STB&ハイエンドAndroidゲーム機&クラウドゲームマシン

 2015年3月4日(米時間3日)、サンフランシスコでNVIDIAのプレスカンファレンスが行われた。登壇したジェンスン・ファンCEOは冒頭で、「今日は3つの発表をする」と宣言。“Revolutionary TV”(革新的テレビ)、“Game Console”(ゲーム機)、“Super Computer”(スーパーコンピューター)という3つのお題を出したのだが、実はそれはひとつの新ハードの話だった!

 NVIDIAがこの日発表した“NVIDIA SHIELD”は、既発の同名製品やSHIELDタブレットを発展させた、SHIELD製品群の新たな核となる、リビング向けの新ハードだ。199ドルで5月に発売予定で、NVIDIA Tegra X1プロセッサーを搭載し、リビングのテレビに繋いでさまざまな用途をこなすことを期待されている。

 まず本機は、4K解像度に対応するセットトップボックスである。“Revolutionary TV”というのはこのこと。例えば映画を一時停止した状態から、そのシーンに出ている俳優の過去の出演作などを調べることが可能。音声検索などにも対応している(デモではジャスティン・ビーバーの過去作を調べようとして「彼が死んだ歌」を調べてしまったが)。音声入力機能も備えたSHIELD REMOTEリモコンも用意される。

『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_01
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_02
▲「アベンジャーズ」を一時停止してGoogleとの連動機能でスカーレット・ヨハンソンを調べるの図。ちなみに「アベンジャーズ」をデモに選んだのは「ヒーローの組織の名前がS.H.I.E.L.D.だから」

『MGR』や『バイオ5』も遊べる“ハイエンドAndroidゲーム機”

 お次は“Game Console”。Tegra X1を搭載したSHIELDは、Androidベースでありながら「ゲーム機」としての性能も十分だと言う。それを証明するように、Gearbox Softwareのランディ・ピッチフォード氏、CROTEAMのCTOであるAlen Ladavac氏、id SoftwareのスタジオディレクターであるTim Willits氏、CrytekのCevat Yerli氏らが登場。『ボーダーランズ プリシークエル』、パズルアドベンチャー『The Talos Principle』、『Doom 3 BFG Edition』、『Crysis 3』などがSHIELDに対応することを発表。デモを披露した。

 最適化の進み具合の違いもあるだろうが、『Doom 3 BFG Edition』は60fpsを実現していていい具合にヌルヌル、『The Talos Principle』はそこそこの動作で、『Crysis 3』はYerli氏いわく「30fps台」(シーンによっては下回っているように見えたが)、『ボーダーランズ プリシークエル』はまだちょっと快適と言えるだけのフレームレートが出ていない感じだった。今後の改善に期待したい。

 ローンチ時点で50以上のタイトルに対応するそうで、リストには『ポータル』や『ハーフライフ2』、『バイオハザード5』といった意外なタイトルも。そのほか『メタルギア ライジング リベンジェンス』なども対応予定(なおコントローラーは1個同梱される)。

『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_03
▲「前世代機より高性能である」という比較。256コアのMaxwell GPUと3GBのRAMを持つ。
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_04
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_09
▲Androidゲームだけでなく、『バイオハザード5』や『メタルギア ライジング リベンジェンス』などが対応を表明しているのが面白いところ。『ポータル』や『ハーフライフ2』はすでにデモ会場で普通に遊べた。
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_10
▲Shadowplayのごとく、Twitchへのダイレクト配信機能やスクリーンショット/プレイ動画の録画機能も持っている。

クラウドゲームサービスと組み合わせてタイトル拡充

 しかしそれだけではタイトルラインアップは“優秀なAndroidゲーム機”の域を出ず、物足りない。そこで新SHIELDの発売に合わせて、同社のクラウドゲーム技術“NVIDIA GRID”を活かしたストリーミングサービスを開始することも発表。最大1080P/60fpsでクラウドゲームを遊べるという(公式サイトを見る限り、720PのGRIDサービスと1080PのGRID PLUSサービスの2段階あるようだ)。

 このコンシューマーサービス版NVIDIA GRIDは、“ビデオゲームのNetflix(アメリカの映像ストリーミングサービス大手)”と称される。「クラウドゲームって何?」という人に一応説明しておくと、プレイヤーの入力に応じたゲームの処理はインターネット経由でGRIDのサーバー群が行い、演算結果をストリーミング映像としてプレイヤー側に配信し続け、まるで手元の端末でPCゲームが処理されているかのように遊べるという仕組み。つまりこれが“Supercomputer”の正体だ。

 金額は明かされなかったものの、サービスはサブスクリプション(定額)ベースで無料で遊べるゲームと、プレイ権を別途購入して遊べるもの(主に最新作)が存在。発表時の画面にはCD ProjektのオープンワールドRPG『ウィッチャー3』が使われていたのだが、本作は後者の形で、価格は59ドル99セント。『バイオハザード リベレーションズ2』などは39ドル99セントで販売権を購入する形だった。

 カプコンの岡部眞輝氏やKONAMI小島プロダクションの今泉健一郎統括プロデューサーらも登壇し、『バイオハザード リベレーションズ2』、『メタルギア ソリッド V グラウンド・ゼロズ』、『ウィッチャー3 ワイルドハント』などのデモが実際に披露されたのだが、60フレームでの動作は滑らかで、シアターの大スクリーンでもノイズなどはあまり感じられず、なかなかいい感じ。

『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_05
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_08
▲サーバー側ではPC版ベースのプログラムがハイエンド設定で動いている(大きなブロックノイズや色のおかしさは記者のカメラのせい)。実際見ると結構綺麗です。

回線リスクとメリット

 このタイプのクラウドゲームサービスでは映像の圧縮ノイズ以外に遅延も問題になることが多いが、世界各地にGRIDサーバーを設置することで低減するそう。
 ただしその仕組み上、回線の帯域自体に影響されることは注記しておかなければならないだろう。実際、カンファレンス終了後にデモ会場でいくつか遊んでみたのだが、“Poor Connection”(回線速度が不足しています)のメッセージが出てしまい、若干フレームレートが落ちたかのような映像になることがあった。そんな状況下でもゲームが破綻するほどのブロックノイズや遅延が出たりはしなかったが、ここは安定した環境で再度チェックしてみたいところだ。

 一方で素直にメリットを感じたのは、カリカリチューンのゲーミングPCを用意しなくとも、ハイエンド設定でゲームが遊べるという点。それ以外にも、従来のSHIELDシリーズが持つGameStream機能(GeForce GTXグラフィックカードを備えたゲーミングPCからのストリーミングプレイ)も対応しているので、自分の部屋に置いた母艦PCに入っているゲームをリビングで遊ぶための機材+αと割り切ることもできる。いろんな切り口が考えられる、面白い存在じゃないだろうか。

『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_06
▲『ウィッチャー3』だと、主人公ゲラルトさんの影が草に柔らかく落ちている。手元の端末で実現可能なレベル以上の表現が得られるのはクラウドゲームのいい部分だ。
『MGR』や『バイオ5』が遊べるAndroidゲーム機にして、クラウドゲームマシン。3つの顔を持つNVIDIAの新ハード“SHIELD”【GDC 2015】_07
▲「サーバー側の処理能力を考えると現世代機よりも高性能である」という比較。