『リリィ・ベルガモ』が、『LET IT DIE』に?
E3 2014の、ソニー・コンピュータエンタテインメントのカンファレンスで、突然の公開となった新作タイトル『LET IT DIE』。屈強なプレイヤーどうしがバトルをくり広げる、実写映像を含んだ映像が公開されたが、これがまた謎だらけ。はたして本作の正体は? ということで、ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役の森下一喜氏と、グラスホッパー・マニファクチュア代表の須田剛一氏にインタビュー! その模様と、注目のスクリーンショットを一挙公開する。
『LET IT DIE』
エグゼクティブプロデューサー
森下一喜(もりした かずき)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長CEO
兼エグゼクティブプロデューサー
1973年新潟県生まれ。ソフトウェア開発会社を経て、2000年オンラインゲーム受託開発会社を創業後、2002年にガンホーオンラインエンターテイメント(株)を創業、同時に「ラグナロクオンライン」を日本国内でプロデュース。2004年から現職に就任。現在、CEO兼開発本部エグゼクティブプロデューサーとして、ゲーム開発の制作総指揮をとっている。
【代表作】
・スマートフォンゲーム
「パズル&ドラゴンズ」
「ケリ姫スイーツ」
・家庭用ゲーム
「パズドラZ」など。
須田剛一/SUDA51
株式会社グラスホッパー・マニファクチュア
代表取締役/ゲームデザイナー
1993年にヒューマン株式会社にプランナーとして入社。『スーパーファイヤープロレスリング』シリーズ、『ムーンライトシンドローム』を手がけた後独立し、1998年に株式会社グラスホッパー・マニファクチュアを創立。2013年2月よりガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社のグループ会社となる。ほとんどの作品でディレクター、脚本、ゲームデザインを務めており、その独特なスタイルで構築される世界観は、国内外を問わず熱烈な支持を集めている。
代表作:
『シルバー事件』
『killer7』
『ノーモア★ヒーローズ』シリーズ
『シャドウ オブ ザ ダムド』
『解放少女(GUILD01収録)』
『LOLLIPOP CHAINSAW』
『KILLER IS DEAD』
Twitter:@suda_51
Facebook:Realsuda51
受賞歴
VIGAMUS Award 2013
――聞きたいことは山ほどあるのですが、まず、最初に、『LET IT DIE』は完全新作なのですか? すでに発表されている『リリィ・ベルガモ』との関連が気になるのですが。
須田 これは丁寧に説明したほうがいいですね、森下さん!
森下 ……俺かよ! では、最初に説明させてください。昨年秋に『リリィ・ベルガモ』を発表させていただきましたが、開発を続け、企画を練り込み、プレイステーション4で自分たちが作るべき“ドアクション”ゲームとは何なのかと追求した結果として、『リリィ・ベルガモ』は『LET IT DIE』に昇華しました。ドアクションと非同期のオンラインという根っこのコンセプトに変化はなく、むしろ大事にした結果、サバイバル要素が強力に付加されて、映像でお見せしたイメージのゲームへと進化を遂げたんです。
須田 そういうわけで、ちょっと変わってしまいました。
――いやいや、ちょっとどころじゃないです(笑)。驚きました。『リリィ・ベルガモ』が、コンセプトはそのままに『LET IT DIE』になった、と。……以前に、コザキユースケさんがキャラクターデザインを務めることと、主人公“五百蔵多恵(いおろいたえ)”が公開されていましたが、この点は?
森下 コザキさんに関しては未定です。五百蔵多恵を始めとするキャラクターは、本作には登場しないことになりました。
――なるほど。それは、『LET IT DIE』のゲーム性として、固有のキャラクターは登場しない、ということでしょうか?
森下 そうですね。プレイヤーのアバターが操作キャラクターになることもあって、今回はそういう選択をしています。
――わかりました。追って詳しくお聞きします。ちなみに、いつくらいから、いまの形に変化していったのでしょう?
森下 昨年の年末くらいですね。もちろん、それまでも自分たちが目指すべきゲームを模索しながら開発していたわけですが、年末のタイミングで、大きく舵を切りました。
須田 よりストイックで、サバイバル要素の強いゲームを追及する中で、自然にいまの形に行きついたんです。
――とても思い切った決断ですよね。
森下 でも、僕らにとっては必然の流れなんです。グラスホッパー・マニファクチュアがガンホーグループにジョインして、本作は最初のモノ作りなんですよね。ですから、手探りの状態の時期もありましたし、日々のディスカッションをくり返しながら、お互いのモノ作りについて理解が深まったのも事実です。そして、自然に、こうすべきだろうという結論にいたったんです。
――具体的なターニングポイントは?
森下 ほかのゲームにも言えることですが、新しいゲームになり得るか。つまり、プレイステーション4のユーザーの皆さんに新鮮に感じてもらえるかという点は、議論を重ねました。当然なんですけど、ありきたりなアクションゲームにはしたくないじゃないですか。実際にプレイステーション4が発売されて、スペックが鮮明にわかり、目指すべきクオリティーも見えてきたので、根本のコンセプトをより活かせないかと真剣に検討した、というところがターニングポイントだったと思います。
――タイトルそのものも変わりましたが、これは?
須田 プレイヤーの死の積み重ねによって、ゲームが構築されていくんです。死んだら何もなくなるわけではなく、死ぬことに意味がある。自分の死はほかのプレイヤーに影響を与える。そういったゲーム性を意思表示しているようなタイトルにしたくて、「LET IT DIE」にしました。
――死ぬことに意味があるとは、具体的にどういうことなのでしょう?
