直前に新作のビジョン映像が上映、その迫力に圧倒!
この発表会は、韓国のゲームショウ“G-STAR”の開幕前に不定期で開かれているもので、今回は3年ぶりの開催となる。なぜシネマコンプレックスが会場に選ばれたかと言うと、発表会の直前に、4DX(発煙や送風などとともに3Dムービーに合わせてシートが稼動する体感型の上映システム)に対応した映像が用意されていたからだ。そこで流されたのが、冒頭に抜粋した『Project HON』の“ビジョン映像”である。
ビジョン映像とは、開発前に作り込んだ映像を見せるNCSOFTならではの手法。開発スタッフがイメージを固めるための資料を公開することで、プレイヤーの期待感をあおりつつ反応が確かめられるというわけだ。過去には2011年のG-STARで流された『リネージュ エターナル』や、古くは2009年に公開された『タワーオブアイオン』の数年先のアップデート内容を映像化したものがあった。いずれも、その後しっかりとゲーム内に反映しているので、いつになるかはわからないが、ゲームになったときの出来映えはいまから期待していい。
◆Project HON』ハイライト NCSOFT G-STAR PREMIER 2014 - コネクト!オン.com
『Project HON』の内容はビジョン映像がすべてなのだが、発表会の質疑応答コーナーでの返答を織り交ぜながら、簡単に補足をしておく。同作は、TPSとMMORPGをミックスさせた新たなジャンルを開拓しようとしていて、メカニック兵器の変身・アップグレードと共同戦略のふたつが共存したゲームを目指している。開発にはUnreal Engine4を用いているので、コンソール機での展開もゼロではなさそうだ。なお、HONとは「Humanoid robot On Neuro-control(神経網制御に基づくヒューマノイドロボット)」の略語だが、韓国語で“魂”を意味する言葉でもある。メカニックに共同戦略に魂、熱いゲームになることは間違いなさそうだ。
大きな決断とともに開発中のタイトルがつぎつぎと発表
発表会は、まずNCSOFTのキム・テクジン代表取締役から同社の今後の舵取りについて説明がなされた。それはズバリ、モバイル分野への本格挑戦だ。同社の現在をあらゆる障害をチームで乗り越えたアポロ13号にたとえ、モバイルという宇宙にチャレンジする決意を表明。「今後は『リネージュ』、『リネージュ2』、『タワーオブアイオン』、『ブレイドアンドソウル』の4大IPを最大限に活用しつつ、新タイトルを織り交ぜて、軽いゲームではない新しいモバイルゲームを切り開く(キム・テクチン代表)」と力強く宣言した。豪華でボリュームのあるゲームが同社の真骨頂。これまでも同社のモバイル端末用ソフトはあったが、テーブルゲームやプレイをサポートするツール程度の軽いものに留まっていた。本当に機が熟するのを首を長くして待っていたようで、ここからは新たなゲームやサービスが怒濤のごとく発表されたのだ。
・Blade & Soul Mobile(RPG/Android&iOS/サービス開始時期は近日発表予定)
グローバルIPの『ブレイドアンドソウル』がモバイル端末へ。ただし、ミドルコア層のプレイヤーをターゲットにしているだけあって、かなりアレンジが入っている。PC版の世界設定や登場キャラクターを用いるものの、グラフィックのタッチを一新。モンスターを含め、すべてのキャラクターが頭身の低いキュートな絵柄で描き直されている。ストーリーも復讐劇ではなく、誰もが楽しめるコミカルなストーリーになるとのこと。なお、戦闘はカードを用いたものになり、相手との読み合いが楽しいバトルを目指している。また、同作にもあったギルドシステム“門派”がモバイル版にも採用されていて、門派員と力を合わせて挑む戦闘も用意されるようだ。魅力的なキャラクターが多い『ブレイドアンドソウル』ならではアレンジに納得。まあ、ムービーでセーラー服を着たポー・ファランを見つけたので、相当なアレンジではあるのだが(笑)。PC版とモバイル版の連動にも期待したい。
・AION レギオンズ(戦略RPG/Android&iOS/2015年サービス開始予定)
『タワーオブアイオン』のモバイル版も発表された。こちらは『Blade & Soul Mobile』とは異なり、可能な限りPC版の優雅なグラフィックを活かすように開発が進められている。モバイル版の舞台は天族と魔族が激突する象徴的なフィールド“アビス”で、PC版で一定時間おきに出現していた時空の亀裂も登場するとのこと。公開されたムービーでは、PvPとともに、PC版でも楽しめる大規模なレイドバトルが展開されていた。モバイル版のレイドは非同期型で、ときには同じレギオン(ギルド)のメンバーを借りながら20対1の迫力ある戦闘が楽しめる。なお、PC版とのいちばんの違いは、同アカウントかつ同サーバー内に天族・魔族のキャラクターを共存させられること。不正行為を未然に防ぐため、PC晩ではどちらかの種族のキャラクターしか作れたなかったのだ。また、PC版から引き継げる要素はないものの、何かしらの連動も考えているとのこと。PC版ではキャラクター作成時に外見がかなり調整できたので、モバイル版でもがんばってもらいたい。
・Project H2(シミュレーション/Android&iOS/2015年上半期サービス開始予定)
ここからはNCSOFT傘下のデベロッパー、Ntreevのタイトルが3本続く。まずは韓国プロ野球を題材にした球団運営シミュレーションゲームが発表。米国SPORTS MOUL社の野球シミュレーションエンジンを共同で開発するほどの力の入れようで、プレイは3Dグラフィックで再現。野球中継を観覧する気分で遊べるようだ。
