昨年10月にPC用フリーゲームとして公開された探索ホラーアドベンチャー『クロエのレクイエム』。今年11月にはゲームを原作とした小説が出版されるなど、さらなる盛り上がりが期待されるこの作品を作った同人ゲームサークル“ブリキの時計”のスタッフ(10代の女性コンビ!)に、『クロエ』誕生のエピソードや、同人ゲーム制作にかける思いを語ってもらった。

●同人フリーゲームの尖った感じに惹かれて……

 昨年10月にPC用フリーゲームとして公開された探索ホラーアドベンチャー『クロエのレクイエム』。今年11月にはゲームを原作とした小説が出版されるなど、さらなる盛り上がりが期待されるこの作品を作った同人ゲームサークル“ブリキの時計”のスタッフ(10代の女性コンビ!)に、『クロエ』誕生のエピソードや、同人ゲーム制作にかける思いを語ってもらった。

▲“ブリキの時計”のメンバー。シナリオとキャラクターデザインを担当するぬばりん(右)は、デザイン専門学校の学生。物語設定の大枠と作中オリジナル曲を担当したななしのちよ(左。以下、ななしの)は学生さん。

──おふたりはいとこどうしとのことですが、どういった経緯でコンビを組むことになったのでしょうか。

ぬばりん もともと私がゲームを作りたくてひとりで1年くらい作っていたんですけど、全然進まなくて。ひとりで考えていると煮詰まっちゃってダメだなということになって、私が高校2年のときに(ななしのさんに)声をかけたのが始まりです。彼女が作曲していたというのもあって。

──小さいころからしょっちゅう顔を合わせていて気心が知れた間柄だった?

ぬばりん はい。家は近所というほどではないですけど、お互いアニメとかゲームが好きだったので、夏休みとかで会った時にそういう話をしていました。

──ななしのさんにしてみれば、ぬばりんさんから突然誘われたという感じなのでしょうか。

ななしの ゲームを作っていることは前から聞いてはいたんですけど、学業のこととかもあって、なかなかすぐには……。

──ぬばりんさんがそもそもゲーム制作に興味を持ったきっかけは?

ぬばりん 中学生くらいのときからPCのフリーゲームが好きで、当時はレビューサイトを見て作者さんのサイトにとんで、ダウンロードして遊んでいました。

──同人フリーゲームにハマると女子中学生とは渋いですね。コンシューマゲームには見向きもせず?

ぬばりん いえいえ、ゲーム全般が好きで、その中のひとつに同人フリーゲームも……という感じです。親もゲームが好きで、家のテレビでいっしょにやっていたんですけど、ひとりで家にいるときにRPGを勝手に進めるのも悪いなと思って、1~2時間で終わるお手軽なゲームを探していました。

──そうしていろいろな作品に触れるうちに、自分でも作ってみようと。

ぬばりん コンシューマーとはまた違った尖った感じというか、作者の人格が出るような独特さがおもしろいなぁと。

■遠慮なく話しあえる仲だからこそできた、二人三脚スタイルのゲーム制作

──おふたりでの制作スタイルは。

ぬばりん 基本的にはふたりで相談して、いい案をものを見出していってます。

ななしの 結構のりと勢いで、大枠が決まったら、さあまとめようかって感じで。

ぬばりん 最初は(ゲーム制作ツールとして使用している)『RPGツクールVX』の操作に慣れるために『クソゲー物語』という習作を2週間くらいで作りました。本当に何も考えず。

──学生にとって『RPGツクールVX』はなかなか思いきった買い物だと思いますが。

ぬばりん 結構高いので、買ってしまったから後には退けないんじゃないかと退路を断つ気持ちで(笑)。

──なるほど。そして『クソゲー物語』から一気に『クロエ』へと。

ななしの その前にわりと長編のRPGを作っていたんですけど挫折しかけて、目先が違うものを作ってみようかと始めたのが『クロエのレクイエム』です。

ぬばりん ちょどそのころ『魔女の家』というフリーゲーム(作:ふみー)をプレイしてホラーゲームの魅力に取りつかれたっていうか、急に作りたくなっていっしょに固めていきました。本当は作っているものを途中で投げ出すことに抵抗があったのですが、いつの間にかどんどん形になってきちゃって「これは企画として出さないと!」と切り替えました。

──ホラーという題材を好きになる下地はもともとあったのでしょうか?

