『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー

 週刊ファミ通2014年5月8・15日合併号(4月24日発売)の取材では、プロデューサーの辻本良三氏とディレクターの藤岡要氏に多くのことを語ってもらった。両氏の『モンスターハンター4G』(以下、『MH4G』)へ懸ける想いとは?

『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_01
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_02
▲プロデューサー・辻本良三氏。『モンスターハンターポータブル2nd』以降、『モンスターハンター』シリーズのプロデューサーを務めている。
▲ディレクター・藤岡 要氏。初代『モンスターハンター』のディレクターを務めて以降、数多くのシリーズ作を手掛ける。

新たな狩りの形を開拓した『MH4』

―― モンハンフェスタ2013決勝大会で『MH4G』の発表があった際は、会場の歓声がすごかったですね。

辻本良三氏(以下、辻本) 全国大会の決勝というファンの熱量が最高潮に達している場であったので、まだ終わりではなく新たなスタートですよ、というメッセージを伝えるいい機会だと思っていました。

藤岡 要氏(以下、藤岡) これまでも、何度かイベント会場でのサプライズ発表を行いましたが、いちばん反響が大きかったですね。タイムアタック大会ということもあり、とくにコアなファンが集まっていたこともありますが。

辻本 映像が流れる直前から、「もしかして新作発表?」という内容のざわめきが聞こえてきましたね。そしてニンテンドー3DSのロゴが出た時点でワーッという歓声が(笑)。

藤岡 あの歓声を聞いて、「これは気合を入れて完成度を高めなければ」と心に誓いました。

――そのときに、『モンスターハンター4G』(以下、『MH4G』)のデータをほぼ引き継げることも発表されていましたが、この狙いをお聞かせください。

辻本 『MH4G』の制作が進んできたため、最初に伝えて皆さんを安心させたかったので、早々に発表しておこうと思いました。

――『MH4』が発売されてから半年以上が経過しましたが、振り返ってみて手応えはいかがでしたか?

藤岡 『MH4』から新規に始めた方も、過去のシリーズ作から続けている方も、同じくらいの熱量でプレイしていただき、いろいろなご意見を聞けました。自分たちにとってもいい結果が出ましたね。

辻本 『MH4』では、“気持ちよさ”を重視しつつアクション部分に大きく手を加えました。プレイヤーの皆さんが乗り状態を狙ったりしているのを見て、気持ちよさとゲーム性のいい相乗効果が出せたと感じています。それと、携帯ゲーム機のみでのインターネットマルチプレイをシリーズで初めて実現しましたが、やはり反響が大きかったですね。ただ、ローカル通信でのマルチプレイの楽しさは失いたくなかったので、どちらの遊びかたも両立させるきっかけとなったのが『MH4』と言えます。

―― インターネットマルチプレイを導入したことで、ローカル通信でのプレイが減るのかと思いきや、両立していることに驚きました。

藤岡 以前から、仕事などで毎晩帰りが遅く集会所のクエストをなかなか進められないという声を聞いていました。そういった方々の要望を満たせたのではないかと思います。

――なるほど。『MH4』ではキャラバン隊の一員となって、さまざまな地域を冒険するというテイストでしたが、このあたりの反響は?

藤岡 ストーリー面から『モンスターハンター』の世界に入った方が想像していたよりも多く、冒険というテーマをファンの皆さんにうまく伝えることができたと思っています。

辻本 『MH4』は、システム面とストーリー面の両面から大きな改革にチャレンジをしました。根本の部分をそのままに新要素を継ぎ足していったとしても、いずれはマンネリ感が出てきてしまいます。そこで、フィールドを立体的にしたり、そのフィールドに合った新モンスターを登場させることで、今後続いていく『モンスターハンター』の形を想像していただけたのではないかと。

――確かに、“乗り”や新武器の追加で、新鮮な気持ちで狩りを楽しめました。

辻本 新要素は、不要なものがただ入っているだけでは意味がないんです。かといって、“必ずモンスターに乗らないとダメ”といったプレイヤーの行動を締めつけるだけのものでもおもしろくありません。ゲーム性を考えると、乗り要素はバランスよく入れられたのではないでしょうか。

