マインレーベン!(ナチ兵の死に際のセリフ)

FPSの元祖『ウルフェン3D』を(勝手に)VR対応させた『Wolfenstein VR』【Upload VR】_02

 アメリカ時間の1月16日、サンフランシスコのダウンタウンでVR(仮想現実)関連のイベントを主催する“UPLOAD”による大規模なパーティーが行われた。

 そこで見つけたのがポーランドの個人開発者“Mr. Kaktus”氏による『Wolfenstein VR』。FPSの元祖『ウルフェンシュタイン3D』の素材を(多分勝手に)使って開発したVR対応FPSだ。

 ジョイスティックを使ってプレイし、ドアを開け、弾を拾いながら、襲い掛かってくるナチス兵を倒していくというシンプルな内容。マップはオリジナルで所持武器も変更されており、近接武器はナイフではなくベアナックル(要は裸の拳)に。現在はまだ調整が進んでいないが、将来的にはプレイヤーの拳をセンサーで検出し、自分でナチス兵を殴れるというアクションが追加される。
 もちろんグラフィックは3D立体視対応なのだが、『ウルフェンシュタイン3D』自体がポリゴンではなくスプライトで作られたFPSなので、「それぞれの配置は奥行きが感じられるけど個々のキャラクターはペラッペラ」というミョーな立体感が味わえる。

FPSの元祖『ウルフェン3D』を(勝手に)VR対応させた『Wolfenstein VR』【Upload VR】_03
FPSの元祖『ウルフェン3D』を(勝手に)VR対応させた『Wolfenstein VR』【Upload VR】_01
▲ゲームは(どこで売ってるのか知りたいぐらいの)オールドスクールなジョイスティックでプレイする。HMDの下に仕込んだセンサーで手を検出して、リアルパンチでナチ公を殴れる機能も実装予定。気分はイングロリアス・バスターズだぜ!

 『ウルフェンシュタイン3D』、そしてそれに続く『Doom』、『Quake』シリーズでFPSというジャンルを確立したid Softwareと言えば、VRと因縁浅からぬゲームスタジオ。現在のVRブームを引き起こしたヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”の発表時から、FPSを生み出した張本人であるスタジオの中心人物ジョン・カーマック氏が熱心に協力しており、自社タイトル『Doom 3 BFG Edition』を使って自らE3やスタジオ主催のファンイベントQuakeConでプレス向けのデモを行ったりしていた(記者がOculus Riftを初めて体験したのもQuakeConでのデモだった)。

 その後、id Softwareの親会社ZenimaxがVRへのサポートを渋ったことで、カーマック氏は(関係者の想像通りに)Oculus VRに移籍。さらにOculus VRがFacebookに約2000億円で買われると、Zenimaxが弁護士を立てて「在籍時の研究が寄与した分」を求めて揉めるという展開になったのは、詳しい人ならご存知の通り。
 本作はそんな事情を鑑みると、「だったらウルフェンをVR対応させちゃうもんね」という皮肉ギャグにもなっているわけで、まぁ一般にまともにリリースされるのは絶望的だと思うが、何かの機会に巡りあうことがあったら、ぜひ遊んでみて欲しい。FPSの始点と未来が同居する、時空が歪んだ体験ができるはずだ。