森下 たとえば、須田が死んでしまった場合、僕のプレイに須田のアバターが登場する可能性があるんです。
――リアルタイムのマルチプレイではなく、死んだときの状態で、他のプレイヤーのプレイに出現する、と。
須田 そうです。ゲーム中にあらかじめセットされている敵はいますが、ほとんどのNPCは、すべて死んでしまったほかのキャラクターというわけです。
――ほお! ということは、映像でバトっていたキャラクターは……。
森下 死んでしまった、ほかのプレイヤーのキャラクターです。
須田 サーバーに“死”のデータがどんどん蓄積されて、それが他のプレイヤーのプレイに影響を与えるわけです。ちなみにプレイヤーは最初、パンイチ(パンツ一丁)にガスマスクという格好です。
森下 その状態から敵を倒して、装備や武器を奪い取ることがゲームの柱となります。だから、サバイバル。ゲーム中に、別の方法で武器などを手に入れることもできますが、基本はサバイバルによる現地調達なんです。ほかにもサバイバル要素はあるのですが、今回はちょっとヒミツです。
――成長要素は?
森下 あります。レベルを上げると強くなって、簡単には負けなくなる、という単純なシステムではないのですが……これも今回はここまでです。
――わかりました。世界観、物語の要素なども気になるのですが、それも今回は……。
森下 ヒミツです(笑)。今回は、ゲーム性の核の部分のお披露目が中心ということで。
――わかりました。死ぬこと自体は、デメリットなのですか?
須田 デメリットではありますが、死ぬことにも意味があるので、一概には言えないんです。
森下 タイトルの『LET IT DIE』は、“死ぬことを恐れるなよ”、“死んでもいいじゃん!”という意味でもありますから。
――映像の中には、複数の武器が登場していましたが、アクション性は?
須田 武器ごとに特徴がしっかりしていて、アクション要素は相当強いです。それこそ、“ドアクション”ですから(笑)。もちろん、まだ言えないドアクション要素もあります。重さや痛みを感じてもらえるアクションになると思います。
――他のプレイヤーを倒しまくると、たとえばランキングが上がったりするのですか?
森下 ランキングは、いまは想定していないですが、自分がどの程度の強さなのかは、明確にわかるようにするつもりです。
――それがプレイヤーのモチベーションにもつながる、と。
森下 そうです。プレイヤーは最初は丸腰のパンイチで、そこからのし上がっていくことになります。最終的には世界トップを目指せるような、そんな仕組みは検討していきます。
――映像には、実写も織り込まれていましたよね?
森下 そうなんです。
須田 いろいろあったんですよね(笑)。
森下 じつは、最初は僕ら、E3にくる予定はなかったんです。『LET IT DIE』のお披露目も、まったく予定していませんでした。
――え!? それがまた、どうして?
須田 SCEさんに本作をお見せする機会があったのですが、とても気に入っていただいて、急きょあのカンファレンスにラインアップしていただけたんです。
森下 ただ、時間がない(笑)。
須田 これはヤバいぞ、と。とはいえ開発チームのクリエイティブはなるべく止めたくなかった。
森下 もちろん、せっかくならいいモノを全世界の皆さんにお見せしたいじゃないですか。それで、いろいろと考えて、あの映像を作ったんです。ゲーム性を伝えるために、ゲーム映像と実写の構成にしたわけです。
須田 じつは、撮影や構成は、すべて映画監督の山口雄大さんにお願いしました。
――そうだったんですね。
須田 そうなんです。このインタビューを読んだあとに、ぜひもう一度、映像を観てほしいですね。改めて観ると、非同期オンラインの流れも含め、ご理解いただけると思います。
森下 最終チェックをしたのは先週だよね(笑)。本当にギリギリだった。
――(笑)。でも、インパクトがありました。「これは何だ!?」っていう驚きがありました。ハイクオリティーですし、須田さん始め、グラスホッパー・マニファクチュアらしさも感じました。PS4オンリーですか?
森下 PS4でやることは確実です。そのほかは未定ですね。あと、『LET IT DIE』は、フリートゥプレイです。
――え?
森下 フリートゥプレイです。
――えええ! いや、驚きました。でも、ガンホーさんらしいチャレンジですね。PS4のハイクオリティーなアクションゲームが、フリートゥプレイで登場する。課金等は?
森下 これからしっかり考えます(笑)。ただ、武器は買えません。
須田 買えたら、サバイバルじゃないですからね(笑)。
森下 そうそう。マジメな話、せっかくプレイステーション4でガンホーがやるなら、ネットワークをとことん活かしたい。それなら、フリートゥプレイの運営型にチャレンジしたほうがいいなって。
――たとえば、スマホ版もリリースされたり?
須田 スマホ版と言いますか、コンパニオンアプリは予定しています。コンパニオンアプリで得たものが、本編に反映されたりします。
――須田さんにとって本作の位置づけは?
須田 まったくの新機軸です。ただ、タイトル名はけっきょく物騒になってしまいました(笑)。ロゴに描かれているのは死神で、スケボーに乗っていますが、ゲーム中にもこのまま登場します。
――森下さんにとって『LET IT DIE』とは?
森下 僕らがコンシューマー機でやりたかったことが、ようやくできる時代になったと感じています。ガンホーのスマホタイトルを、たまに“ソーシャルゲーム”と呼ぶ人がいますが、それはぜんぜん違います。僕らが作っているのは、オンラインゲーム。『LET IT DIE』も、非同期型のオンラインゲームです。プレイステーション4で、やっと、僕らが作りたかったゲームが実現します。
――須田さんのゲームは、“須田ゲー”と呼ばれることがありますが、本作は、これまでのゲームから大きな変化を遂げそうな期待感があります。
須田 大きなストーリーがあって、章立てで、ルートマップがあって、演出などを織り交ぜて……という、僕の一連のゲームの文法はすべてぶっ壊しました。そういう意味で、『LET IT DIE』は新しいステージで勝負しています。ご期待ください。