そういう人たちからおもしろさと意見を聞きながら、そこに『ウィザードリィ』のエッセンスを落とし込んでいきました。

――あんなクセの強いゲームどうしを合わせるなんて、いざ取りかかるとたいへんだったと思います。どちらの魅力も全部採り入れたくても、そうはいきませんし、そのあたりの取捨選択はどのようにしていったのでしょうか?

前田 まず、ゲームルールはできるだけ“ローグライク”に寄せようと思いました。その上に乗っかるフレーバーは、極力『ウィザードリィ』という感じで進めました。どっちを採ったらいいか迷う細かい要素はたくさんあったんですけど、ここはゲームのテンポとして“ローグライク”にしようとか、ここは『ウィザードリィ』のルールを踏襲しようとか、その都度判断していました。

――最初のユーザーの反応はきびしいものが多かったようですが、そのあたりはどう考えていましたか?

前田 「これは『ウィザードリィ』ではない!」という意見は来るだろうなあというのは、ある程度予想はしていました。すごく原作が好きな方たちから見れば、どういうカタチでやったにせよ、そういう意見は受けるだろうなと思っていましたね。

――『ウィザードリィ』を出すどのメーカーも通る道ですね(笑)。しかも、何をもって『ウィザードリィ』とするかというのが、拙者を含めた『ウィザードリィ』マニアって、ひとりひとり違ったりするんで。本作ではまずゲームを始めるにあたって、『ウィザードリィ』のようなキャラクターメイキングがありませんね。

前田 最初は、ポイントを割り振ってキャラメイクをする要素も導入していたんです。でも、『ウィザードリィ』ファンがメインターゲットではありますけど、あんまりガチガチに『ウィザードリィ』寄りにしてしまうと、ファン以外の方がついてこられないだろうと。1ポイント1ポイント割り振ってキャラクターを作るのはけっこうな手間になってしまうという結論に達しました。

――そこで、獲得券や棺桶からキャラを入手するカタチになったと。

前田 そして、わりと早い段階から、キャラクターはフィギュアっぽい見た目にしようという考えが、僕のなかにあったんです。昔のファミコン版『ウィザードリィ』が発売されたころの『ウィザードリィ』のフィギュアが印象的で、ああいうカタチにしようと。

――ありましたね(笑)。懐かしい。

前田 ポイント割り振りのための数値に対して、お客様は価値を感じてくれるのかという部分は正直、自信がなかったというか、「それってアリなの?」と疑問があったんです。見た目とモノの価値がハッキリしているフィギュアという形状で商品として出てくるのであれば、しっくりくるというところで、いまの精鋭獲得・冒険者獲得というカタチになりました。

――拙者は、まだいろんなアイテムが登場してないからかもしれないですけど、いまのところ、宝箱からアイテムが出てくるより、棺桶(キャラ)が出てくるほうがうれしいですね。

前田 棺桶が出た瞬間に、「よし、絶対地上に持って帰ろう!」と思わせたいという狙いはこちらにもあります。

――キャラクターを宝箱から発見してワクワクするという、『ウィザードリィ』とはまた違った楽しさがありますね。ただ、キャラメイクが自分でできないぶん、転職のハードルは上がっていますけど。『ウィザードリィ』なら転職しやすいようにポイントを割り振れますし。

前田 そうですね。そういう意味では、レベルアップしたときの特性値の変動が小さかったかなとは思います。そのあたりは、もう少し調整してもいいかなと考えています。

――さらに『ウィザードリィ』なら、レベルアップして特性値がひとつしか上がらなかったりしたときは、絶対リセットしたじゃないですか(笑)。それができないというのも転職を難しくしていますよね。

前田 はい。じつは、特性値が上がり過ぎるとすぐにマックスになってしまうのではないかという理由で、上昇を抑え気味にしたというのはあります。ただ、抑える量が適切だったかというと、一考の余地はあると思っています。

