ハイレゾって何なんだ!? オーディオ初心者がソニーのアニメ好き担当者に聞くハイレゾ入門インタビュー

昨今、よく耳にするようになった“ハイレゾ”について、ファミ通.com編集部の編集者が、ソニーのアニメ好き担当者にオススメ機器などをいろいろ聞いてみた。

●あなたの知らないオーディオの世界――沼はすぐそこまで来ています

 昨今、よく耳にするようになった“ハイレゾ”という言葉。ちょっと調べてみれば、これが“High-Resolution”の略称で、音楽用CDを超える音質の音楽データの総称として、ハイレゾオーディオ、ハイレゾ音源などという言葉が使われていることはわかる。……わかるのだが、言葉の成り立ちはわかったものの、いままで自分が聴いていた音源とどこが違うのか? 何を注目して聴くと違いがわかるのか? それを体感するためには、どんな機器が必要なのか? やっぱり、わからんのである。わかったような気になっていただけなんである。

 というわけで、実際にどこが違って、どんな機器がオススメなのか、ソニーの担当者に聞いてみた。お相手は、ファミ通.comで配信中のWebラジオ『今井麻美のSinger Song Gamer』第299回に出演していただいた、ソニーのビデオ&サウンド事業本部に所属する井上卓也氏(文中は井上)。聞き手は、『今井麻美のSSG』を担当する武藤先輩(文中は武藤)と、『原由実の○○ラジオ』を担当する北口徒歩2分(文中は北口)が、オーディオ初心者代表として務めさせていただいた。取材者が初心者なので、できうる限り専門知識や専門用語を省いて、オーディオ知識がなくてもわかるような噛み砕いた言葉を選んで語っていただいたハイレゾ初心者向けの内容となっているので、ぜひ、興味がある方はチェックしてほしい。また、実際に、今井麻美さんの楽曲で試聴をしている場面もあるので、同番組のリスナー諸氏は、ぜひチェックしてほしい。

【井上氏出演Webラジオ】
※『今井麻美のSSG』第299回

■インタビューラインアップ
・きっかけは、ソニーグループで密かに暗躍する謎の組織
・けっきょく、ハイレゾって何ですか?
・どんな曲を聴くとすごさが伝わるのか、教えて!
・オススメのハイレゾ機器は?
・ヘッドホンとイヤホンもオススメをチェック!
・インナーイヤーのオススメモデルは?
・ハイレゾ音源はどうやって買うの?
・実際に聴いてみようのコーナー
・井上氏のアニメライフ


■きっかけは、ソニーグループで密かに暗躍する謎の組織

ハイレゾ/highreso001

■ソニー ビデオ&サウンド事業部
井上卓也氏

北口 では、さっそく、今期のオススメアニメは何ですか?
井上 えっ、いきなりそんな話からなんですか?(笑)。
武藤 ぜひ伺えればと(笑)。
井上 えーっと……、今回ハイレゾの話をするんじゃないんでしたっけ?(笑)。
北口 そうでした(笑)。では、まず井上さんがどんなお仕事をされているのかを、伺えれば。
井上 ソニーに入社してから3年目になるのですが、最初の1年半は現場営業を行っていました。“特約店営業”と言いまして、“特約店”というのは、いわゆる大型量販店の……。
北口 ああ、家電量販店などのことですね。
井上 そうですね。そういったお店への営業をやっていました。その後、1年半が経過したころに、“V&S事業部”という、いま所属している部署に異動しました。この部署ではヘッドホンを担当していまして、エリアに関しては、ブラジルやメキシコなどの国を担当しています。それらの国で、どうやってマーケティングしていくか、どういったラインアップの商品で攻めていくかという戦略を練っていくような仕事なんですね。
北口 海外向け、とくに南米向けの展開を担当する部署なんですね。
井上 その仕事を本職としつつ、それとは別に、ハイレゾのコンテンツを広めるための活動を行っています。国内でハイレゾのコンテンツがまだまだ広まっていないので、ソニーの中でハイレゾのコンテンツを広めるためにレーベルさんを増やそうという企画が上がりまして。クラシックやポップスといったカテゴリーの中のひとつに、“アニソン”があったのですが、社内で「誰かアニソンに詳しい人間はいないのか?」となった際に、僕しかいなかったという(笑)。
一同 (笑)。
井上 それで、僕がアニメやゲームといったカテゴリーのコンテンツを増やすために、いろいろなところに企画を持ち込んでいるんです。でも、もともとアニメやゲームが好きなので、すごく楽しくやらせていただいていますね。具体的には、たとえばアニプレックスさんがソニーグループのひとつなので、アニメのプロモーションといっしょにハイレゾのプロモーションもやらせていただいたりとか。こちらから機材を提供をさせていただいて、お客さんが試聴できる環境を作ったり、ソニーミュージックと「コンテンツをいっしょに増やしていきましょう」という話をさせていただいたりしていますね。
北口 なるほど。ソニーの中には、あまりアニソンに詳しい方はいなかったということなんですか?
井上 いや、じつは、ソニーグループ全体をまたいでのオタクの会みたいな会合がありまして。みんなの仕事が終わり始める20時くらいから、こっそり押さえておいた会議室に集まって、終電の時間まで延々とアニメの話をしてるという。
一同 (笑)。
武藤 そんな会合があるんですね(笑)。
井上 そうなんです。その中で自分が担当している企画だったり、アニメとのコラボ提案をプレゼンしたりもしています。誤解のないように言っておくと、みんなで集まってただただアニメ談義をしているだけではないんです(笑)。それこそ、カメラだったり、ヘッドマウントディスプレイだったり、いろいろな商品を担当している部署のアニメ好きの人間が集まって、ひたすらアニメについて語りながら、お互いの情報を持ち寄ることで、いろいろなアイデアを出し合っているという感じですね。
北口 なるほど。けっこうそのつながりは、アニメやゲーム業界にとっても、注目したいところですね(笑)。どんな企画やコラボが出てくるのか楽しみです。