藤岡 これまでは、罠などを使ってモンスターを拘束して一気に攻撃する、といった流れが定番でしたが、アイテムが尽きたり、罠の設置に失敗したりすることで、だんだん手詰まり感が出てきてしまいます。そういった部分をどうにか見直さないとな……とずっと考えていました。その末、「モンスターに乗ることでアドバンテージを取れれば、ピンチの状態から逆転できる新たな楽しみが生まれるのではないか?」と、選択肢のひとつとして乗りを入れることに行き着いたんです。こうすることで、プレイヤーの思考を「ジリ貧だし、リタイアしようか」から、「うまく乗り状態に持ち込んで転倒させれば、いけるかも?」に変えられたと思っています。

――乗りはユーザーのあいだでも好評ですね。

藤岡 そうですね。モンハンフェスタなどで皆さんのプレイを見ると、要所要所で“乗り”と罠、アイテムなどを使い分けていて、うまくいったな、と手応えを実感しました。モンスターの種類に合わせて武器を使い分ける方も多くて。僕自身はランスばかりですが(笑)。

辻本 僕はハンマーひと筋です(笑)。操虫棍はテクニカルな(上級者向けの)武器というイメージが先行しないか心配だったのですが、蓋を開けてみればどこでもジャンプできる手軽さがあるので、想定していたよりも間口が広い武器として受け入れていただけましたね。ちなみに、『MH4』では操虫棍とチャージアックスのみギルドクエストで発掘ができませんでしたが、『MH4G』では、どちらも発掘できるようにしますのでご安心ください。

『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_03
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_04
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_05

『MH4』ではできなかったことを『MH4G』にすべて詰め込みたい

――改めて、『MH4G』のコンセプトをお聞かせください。

辻本 まずは、現在『MH4』を遊んでいただいている方たちに対してのお礼ですね。あとは、『MH4』の発売後、「もう少し○○できるなぁ」と、『MH4』としてまだできそうな部分がどんどん出てきたので、モヤモヤした部分をすべて出し切りたい、という思いがあります。

――『MH4G』の開発が始動したときに、最初に手を入れたかったところは何でしょうか?

藤岡 調整とは別で、けっこう早い段階で検証に入ったのは、ぶっとび【特大】中からのジャンプ攻撃なんです。開発チームに「やれる?」と聞いてみたら「たぶんやれますよ」って。吹き飛ばされ中のリアクションはいろいろなパターンを考えましたが、味方に吹き飛ばされたときの「お前、俺を吹き飛ばしたな(笑)」というやり取りは絶対に残したいので、軌道を変えるような変更はしたくありませんでした。ただ、モンスターに吹き飛ばされたときと、味方プレイヤーに吹き飛ばされたときで、何らかの差をつけたかったんです。吹き飛ばして「ごめんね」ではなく、「ありがとう!」と言える、プラスな展開になるのではないかなと。あと、ハンマー使いの辻本にプレゼンテーションするときに、もっとも響くのではないかと(笑)。

辻本 これまで、藤岡はハンマーのアクションをあまりいじってくれなかったから(笑)。
藤岡 ハンマーはシンプルな設計がベストだと思っているので、いじりにくいんです(笑)。
辻本 ちなみに、ハンマー使いは年齢が高めの方が多い印象ですね。

――逆に若い層には、どの武器が人気ですか?

辻本 操虫棍が多いですね。昔からある武器だと、太刀や双剣なども人気です。手数の多さが若い方に気に入られやすいようで。

藤岡 いろいろな武器を使ってもらいたいという点では、手数が多く部位切断も狙いやすく操虫棍は既存のプレイヤーが流れやすい作りだったかもしれませんね。

―― 話は変わりますが、これまでと同じく、G級は上位のさらに上、というポジションなのでしょうか?

藤岡 そうですね。企画が立ち上がった時点で、すでに『MH4』をやり込んだ方も楽しめるものにしようと考えると、シングルモードには上位クエストを増やして、集会所にはG級を追加する形が、いちばんわかりやすいですから。そのうえで、既存のクエストや、ギルドクエストなどを見直すところまでは、最低限の要素となります。そこからさらにぶっとび【特大】中からのジャンプ攻撃を始めとする、検証が必要な要素を追加していきます。

―― ギルドクエストも追加があるのですね。『MH4』の時点でも、レベル100付近になると上位を遥かに上回る難度でしたが……?

