2014年9月18日から9月21日まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2014。会期2日目の2014年9月19日、ニコニコブースにて行われたトークセッション“ゲーム実況の未来”をリポートしよう。

●TGS 2014の影の主役!? ゲーム実況について激論!

MCはおなじみの渡邊浩弐氏。

 2014年9月18日から9月21日まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ 2014。会期2日目の2014年9月19日、ニコニコブースにて行われたトークセッション“ゲーム実況の未来”をリポートしよう。
 本セッションでは、渡邊浩弐氏をMCに、KADOKAWA 常務取締役でファミ通グループ代表を務める浜村弘一、AppBank取締役の宮下泰明氏、スパイク・チュンソフト プロモーション担当の内田拓郎氏、番組ディレクター兼 ガジェット通信 副編集長のひげおやじ氏の4人をゲストに迎え、“ゲーム実況の未来”という大きなテーマで議論が交わされた。

スパイク・チュンソフト プロモーション担当 内田拓郎氏。『テラリア』での成功例を筆頭に、古くからゲーム実況をプロモーションに活用してきたパイオニア。
番組ディレクター兼 ガジェット通信 副編集長 ひげおやじ氏。ニコニコ公式の長時間実況番組などのディレクション経験が豊富。
AppBank取締役 宮下泰明氏。「AppBankというサイトを作って、社長にマックスむらいという名前をつけて、かっこわるいTシャツを作って着させたのが僕です(笑)」(宮下氏)
KADOKAWA常務取締役、ファミ通グループ・浜村弘一代表。

 まず話題は、このTGS 2014における、“ゲーム実況”の盛り上がりについて。ステージ上のモニターには、今回出展したメーカーのうち、ゲーム実況者を起用したメーカーの一覧が表示されたが、これには「これだけの現象になったのは、間違いなく今年からですね」(浜村代表)と、登壇者一同、改めて驚いた様子。その流れで、現在のゲーム市場におけるゲーム実況の意義、役割について問われた浜村代表は、データを示しつつ、ゲーム市場とゲーム実況の現状について解説していった。

 まず、おもに欧米においては、PS4、Xbox Oneにおいては、ゲーム実況がひとつのコンテンツとして受け入れられており、新世代ハードの普及が急速に進んだひとつの要因となっていると指摘。また、今後も引き続きハードの伸びを牽引するだろうとの見かたを示した。この状況は、かつてカラオケという文化が存在しなかったドイツにおいて、PS2でカラオケソフトをリリースしたところ、カラオケやりたさにPS2が一気に普及した……という現象に近い、と浜村代表。
 一方で、日本では欧米に比べてPS4の普及ペースが鈍く、またSHARE機能も積極的に使われていないというデータもあるとのこと。これには、まだハードのリリースから一度も年末商戦期を経ていないこと、日本向けソフトの不足などの理由もあるが、SHARE機能による配信があまり使われていない理由としては、「すでにニコニコなどでゲーム実況の文化が存在したことが大きいのかもしれないですね」(浜村代表)。また浜村代表は、日本製のタイトルでは、ストーリー上の都合で配信不可設定の部分が多かったり、声優の声が丸ごと配信不可になっていたりするなど、欧米のタイトルと比較して自由さにかけるケースが多いことも、問題点として指摘。欧米のゲームメーカーが、『マインクラフト』の未曾有の大ヒットを目撃してゲーム実況の威力を思い知ったように、日本でも理解が深まれば、状況が変わり、それがPS4の伸びにつながるのではないか、との意見を述べた。

 ここで、日本でもっともゲーム実況への理解が深いメーカーの筆頭格とも言える、スパイク・チュンソフトの内田氏の意見を聞くことになった。ゲーム実況を活用してヒットに導いたタイトルの一例として挙げられた『テラリア』は、『マインクラフト』と同じく、いわゆるサンドボックス型で自由度の高いタイトル。それだけに内田氏は、やはり『マインクラフト』の成功例を参考にプロモーション計画を立て、成果を上げたのだそうだ。内田氏いわく、「プロモーションにおいて、もうゲーム実況は外せない存在なのかなと思っています」とのこと。

●マックスむらい氏の影響力、恐るべし……!?

 家庭用ゲーム機におけるゲーム実況の現状を総括したところで、ここからはスマートフォンにおける状況についての話題に。となると、話の中心になるのは、AppBank取締役の宮下泰明氏だ。ちなみにAppBank社長のマックスむらい氏がニコニコに開設したチャンネルは、ニコニコ史上初めて、登録者数が10000人を突破したとのこと。

 ゲーム実況動画とゲームの売上の関係について問われた宮下氏は、まずスマホゲームの売上は、“プレイヤーがどれだけ遊び続けるかに比例する”と指摘。つまり、実況動画を見られている時間が長いほど、そのタイトルにはユーザーが多くいるということであり、売上も高くなると解説した。ちなみにマックスむらい氏の影響力については、「売上はわからないですが、月に何十億円レベルは動くのではないかと」(宮下氏)。ただしAppBankでは、「僕たちも2013年に、実況という文化すらよく理解しないで始めた人たちなので。どういうビジネスにするかも固まっていないし」(宮下)ということで、広告費などの形でメーカーからお金をもらうことはしていないのだとか。ただし、ニコニコからだけでも、月500円×10000以上のユーザー、というわけで多くの収入を得ているが、これはユーザーから直接もらっている形、と表現していた。

●ゲーム実況のプロ化はいまだ途上?

