大胆な発想をコンパクトにまとめたシューティング

 前回に引き続き、かつての担当コーナーで印象深かった作品をご紹介させていただくライターの豊臣です。今回取り上げた『SHOOT 1UP』は、2010年にXbox Live インディーズで配信された2Dシューティングゲーム。世界観やグラフィックのタッチに若干クセはありますが、“残機がすべて画面内に出現する”という大胆な発想を、きちんと遊べるクオリティーでコンパクトにまとめきることに成功した快作で、「たった80マイクロソフト ポイント(当時)でこんなにも遊べるタイトルが出たのか!?」と衝撃を受けたことを、いまでも鮮明に覚えています。というのも、このころのXbox Live インディーズはいま以上に玉石混交。とりわけ(よくも悪くも)“強烈な石”にぶつかって「うわぁ!」となるケースが圧倒的に多く、ここまで真っ向勝負のハイクオリティーな作品がコンスタントに出てくるとは、正直思っていませんでした。
 プラットフォーム的なこともあるでしょうが、Xboxのインディーゲームはシューティングに良作が多く、独創性やアレンジの手法などが高いレベルで結実した本作は、確実に(あくまでも筆者個人の感想ですが)Xbox Live インディーズの歴代十指に入る名作のひとつ。「まだプレイしたことがない」という人も少なくなさそうですし、シューティングファンはもちろん、興味を抱かれた人はぜひ一度お試しくださいませ。

◆基本はショットと弾消し

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_02
▲操作はシンプル。ショットボタンは押したままで連射、離すと一定時間でエフェクトが出現し、押すと同時に周囲の敵弾が消せる。

◆トリガーまたはLB・RBで編隊の間隔を調節

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_03
▲編隊間隔は、左側ボタンで伸縮、右側ボタンで拡大。一定以上拡大すると、攻撃力が高いビームが発射できるのがポイント。陣形を維持するホールドも有効。

◆自機は2種類
 初回プレイ時は1種類しかないが、ゲーム中に出現する円形の隠しアイテムを2個取れば、隠し機体がアンロックされる。隠し機体はややバランスを欠くが、総合性能はすこぶるいい。

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_01
▲筆者個人は初回から選べる機体が好み。ただし総合性能は、隠し機体に軍配が上がる。

<注目点1 モリモリ出てくる1UP>
 システム面で本作の根幹をなすのが、独特な残機システム。1UPアイテムを取ると、すぐに編隊の1機として画面内に出現。編隊を広げると攻撃力は増すが、敵弾は回避しづらくなるというバランスの妙が楽しい。1UPアイテム出現率が高すぎると機体の攻撃力が強いあまりに戦略性が低下し、逆に下がると攻撃力不足によるストレスが溜まるが、本作はそのあたりも考え抜かれているのがいい。雑にプレイするとアッという間にゲームオーバーとなるぞ。

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_04
『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_05
▲残機すべてが画面内に出撃するため、1UPアイテムを取ったぶん、まるまる火力が上がると思っていい。ちなみに残機がゼロになるとゲームオーバー。
▲コントローラの上側ボタンで編隊の間隔を調節できるが、多くなるとミスは避けられない。敵にぶつけて倒すという使いかたもアリ。
『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_06
▲ステージ途中で分岐が出現。左は通常の縦スクロールになるが、右を選ぶと……!?

<注目点2 多彩なステージの数々>
 コンパクトな構成ながら、その範囲でさまざまな変化をつけようという努力の痕跡がうかがえる本作。ステージ中は、スクロール方向が変わる選択肢が出現。このステージ分岐はシンプルなアイデアだが、くどさもなく全体のボリュームに対して変化の度合いは十二分。単調さを払拭するアクセントとして、じつにいい仕事をしている。

全方位から敵が襲い掛かってきたり!

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_07
▲右の選択肢はスクロール方向が変化。左の選択肢は、画面外周に向かってクルクルと回転しながら任意の方向にショットが撃てるステージ。

スクロールが横や下に変わることも!

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_08
▲右画面は縦スクロールが横になるというパターン。ステージによっては、下側にスクロールしていく一風変わったパターンもあったりする。

<注目点3 プレイヤーごとに楽しめる適度な難度>
 大胆なシステムとグラフィックに注目が集まりがちな本作だが、筆者がいちばん感心したのは絶妙なプレイ感覚。特別なケースを除けば、インディーゲームの制作には締切が存在せず、ゆえに“どこで作品を完成させるか”という見定めが重要。散々いじり倒した挙句に本末転倒な結果に、あるいは気づいたらゴリゴリのコア向けになっていた、なんてことも珍しくない。その点で、本作は非常にバランスよく仕上がっているのが好印象。ダイナミックなアレンジの一方で、荒さをほとんど感じさせない丁寧な作りは秀逸だ。

丁寧な作りと念の入った調整が、楽しいプレイ感を生み出す

『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_10
『SHOOT 1UP』 “残機がすべて画面に登場する”大胆な発想のシューティング【とっておきインディーVol.017】_09
▲通常モードは爽快感重視だが、スコアアタックモードは単機ゆえ丁寧な立ち回りが求められる。ひと粒で二度おいしいとは、まさにこのこと。
▲尖ったシステムゆえに、難度の調整はかなり難しかったはず。ユーザーに丸投げではなく、自分たちできちんと落としどころを見定めているのはポイントが高い。

SHOOT 1UP
メーカー Mommy's Best Games
対応機種 X360Xbox 360
発売日 配信中
価格 103円[税込]
ジャンル シューティング
備考 Windows Phone版は300円[税込]