映画監督×ゲームデザイナー 『劇場版 零~ゼロ~』“監督(ディレクター)”対談

 2014年9月26日より全国公開予定の映画『劇場版 零~ゼロ~』。本作は、コーエーテクモゲームスが開発を手掛ける人気ホラーアドベンチャーゲーム『零』を原案にした実写映画だ。本稿では、劇場パンフレットに掲載されている、安里麻里監督とコーエーテクモゲームスのゲームデザイナー柴田誠氏の対談のショート版を特別にお伝えしていく。

■映画『劇場版 零~ゼロ~』とは?
 人気ホラーゲーム『零』シリーズの世界観をベースに、マンガ『多重人格探偵サイコ MPD PSYCHO』の原作などでおなじみの作家、大塚英志氏が小説『零 ~ゼロ~ 女の子だけがかかる呪い』を執筆。この小説を原作にして撮影された実写映画が『劇場版 零~ゼロ~』だ。山間にある女学校の寄宿舎を舞台に、学園のマドンナで主人公のアヤ(中条あやみ)とクラスメイトの少女ミチ(森川葵)が、1枚の写真をきっかけに学園内で発生した“神隠し”の謎に迫る。Wヒロインの中条あやみと森川葵をはじめ、小島藤子、美山加恋、山谷花純、萩原みのりなど、次代をになう若手女優たちが出演。

まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_03
まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_04
まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_05
まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_01

制作の経緯~美しいホラーへの試み~

まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_06

◆安里 麻里(あさと まり)
新進気鋭の女流映画監督。黒沢清や塩田明彦、青山真治に師事し、『独立少女紅蓮隊』(2004年)で長編監督デビュー。以降、数々のホラー映画を手掛けており、丁寧な恐怖演出に定評がある。代表作は『バイロケーション』(2014年)。

◆柴田 誠(しばた まこと)
コーエーテクモゲームス所属。『零』シリーズ1作目となる『零 zero』(2001年)からシリーズのディレクターとシナリオを手がけている。最新作は2014年9月27日に発売が予定されているWii U用ソフト『零~濡鴉ノ巫女(ヌレガラスノミコ)~』。

――映画化はどのような経緯で進められたのですか?

柴田誠(以下、柴田) まずゲームの最新作『零~濡鴉ノ巫女(ヌレガラスノミコ)~』の話が先にあって、その後に映画化が決まったのですが、原作をなんと大塚英志先生が書いてくださるということに。それで僕はてっきり、大塚先生が手掛けた『北神伝綺』などの“民俗学3部作”のような、柳田國男などの実在する人物も物語に登場し、民俗学的なアプローチで迫る、虚実ないまぜの、ホラー、アクション、ファンタジーありの知的エンタテイメント作品になるんじゃないかと思っていたんです。しかし、実際に設定の話を詰めていくときに、大塚先生がゲームの『零~紅い蝶』のイメージだと思いますけど、あの少し威圧感のある口調で「『零』の“百合”っぽい要素、イイよね」と。
安里麻里(以下、安里) えっ、“百合”!? みたいな(笑)
柴田 そこから話がトントン拍子に進んでいって、僕が大塚先生に「ゲームの題材は“水の恐怖”で、“神隠しに遭った女の子を捜す”話がモチーフになります。映画『ピクニックatハンギング・ロック』(1975年)のような、現実とつながっているけど、どこか違う世界との狭間の空間に入り込んでしまうかも、という不思議な怖さ、後を引くような空間の演出がゲームのイメージソースです」と説明したら、そこから大塚先生がイメージを膨らませていったようです。田舎が舞台の寄宿舎モノで美少女が登場する原作小説の方向性やシノプシスが浮かび上がってきて、その段階で安里監督にオファーがあったんですよね。
安里 そうです。その話を聞いてビックリしました。ゲーム『零』シリーズの映画化と聞いて、カメラの“射影機”で霊を撮りまくって倒すアクション・ホラーをイメージしていたので(笑)。
柴田 大塚先生から「安里監督ならどちらも撮れますよ」と言われました。大塚先生もどちらでも書ける人ですが、「新しい雰囲気のホラーを作りたい」ということで。
安里 それで、女の子たちが暮らす閉鎖的な寄宿舎を舞台に、幻想的な“美しいホラー”を作ろうということになったんです。そして打ち合わせを進める段階で、いわゆるJホラー的な、霊が夜にボンヤリ出て来るものではなく、“昼”を舞台にした、いままでとは違うホラー映画にしましょうという話になりました。
柴田 光が周り込んでる空間で霊が出て、しかも美少女までいたら、これは新しいホラー映画になるのでは! と、いま思うと、監督にすごく難度の高いリクエストを出したんですよね。
安里 最初聞いたとき思いました。うわー、難度高いなあって(笑)
柴田 ゲームのモチーフとなっている“水の恐怖”の話や、“女の子”の話、そして”美しいホラー”ということで血も出ない。残虐描写もないけど、精神的な怖さがあって……
安里 ストーリーに謎解きもあり。
柴田 それも明快な悪人や犯人がいる、という話ではなくて、少し幻想的な所にオチあるようなホラーという、すごく高いところに目標地点があったので、大丈夫かなと。
安里 本当にハードルは高かったです。
柴田 最初に言ってくれれば(笑)。
安里 ただ、大塚先生から「難度も理想も高いけど、挑戦する価値はあるよ」と言われ、いままで自分がやってきたこと、ここ10年、20年で作られてきた女子高生ホラーとは毛色や手触りが違うモノを撮る価値と意義を感じていたので、難しかったけれど、この方向で撮ってみようと思いましたね。

