東方Projectによる会場限定公開作品から海外大型インディーゲームに出展した作品まで一堂に介した!
去る2014年11月16日(日)、秋葉原UDXイベントスペースにて、関東最大級の同人ゲーム&インディーゲームの展示即売会“デジゲー博 2014”が開催された。今回が2回目となるデジゲー博は、前回開催の大田区産業プラザから秋葉原UDXへと会場を移し、参加サークルも97から150へと規模を拡大。同人・インディーの展示即売会としては、関東圏で最大規模となる。
当日は秋葉原という土地柄もあり、12時の開催から多くの来場者が訪れ、大盛況となった。とはいえ、今回の開催時間は16時までの4時間だけだったこともあり、150ものサークルが展示するゲームをすべて見て回ることはできない状況だった…。そんな短い時間のなかだったが、今回はとくに惹き付けられずにはいられなかった“魅力的な2Dゲーム”を厳選して紹介していこう。
■『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』(上海アリス幻楽団)
開場と同時に、場内は見渡す限りのサークルとお客さんですぐにいっぱいに。フロアをざっと見渡すと、すでに開場の一角、企画ゾーンに長蛇の列ができていた。何事かと思ったがすぐに納得。同人ゲーム界にその名を轟かせるZUN氏のサークル“上海アリス幻楽団”による東方Project最新シューティング『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』のスコアアタック企画が開催されていたためだ。

ちなみに、初めての方のために簡単に説明すると(以下、ご存じの方は読み飛ばしてください)、東方Projectは、20年以上に渡って同人としてシューティングゲームを中心に、たったひとりだけ制作を続けてきているZUN氏の作品群の総称のこと。その名のとおり、東方の神話や幻想を織り交ぜた世界観は数多くのファンを生んだ。だがなによりも同人界において東方Projectが偉大である理由は、ファンの“2次創作”を許容している点だろう。そのことから、本来はZUN氏個人が創造した東方Projectのオフィシャルな世界観を、ファンがそのまま楽しみながら愛情を膨らませて想像し、そこからさまざまな2次創作ゲームをつぎつぎと発表することに。こうして、いまや東方Projectは、同人ゲーム界で共有されている、ひとつのジャンルとして確立したと言ってもいいほどだ(PS4でこの東方Projectの2次創作ゲームの配信が決定したことでも話題を呼んだことは記憶に新しい)。
そんなZUN氏が2014年5月に頒布した、東方Project14.3弾にあたる『弾幕アマノジャク』を、新たにアレンジしたのが『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』だ。元になっている『弾幕アマノジャク』は、プレイヤーキャラクターとなる“正邪”を狙うボスたちがくり出す回避不可能な弾幕を、反則的な能力を持つ9種のアイテムを駆使して切り抜けていくという高難易度シューティングだった。
『弾幕アマノジャク』PV
だが今回の『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』では、なんと10番目の反則アイテムである“本物の打ち出の小槌”を使って弾幕を大判小判に変えて稼ぎまくるというスコアアタックに特化した山吹色のまばゆい遊びに!


と、そんなふうに、同人界で深く愛され続けてきた「東方Project」とあれば、この行列も納得だ。しかも体験できる『弾幕アマノジャク ゴードラッシュ』は、以前リリースされた『弾幕アマノジャク』のスペシャルバージョンで、なんと今回の“デジゲー博 2014”開場でのみ公開になるという、まさにプレミアムな作品! やはり、これをどうしても遊んでみたいと楽しみにしていたファンが駆けつけたようだ。
スキを見つけてZUN氏に、デジゲー博の魅力と今回の盛り上がりについてお訊きしたところ、「前回からデジゲー博はお祭り的で、すごく雰囲気がよかったけれど、今回はそのまま拡大した感じでいい」、「コミケとはまた違って、実際にゲームを持ってきてこうして展示することで、遊んでいる人の姿を目の前でみられるのはすごく楽しい」と語った。また、「こうしてゲームを作ってきちゃうことなんて、ビジネスではなかなかできないでしょ? これが同人魂です(笑)」とも笑顔で語ってくれた。
■“同人シューティングキャラバン in デジゲー博2014”(エンドレスシラフ)
“同人魂”と語ったZUN氏だが、実際、今回参加した同人系サークルには東方Projectの2次創作作品も多数見受けられた。また、一見東方とは無関係な作品を展示しているサークルも取材をしてみると、じつはその創作の源流には、この東方が多大な影響を与えているということも多かった。
そこでおもしろいのが、そもそもZUN氏が『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』を短期間で制作することになったきっかけだ。じつは、同様に今回出展しているサークル、“エンドレスシラフ”による企画“同人シューティングゲームキャラバン in デジゲー博2014”のためのスコアアタック用ソフトとして制作されることになったという背景があった。

