ゲーム音楽を文化として確立する

 ゲーム音楽を主体に演奏する日本初のプロオーケストラ楽団JAGMOは、2015年2月7日、8日に五反田ゆうぽうとホールにて、JAGMO主催初となるフルオーケストラ公演“THE LEGEND OF RPG COLEECTION ― 伝説の交響楽団 ―”を開催する。
 そこで今回、JAGMOプロデューサー/CEOの泉志谷忠和氏にインタビューを行い、JAGMO創立のきっかけや経緯、そして大きな夢を語ってもらった。

 なお、“THE LEGEND OF RPG COLEECTION ― 伝説の交響楽団 ―”は、『ファイナルファンタジー』、『ポケットモンスター』、『キングダム ハーツ』、『クロノ・トリガー』、『ロマンシング サ・ガ』といった名作中の名作の楽曲を、豪華な奏者たちがお届けするゲームファンもクラシックファンも必聴の内容なので、ぜひ注目してほしい。

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――まずは、JAGMOが生まれたきっかけと経緯を教えてください。

『FF』、『ポケモン』、『キングダム ハーツ』などの楽曲を演奏するゲーム専門プロオーケストラ“JAGMO”のCEO、泉志谷忠和氏にインタビュー ゲーム博物館建設の夢も!?_05
▲泉志谷忠和氏
JAGMOプロデューサー/CEO

泉志谷忠和氏(以下、泉志谷) JAGMOは、もともと日本BGMフィルハーモニー管弦楽団という楽団で、僕は無関係な人間でした。そこでは、僕の友人であるヴァイオリニストの尾池亜美さんがコンサートマスターを務めていまして、ある日、コンサートに誘われ見に行ったんです。そのコンサートは、ゲーム音楽をメインに演奏していました。尾池さんは有名で、すばらしいヴァイオリニストですし、きっと満席なのだろうと思って会場に行ったんです。でも、結構空席が目立っていて……。尾池さんの技術はすばらしいだけに、「もったいないなぁ……」とすごくモヤモヤしまして、どうすればよくなるか考え始めたんです。ゲーム音楽は後世に残すべき文化だと思いますし、たくさんの人を魅了できるものだと思いますので、僕も熱が入ってきてしまいまして、気がついたら、JAGMOという団体ができてしまっていました。

――そうして、楽団内で泉志谷さんが責任ある立場になっていったということでしょうか?

泉志谷 いえ、じわじわと責任ある地位についていったというわけではありません。まず、日本BGMフィルハーモニー管弦楽団は赤字を抱えていると、彼女から相談を受けました。運営者に会いに行くと、「解散しようと思っている」とも言われました。ですが、ここでこんな可能性のあるものが潰えてはいけない。そこで僕が「赤字が出たら責任を取るので、次回公演のプロデュース権をほしい」と伝えました。そういうことなら、と、責任者の方もOKをくれました。ですが、僕がプロデュース権の委譲を頼んだのはほとんど勢いだったので、冷静になってみると、「なんてことをしてしまったんだ……」と自己嫌悪に陥ったりもしました。下手したら大赤字。そして、オーケストラ公演なんて、一度もやったことないんですから。

――それでも、なんとか成功させたということですよね? それが、JAGMOとしての第一回公演だったと。

泉志谷 その通りです。たくさんのお客様に来場していただくことができました。さまざまな苦労がありましたが……。内部は、借金の額もわからない、キャッシュがいくらかもわからないという状態でした。奏者の統制も取れていませんでした。まずはそういったところを改善することから始めました。そうして、友人たちの力を借りたりもして、徐々に問題がはっきりとしてきました。そのあたりで、JAGMOという名称が出てきました。

――名称を変更したのは、心機一転を図るためですか?

泉志谷 それもありますが、代表理事であった遠藤雅伸さんが、「もし改名するならJAGMOがいい」とおっしゃられて、最終的に、かわいいからプロデュースチームの呼称はそれにしよう、ということになったんです。

――JAGMOは、どういう意味の言葉なのですか?