■けっきょく、ハイレゾって何ですか?

北口 いまお話に出てきたので、さっそくハイレゾについて伺えればと思います。まずは、「ハイレゾって何だ?」という、超初心者的な質問からさせていただければ。
武藤 まぁ、ぶっちゃけ、僕らもぜんぜんわからなくて(笑)。
井上 簡単に言うと、ハイレゾというのは、新しい音楽のフォーマットという捉えかたをされることが多くて、一般的にはCDよりも容量が多いフォーマットであるがゆえに、音質もそれだけ詰まっているという認識をしていただければ問題ないと思います。なぜ容量が多いのかというと、音というのは波なんです。高い音は小さい波で、大きい音は大きい波で、というような。
北口 理科で勉強するやつですね。
井上 それを実際に録音するとなると、デジタル化しないといけないんですね。どれだけ波をきめ細かく忠実にデータ化するかというのは、けっきょくのところ機材と容量次第なんです。mp3は、容量を小さくできることが長所なんですが、ちょっと波が粗めになるんですよね。圧縮して、持ち運びやすくすることを重視したものなので。CDというのは、mp3とハイレゾのあいだみたいな感じで、きめ細かく録るんですけど、容量はCDの板の範囲内に収めないといけないので、あまり大きくはないんです。
北口 音楽CDに入る容量は、だいたい650メガバイト程度ですよね。
井上 そうですね。だから、CDも圧縮したデータではあるんです。ただ、現在はインターネットが発達して、CD以上の音質のデータをダウンロード配信することが可能になったので、圧縮することのない、マスターで出したデータというのを、そのままユーザーに届けられるものとして、ハイレゾが出てきたわけです。
北口 なるほど。
井上 だから、音の波が、よりきめ細かく収録されているものになります。
北口 たとえば、映像だと、撮影した動画をmp4に圧縮すると、容量が小さくなるけど、画質が劣化するというのと同じ感覚ですか。録ったそのままの音質を届けられるのが、ハイレゾみたいな。
井上 そうですね。けっきょく音質というのも同じで、ビデオ、DVD、Blu-rayと進化してきたように、CDもつぎのステップにいくという感じです。
武藤 具体的には、どんなところが違って聴こえるんですか?
井上 たとえば、さきほどCDやmp3にする際に容量を小さくするために圧縮しているという話をしましたよね。じゃあ、圧縮するときに何をどう圧縮しているかというと、高い音と低い音を切り落としているんです。人間には“可聴域”というものがあって、これは人間が聴くことのできる音のことで、ある一定の周波数帯域は聴こえるだろうと言われている音があるんです。CDやmp3では、そこは残しつつ、可聴域以外は聴こえないわけですから切っちゃっているんです。完全に切り取っているわけではないですが、できるだけカットして容量を小さくしているわけです。ただ実際には、人間の可聴域を超えていても、その音の雰囲気などが伝わるんですよね。だから、CDやmp3で切られがちな、高い周波数帯域を超えてる部分を、あえて切らずに届けることで、スタジオの現場の雰囲気だったり、歌っている人の表情だったりというものが、よりわかりやすくなるわけです。より自然な音になるという感じですかね。