コマンド入力で技をくり出す独特な発想のシューティングゲーム『∀kashicverse -Malicious Wake-』を制作した実力派“エンドレスシラフ”も、じつはZUN氏の世界に多大な影響を受けてゲーム制作を始めたサークルのひとつ。今回の会場で開催された企画“同人シューティングキャラバン”では、彼ら“エンドレスシラフ”ブースをベースに、会場内の同人シューティングゲームを7つ以上プレイして、ハイスコアを集計。その合計得点で賞品をもらえるというものだったが、この企画になんと当のZUN氏が参加したという形になった。
こうしたことが起こるのも、同人ゲームが集うデジゲー博ならではだろう。
※“エンドレスシラフ”公式サイト
※『∀kashicverse -Malicious Wake-』公式サイト
■『C.C.S.B.』(RebRank)
そんな“同人シューティングキャラバン”に参加したシューティングゲームを制作するサークル“RebRank”の現在開発中の最新作も、非常に独特なシステムのシューティングゲームになっていたので、ここでぜひ紹介したい。
『C.C.S.B.』という名のこの作品は、なんと画面を“回転”させることで、敵弾を凌ぐという変わったシステムを採用している。


ブースには、企画を担当したYoko氏とデザインを担当したらいね氏の姿が。思わずこのステージを回すシステムについて伺ったところ、Yoko氏が「元々の発想は視点の変化で、視点をプレイヤーに据えると、必然的にステージが固定されるため、今度はステージ自体をそのまま回転させたらどうかという発想に至った」のだと言う。また、かっこよさを追求したかのようなビジュアルについては、「PSのクールなシューティング『Rez』や、『beatmania』シリーズなどの影響がある」とらいね氏。また、Yoko氏がシューティングゲームを作ってみたいと考えるようになったのは……またしても、やはりZUN氏の東方Projectに触れたことがきっかけだったという。ここでもあらためてその影響力の深さを感じることになったが、そのような東方への憧れから、こうした独自のシューティングゲームを制作するサークルになり、このデジゲー博2014にて同じ企画に参加するようになったのかと思うと、改めて、この会場の空間が不思議に感じてしまった。
ちなみに“エンドレスシラフ”や“RebRank”の面々は、この最新作『C.C.S.B.』を展示に間に合わせるために、前日深夜まで作業を続けていたらしい。そんな彼らに多大な影響を及ぼしたZUN氏だったが、先の『弾幕アマノジャク ゴールドラッシュ』は、なんとたった2日で作ってきてみせたというのだから、もはやひとりゲームジャム状態でもなんなくこなすという、貫禄のようなものも感じてしまったほど(笑)。
そんな中……この2日で限定バージョンを仕上げてきたZUN氏に対抗すべく、16時間でイチからゲームを制作して展示していた同人ゲーム作家がいたのである。いったいこのライバル意識のモチベーションがどこからくるのかは計り知れないが、そのゲームがあまりにインパクトがあったので、ぜひご紹介させていただきたい。

■『ぞうもつの森』(円環再起動計画)
名前ですでに某有名ゲームを彷彿とする本作は、これまた同人界で長年活動を重ねてきたサークル“円環再起動計画”の、へっぽこ氏によるデジゲー博限定公開作品。
ミステリアスな本作だが、その正体は“画面につぎつぎに表示される食べ物が、臓物(ぞうもつ)か否か”を○×で判断していくという、激烈シンプルなゲームだった。
さっそくプレイしてみたところ、画面に“キュウリ”が登場。無論臓物(ぞうもつ)ではない。×。次は、お、分厚いステーキ肉か。これも×。
…!? 即座にゲームオーバー。

何故だ! その後も何度も挑戦したが、次第にかなりの速度で臓物(ぞうもつ)の仕分けられるようになっていった。かなりのバリエーションで旨そうな食材が登場するなか、どうしてもステーキ肉が出てくるたびに、必ずゲームオーバーになってしまうのだ。ついに理不尽な思いがこみ上げ、もしや16時間で制作したとのことで、何か不具合なのではないかと思い、思わずモニターの向かいに座って不適な笑みをうかべる、作者へっぽこ氏に訊いてみたところ……「あ、これステーキ肉ではなく厚切り牛タンですから(笑)」。16時間で制作したにも関わらず、このネタの仕込みっぷり。さらには、「臓物(ぞうもつ)の写真もしっかり写真素材を1枚500円で購入して、さらにそれを美味しそうに見えるように画像加工した」とのこと。しかも「結構な枚数の写真が登場するので、じつはかなり予算がかかった」らしい(笑)。ただ者ではないエンターテイナーのへっぽこ氏だが、改めてどうして同人活動を始めたのかを訊いてみると「元々はコミケの行列に並びたくなくて、サークル参加すれば並ばずに入れる! と思い立って同人ゲームを作り始めた」という衝撃の事実。だが「作ったゲームについて目の前でお客さんが反応してくれてうれしがってくれることにやみつきになってしまって、今日に至る」と笑顔で語ってくれた。

ちなみに、へっぽこ氏は東方Projectの2次創作3Dアクション作品『幻想の輪舞』を手がけるサークル“CUBE TYPE”とドッキングし、“円環CUBETYPE計画”として出展。氏曰く、「こちらがメインですから(笑)」、と過去に手掛けた作品も併せて展示されていた。こちらもぜひチェックしてみてほしい。
※“円環再起動計画”公式サイト
※“CUBE TYPE”公式サイト