『Ingress(イングレス)』のコンセプトは“世界をゲーム盤に”――ジョン・ハンケ氏&川島優志氏が“DIEC”に登場

本日2015年3月29日(日)、京都リサーチパークにて開催された“Digital Interactive Entertainment Conference(DIEC):a decade later and beyond ~デジタル・エンターテイメントの未来~”。“京都ゲームカンファレンス”では、全世界を巻き込んだムーブメントに成長した『Ingress(イングレス)』の関係者が登壇した。

●『Ingress(イングレス)』が“ほかのゲームと違う”理由とは

 本日2015年3月29日(日)、京都リサーチパークにて開催された“Digital Interactive Entertainment Conference(DIEC):a decade later and beyond ~デジタル・エンターテイメントの未来~”。“京都ゲームカンファレンス”では、全世界を巻き込んだムーブメントに成長した『Ingress(イングレス)』の関係者が登壇した。

 2012年よりGoogleのグループ企業、ナイアンティック・ラボによってリリースされたスマートフォン向けゲーム『Ingress(イングレス)』は、GPSを活用した、いわば“陣取りゲーム”。ユーザーはふたつの陣営に分かれ、地球上のすべて(!)を舞台に“陣取り”をくり広げる。本作は全世界で1400万ダウンロード以上を記録し、またリアルイベントに多くのエージェント(ユーザー)が参加すなど、仮想空間での闘争が現実を巻き込んだ一大ムーブメントとして加速中。“DIEC”前日の3月28日にも京都で公式イベント“SHONIN”が開催され、参加者は公称で5600人だが、関係者によるとさらに多くの人が足を運んでいたようだ(ちなみにこの人数は史上最大規模だとか)。

 今回“INGRESS UNITES KYOTO”と題されたカンファレンスには、ナイアンティック・ラボより『Ingress(イングレス)』のUIデザインや日本展開を担当する川島優志氏、そして『Ingress(イングレス)』生みの親である同社創始者のジョン・ハンケ氏が登壇。自身もヘビーユーザーであるゲームデザイナー・飯田和敏氏らとともに、その現況や取り組みを語った。


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▲ジョン・ハンケ氏

▲川島優志氏

 カンファレンスは講演とパネルディスカッションで進行。ハンケ氏は本作を「ゲームとして楽しむだけではなく、自治体のために役立つことも多い」と語り、リアルにある“場所”と結びつく本作だからこその展開を語った。スマートフォンゲームながら、ときには山に登り、海を越え……と“外に出る”ことが必要不可欠である本作は「知らない人に説明するのは困難」(ハンケ氏)。そのため、本作を解説する紹介ビデオが上映された。


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 ハンケ氏、川島氏による本作の解説は、ときにウィットを交えながら進む。これまでにユーザー(エージェント)が歩いた総距離は1億5千万キロにもおよぶといい、これは地球と太陽の間の距離と同等(!)。日本人エージェントの活動は、いまや世界で1、2位を争うほどだという(ちなみに先日、本作は日本語表示にも対応)。エージェントの活動はクリエイター陣の想像を超えた規模へと広がり、ときにはヘリコプターをチャーターしたり、アラスカへと赴いたりと、“人々が外へ出る”本作のコンセプトが見事に機能していることを証明する。

 また、ゲームと物語の融合も本作の重要なテーマだ。スマホユーザーは頻繁にアプリを切り替えるため、「ゲーム内そのもので物語を語るよりも、SNSで物語を展開する」デザインになっているとハンケ氏は語る(一方でわかりやすいトラディショナルな形式――マンガやノベルといった媒体でも物語は展開)。実際、エージェントたちはLINEやTwitter、フェイスブックなどをさまざまに使いこなしながら物語を楽しんでいる。


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 2013年より開催されているリアルイベントも、本作の物語にとって欠かせない要素のひとつ。しかしこれはクリエイター陣が最初から意図していたものではなく、“発見した”ものだという。最初のイベントは2013年1月、アメリカ・カホキアで開催されたもの。これ以降、エージェントの実際の行動が物語に影響を及ぼすという展開が幕を開けた。いまでは3ヵ月にひとつのシリーズが展開し、そこで行われたイベントの結果によってストーリーが分岐するという形がとられている。日本でのイベント展開は2013年8月よりスタート。提示されたスライドを見れば、その参加者の増えかたは一目瞭然だろう。


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 世界各地で行われるイベントで、エージェントが国境を越えて協力し合う。この驚くべきコミュニケーション・オペレーションは、「世界の成長につながるのではないか」とハンケ氏は語る。実際、ハンケ氏はイスラエルとレバノンの若者が第三国でポータルキーを受け渡し、互いの国をまたぐフィールドアートを描いたエピソードを印象深いエピソードとして挙げており、こういった情勢をも越えた連携が生まれることが、本作最大の特徴とも言えるのではないだろうか。

 ハンケ氏は『Ingress(イングレス)』の未来像を、「APIを使って、さまざまなデベロッパーがその上でゲームを作れるようにしたい」と語る。けれどその根底にあるのは、やはり「ユーザーが外にでるためのものを、さまざまな人が作っていけたら」というアドベンチャー精神だ。今後、『Ingress(イングレス)』のように、全世界を巻き込んで現実とリンクするタイトルが生まれることに期待したい。


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▲「日本人エージェントはクリエイティブ」とハンケ氏。この日、ハンケ氏が着用していたTシャツ&スカジャンも日本人エージェントが手掛けたもので、ハンケ氏いちばんのお気に入りはポストカードだとか。