ぬばりん ホラー映画はあまり得意ではありませんが、学校の怪談とか都市伝説とか、少女漫画雑誌にたまに掲載される短編ホラー漫画は好きでした。

ななしの ホラーゲームはしたことがなくて、漫画も映画も見たことがありませんでした。だから『クロエ』を作っている時は、自分の思い描いたホラーを盛り込んでいきました

ぬばりん ななしのさんのホラーは容赦ないホラーなんですよ(笑)。

──ストーリーや舞台設定はどのように決めていったのでしょうか?

ぬばりん 洋館が舞台で殺人事件が起こる。金髪の少年と黒髪の女の子が登場して……と、ビジュアルから貼っていきました。最初は彫刻家が事件のカギを握る人物だったのですが、ななしのさんが音楽の知識があるからということで音楽家に変えました。音楽家ならホラーとの相性もよさそうだし、ゴシックな雰囲気も出るんじゃないかと思って、そっちの方向に進んでいきました。

──そこから細部を詰めて、今の形になっていったと。

ぬばりん じつはプロットを一切作ってなくて、実際の制作に入ってから、クラシック音楽をテーマにしつつ、細かなストーリーを組み立てていきました。

ななしの 私がゲームの基となる枠組みを作って、キャラクターの内面などの具体的な部分をぬばりんさんが作りました。少年少女のドロドロとした深層心理を彼女は描きたいみたいで……。

ぬばりん キャラクターがどう思っているかを掘り下げるのが好きなんです。そうしてできあがったキャラクターには自分の内面も反映されているだろうし、自分が接してきた人たちの内面も反映されているだろうしで、新たな人格を作っているような感じだと思います。

──探索中の謎解き要素はどうやって考えたのでしょうか。

ななしの ふたりで提案しつつ決めていきました。ひとりだけで考えるとうまくいかなくて。このシーンに何か必要となった時に、「こうしたいんだけどどう思う?」と言ったら「それはこうしたらいいんじゃない?」って言われると、うまくおさまるんです。問いかけにたいして答える……というやりとりが基本でした。
 私はあまり探索ゲームをやりませんが、何かを持ってきてと頼まれて、ただその場所に行って届けるだけというよりも、何かひと手間……クイズだったり謎解きを入れる方が映えるんじゃないかと思うんですけど、彼女(ななしの)がちょっと違っていて……。

ぬばりん 違うっていうか、ぬばりんさんがお使い的なイベントが嫌いっていうのを知らなくて。それがわかるまでは、私が出した案に「これは違う、あれも違う」って言われても「(いい案と悪い案の)どこがどう違うかわかんないよ、もう!」って怒ったりしましたね(笑)。

──そういう、思惑のすれ違いによる衝突は結構あったのでしょうか?

ななしの 昨日もおとといも言い合いました(笑)。『クロエ』の番外編(※現在制作中の『クロエのレクイエム -Con amore-』)の話で。ミッシェル君が演奏するクラシック楽曲のバイオリン音源がどこにも見つからなくて演奏家に頼むことになったんですけど、誰に頼むかですごいケンカになって。

ぬばりん 気が強いんです、ふたりとも。

──そうは見えないですが……(笑)。意見がぶつかったときは、最終的にどっちかが折れるんですか?

ぬばりん 音楽に関しては私が折れます。ただし、シナリオに関しては折れません。

ななしの ピエール君を出すことに私は反対していました。そこで入れるか入れないかで言い合ったり……あとはミシェル君の過去編が長いとか。だいぶカットしてもまだまだ長くて、結局は仕方ないかと。

──そうやって容赦なく言いあえる関係だからこそ、という面もありそうですね。

ななしの ときにぶつかって「ゲーム作ってらんねえよ!」って一週間くらい連絡とらなかったこともあるけど、最終的には仲直りして形になっているので、これはこれでいい関係だと思います。

■学業と両立しながらの”ゲーム制作・夏物語”

──『クロエ』の実質的な制作時期と期間について教えてください。

ぬばりん 始めたのは去年の7月下旬です。夏休みの終わりまでに完成させることを目標に。

──夏休みとはいえ、学業と並行させて進めるのは大変だったのでは?

