絢爛豪華! 色彩と音が織り成す弾幕遊戯
傑作フリーゲーム『魔王物語物語』や『いりす症候群!』で知られるカタテマから、2014年、弾幕シューティングゲーム(以下、STG)がリリースされた。STG好きの筆者はすぐに飛びつき、気がついたらドハマり! ブロックを弾くショットと、弾消し効果のある必殺技を軸に、弾幕STGと物理パズルが融合。大量の弾幕を一気に爆発させる爽快さは、初心者でも手軽に楽しめる。さらに、無料とは思えない豪華な音楽、イラスト、演出の数々。これを遊ばずに2015年のゲームライフは送れない、超弩級の作品だ!
性能が異なるふたりの主人公
海浬(カイリ)
~初心者にも安心の万能型~
移動速度:■■■
射程:■■■■■
爆発範囲:■■■
必殺技:防御型
貴族風衣装をまとう“海浬”は、ボス戦でもとぼけた会話のおっとりさん。端まで届く射程と、全体の弾を消す必殺技は安定プレイに最適。
沙月(サツキ)
~高機動高火力の玄人仕様~
移動速度:■■■■■
射程:■■
爆発範囲:■■■■■
必殺技:攻撃型
きびしい目つきの“沙月”は、基本的に無口。射程は画面半分にも届かないが、爆発力は高く、一気に多くの弾幕を巻き込めるのだ。
美麗な弾幕を誘爆で消し去る爽快なシステム
★こんなに激しい弾幕でも!
弾幕の濃さは、序盤から容赦がない。落ち着いて赤や青のブロックに撃ち込もう。ショットは一度に1発ずつだが、ブロックどうしは弾き当てられる。
★ブロックで誘爆すれば道は開ける
ショットが当たったブロックは、周囲を巻き込んで爆発! 一度のショットで多くのブロックを誘爆させれば、広範囲の爆発が発生し、一気に状況は好転する。
進行に応じて明かされていく物語
本作の物語は独特な形で描かれる。スタート時に与えられる情報は、“世界が危ない”という大雑把なもの。主人公やボスの背景、世界の設定については、特定の条件でアンロックされる“コレクション”で少しずつ明らかになる。これらの断片的な文章を読み解くのも、楽しみのひとつ。想像力を広げることで、物語が徐々に浮かび上がってくるだろう。
きらびやかな道中で奇抜なボスと興じる大舞台
本作の流れは、STGとしてはやや異色。ステージを順にクリアーするのは同じだが、ゲームオーバーになってもいちばん最初からやり直す必要はない。一度プレイしたステージは、その冒頭から何度でも再挑戦が可能だ。もうひとつの特徴は、ボス戦で発生する“決闘”。ボスはさまざまな弾幕を撃ってくるが、特定の段階で赤い血しぶきを放つ。これを取得すると“決闘”が発生し、より強力な弾幕がプレイヤーを襲う。だが、“決闘”を受けるかどうかはプレイヤー次第。クリアーを重視する場合は避け、腕に自身があれば受けて立とう。勝てば“コレクション”のアンロックやスコアアップ。STG初心者でも無理なくエンディングまで到達でき、上級者はスコアアタックに挑戦するなど、自分の腕に応じて攻略が可能だ。
<ステージ1 炭の森>
林を駆け抜けていくステージで、チュートリアルを兼ねている。ブロックにショットを当てたときの挙動に慣れよう。“夏乃(カノ)”は植物を模した弾幕を飛ばすぞ。
<ステージ2 東海道>
開幕時の強烈な攻撃は死んで覚えること(笑)。危険を感じたら、惜しまず必殺技を使え。ボスの“灰牙(ハイガ)”は自機狙いの動きが多い。体当たりされないように注意。
<ステージ3 百目湖>
流れる水のようなステージは、初心者最初の壁。下からの攻撃には、画面上部でショットを反射させて対処。“流々々(ルルル)”は、本体以上に3匹の金魚が厄介だ。
<ステージ4 夜の家>
静かな音楽で開幕するが、弾幕はこれまで以上に激しい。必殺技や連鎖を駆使して切り抜けよう。最後に待っている大きな繭は、条件を満たすとボス戦に変化。
『ムラサキ』開発スタッフインタビュー
数々のフリーゲームで知られるカタテマのてつ氏に、本作についてうかがった。インタビューには、音楽のwatson氏とグラフィック担当の蓬餅氏も参加!
