『V.D.-バニッシュメント・デイ-』のプロデューサー・土田俊郎氏と、サウンドコンポーザー・下村陽子氏へのインタビュー内容をご紹介。

●『フロントミッション』以来、19年ぶりの共同制作

 DMM.comは本日(2014年12月16日)より、PC用タクティカルバトルRPG『V.D.-バニッシュメント・デイ-』のサービスを開始した。
 この記事では、本作のプロデューサーを務めるジークラフト代表取締役の土田俊郎氏と、サウンドコンポーザーの下村陽子氏へのインタビューをお届けする。

▲土田俊郎氏。
ジークラフト代表取締役。
代表作に、『フロントミッション』、『アークザラッド1、2』などがある。

――まずは、本作を開発するまでの経緯を教えてください。

土田俊郎氏(以下、土田) もともと、日本を舞台にしたお話を作ってみたいと思っていたんです。日本という舞台の中で、キャラクターたちが熾烈な戦闘に巻き込まれるという設定がいいなと、アイデアを練っていきました。その漠然とした構想を少しずつ固めていき、どうやってゲームにするかを考えて膨らませ、企画書を作りました。そこで、僕がちょうどフリーになったタイミングに、その企画書をDMM.comの方に見ていただいたんです。それを気に入っていただき、本プロジェクトはスタートした感じですね。

――日本を舞台にした理由は何ですか?

土田 日本が舞台ならご当地ネタができるうえに、ユーザーの皆様に身近に感じていただけると思ったのが理由です。これまで僕は、架空の世界を舞台にしたゲームを作ることが多かったのですが、今回はガラリと変えてみようかなと。日本が舞台なら、ユーザーさんもゲームの中での出来事がわかりやすいと思うんです。「架空の地名が奪われたので奪還した」という話より、「九州を奪った」、「九州を取り戻した」という表現のほうが想像しやすく、感情移入もできますよね。「あ、うちの近所が出ている!」といった楽しみもあるでしょうし(笑)。

――シミュレーションRPGに造詣の深い土田さんですが、やはり初めからシミュレーションRPGとして本作を制作したいという思いがあったのでしょうか?

土田 最初は、どんなジャンルにしようというのは具体的には決めていませんでした。ですが、「銃だけじゃなくて刀などの武器も登場させたいなぁ」といった、細かい構想はありましたね。そこから、「スナイパーライフルで後ろから援護する人もいるといいな」、「回復に特化したキャラも必要だろうな」……「じゃあ役割分担してジョブを設けよう!」といった具合に、少しずつ形になっていき、最終的に「これなら、シミュレーションにするといちばんおもしろくなりそうだ」という考えに落ち着いたんです。

――プラットフォームは初めから決まっていたのですか?

土田 プラットフォームも決まっていませんでした(笑)。こんな感じのゲームです、こんな感じの世界観です、こんな感じの事件が起きます、超能力を持った子どもが出ます、といった漠然としたことは決まっていましたが。なので、下村さんへの曲のリクエストも、漠然としたものになってしまい、苦労をおかけしてしまったかと思います(笑)。

――先ほどジョブというお話が出ましたが、ジョブは何種類あるのでしょうか?

土田 5種類あります。刀などで近接戦闘をするアサルト。機銃を撃ち、防御力もすぐれているへビーガンナー。後ろから支援攻撃をするスナイパー。この3つが、攻撃の担い手になります。ほかに、回復要員のメディックや、味方を強化したり敵を弱体化したりするエンジニアがいますよ。

――本作は『フロントミッション』のような硬派な作品になるのかと思っていましたが、実際はライトな内容に仕上がっているようですね。

土田 はい。基本SFですが、トンデモ設定もあります。「世界から日本が消えちゃった!」というお話なんです。ある日突然日本が消え、ほかの国から見たら何もないといった状態になるわけです。でも、日本は消えたわけではなく、別次元に飛ばされたという設定です。外とは交渉ができません。そんな、日本だけが独立した状態を作りたかったんです。他国が救助に来られない、閉鎖空間ですね。しかも、戦えるのは少年少女のみという。

――凝った物語ですね。

土田 ありがとうございます。下地として、しっかり世界観を作ったうえで、キャラクターの気持ちを描いていきたかったものですから。

――聞いたところによりますと、PCブラウザゲームとしては珍しく、本作にはエンディングがあるそうですね。なぜエンディングを設けることにしたのでしょうか?