北口 そのあたりも画像などと同じなんですね。JPEGというフォーマットだと、人間に見えづらい色などを間引いたりして圧縮しているわけですけど、それと同じで、これまでは人間に聴こえづらいところをカットしていたけど、収録したそのままの音が聴ける容量にすることで雰囲気も含めて、聴いてもらうと。
武藤 ただ、そういう話を聞いてしまうと、逆に「それって勘違いじゃないの?」という気にもなるんですが……。だって、そもそも人間の耳では聴こえないものなんですよね? 実際には“すごく耳がよくないと、違いはわからないんじゃないか?”と。
井上 その点に関しては、CDなどと聴き比べてもらえるのがいちばんわかりやすいですね。先ほどは可聴域の話をしましたが、よりわかりやすい部分というのは、“音の分離感”です。ハイレゾの特徴のひとつなんですけど、mp3などで音楽を聴くと、左にドラムがいて、右にギターがいて、みたいな部分はわかるんですが、けっきょく2次元的な音になるんですよね。どっちが前にいて、どっちが奥にいるかまでは、わからないと思います。音楽って、アニメのセル画みたいな感じで、いろいろな音を重ねているんですよね。そうして立体感を出すという特徴があるのですが、その点がハイレゾだと、すごくわかりやすいんです。だから、いままでは平面だったものが、ギターが右にいて、ボーカルが真ん中にいて、ドラムが奥にいて、という奥行きまで伝わるというのが、ハイレゾの特徴のひとつだと思います。今井麻美さんのラジオに出演させていただいた際にもお伝えしたのですが、ちょっと目をつぶると、ボーカルの表情が見えるとか、場所がわかるとか、そういった点がハイレゾの場合、すごくわかりやすいんですよね。ですから、そういった楽しみかたもあるので、さっき仰られたような「耳がよくなきゃわからないんじゃないの?」ということはありません。いろいろな楽しみかたができるものだと思います。
北口 なるほど。確かに、ボーカルの存在感みたいなものが、増している印象はあります。それと、音がクッキリしている印象ですね。専門的なことは、まったくわからないんですけど(笑)。
井上 一体感が出るという捉えかたですね。
武藤 それは、CDのころにはなかったものを感じられるようになっているということですか?
井上 CDのころになかったというと語弊があるんですが、よりわかりやすくなっているというのが正しいと思います。データ量もCDの4~5倍くらいになっているので、細かい特徴がわかりやすくなっていると思っていただければ。そもそも、スタジオで収録しているものが、そのまま聴けるというのがハイレゾなので、いままでは削られていたものが、ようやくそのまま届けられるようになったという感じですね。
北口 音楽制作をしている人や、音楽に携わる人たちが使っているような機器ではなく、一般的なユーザーが使うような機器で、スタジオと同じものを体感できるようになったということですか?
井上 そういうことですね。


■どんな曲を聴くとすごさが伝わるのか、教えて!