・召喚士になりたい。(RPG/Android&iOS/2015年上半期サービス開始予定)
◆『召喚士になりたい。』
日本でもサービスされていた『トリックスター』のキャラクターを用いたRPGで、ボードゲーム盤のようなステージを移動しながら、ターンバトルの戦闘をくり広げる。800あまりのキャラクター・モンスターが登場するので、集め甲斐がありそう。韓国で間もなくクローズドβテストがスタートするとのことなので、開発はしっかりと進行している様子だ。
・パンヤ モバイル(仮)(スポーツ/Android&iOS/2015年サービス開始予定)
『パンヤ モバイル(仮)』
日本でもおなじみのファンタジーゴルフゲーム『スカッとゴルフ パンヤ』が、誕生10周年を記念してモバイル版の開発に着手。PC版の数年後のストーリーとして描かれるので、お気に入りのキャラクターが姿を変えて登場するかも。また、チャレンジモードや対戦モードなど、モバイル環境に適するモードが用意され、シンプルながらもタッチ感を活かした操作を目指すとのことだ。ゲームの名前が浸透しているタイトルで、モバイル端末との相性もよさそうだ。10年間の運営で蓄積されたプレイヤーの嗜好がわかるデータの存在も心強い。日本でサービスされたら、ヒット作になるかもしれない。
・Fashion Street(ソーシャル/Android&iOS/2015年サービス開始予定)
『Fashion Street』
ここからはNCSOFT開発のタイトルに戻るのだが、これは今回のラインアップでかなり異色の一本。女性をターゲットしたソーシャルゲームで、デザイナーになって洋服屋を経営し、友だちと協力してストリートを充実させる。まだまだ詳細は固まっていない様子だったが、洋服のデザインをプレイヤーにも解放するようなので、UGCを使ったやり取りも楽しめそうだ。
・MXM(MASTER X MASTER)(アクション/PC/サービス開始時期は未定、2015年春に第2回CBTを予定)
10月にCBTが行われたばかりのタイトルで、G-STAR PREMIER 2009で発表されていた『Metal Black:Alternative』が形を変えて登場した。PvP、PvE、ミニゲーム(運動会)の3種のゲームモードが用意されていて、(腕前を問わず)誰とでもいっしょに楽しめる、軽くて深いゲームを目指している。ふたりのマスター(操作キャラクター)を切り替えながら遊ぶ“タグシステム”が大きな特徴で、マスターには同作オリジナルのキャラクターに混じって『タワーオブアイオン』のクロメデや『ブレイドアンドソウル』のポー・ファランなども用意されている。NCSOFTのファンにはたまらない、お祭り的なタイトルなのだ。また、PvEにはMOBA風のステージも用意されていて、今後は『ブレイドアンドソウル』の比武大会に続くe-sportsを盛り上げるタイトルとして展開していくとのとこ。そして、こちらもモバイル版の開発が示唆された。モバイルに飛び込む同社の姿勢は、じつに徹底している。
・リネージュ エターナル(MMORPG/PC/2016年末~2017年初頭にサービス開始予定)
◆『リネージュ エターナル』Dynamic Dungeon Movie 1920 HQ NCSOFT G-STAR PREMIER 2014 - コネクト!オン.com
◆『リネージュ エターナル』ハイライト NCSOFT G-STAR PREMIER 2014 - コネクト!オン.com
今年のG-STARの目玉になりそうな大型タイトルの進捗が最後に発表された。ジャンルはMMORPGだが、ゲーム性はクォータービューのハック&スラッシュ。『リネージュ』の200年後のストーリーが展開され、プレイヤーは仲間とともに無数に出現するモンスターを撃破しながら、バリエーションに富むフィールドやランダム生成されるダンジョンを駆け巡る。いちばんの特徴は、目的に応じた軌跡でマウスをドラッグすると発動する“ドラッグスキル”。ひとつしか設定できないものの、かなり個性的な効果が付与されているとのことだ。また、ゲーム本来の楽しさを追求し、シンプルに仕上げたと言う。開発当初よりもスキルの発動やアイテムの使用に用いるショートカットを減らしたそうだ。また、『リネージュ』と同様に血盟(ギルド)が重要視されていて、4人どうしが激突するPvPや大人数が同時に集うイベントも用意される予定。
そして、最後に衝撃的なアナウンスがなされた。なんと、本作では日本を含めた8ヵ国でグローバルローンチ(全世界同時スタート)を目指すという。それまでにgoogle+やfacebookのアカウントがつなぎ込めるNCクラウドなる新たなサービスを構築し、スタート以降は全世界で足並みを揃えてコンテンツを追加する。モバイルを意識することで必然的に生まれたアイデアかもしれないが、韓国で開発されたタイトルは現状、日本にローカライズされるまで最低数ヵ月を要しているので、素直にうれしい。
以上が今回発表されたタイトルだ。ここ数年、韓国のオンラインゲーム業界ではモバイル化の激しい波が押し寄せていて、今回のNCSOFTの発表は待ち望まれていたと言う。発表会後半のQ&Aコーナーで「PCオンリーのゲームはもう作らない、すべてをモバイル化させる」とまで断言していたNCSOFTの英断に、まずは拍手を送りたい。なお、上記のタイトルのいくつかは、11月20日から始まるG-STAR 2014にてプレイアブル出展される。時間が許す限り試遊する予定なので、そちらの模様は追ってご報告しよう。