「作り手、ユーザーの両方からPS4の機運の高まりを感じます」(盛田氏)

 千葉県、幕張メッセで2014年9月18日~21日まで開催されている”東京ゲームショウ 2014”。ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)は、東京ゲームショウに先駆け、9月1日にSCEJA Press Conference 2014を開催。そこで多数のプレイステーション4、プレイステーション Vitaタイトルを発表した。同イベントの反響は大きく、国内でもいよいよ本格的にプレイステーション4が加速しそうな勢いだ。そんな状況で新たにプレジデントに就任したのが盛田厚氏。盛田氏はどんな人物なのか、そして今後の国内ゲーム市場にどんな戦略を持って挑むのか――。東京ゲームショウ初日に話を訊いた。(聞き手:週刊ファミ通編集長 林克彦)

「年末に向け、PS4で楽しめる施策を用意しています」SCEJA新プレジデント盛田厚氏インタビュー【TGS 2014】_02
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン
プレジデント
盛田厚氏

――2014年9月1日にSCEJAのプレジデントに就任され、ファミ通.comには初めて登場していただくことになります。読者も盛田プレジデントがどういった人なのか、ということは気になっているかと思いますので、簡単に自己紹介をお願いできますか?

盛田 はい。私がソニーに入社したのは約30年前なのですが、最初は国内の営業部隊に配属されました。当時、MSXというフォーマットがあり、それをゲームPCとして売っていこうという話があって、その営業をやっていました。

――そうだったんですか! では、テレビゲームの黎明期からゲームに携わってらっしゃったのですね。

盛田 はい。いまはMSXをご存知ない方が多くて悲しいのですが(笑)。そのあとイギリスに赴任し、帰国後は経営管理に携わり、8年ほど前にSCEに移って、経営管理の視点からSCEを見ていました。

――この機会におうかがいしたいのですが、お好きなジャンル、差し支えなければ好きなタイトルもおうかがいできれば。

盛田 MSXの営業時代、仕事として、勉強のためにゲームはプレイはしていたのですが、『ドラゴンクエスト』がMSXフォーマットでもリリースされることになり、そこで初めてRPGというものを体験しました。私は夜はお酒を飲みに出かけますし、朝は苦手なほうなのですが、そのときだけは帰宅してから、朝も早起きして出社する前に『ドラゴンクエスト』をプレイするほどハマりました。ですので、『ドラゴンクエスト』には個人的にすごく思い入れがあるのです。先日開催したSCEJA Press Conference 2014で『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』の発表の際に「おかえりなさい!」と言えたことはすごくうれしかったですね。

――たしかに、すごくうれしそうな表情をされていたのが印象的でした。

盛田 また、ここ最近プレイしているソフトで言えば『Destiny(デスティニー)』になります。

――FPSなどもプレイされるのですね。

盛田 はい。腕前は落ちたのでたいへんですけれど(笑)。新しいタイトルはなるべく触れるようにしています。なかなか時間が取れないのが悩みですが。

――SCEJAのプレジデントに就任する際、前プレジデントの河野弘氏からどういったことを受け継ぎ、また今後は、どういったカラーを出していこうとお考えですか?

盛田 河野とは、いろいろ話をする機会があったのですが、河野から引き継いだというよりも、SCEは代々、「タイトルが大事だ」という意識でやってきています。タイトルがなければ、我々だけでは何もできない。ですので、デベロッパー様、パブリッシャー様と密にコミュニケーションを取って、タイトルを大切にしていく、ということは河野もやっていましたが、私も継続してやっていきたいと思っています。カラーというのは、あとから皆さんが感じられるものだと思うのですが、いま自分たちを取り巻くまわりの状況を把握し、それに合わせるにはどうすればいいのかを考えることが私の仕事だと思っています。ですので、カラーは変わっていくもの、むしろ同じ色だといけないと考えています。

――たしかに、ゲーム業界を取り巻く環境の変化はめまぐるしく変わっていきます。それにどう合わせていくか、と。

盛田 はい。そのためにどうするか。就任した翌日、社員のみんなを集めて話したことは、「一丸となってやろう」ということ。同じ目標に向かってみんなで走ろう、と。どこへ向かうかは私が舵取りするつもりでいますので、そこへ一丸となってみんなで走ろうということです。また、それとは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、我々はそれぞれがプロの集団だと思っていますので、各々のやりかたで力を発揮してもらいたい。さらに、我々はエンターテインメント、夢を提供する会社です。自分たちが楽しんでないとお客様を楽しませることはできませんので、明るくエンターテインメントの会社らしくやっていこう、という話もしました。