ぬばりん 私は創作イラストなどを学んでいる専門学校生なので”ゲーム作ること自体が勉強”という節もありますが、それでも課題をちゃっちゃと片づけながら、集中して作業できる時間を作っていました。

ななしの 私はとある作曲家の経歴や作風について調べるという音楽系の課題が出ていたのですが、『クロエ』を作る時に調べたものをそのまま提出しました。自由研究レポートの表紙も『クロエ』のイラストにしたり(笑)。

ぬばりん 結局、夏休みが終わった時点では70パーセントしかできませんでした。残り30パーセントが結構大きくて、9月に入ったら学校も始まっちゃうし「もう絶対無理!」ってなりました。ただもうひとつの目標に「“ニコニコ自作ゲームフェス(2)”に応募したい」というのがあったので、その締め切りに間に合わせようと切り替えました。

──ゲームを発表する場に“ニコニコ自作ゲームフェス”を選んだ理由は?

ぬばりん 『クロエ』を作り始めようとした時、せっかくだからコンテストに出してみたいよねって話していたらたまたま見つけて、一番締め切りが近かったから……。

──そうだったんですか(笑)。では切り替えてからはスイスイと。

ぬばりん 黙々と。ただもう黙々と手を進めるだけでした。ここは根性で乗り切るしかないと思って。結局9月いっぱいかかったんですけど、応募にはギリギリ間に合いました。

──ななしのさんはご自身で作曲されているんですよね。『クロエ』ではどのくらい作りましたか?

ななしの 同じ曲のアレンジで5~6曲くらいです。オーケストラバージョンはいま聴くと「全然オーケストラじゃねえよ」って突っ込みたくなるけど(笑)、それまでは使用楽器が7~8つくらいだったのがあの曲だけで30近く使ったので、一番苦労しました。『クロエ』を作っているときは……というか1、2カ月前まで親のお古のPCを使っていたんですけど、低スペックで作曲ソフトがまともに動かなくて大変でした。

ぬばりん ほんとに苦労していたよね。

ななしの ゲーム公開の3日前までずっと作っていて「もう完成しない!」って言っていました(笑)。できなかった時用の別の曲も予備に作ってあったんですけど、とりあえず形に。

──ゲームが完成した時はさぞかし達成感があったのではないでしょうか?

ぬばりん 完成したことに感動してしばらく無気力状態でした。燃え尽き症候群みたいな。

■なぜ彼女たちは表現手段として“ゲーム”を選択したのか?

──そうして完成した『クロエのレクイエム』は、“ニコニコ自作ゲームフェス2』で見事敢闘賞を受賞しましたね。

ななしの 『クロエ』を作り始めようとしたとき、せっかくだからコンテストに出してみたいよねって話していたらたまたま見つけて、一番締め切りが近かったから……。

──(笑)。その後“ふりーむ!”(⇒こちら)で配信されているゲーム本編やゲームプレイ実況動画などを通して話題になり、KADOKAWAから小説版が発売されるなど、影響力の強いコンテンツに成長したことについては?

ぬばりん 正直まだ実感がわかなくて、すごいのかどうかよくわかっていません。

ななしの ゲームを作る前から憧れていたイラストレーターさんが『クロエ』の絵をアップしているのを見ると、すごいことになっているのかなとは感じます。

──ご両親は、娘がゲームを作っていることはご存じでしょうか?

ぬばりん はい。親は“ドラクエ世代”のゲームファンで、『クロエ』もプレイしています。ノリノリな感じでいろいろと聞いてくるんですけど、はいはいって受け流しています。

──他作家さんとの交流面などの広がりは?

ななしの “ニコニコ自作ゲームフェス”受賞者の懇親会に参加した時、とあるゲームの作者さんと知り合って仲よくなれました!

ぬばりん 作風は人それぞれですけど、ゲーム作家さんたちはゲームを作るのが好きっていうのが大前提で、ゲームの話をする時は目が輝いていました。自分の周りには、ゲームはやるけど自分で作るまではいいって人ばかりなので、貴重な機会でした。

──どのあたりが受けた理由と自己分析されていますか?