『ウィズローグ』のディレクター前田明彦氏を直撃 2大RPGが合体した、まさに“東映まんがまつり”!?な本作の魅力に迫る_01

装備品の入手・つけ替え修正はリリース直後に決断

――多くのユーザーが指摘していたとおり、装備品の付け替えができないのは拙者も最初「あれっ。アイテムを探して、つけ替えられないの?」って思ったので、修正されたときは安心しました(笑)。

前田 当初、僕もつけ替えられたほうがいいかなと思っていたんですけど、コアな『ウィザードリィ』ファン以外の方もプレイすることを考えると、最初からあれもこれもできるというよりは、ある程度簡略化したほうがいいだろうと。より強くなりたいのであれば、より強いフィギュアを手に入れればいいという結論で、そこは『ウィザードリィ』ファンからの反発を買う覚悟で、アイテムとフィギュアは切り離せなくしたんです。

――ところが……。

前田 はい、こちらの想像以上にそこが突っ込まれてしまって(笑)。「こんなのは『ウィザードリィ』じゃない!」と指摘してくれている内容が皆さんバラバラな中、共通して声が大きかったのが装備品つけ替えの話だったんです。でもそこは、“ローグライク”の視点からでもそうだったのかもしれないです。“ローグライク”もやはり、地下でいろんな武器を見つける楽しさがあったと思うんで。いま考えると、そういった部分をオミット(除外)してしまったかなという反省点があります。なので、けっこう大きな決断でしたが、リリースしてすぐに、武器と盾をつけ替えられるよう修正しました。

――あの速やかな修正はプレイヤーとしてありがたかったです。

前田 そのときに、鎧をどうするかというところがいちばん悩んだところです。

――鎧だけはフィギュアとして一体化したものと考えたということですね。これはたとえば、(まだ登場してないけど)聖なる鎧のようないい鎧が欲しかったら、フィギュアといっしょに手に入れてくださいということですよね。

前田 そうです。『ウィズローグ』において、鎧を手に入れてつけ替えられるようにすると、冒険者獲得の価値がほぼなくなってしまうと。

――『ウィズローグ』の制作において、キャラクターをフィギュアで見せるという形式は、前田さんのもっともこだわったところのひとつだと思います。そのほかにも、とくにこだわった部分、自信のある部分を教えてください。

前田 フィギュアのほかには、演出面ですね。たとえば、キャラクターの獲得でダイスを振る演出は、『ウィザードリィ』が好きな層の方たちには刺さるんじゃないかと。あとは、6人パーティーをどう処理するかという問題。6人をまとめてひとつのキャラクターとして扱い、そのなかでヤリクリをするというところはうまくいったかと思います。

――そうですね。“ローグライクゲーム”ベースなので、6人を一体化させてどう戦わせるかという部分では苦労されたんじゃないかと思います。

前田 まだ魔術師と僧侶の弱さがクローズアップされていますし、100パーセントとは言い切れないんですけど、6人をどう組み込んでパーティーを作るかというところで、お客様ごとの工夫や個性が出てくるところは目論見通りいったかと思います。

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パーティーにモンスターや特定キャラクターが仲間入り予定!

――いまの段階で、ユーザーの感触はどうですか?

前田 まだすべての要望に応えられてはいませんが、武器と盾がつけ替えられるようになってから、お客様の反応はよくなってきたかなと思っています。最初は凹みましたけど(笑)。

――これからの『ウィズローグ』の展望はどうでしょう?

前田 お客様の要望って変わってくると思うんですね。たとえば、今後『ウィザードリィ』ファンじゃないお客様が増えてきたときに、また違う方向に行く可能性もあります。キャラクターひとつとっても、いまはわりと硬派な方向で進めています。萌えキャラがいないとか(笑)。コアな『ウィザードリィ』ファンに向けて、プレイヤー側のキャラクターを立てたくなかったんです。でも、今後のお客様の反応で、いろんな要素を採り入れていく可能性があります。

――では今後、『ウィズローグ』はいろいろ変わっていく可能性があると?