 続いては、“職業としてのゲーム実況者”という視点のお話に。冒頭でも触れている通り、最近では、ニコニコやゲームメーカーの公式配信番組に、ゲーム実況者が出演するケースが増えている。しかしギャラはかなり安く押さえられているそうで、ひげおやじ氏いわく、公式放送やイベントMCなどで引っ張りだこのドグマ風見氏ですら、「月収18万くらいですね」とのこと。さらに渡邊氏も、「もらったぶん、機材や、お金を取らない放送に使ったりしてしまうので、残らないそうですね」と補足。実際、ドグマ風見氏は、ユーザー生放送に80万円を費やしたり、といったこともしているのだとか。
 プロゲーム実況者の先駆けである“えどさん”&ふみいち”のふたりのように、しっかりとビジネスとしてやっている人たちもいるものの、結論としては、「まだ実況を認めてないメーカーもあるくらいですから。まだ黎明期なんだと思います」(浜村代表)ということのようだ。

●ゲーム実況の諸問題、いまとこれから

 イベントの後半では、ニコニコ生放送で視聴していた視聴者からの質問に答える形でのディスカッションも行われた。その内容も一部紹介しよう。

 まずは、ゲームメーカーの許可を得ていない配信について、こうした問題は解決するのか、それともずっとグレーなままで存続していくのか……? という質問。
 浜村代表は、メーカーの中でも、ライツ部、開発部、宣伝部など部署によって意見が異なり、まとまりきっていないのが現状だろうと指摘。とくにライツ部のような部署は、「謎解きの攻略本や映像で稼ごうとしているのだから、それを勝手に使われたらおもしろくないのは当然でしょう」(浜村代表)。ただし今後は、そうしたことも含めて、トータルで売上が上がることをよしとする、という意思決定ができるようになる必要があるだろう、と浜村代表。とくに最近では、任天堂がYouTubeへのゲーム実況映像投稿を許諾する姿勢を明確にしたり、KONAMIの小島秀夫監督が発表した『P.T.』のように、実況されることを前提に制作されていると思われる作品が現れたり、といったニュースが相次いでいる。「『P.T.』の登場は、世界から尊敬されている小島監督のような方のことですから。大きな、大事な一歩だと思います」(浜村代表)。

 もうひとつ、とくに興味深かった話題が、TwitchがAmazonに買収された件について。これに浜村代表は、もともとAmazonはゲームをまじめに売ってきた企業であり、またAmazonゲームスタジオというクリエイター集団を擁し、みずからゲームを配信もしている企業でもある、と指摘。その視点から見ると、さらにゲームに対してまじめに取り組もうとする一手なのだろう、と分析した。またtwitch側にしても、Amazonほど大きなサーバーを持っている会社とひとつになることで、やれることも増える。両者にとっていいことだろうと説明した。
 これにひげおやじ氏も、ニコニコ市場がAmazonと直結していることから、ゲーム実況がいかに売上につながるかを、Amazonはよく理解していたのではないか、と持論を展開した。

 最後にまとめとして、本セッションの感想と今後のゲーム実況についての、ゲストからのコメントを紹介しよう。

【浜村代表】
 ゲーム実況はまだまだ始まったばかりで、何でもありの状態ですし、何を言われても、何とでも言い返せる状況ですから。いままでやったことがないことをいろいろできて、おもしろいんじゃないですかね。そこからスターがどんどん生まれてくると思います。僕らは、それを理解しようよ、と。それをメディアを通じて広めていきたいと思っています。
【宮下氏】
 ゲーム実況という文化が広まるのはいいことだとは思いますが、ゲーム実況産業は、あまり育たないだろうな、と思っていて。トッププレイヤーの人たちだけがきっちり育っていって、きっちり再生時間と収益を稼いでいくという構造は、より広がっていくんだろうな、と感じています。どういう産業になるのかがあんまり見えていなくて……がんばるしかないのですが、ただ草の根文化的なものではないというのは、知っていてほしいと思います。投稿して楽しむのはいいですが、それがマックスむらいになっていくのかと言えば、そうではないと。そこは二極化が進んでいって、トッププレイヤーはすごいスピードで進化していきます。配信のしかたや、番組の作りかた。ドワンゴさんやYouTubeさん、ほかのゲームメーカーさんと一緒に進化していきますから。それに個人の力で追いついていけるかといったら、それは全然違うんじゃないかなと。トッププレイヤーの動きはずっと見て、どうやってお客さんを楽しませるかは、つねに自分に問いかけ続けてほしいですね。
 あと、ミクシーさんやガンホーさんって、どういう動画にしていこうか、という相談に、本当によくのってくれるんですよ。それで、こうしたら楽しんでもらえるから、と反応を見て、それをゲームに反映させてくれたりもするんです。スマホゲームの二巨頭がそうなんですから、その動きはしっかり見ていかないと、置いて行かれてしまうだろうな、と思います。

【ひげおやじ氏】
 僕はディレクターなので、番組に出ていただいて、ユーザーさんに喜んでもらえればオッケーです。皆さんにこれからも喜んでいただけるように。そして実況者さんには、より楽しく、どうしたら喜んでもらえるかというところで、努力してくれるようにお願いしつつ。その結果、ゲームが売れて、メーカーさんも喜んでくれたらいいなと。なので、結論として、皆さん、ゲームを買ってください!

【内田氏】
 二極化という話がありましたが、誰もがトッププレイヤーを目指す必要はないと思うんです。実況がハードに組み込まれて、簡単にできるようになっているので、趣味の延長としてやってもらって。それが収益につながらなくとも、楽しんでゲームを遊ぶことが広まれば、業界も盛り上がると思います。スマホもコンシューマーも、みんなで盛り上げていければ、みんなが幸せになれるかな、と。だからみんなで楽しくゲーム実況をやりましょう!