オリジナルアニメ『Under the Dog』が日本時間の2014年9月8日0時53分にクラウドファンディングサイト、Kickstarterにて行っていた出資応募を終了した。”OTAKON 2014”で制作発表されてから約1ヵ月。最終的にKickstarterアニメーション部門で歴代1位の支援金額を集めるという記録を達成した。奇跡的な展開となった『Under the Dog』。イシイジロウ氏のコメントとともに、改めて目標達成、そして記録を更新して世界一となるまでの道のりを振り返る。

●ひとりひとりの想いが”世界一”へとつながった

 2014年9月5日、ファミ通.comでもお届けしたように(⇒記事はこちら)、『Under the Dog』の支援募集期限があと3日と迫った時点では、50万ドルを超える支援金額が集まっていた。目標金額まであと8万ドル。『Under the Dog』は、ここからの勢いがすごかった。9月4日から9月5日にかけてハイペースで支援が集まり、早朝8:30ごろ、ついに目標金額である58万ドルを突破。目標を達成し、見事『Under the Dog』は、第1話、本編24分のアニメーション制作が決定した。だが、勢いはここで止まらない。稲船敬二氏、ヨコオタロウ氏からのエールの効果もあってか、支援の勢いはさらに加速していく。9月6日23:40ごろにはアニメーション部門で3位、日が変わった9月7日0:10ごろには2位となる金額に到達。圧巻だったのは、タイムリミットがあと30分と迫ってからだ。世界一まであと24069ドル。多くの人が固唾を呑んで見守る中、時間の経過とともに増え続ける支援額。タイムリミットまであと8分となったとき、Twitterにてイシイジロウ氏はつぎのようにつぶやいた。

「『Under the Dog』あと8分で86万3921ドル。世界一まであと8212ドル。なにが起きてる?神風?…皆さん最後の!最後の応援お願いします!」。

 イシイ氏の願い通り、神風は吹いた。タイムリミットを迎えたときに表示された支援金額は合計87万8028ドル。支援者数は12157人。アニメーション部門の支援金額の記録を塗り替え、『Under the Dog』は世界一を達成した。9月8日0:53、『Under the Dog』の出資応募は終了。以降、支援者との交流は公式サイトで行われ、クレジットカード決済サービス”PayPal”経由で増資を受け付けることになった。PayPalは日本の公式サイトがあり、決済方法なども日本語で説明されている。日本からKickstarterで支援する際には英語の表示に戸惑うことがあったかもしれないが、PayPalは日本語によるアナウンスがあるため、やりとりはスムーズに進められるだろうし、国内のファンも増えていくことだろう。

 奇跡とも言える輝きを見せた『Under the Dog』。支援者のもとには2015年12月に完成品が届く予定だ。『Under the Dog』がどんな作品になるのか、支援者の多くがいまからワクワクしていることだろう。最後に、イシイジロウ氏から特別にいただいたコメントを掲載するので、氏の言葉と合わせて、期待に胸を膨らませてほしい。

【イシイジロウ氏からのコメント】

 「宝ものは / 綺麗に箱に詰めて / 大切に / しまい込み / 隠して欲しい / だってすぐに / 誰かが忍び込んで / それをただ / 憎むべきものに変えるから」。すべてはGREAT3の『Under The Dog』の一節から始まった。1997年、駆け出しのゲームデザイナーだった僕が感じたこと。自分の心の奥の大切な部分から何かを生み出し、世に問うたなら、それはきっと誰かの手によって汚されてしまうのだろう。僕はそれに耐えられるだろうか? そんな思いを胸に僕はオリジナルアニメの原作企画を書きあげた。そして17年が経った。

 2014年。僕のそんな思いとともに冷凍保存されていたその原作企画は、ふとしたきっかけで世界に放たれた。クラウドファンディングのインディーズアニメという形で。それが『Under the Dog』だ。

 今回ほど人の繋がりを感じたことはない。まだ不確かに見えるこのシステムに協力・賛同いただいた安藤監督、キネマシトラスさん、オレンジさん、コザキさん、影から支えてくれた皆さん。彼らの力で、僕の目の前に凄まじいクオリティのPVが上がってきた。この作品の完成を観たいと心から思った。

 しかし現実は厳しかった。クラウドファンディングは中盤失速した。

 「成功は難しいのか?」と多くの人が思った。しかし、この局面で多くの人がこの企画に救いの手を差し伸べてくれた。小島監督、松山洋さん、稲船敬二さん、ヨコオタロウさん、そしてGREAT3の片寄明人さん……と名前を挙げるときりがないほどに。みんなの応援が始まると同時にファンド額はぐんぐんと上昇した。まるで奇跡をみているようだった。アジアの片隅で羽ばたいた蝶がアメリカやヨーロッパで嵐を起こしたのかも知れない。

 そして『Under the Dog』のクラウドファンディングは成功した。アニメーションジャンル世界一という最高の形で。

 『Under the Dog』は17年の時を経て世界に晒される。それは、汚されて、憎むべきものに変わってしまうのだろうか? 違う。17年前とは違う。この作品は僕が心から信頼できるスタッフによってフィルムになるからだ。僕はただこのフィルムの完成を座して待つだけだ。12157人のバッカーの皆さんとともに。

 最後に『Under the Dog』クラウドファンディングを実現・成功させたCIA由良夫妻とそのPRスタッフに最大の敬意と感謝を伝えたい。

 2014年9月10日 犬の下で……。イシイジロウ