土田 僕は一時期ソーシャルゲーム業界にいましたが、どうしても無限に運営していくイメージができないんです。日本を解放するために少年少女が戦う本作で言えば、ストーリー上で日本を開放したら、ひとまずゲームは終わらないとおかしい。しっかりとした目標を設けたほうが、ユーザーさんのモチベーションを刺激できるとも思いますし。とはいえ、PCのオンラインゲームである以上、配信してすぐに終わって遊べなくなってしまうのはダメなので、そのへんのことはDMMのプロデューサーさんやスタッフさんとすり合わせて、長く遊べるものを目指しました。

――ではやはり、エンディングを迎えた後もお楽しみ要素があるということですね?

土田 はい。お楽しみ要素はたくさんあります。ストーリーは、まず九州から始まり、どんどん北上して行きます。そして、旅の途中で関わったご当地のキャラクターたちを仲間にできます。エンディングを迎えた後も、旅の過程で仲間にしたキャラたちを活用した、たくさんのお楽しみ要素がありますので、ご期待ください。

――物語は、途中途中ステージを追加して、時間をかけて完結する形ですか? それとも、やりようによってはすぐに完結させられる形になるのでしょうか?

土田 配信型で、ある程度時間をかけて完結する形になります。メインストーリーの配信スケジュールがあり、それ以外にも、適宜サブイベントを配信していくことになるかと思います。

――ちなみに、何年くらいでの完結を目指しているのでしょうか?

土田 じつはまだよく分かりません(笑)。

――たとえば、とあるキャラクターが好評だったから、そのキャラの活躍の場が増えるといったような、ストーリーに変化が生じることはあるのでしょうか?

土田 それはまだ考えていないです(笑)。ですが、本作はPCブラウザゲームであり、つねに柔軟な変更が可能な以上、あり得ない話ではないかもしれませんね(笑)。

――エンディングは複数あるのでしょうか?

土田 お話自体の終わりかたはひとつだと思います。

――バッドエンドで終わるということはないですよね?

土田 どうでしょう(笑)。予期せぬ展開になるかもしれません(笑)

――ユーザーの選択が多いほうに物語が分岐する、といったこともあるのでしょうか?

土田 そういうシステムや構想が現段階であるわけではないのですが、やはりオンラインゲームという生モノである以上、物語が当初の予定とは違う形になるということはあり得ます。運営の予想以上に、ユーザーさんが楽しんでくれている要素があれば、そこを強化するといった取り組みもあるでしょうし。

――たしかに、ユーザーさんのフィードバックを経て調整できるのが、運営型のゲームならではですね。

土田 そうですね。ユーザーさんの声に耳を傾け、つねにゲームバランスを調整しながら運営していくつもりです。変えるべきところは思い切って改変し、おもしろくしていきたいと思います。

――今回はPCブラウザゲームの制作ということで、制約なども多かったかと思いますが、心がけた点、気をつけた点などはありますか?

土田 制約は、意外とありませんでした。ですので、自由に製作することができましたよ。とくに本作のバトルシーンは、フラッシュとしては非常によく動いていると思います。バトルについて言いますと、たとえば『艦隊これくしょん-艦これ-』などは、出撃を決めたらキャラが自動で動いて戦果をあげてきてくれるので、少しの時間で手軽に楽しむことができます。逆に、一手ずつしか動かせないものとなると、PCブラウザゲームとしてはちょっと面倒くさいと思います。とはいえ、自分で細かく戦略を練ってじっくりキャラを動かしたい人もいるでしょうから、そういったマニュアルな戦いかたもできるように、本作では心がけました。

――つまり、幅広いユーザーのニーズに応えられるようにしたのですね?