ぬばりん クラシック音楽を基調にしたゴシックな世界観の雰囲気をうまく出せたことは個人的に気に入っていますが、暗い話で尖った部分を全面的に出していた作品なので人を選ぶ作品とは思っていました。作りたいものを作ったら、たまたまプレイヤーさんが持っている感性と一致したんじゃないかなぁと。ゲームプレイ実況している方は同じくらいの年齢の女性が多いので。

──逆に、作者が10代の女の子と知って驚いた人も結構いると思いますよ。

ぬばりん そうなんですか? 同人ゲームは若い人が作っているのが当たり前と思っていました。

──いやあ、ジャンルによってはかなり……それはさておき、女の子でアニメ・ゲーム好きというとイケメンな男性キャラクターに熱を上げるといった方向性もあると思うのですが、おふたりはそちらにはいかなかった。

ぬばりん カッコいい男性は嫌いじゃないですけど、どっちかというと可愛い女の子の方が好きなので(笑)。少女漫画を読んでも主人公が一番好きになるタイプなんです。

ななしの 私はこてこての美少女ゲーム好きですね。年間20本くらいプレイしています。ゲームのイベントにひとりで参加すると、周りが男の人ばかりで「あれー?」って(笑)。

ぬばりん ひょっとしたら、私たちの考えるイケメン像が少しずれているのかもしれませんね。

──そういった部分も含めておふたりが変わっているなぁというか不思議に思うのは、数ある表現手段の中からなぜゲームを選んだのだろう? ということです。お話を聞く限り、ゲーム制作への関心も世代特有のものではなさそうですが。

ぬばりん 私はRPGの、世界の中に入り込んで、その世界の中のものを見たり聞いたりするのが好きなんですけど、それは音楽とイラストと文章があって実現している世界観があるからだと思います。いざ自分が世界観を表現するとなったときに一番適していたのがゲームだった……ということかもしれません。

──ななしのさんはもともと作曲を勉強されていたとのことですが、純粋に作曲することとゲームのBGMとして曲を作ることの違いはあるのでしょうか。

ななしの ゲーム音楽は、シナリオを引き立てるもののひとつだと思っています。フリーゲームでは先ほども話題に出た『魔女の家』のオリジナル曲がよかったですね。イラストも描けて物語もすごくて音楽も作れるなんて、作者さんすごいなぁって。

■『クロエ』の今後、そして小説版への思い

──『クロエ』がゲームプレイ実況されることに関してはいかがでしょうか。

ななしの ゲーム配信直後に「実況してもいいですか?」と連絡が来たときは喜びました。知らない人が自分たちのゲームに興味を持ってくれたことが単純に嬉しかったですね。内容面では、実際に初めてプレイした人の反応を見られるので、とても参考になります。

ぬばりん 思い通りのリアクションがあった時は「よっしゃー!」って喜んだり。

──クリエイター目線ですね。ゲームプレイ実況動画にはそういった面以外にも、誰もが労せずしてエンディングまでの展開を見られるという、作り手にとっては痛しかゆしな面もあるかと思うのです……。

ぬばりん 実際にプレイしてもらうことももちろん大事ですけど、スマートホンしか持っていない人やMacユーザーはプレイできないじゃないですか。そういう人にも『クロエ』の世界観を感じてもらえる機会になっているので、そこはいいかなと。

ななしの プレイ実況動画を見ていただけるでもありがたいですね。わざわざお時間をいただいて……って。

──現在はフリーゲームという形で作品を発表されていますが、今後の方向性は。

ぬばりん 将来ゲーム業界に行きたいと思っています。ゲームをプロとして作って世に出すのは夢でもあります。

ななしの 最初に(『クロエ』の前に手掛けていた)RPGを作ると決めたとき、登場キャラのシールが貼られている作曲用ノートを貰ったんですけど、その1ページ目に「将来の夢:ゲームクリエイター」って大きく書いてあって。なれたらいいなと。

ぬばりん ただ商業でとなると自分の好きなものばかり作れるわけではないので、そのへんは考えどころですが……今やっていることは将来につながると思うので、学生のうちにできることをひたすらやるしかないなと。

──さしあたっては『クロエのレクイエム』が、望むと望まざるとにかかわらず活動に影響を与えると思いますが。

ななしの 『クロエ』は私たちの子どものようなものなので、親子はいっしょにつき合っていくものなのかなと思っています。まったく違うものを作りたいとか方向転換してみたいと思うのはなきにしもあらずですけど、時間が経ってからプレイし直してみると「この時の私、なんて冴えていたんだろう!」って昔の自分に助けられた面もあって、『クロエ』には誇りを持っています。今後も長く愛されてつき合っていけるのなら、本望です。

──ちなみに、11月に刊行される小説は監修という形で携わってらっしゃるのでしょうか?

