家庭用ゲーム機がインディーに力を入れるのは当然
2014年6月10日~12日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて世界最大のゲーム見本市E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2014が開催された。E3はとっくに終わってしまったが、ここでは会期中にお伝えしきれなかったトピックをご紹介したい。会場に出展されていたIndieCadeブースだ。IndieCadeは、インディーゲームをサポートすることを目的に、2005年に設立された団体。E3には8年前から出展しており、最初はとても小さい展示から始まり、徐々に規模を大きくしてきたという。IndieCadeの大きな活動のひとつが、年に1度実施されるInternational Festival of Independent Games(IndieCade Festival)で、今年は10月9日~12日まで開催予定(⇒公式サイトはこちら)。ただいまどの作品を出展するかセレクトしており、その候補作の一部がE3に出展されているのだという。フェスティバルディレクターのサム・ロバーツさんにお話を聞いてみた。
――ここ数年、日本ではインディーゲームが盛り上がりを見せていますが、世界的にはどうなのでしょうか?
サム アメリカ・カナダでは、ここ10~12年ほどで成長してきています。ヨーロッパでは、それ以前から一風変わったアート的な作品はありましたが、ここ10年くらいから幅が広がり始め、いわゆるインディーゲームが増えてきていますね。
――最近、家庭用ゲーム機がインディーゲームに力を入れてきていますが、それについてはどう思いますか?
サム 力を入れるのは当然だと思います。インディーゲームはコンテンツの数も多く、多種多様です。従来からあるゲームを楽しむ層はすでに飽和状態に達しており、マイクロソフトやソニーは、家族のほかのユーザーを取り込みたいと思っているのではないでしょうか。インディーゲームは、コアゲーマー向けのものもありますが、シンプルなパズルやストーリーを楽しむゲームもあります。幅広さがインディーゲームの魅力ですね。
――ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のブースでは、大手メーカーのゲームとインディーゲームが区別なく展示されていて印象的でしたが、こちらについてはどう思いますか?
サム とてもいいことだと思います。長いことインディーゲームを応援してきた者にとっては、やってきた甲斐があったと感じます。SCEブースでは、まったく対等に扱われていてうれしいです。インディーゲームデベロッパーの努力が報われるのは、喜び以外の何ものでもありません。大手メーカーによるゲームもインディーゲームも、ゲームの種類は違いますが、いずれも開発者が情熱を持って一生懸命作ったものだからです。
ほかのメディアを見ても、よいコンテンツがあれば、ほかと同じように扱われます。たとえば、インディー映画を作って賞賛を受ければ、全国の映画館で上映される。近年は、大手スタジオが制作した映画や、有名レーベルがリリースしたアルバムから離れて、ほかのタイプに触れたいという方が多くなっているのかもしれませんね。
――今後のインディーゲームシーンはどうなると思いますか?
サム インディーはさらに成長すると思います。ある意味で“破壊”が起きているんですね。従来からあるコンテンツの作りかたはまだまだ通用しますが、新しいゲーマーを獲得するのが難しくなってきた。テクノロジーが変わり、開発費が高騰化し、ゲームをプレイする時間も長くなってきました。そこから違うゲームの作りかたを追求するようになってきた。ゲームを遊んで育ってきた若者は、言葉で表現する以外にゲームで自己表現をする。カルチャーのシフトが起きているんです。これはアメリカに限ったことではありません。日本、中国、韓国でもインディーゲームの動きが活発になっています。シフトはちょうど中間点くらいのところにあるので、これからもインディーの成長は続くでしょう。“革命”にはならないかもしれませんが、全体のエコシステムの一部にはなっていく。インディーがゲーム市場全体の一部を占めるようになるんです。
――日本の動向についてはどう分析されますか?
サム 10年ほど前に認識していたのは“同人”でした。作ったゲームをシェアする独自のコミュニティーを作っていて興味深かったですね。そのうちに開発スタジオで仕事をするのではなくて、自分で独自にゲームを作り、自分でリリースする人たちが出てきました。“IndieCade Festival”にも、日本から応募されてきた方もいますよ。BitSummitも開催されるようになりましたし、動向には注目しています。
サムさんも日本のインディーゲームシーンには、大いに注目しているようだ。さて、せっかくなので、サムさんに出展していたなかからおすすめのタイトルを教えてもらった(3本くらい……とお願いしたのに、なぜか4本も!)。
まずは、Capybara Gamesの『Below』。2013年のマイクロソフトのブリーフィングでもお披露目されていたが、独特な世界観を持った作品だ。おつぎが『Xing The Land Beyond』。開発を手掛けるのは、サンフランシスコやアリゾナなど離れた場所に住んでいる3人からなるWhite Lotus Interactive。死後の世界を探索するアドベンチャーで、Oculus Riftに対応しているのが特徴だ。3本目は『Close Castle』で開発を担当するのはSirvo。4人プレイによるタワーディフェンスゲーム。「おそらくコンシューマーになるのでは?」とサムさん。最後がStudio Beanによる『Choice Chamber』。Twitchのストリーミングを使って、ゲームプレイを見ている人がチャットをしてゲームを変えていくというゲーム。武器のパワーアップやチャレンジの追加、難易度を上げたり下げたりできるのだとか。
というわけで、E3会場でインディーの最先端に触れた記者なのでした。
(取材・文 編集部/F)