土田 その通りです。サクサクとセミオート的に進めることも、自分で細かく操作するマニュアル的な操作も両方できるようにしました。本作のバトルシステムは、戦闘に突入すると“GOボタン”というものが出てきます。攻撃の設定をした後、そのGOボタンを押すことでバトルが展開します。GOボタンを押すと敵と味方が乱戦を始めるんです。GOボタンを押す前に設定できることはふたつありまして、まずはキャラの位置を動かすこと。そしてもうひとつは、攻撃するターゲットを決めることです。とはいえ、決めなくてもGOボタンさえ押せば勝手に戦ってくれます。位置を動かすのは、それこそ『フロントミッション』のように何歩動いてどの射程から撃つ、といった複雑なことは求められません。やることは、キャラを前列に置くか後列に置くかです。後列にいるキャラは、前列に味方がいれば敵からの攻撃を受けません。前列のキャラが盾になるわけです。そういった戦略を組むことができます。そんなこんなで配置を決め、「これで行こう」と決めたらGOボタンを押せば戦闘開始となるわけです。何度も押せば、そのたびにターンが進行します。途中で「やばい!」と思ったら、その時点で配置を並べ直すこともできます。増援システムといって、現在戦場にいるキャラクターと控えのキャラクターを入れ替えることもできますので、多彩な戦略を練ることができますよ。

――お話を聞いていると、ライトユーザーのことをよく意識して作られたことが伝わってきます。

土田 ありがとうございます。戦略的なゲームにしたいけれど、つねに気を張っていないといけないというゲームにはしたくなかったんです。キャラをすごく強くしてGOボタン連打で進行するのもよし、自分で適宜細かく並び替えて、戦闘スタイルを変化させつつ進めるもよしなゲームを目指しました。それから、バトル以前に、出撃キャラの選びかただけでも戦略は変わってきますよ。回復役のメディックを入れず、全員攻撃ジョブで固めて攻めまくるとか、メディックを多めに入れて回復しながらじっくり攻めるとか。さらに、先ほどお話させていただいた増援システムもそうですね。どんなジョブの、どんなスキルを持つキャラを控えさせておくかも、勝負のゆくえを大きく左右するかと思います。

――土田さんは、コンシューマ、ソーシャルを経て、そして今回PCゲームの制作をされたわけですが、それぞれの違いはどんなところでしょうか?

土田 制作側というよりは、ゲームをやるユーザーさんの意識に違いがあるかと思います。コンシューマゲームは、高いお金を払って購入するわけですから「やるぞ!」と気合をいれてプレイする方が多いでしょう。対してソーシャルゲームは、何かをしながら片手間にプレイする人もたくさんいらっしゃると思います。そしてPCゲームは、そのふたつの中間です。基本無料でできますが、きちんと腰を据えてプレイしますよね。お昼休みなどにちょっとやる人もいれば、夜寝る前にガッツリプレイする方もいらっしゃると思います。2、3時間やってくださる方もいます。コンシューマゲームは、一日に2、3時間くらいやってもらう前提で作ると思うんです。でも、ソーシャルゲームは、じっくりプレイする前提で制作してしまうと、お手軽に空いた時間でプレイできるというよさが失われてしまいます。その中間を取るのは、難しかったです。楽曲に関しても同じことが言えます。ソーシャルゲームのバトルは、基本的に短いものが多いですよね。数十秒、早いと数秒で終わってしまうものもあるかと思います。下村さんに「戦闘の曲は、どれくらいの尺が必要でしょうか?」とご相談させてもらったとき、「ボス戦などは、雰囲気を出すために2分くらいはかかりそうですよ」と言われて、ちょっと悩みましたね。結果的に、コンシューマとソーシャルの中間が見事に取れた、ちょうどいい尺の音楽を仕上げていただけたので、さすがは下村さんだなと思いました。音楽もバトルも、いいバランスに仕上がっているはずですよ。

――ちょっと強引な言いかたをしてしまうと、本作はコンシューマとソーシャルのいいとこ取りのゲームだと言えるわけですね。

土田 売り文句としてはいいですね(笑)。