Twitterで展開される新しい“立ち読み”

 本日(2014年7月2日)KADOKAWAは、Twitter Japanの協力のもと開発した、Twitterのタイムライン上で電子書籍が読めるepubビューワーをサービス開始した。
 
 また、同日に東京ビッグサイトで開催された“第21回 東京国際ブックフェア”のセミナースペースにて、本サービスについての発表会が開催されたので、以下にその様子をお届けする。

Twitterのタイムライン上でepubが読めるサービスがスタート ありそうでなかった世界初の試み _01
▲角川歴彦氏

 まず初めに登場したのは、KADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏。角川会長は、調査の結果、月に一度も書店に足を運ばない人が約50%にのぼることや、電子書籍を一度も購入したことがない人が90%近く存在するなどのデータを紹介し、その上で、「プロモーションにおいて、書店に行かない層も、電子書籍を買わない層も無視するのはいけません。ぜひとも、書店に足を運ばない方々に、書籍を読んでもらえるようにしていきたい」と語った。また、「私は21世紀型の出版社とは何だろうと常日頃から考えておりました。私が若いころは、自分の好きな物を納得いくように作れば読者がついてきてくれるという時代でした。しかしいまは、そういった時代ではないように思います。読者のことを真剣に考え、さまざまなコンテンツを駆使してプロモーションを展開していく必要があります。そこで、日本で大成功をおさめているTwitterで、立ち読みのように気軽に電子書籍が読めるシステムを考えました」と、epubビューワーの開発の趣旨についてコメントした。

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▲福田正氏

 続いては、角川アスキー総合研究所代表取締役専務の福田正氏が登場。「いままでは、自分がおもしろいと思った作品をTwitterで紹介する際は、その作品が紹介されているサイトのリンクをタイムライン上に貼るのが普通だったと思います。しかし、本システムを使えば、タイムライン上で直接試し読みをすることが可能となります」と、詳しい説明を開始。
 本システムを使用すれば、ツイートを見たユーザーが気軽にページをめくることが可能になるため、電子書籍の活性化が期待できるという。また、タイムライン上の試し読みを最後まで読み切ると、ワンクリックで電子書籍の購入ページに飛ぶことも可能で、その作品をリツイートすることでフォロワーにも簡単に紹介できる。これにより、読者どうしのソーシャルリーディングが促進される。なお、購入ページは、現在はKADOKAWAグループの電子書籍ストア“BOOK☆WALKER”に飛ぶ形だが、今後他社との協力を検討していくという。


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▲Twitterのタイムライン上で、電子書籍の試し読みができる。ありそうでなかった、世界初の試み。

 つぎは、KADOKAWA代表取締役専務の井上伸一郎氏と、月刊少年エースに『東京ESP』を連載中の漫画家・瀬川はじめ氏が登場し、システムを実際に使用したデモを披露。

 タイムライン上への埋め込みは簡単だ。手順は、
(1)配信サイト(Tw-epub)にアクセスし、作品を選択
(2)作品詳細ページのツイートボタンでツイートする
(3)完了
 といった流れ。
 
 井上氏がタイムライン上に『東京ESP』を埋め込む様子を見た瀬川氏は、「これは我々作家にとってすごくうれしいシステムですね。作品を気軽に読んでもらえそうです」と本システムを絶賛した。井上氏は、埋め込まれた書籍をめくりながら「まさに立ち読みのような気軽さですよね。最近は、書店に行っても本がビニールで封じてあって読めないことが多いですが、電子書籍ならそんなこともありません(笑)」とコメント。
 本システムでタイムライン上に埋め込めるのは、配信サイト(Tw-epub)に登録されている作品に限られるが、すでに20000点を超える作品の掲載依頼があるらしく、品揃えにも期待が持てそうだ。

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▲井上伸一郎氏(左)と、瀬川はじめ氏。
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▲牧野友衛氏

 最後は、Twitter Japanメディア事業部執行役員の牧野友衛氏が登壇した。牧野氏は、「日本はアメリカのつぎにTwitterユーザーが多い国ですので、相対的にTwitterでのPRは有効です。また、Twitterユーザーはマンガを読む人の割合が多いという統計もあります」と、本システムがTwitterのユーザー層とマッチしていることに言及し、有効性を改めて強調した。なお、epubビューワーでは、マンガのみならず、小説なども埋め込むことができるとのことだ。

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▲Twitterユーザーは、マンガを読む人が多いようだ。

 Twitterを通して簡単にコンテンツを配信することができる本システムは、国内電子書籍市場と国内文化の海外発展を促進するためにも有効だと思われる。また、本システムは特定の出版社に限定利用されるものではなく、出版業界全体の作品流通に活用できるオープンな業界横断プラットフォームにしていくとのことなので、今後の展開に期待が持てそうだ。
 煩わしい手順なしに、気軽に利用できるサービスなので、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。

(取材・文 ボイス塩宮)