北口 実際に、どんな曲を聴くとハイレゾのよさがわかりやすいか、ということも知りたいです。
井上 楽曲ごとに特徴ってあるじゃないですか。強い音圧で攻めてくるような曲だったり、逆に、しっとり聴かせる曲だったり。ハイレゾになってとくに違いがわかりやすいのは、繊細なバラードですね。データを圧縮して音質が劣化してしまったときに、消えてしまうような音を、ハイレゾはしっかりと拾って伝えてくれますから。後は、音の広がりですね。アカペラの曲やバラードなどだと、フワッーと歌声が広がっていく表現があると思うんですけど、そういった音の広がりというのは、ハイレゾのほうが出しやすいですね。
北口 これはハイレゾの話ではないんですけど、僕が聞いたことある話で、超高級ヘッドホンを使っている人が、クラシックのCDを聴いたときに、奏者がイスを引いた音が聴こえたと言っていて、「本当かよ!?」と思ったんですけど。
井上 (笑)。
北口 そういった音は、ほとんどの場合“ノイズ”として消しているとは思うんですが、ハイレゾだと、そんなすごく細かい音まで聴こえるようになるということなんですか?
井上 そうですね。さすがにイスを引く音などは、マスターのときに消しちゃっている場合が多いんですが、あえて残している方もいます。本当に細かい音なので、マイクで拾えていなかったり、圧縮してデータが劣化するときに消えてしまったりということがあるんですけど、ハイレゾだと、そういう音も聴こえやすくなるということはあると思います。ブレスやリップノイズが聴こえる場合もあるので、「ちょっと恥ずかしい」と言われるアーティストさんもいらっしゃって(笑)。ファンとしては、逆にうれしいポイントなんですけどね。
北口 そうですよね。
井上 そういったものを、ちゃんと拾って出してくれるのが、ハイレゾの特徴のひとつですね。
北口 原由実さんファンの知り合いが、ハイレゾ対応機器を購入して、さっそく原さんのハイレゾ音源をダウンロードしたらしいんですけど、僕の共通の知り合いに「これは、すごいです!」という連絡をしてきたそうで、「どうしたんだ?」と返したら、「はらみー(原由実さんの愛称)が、ここ(耳元)にいます!」と(笑)
一同 (笑)。
井上 「感じる!」と(笑)。
北口 そうそうそう(笑)。それぐらい、アーティストの息遣いだったり、存在感というのが、はっきりするものなんだなと、その話を聞いて思いました。
井上 「近くに感じる」ということは、よく言われますね。「CDよりもこんなところがすごい!」ということを頭でっかちになって考えるよりも、“いままでとは別の楽しみかたができる”というのが、僕の持論ですね。CDやmp3で音楽を聴いていた方は、ちょっと新しい体験ができるという意味で捉えてもらえるのが、イチバンわかりやすいし、楽しいと思います。
北口 確かにそうですね。どこが違うのかっていうのは、けっきょく聴かないとわからないですからね。
井上 「ハイレゾにすると、こんなにいいことがあるよ」と言っても「本当かよ?」ってなりますもんね。
武藤 そうなんです(笑)。わからないんですよ。だから、今回井上さんに聞こうと思って(笑)。
北口 たとえば、いま、ハイレゾを聴きたいという人は、ハイレゾ対応のウォークマンを買うか、ソニーのスマホを買うのが手っ取り早い感じですか?
井上 そうですね。Xperiaも対応しているので、もしお持ちの方は、ハイレゾ対応のイヤホンかヘッドホンを用意していただければ、すぐに聴けます。
北口 ウォークマンを買って、ハイレゾ非対応のヘッドホンを付けたら、どうなるんですか?
井上 これはさきほどの可聴域と関係していまして、たいていの物はCDで聴くことを前提に作られているので、CDで切り落とされやすい音域までは再生するスペックを持っていない場合があります。だから、ハイレゾを聴くために使用してもハイレゾ音源のよさが伝わりづらいケースがあります。逆に言えば、しっかりとハイレゾ音源を再生し、かつ表現できるスペックを持ち合わせているのが“ハイレゾ対応ヘッドホン”と認識していただければ問題ないかと思います。
北口 では、ハイレゾ対応のヘッドホンで聴くべきということですね。ジオングだって、足があったほうがよかっただろみたいな(笑)
一同 (笑)。
武藤 いやいや、足なんて飾りですよ。
北口 いやいやいや。そんなことないですよ。足があるほうがパーフェクトっていうぐらいだから、きっと強かったはず。
井上 いまの話の流れで言うと、足があったほうがよかったという感じです(笑)。むしろ、足がないとジオングの性能が発揮できませんっていうレベルです。要は、ウォークマンとヘッドホンの両方がハイレゾに対応しているものを使ってほしいということですね。
武藤 わりと、「大枚をはたいてハイレゾ対応ウォークマンを買ったから、イヤホンは何でもいいや」という気分になってしまいがちですけど、それではあまり意味がないということですよね。
井上 もったいないですね。
北口 素材の味を活かしきれないわけですからね。
武藤 新鮮な魚を釣ってきたのに、料理人が魚を調理したことがない、みたいな。
一同 (笑)。
北口 だから、いい音を聴くには、いい機器が必要であると。
井上 いい機器と、いい素材で。
北口 現在、ハイレゾ対応の“Xperia”、もしくはハイレゾ対応ウォークマンをお持ちの方は、それに曲をダウンロードして、ハイレゾ対応のヘッドホンかイヤホンを使えば、ハイレゾ音源が楽しめるわけですね。
井上 そうなります。