――エンターテインメントの会社らしい明るい雰囲気といのは、SCEさんの伝統でもありますよね。

盛田 そうですね。弊社の強みがあるとすると、ゲームが好きで、“PlayStation”が好きで入ってきた人間が多いと思うのです。そういったゲームとPlayStationに思い入れがある人が働く会社である、というのは継続していきたいですし、いまの子どもたちが弊社のような会社に入りたい、入ったらこういうことがしたい、と思ってもらえるような会社にしていきたいと考えています。

「年末に向け、PS4で楽しめる施策を用意しています」SCEJA新プレジデント盛田厚氏インタビュー【TGS 2014】_01

――先日のカンファレンスで、プレイステーション4とプレイステーション Vitaが先頭に立って、ゲーム業界を引っ張っていきたい、というお話をされていたと思いますが、現在の日本のゲーム市場については、どのように分析されていますか?

盛田 国内のプレイステーション4のローンチはすごく盛り上がったと思います。ですが、海外と比較すると、需要の勢いが少し落ち着いた、と認識しています。この状況は、プレイステーション4を買いたいと思った人に行き渡り、購入を考えている人は「あのタイトルが出れば購入しよう」と、タイトルを待っている状態。これは作り手側も同じような状況で、どのフォーマットに投資するか見極めていた期間があったと思います。そういった状況から、ユーザーの方も作り手の方も「そろそろだよね」と思っていただける段階にきたと感じています。

――それが、先日のカンファレンスで具体的に表れてきた、と。

盛田 はい。

――ここ最近、クリエイターの方々にお会いして感じるのは、プレイステーション4に向けて「急がなきゃ」という雰囲気です。

盛田 そういう雰囲気は私もたしかに感じます。多数のタイトルを発表したカンファレンス以降、タイトルを待っていまるユーザー様の意識も変わってきたのでは、と期待しています。

――2015年は有力タイトルが多数、発売予定となっています。今後のプレイステーション4のロードマップをお話しできる範囲で聞かせください。

盛田 やはり皆さんの気分が高揚するのは年末に向けてだと思います。まず、そこがひとつの大きな山で、我々にとっても勝負だと感じています。年末商戦に向けては、いままでお待ちいただいているお客様に、「年末に向けてぜひ楽しんでください」といった施策を打ちたいと思います。

――購入したい、と思わせる何かを用意している、ということですね。

盛田 はい。それは順次お知らせいたしますので期待してください。

――プレイステーション Vitaは順調に台数を伸ばしています。プレイステーション Vitaに関しては、どういった印象をお持ちですか?

盛田 プレイステーション Vitaは、型番2000シリーズ以降、堅調に推移しています。また、ソフトが好調だということは、パブリッシャー様も感じていただいていると思います。プレイステーション Vitaは、“いい時期”にきていると思いますので、それをさらにもう一段階、加速させたい。携帯ゲーム機は、ゲームライフのなかで、欠かせない要素のひとつです。ですので、プレイステーション Vita単体というより、プレイステーション4も含め、プレイステーションフォーマット全体としてプロモートしていきたいと考えています。

――プレジデントに就任され、初めての東京ゲームショウです。まだ開場して間もないですが(インタビューは18日、午前中に実施)、印象をお聞かせいただけますか?

盛田 宣伝ぽく聞こえるかもしれませんが、見どころ満載です(笑)。カンファレンスで発表させていただいたプレイステーション4タイトルを多数揃えることができましたし、プレイステーション Vita用タイトルも充実しています。ぜひプレイしてプレイステーションのおもしろさを実感してもいただきたい。一方で、開発中のバーチャルリアリティーシステム“Project Morpheus(プロジェクト・モーフィアス)”では、ゲームの可能性も感じていただきたい。プレイステーション4を核に、プレイステーション Vita、nasne、PlayStation Plusといったネットワークサービスも含め、プレイステーショントータルのサービス体験というのが、“プレイステーションプラットフォーム”の魅力だと思っています。そして、Project Morpheusもその中のひとつとして、引き続き、注力していきたいと考えています

――我々ゲームメディアとしては、もっともっとプレイステーションに盛り上がってもらいたいと思っています。これからそのキッカケとなるタイトルがどんどん出てくるのだと思いますが、最後に今後の意気込みをお聞かせください。

盛田 プレイステーション4のタイトルをお待ちいただいているたくさんの方に、ようやく日本の市場に向けたタイトルを、まずは提示できたかなと感じています。提示したからには、その魅力をお伝えし、盛り上げていくことはしっかりやっていきたい。次のステップとして、パブリッシャー様やクリエイターの皆様とコミュニケーションを取って、また、ユーザー様の意見にも耳を傾けながら、どういったタイトルを出していくか、ということも継続的にやっていくことが重要となります。年末商戦のその先に向けて、一丸となってやっていきますので、ご期待ください。