ぬばりん 私たちからや作家さんからも結構案を出して、本編からかなり内容を広げたものになっています。

ななしの 本編ではあえなくカットした細かい描写や心情が描かれており、深みが増していま
す。物語が主人公のミシェル君以外の視点でも語られて、心理的な面が特化した形で楽しめるんじゃないかと。

ぬばりん 読ませていただいたのですが、「あ、こんな風になってたんだ!」とファン目線で単純にとてもおもしろかったので、ファンの皆さんも期待していただいていいと思います。

■“ブリキの時計”作品に貫かれているテーマ

──最後に、今年8月に公開した新作『幻想乙女のおかしな隠れ家』について伺います。こちら『クロエ』とだいぶ趣きが異なる作品のようですが。

ななしの 『幻隠』はさまざまなところで実験をしていて、最初は明るくギャグが入っていたりと、始終暗い『クロエ』とは真逆な作りにしています。詳しくは説明できませんが、”じわじわくる恐さ”を表現してみました。

ぬばりん 『クロエ』で使っていた驚かせ系の演出を封印しています。人によっては「こんなのホラーじゃない」と思うかもしれませんし、いかにもホラーな作品よりも怖く感じる人もいるかもしれません。シナリオも『クロエ』が物語固定の王道タイプだとすると、『クロエ』が物語固定の王道タイプだとすると、こっちはプレイヤーが自由に解釈できる余地がある変化球タイプですね。

ななしの 絶対的に悪、という存在は作らないようにしました。視点によって悪者が変わるのも実験作ならではというか”フリーゲームだからこそできるゲーム”を意識して制作しました。これが受け入れられなかったら、また方向転換が必要かなと(笑)。

──サークル“ブリキの時計”作品の根底に流れるテーマ、共通点はどのようなものだと捉えていますか?
ななしの 世界観の作り込みと、少年少女の心理描写。ここは一番大切に扱っています。

ぬばりん 『クロエ』の前に作っていたRPGはまさにその極致といえる作品なので、ちゃんと形にしたいですね。

──それはいつごろになりそうですか。

ぬばりん 来年いっぱい……?

ななしの だといいなぁって(笑)。

■インタビューを終えて……

 彼女たちは、物心ついた時から身近にテレビゲームがあって、小学生のころからからPCを使いこなして“ニコニコ動画”などのインターネットサービスを利用していた、いわゆるデジタル・ネイティブ世代。ゲーム好きな若者が「自分でもゲームを作ってみたい」と思うのは、8ビットパソコンが普及し始めた1980年代初頭からごくふつうにあったことだが、そう思うのが女の子で、しかもいざ作るとなった時に制作意欲を妨げない便利なツール環境が揃っているのは、現代ならではである(実際、彼女たちはゲーム制作時にプログラミングしていない。『RPGツクール』のスクリプト作成に挫折しても、別の手段を講じて望みの機能を実装している)。

 『クロエ』が注目を浴びるきっかけとなった“ニコニコ自作ゲームフェス”を運営しているドワンゴの斉藤氏によれば、応募作品の多くは、大手メーカー作品への対抗意識がなく、ひたすら自分の世界を追求したタイプのものだという。そこには、IP(知的財産)の重要性を知る第三者からすれば見ていられない稚拙さや無防備さがある反面、お金や知識、経験では代えがたい”自由な世界の広がり”が、確かに存在する。陣営や戦略といった概念を基準にテレビゲームを捉える癖がついていた筆者は、「漫画を描く、小説を書く、ゲームを作る……というのが同列にあって、その中からゲームを選んだって感じ」というぬばりん氏の言葉に、何とも言えず胸のすく思いがした。