過去9ヶ月間のリリースは1300本以上。紹介しきれないラインアップを市場として壊さない解決策
Valveが、PCゲームプラットフォームのSteamで“ディスカバリーアップデート”を実施した。オススメタイトルを順に表示していく“ディスカバリーキュー”のほか、一般ユーザーによるキュレーションシステムを導入。検索機能の強化なども行っている。
アップデートにあたって発表されたプレスリリースでは、過去9ヶ月間に1300以上のタイトルが追加され3700タイトルを超えたこと、アクティブアカウントが1億を超えたことなどに言及。
誰もすべてを紹介しきれない数のタイトルと、大量のユーザーそれぞれが持つ細かなニーズにどう応えるか? 何もしなければ、不幸にも誰にも発掘されないゲームや、「まさに俺のためのゲーム!」と叫びたくなるドンズバのゲームと巡り合えないユーザーがどんどん増えていく。インディーゲーム市場の爆発的な成長に伴うこの難しい問題へのひとつの回答がこれだ。
Steamで配信してほしいゲームをユーザーに投票してもらう“Steam Greenlight”がプラットフォームとしての判断の一部をユーザーに委ねる仕組みだとすれば、今回のアップデートは配信後のプラットフォームとしてのピックアップや紹介などの一部をユーザーに委ねるものだと言える。(複数アカウント持ちもいるだろうが)なんせ1億アカウントもあれば、たとえどんなにウルトラニッチなこだわりがあっても、同じような好みを持つユーザーやグループがきっとどこかにいるに違いないのだ。
個人的に最も興味深いのはキュレーションシステムだ。Steamのコミュニティグループを通じて、メディア、人気YouTuber(YouTube配信者)、もちろん一般の個人まで、あらゆる人がタイトルを紹介できる(10タイトル以上オススメすると、他のユーザーが自分に合ったキュレーターを探すためのリストに追加される)。
ちなみに、優れたレビューで何本売ったところでアフィリエイトのような収入は用意されていないのだが、オススメ文に合わせて自分のYouTubeビデオやポッドキャスト、ウェブページ、ツイートなどを含むことができるというのがポイント。
近年、ゲーム動画配信の宣伝効果が注目され、それで生活するプロ配信者も増えてきたが、今回のキュレーションシステムは、配信者がこれまでより直接的に売上に貢献するとともに、自分のファンコミュニティをSteamのシステムを通じて拡大できる仕組みともなり得る。あるいは鋭く魅力的なキュレーションから支持を集めた人やグループが、メディアのように機能し始めるというパターンもあるかもしれない。
今回のアップデートにより、新作ゲームの宣伝にあたって配信者にコードを配るといったような手法がさらに一般的になっていくだろうし、恐らくその拡大の過程では“癒着”と疑われるような事例も出てくるだろう。ゲームのプロモーションを巡る環境の変化という点でも、見逃せない非常に重要なアップデートなのだ。