前田 そうですね。アップデートができるので、お客様の要望にはなるべく応えていきたいと思っています。

――なるほど。みんなタイトーさんにどんどん要望を出そう! でも、ガチガチの『ウィザードリィ』ファンの意見を聞くのか、初心者の意見を聞くのか、作り手としては難しいところですよね。

前田 最初に作っているときも、『ウィザードリィ』ファンに歩み寄れば寄るほどコアなゲームになってしまうし、ライトなお客様の感覚とは乖離してしまうんじゃないか、というのは葛藤でしたね。

――拙者は作り手をかばうわけじゃないですが、「こんなの『ウィザードリィ』じゃないじゃん!」って言われても、「だって『ウィザードリィ』じゃないしなー」というのは、思うんですけどね(笑)。今回タイトーさんが作ったゲームは、『ウィザードリィ』ではなく『ウィズローグ』ですよね。あと個人的には、ベースを“ローグライクゲーム”にしたのはいい選択だなぁと思います。ベースを『ウィザードリィ』にすると、『ウィザードリィ』色が濃すぎちゃうような気がするんです。それはそれでおもしろいのかもしれませんが、前田さんのやりたかったチャレンジとは違うんじゃないかと生意気ながら思ったり……。

前田 ありがとうございます(笑)。

――ほかに具体的な今後の展開で、教えてもらえるものはありますか?

前田 フェローズがいま、あまり役に立っていないと思う人も多いと思うんですが、フェローズとともにひとつのダンジョンを攻略する要素を入れる予定ではあります。ソーシャルゲーム的な言いかたをすると、レイド戦ですね。自分とつながりのあるフェローズといっしょに挑戦すると。

――なるほど。いまは、遭遇した人がスキルをつけてくれるだけですものね。そういえば、モンスターの仲間入りというのが楽しみなんですけど、これはどういう……?

前田 まず、何かしらのカタチで、プレイヤーがモンスターを手に入れる手段を設けます。そのモンスターを、パーティーのなかに組み込んで使うことができると。

――じゃあ、召喚獣のようにパーティーの後ろをついていくというのではなく、6人の中に編入するということですね。となると、レベルアップして成長もすると?

前田 一応、その方向で考えています。また、ストーリー上で登場するキャラクターも、将来的に仲間入りできるようになる予定です。

――おお、それは大きいですね。あと、拙者の要望をいくつか言わせてください。売ったアイテムをボルタック商店に並べるのは難しいですか?

前田 並べたいとは思っています(笑)。大改造になっちゃうので、約束はできないのですが。

――わかりました(笑)。アイテムやモンスターの図鑑の導入はどうでしょう?

前田 それは、いつまでにとは言えませんが、入れる予定です。ただ、図鑑を入れるというのは、データをすべてさらけだすということになるわけで(笑)、もう少し数が登場してからということになりますね。

――なるほど。楽しみにしています。現在、君主と忍者に転職できませんが、これはいつぐらい解禁に?

前田 それは、そんなに遠くないうちに実現します。

――おお。心強いお返事です。

『ウィズローグ』のディレクター前田明彦氏を直撃 2大RPGが合体した、まさに“東映まんがまつり”!?な本作の魅力に迫る_03

前田 あと、村正、手裏剣、聖なる鎧などのアイテムも、すぐにとは言えませんが、将来的には登場させます。

――おおっと、先に言われてしまいました(笑)。では最後に、ユーザーにメッセージをお願いします。

前田 なかなかきびしいご意見をいただいたところから本作はスタートしました。とくに、Android版から始めたお客様は最初の時点で離れてしまった方も多いんじゃないかと思います。ですが、今後もお客様の意見を聞きながら、変えるべきところは変えて、よりおもしろいゲームにしていこうと思っていますので、最初の時点で見切りをつけてしまった方も、一度戻ってきて遊んでいただけるとうれしいなと思います。