――まずは、カタテマの経歴やこれまでの活動の紹介からお願いします。
てつ ある時、ふとゲームが作りたくなり、RPGツクールで『勇者御一行様殺人事件』という謎解きものを作って公開しました。それが意外と好評だったので、それ以来、10年ほど暇を見つけてはゲームを制作・配布しています。固定メンバーは僕ひとりで、毎回新しいチームを組んでいます。本作は、グラフィック関連は蓬餅さん、音楽はwatsonさん、そのほかのシナリオ・プログラムなどを僕が担当しています。
――カタテマはこれまでパズルゲームやRPGなどを手がけてきました。今回はどうして弾幕STGのような作品を作ったのでしょうか?
てつ 明快な操作性で破壊する楽しさを味わうSTGは、一度作ってみたいと思っていました。一方で多くの人が「STGは難しい」という印象を抱いていると思います。そこで本作は、STGの優れた部分を基礎としながら、苦手な方にもクリアーしてもらえるよう“STGっぽいゲーム”を目標にして制作しました。
――ブロックを弾き、弾幕を消すという斬新なアイデアはどこから生まれたのでしょうか?
てつ STG+物理パズルを組み合わせるところから生まれました。パズル部分は、前作の『いりす症候群!』で培ったものです。こう書くと簡単に思えますが、現在の形に行き着くまでには、相当な試行錯誤がありました。プロトタイプでは、重力があって地面に落ちると爆発したり、敵がブロックを吐いたり、いまよりずっと複雑でした。複雑すぎるとプレイ中の意識が分散して難しくなります。そこで複雑な要素を取り払ってシンプルにしていった結果、いまの形にまとまりました。
――制作はいつから始まり、完成までどのくらいの時間がかかりましたか?
てつ 本格的に制作が始まったのは、2013年の5月です。それから約1年後には通しプレイが可能な状態になり、公開にこぎつけたのは2014年の10月です。ただ本格的な制作が始まる前に、システムの設計を何年も前から試行錯誤していました。これを含めるとかなりの年月になります。
――音楽のwatsonさんとは『いりす症候群!』以来の共演ですね。今回も和風のSTGにジャズのようなサウンドを合わせるという意外な趣向になっています。音楽にはどのような狙いがあったのでしょうか?
てつ 自由に作曲してもらいたかったので、僕からは曲のイメージや方向性を指示した程度です。
watson 強い制約のあった5面以外は自由にやらせてもらいました。当初は既存STGの曲調を手本にしようと思っていましたが、意外性を大事にした結果、ほとんど参考にしませんでした。
――主人公やボスを含め登場キャラクターも豊富ですが、キャラクターデザインはどのように決定しましたか?
てつ 登場人物は、それぞれ世界の枠組みの一部として存在するように構築しました。その上で性格などの方向性を決め、デザインを蓬餅さんに詰めてもらいました。
蓬餅 人物はその出自となる世界ごとに衣装のデザインを揃えています。また数が多いので配色は1色で説明できるくらいわかりやすくしました。
てつ 攻撃方法は、敵キャラの性格や感情を表現できればいいなと思って作りました。
――カタテマの作品は毎回、断片的なテキストによって巧みなストーリーテリングを行っています。この手法のメリットを教えてください。
てつ “条件を満たすと小出しテキストが読める”という形式は、理想的な設計が成功すれば、冒険して情報を入手している感覚をプレイヤーに提供できるものだと考えています。また、この手のテキストは、読まなくてもプレイに支障がないようにできるため、ストーリーに興味がないプレイヤーの邪魔をしないのも大きな利点です。さらにSTGのようなテキストを表示しづらいジャンルにも融和しやすい。本作ではSTGを遊んでもらいながら、プレイの邪魔にならないようにストーリーを提供するのを目指した結果、コレクションとストーリーが融合したようなシステムになっています。
――和風の世界観や“決闘”要素などは『東方Project』の影響が感じられます。ほかの同人ゲームやSTGからの影響はありますか?
てつ 同人STGでは『東方Project』に大きく影響を受けています。またシステム面では『エヴリエクステンド』がヒントになりました。あとは『怒首領蜂』、『エスプレイド』、『ダライアス』、『メタルブラック』といった作品から、雰囲気面やゲーム面での影響を受けていると思います。
――今後のアップデートの予定はありますか?
てつ “少し難しいモード”や“少し別のモード”をアップデートで提供する予定です。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
てつ STGが苦手な方にこそ遊んでいただきたいゲームです。フリーゲームなので、お気軽にダウンロードして遊んでください!
ムラサキ
メーカー | カタテマ |
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対応機種 | PCWindows |
発売日 | 配信中 |
価格 | 無料 |
ジャンル | シューティング |