『零』の世界観構築へのこだわり

――映画撮影でいちばん気を遣われたところはどこでしょうか?

安里 ゲームや小説でしたら、ぶっ飛んだ設定のフィクション度の高い世界を舞台にできるのですが、
映画は実際にある建物を撮りに行ったり、実際にある風景に人を立たせたりするので、場所選びは本当に苦労しましたね。また、10代ならではの醸し出る妖しさを画面に出したくて、女の子をエキストラ含めて10代にしました。彼女たちを20代にしちゃうと、あの雰囲気は出なかったと思います。
柴田 大人になると、顔がしっかりしちゃいますからね。
安里 そこは本当にこだわりました。

――先ほど、“百合”という言葉がキーワードに出ましたが……。

安里 フェティッシュな画の撮りかたは、じつは自分としてはチャレンジだったんですが、思ったより百合感が出ました。耳元で囁くシーンは、編集するとき自分で撮った映像なのに、ちょっと恥ずかしかったです(笑)
柴田 あそこ、イイですよね。個人的には寸止めが1ヵ所くらいあってもよかったのかなと。
安里 あ~~!! 1回くらい止めればよかったですね。いまから撮り直していいですか?
スタッフ 勘弁して下さい(笑)。

――映画を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。
柴田 『劇場版 零~ゼロ~』本当に美しい映画なんですよね。これまでいろいろなホラー映画がありましたけど、これほど美しさに特化したモノはなかったと思います。ホラーとして成立しつつ、サスペンスや青春モノであったりと、いろいろな要素が入っていますが、多くの人に“美しいホラー”です、と紹介できる映画になっていると思います。ぜひ、その“美しさ”を楽しみにしてください。
安里 ホラー映画は、どちらかと言うと、いままで男性をターゲットに作られてきたのかなと。でも、今回の映画は、女性が観ても楽しめるような作品になったと思います。私としては、男性やホラー好きなかたも、もちろんいままで通り観に来てほしいんですけど、ぜひ、普段ホラー映画を敬遠してきた女性の人たちも劇場に足を運んでくれたらなと、と思っています。よろしくお願いします。

……と、ファミ通.comでの掲載はここまで。スペシャル対談の全文を読みたい人は、劇場に足を運んでパンフレットをご購入あれ。

まもなく公開される『劇場版 零~ゼロ~』! パンフレットにはスペシャル対談が掲載されている!?_02