泉志谷 “ジャパン ゲームミュージック オーケストラ”のスペルを並べたものです。Japanから“JA”、GameMusicから“GM”、Orchesterから“O”。つなげてJAGMOです。

――当時の公演に関しての裏話などはありますか?

泉志谷 あのときは、チケットも完売して、悪ノリと言いますか、マスコットキャラクターのジャグモくんに会場アナウンスをさせようという話になったんです。「公演の前には携帯電話の電源をお切りください」という、ああいったアナウンスです。なぜか僕がジャグモくんの声優をやることになりまして、録音して会場で流したのですが、地獄のように不評でネットでバンバン叩かれました。完全に黒歴史です(笑)。それ以来ジャグモくんは沈黙を守り通しております。

『FF』、『ポケモン』、『キングダム ハーツ』などの楽曲を演奏するゲーム専門プロオーケストラ“JAGMO”のCEO、泉志谷忠和氏にインタビュー ゲーム博物館建設の夢も!?_01
▲マスコットキャラクターのジャグモくん

■選曲の理由

――JAGMOは『ファイナルファンタジー』、『キングダ ムハーツ』、『ポケモン』といったラインアップですが、タイトルの選出はどのようにして行われたのでしょうか?

泉志谷 僕もゲーム音楽ファンのひとりなので、「こんな夢のようなコンサートがあったら絶対に行く!」と、思ったものを選んでいます。ひとつのタイトルにフィーチャーしたコンサートはたくさんありますが、複数のタイトルを同時に演奏するコンサートってあまり聞いたことがありませんでした。なので、『ファイナルファンタジー』、『ポケットモンスター』、『キングダム ハーツ』、『クロノ・トリガー』、『ロマンシング サ・ガ』といった錚々たる名作の曲が、ひとつの公演で聴けたらどんなにステキだろうと想像したんです。

――いつごろから、ゲーム音楽に興味を持たれたのですか?

泉志谷 思い出せないくらい昔です(笑)。物心ついたときから好きだったように思います。初めてのコンサートは、中学生のころ、『ファイナルファンタジー』の音楽公演“ツール・ド・ジャポン”でした。もちろんコンサートに行くには、そこそこのお金がかかります。でも、どうしても行きたくて、コツコツ貯金したお金をドーンと使って見に行きました。

――相当お好きなんですね。なかなかコンサートに行こうとする中学生いませんよ(笑)。

泉志谷 ウズウズして仕方なかったんです(笑)。けっきょく、支払ったお金の何倍もいい体験をすることができました。植松伸夫さんが指揮をとられた、最高の公演でしたよ。僕の両親もゲーマーだったので、ゲームやCDはどんどん集まっていきました。さらに言うと、おじいちゃんおばあちゃんともいっしょにゲームをしていました。ゲームに育てられたと言っても過言ではないと思います。そういう環境でしたので、自然とゲーム音楽を好きになっていったんです。

――子どものころから、大きいステージでゲーム音楽公演をやりたいという夢があったのですか?

泉志谷 そんなに具体的ではなかったのですが、両親が音楽関連の仕事をしていたということもあってか、当初は作曲家になるのが夢でした。しかし、学校が嫌いで、そもそも音大とか以前に高校に行きたくなかったんです(笑)。「高校行かない」って両親に言ったら「家出て行け」と言われたので、家出しました。アメリカへ。

――スケールの大きな家出ですね! アメリカへ行くためのお金はどう捻出したのですか?

泉志谷 集めに集めた『遊戯王』カードを売ってお金を作りました。そのときから僕は、将来的にエンターテインメントビジネスをやりたいと考えるようになり、アメリカでは『シルク・ドゥ・ソレイユ』などのステージや、ラスベガスのぎらぎらした街を見て回ったりしました。「なんてダイナミックなんだ!」と感動しましたね。