藤岡 前回でも、“高難度の狩猟にチャレンジできる”というコンセプトがありましたので、G級クエストが追加される『MH4G』では、G級プレイヤーの皆さんに満足していただけるものを用意するつもりです。

―― ちなみにG級へは、どこまでプレイすると行けるのでしょうか?

藤岡 集会所はハンターランク解放まで進めると、緊急クエストが発生します。そのクエストをクリアーすれば、G級への道が拓けるようになります。

辻本 もちろん、G級に合わせた能力の武具も出てきます。それらをしっかり揃えていけば、G級の難度に対応できますので!

『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_06
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_07
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_08

高低差が加わることで“旧砂漠”はどう変わる?

―― 今回、新たなビジュアルが公開されましたが、このモンスターは何者ですか?

辻本 2月14日に放送されたニンテンドーダイレクトで足跡だけ公開していましたが、見ての通り完全新規のモンスターです。名称や生態などは今後の情報を楽しみにお待ちください。とりあえず、このシルエットから、どんなモンスターなのか想像を膨らませていただければ。

藤岡 これまでの看板モンスターの中では比較的スレンダーな体型と、特徴的な指先のギャップに注目してください。※4月21日に新PV(→こちら)が公開されている。

―― 早く詳細を知りたいです! あと、亜種モンスターと、復活モンスターも追加されますね。

辻本 『MH4』で新たに登場したモンスターは、それぞれ原種と異なる属性・行動を持つモンスターとして亜種を用意しました。色や見た目が異なるだけではなく、新たな遊び心地が感じられる要素を必ず追加しています。

藤岡 「原種がこんな生態だったから、亜種はこんな奴だったらおもしろいんじゃないか?」という発想や、原種にはなかったアクションを行わせてみたりと、さまざまな視点から亜種を設計していますね。

辻本 アクションがひとつ加わるだけで、原種の狩りに慣れているプレイヤーでも新たな攻略方法を模索する楽しみが生まれてくるんですよ。基本的に、亜種は原種よりも後に出てきますので、まずは原種のイメージをプレイヤーの頭に刷り込んでから、亜種での変化を楽しんでいただきたい、という思いが伝わるといいですね。

藤岡 とにかく強いだけだったり、原種とあまりにもかけ離れていたりすると、僕たちが考える遊びの方程式が成り立たなくなってしまうので、そのあたりは気をつけています。

――前回ディアブロスがいなかったのは、砂漠ステージがなかったからでしょうか?

藤岡 はい。ディアブロスは『MH4』で皆勤賞を逃しましたね(笑)。個人的には、久しぶりにモノブロスを出したかったという思いがありました。どちらもシンプルなモンスターなので、『MH4』以降の立体的な地形でどんな存在となるのかに注目してください。

―― モノブロスは、シングルプレイ専用となるのでしょうか?

藤岡 はい。やはり、シングルプレイを象徴するモンスターとなります。1対1の緊張感がもっとも感じられたモンスターだったので、本作にも入れてみようかと。

―― ダイミョウザザミやドスガレオスも久しぶりの登場ですね。

辻本 ダイミョウザザミは、ほかのモンスターとかなり毛色が異なるので出しにくかったのですが、ユーザーから再登場を要望する声もありまして、復活させました。復活モンスターの中でも、ダイミョウザザミはいちばん手の入っているモンスターのひとつですね。ただ、要望が多いからと、なんでもかんでも復活させるわけにはいかないので、ドスガレオスは当初は予定になかったんですよ。でも、藤岡が「ドスガレ出したいんやけど…… 」と言い出して(笑)。

―― 砂漠は、G級クエストや村クエストの上位にのみ追加されているのでしょうか?

藤岡 『MH4』からデータを引き継いでプレイされる方が多いと思いますので、シングルでは上位、集会所ではG級に多くの要素を入れています。新規の方には現在の『MH4』にある要素をまず楽しんでいただき、砂漠ステージなどの新要素は上位・G級の部分に注力させていこうと考えています。

―― 旧作にあった砂漠ステージも、高低差が加わると違った印象がありますね。

藤岡 リアルな砂漠を想像すると、多くの方が平坦な地形ではなく、砂丘を思い浮かべると思います。ですが、以前のシステムでは傾斜のキツい地形は導入しにくかったんですよ。

―― 言われてみれば、旧作の砂漠は比較的平らな地形が多かったですね。

藤岡 もちろん、あえて平らにしたかった部分もありますが、急な傾斜のある地形を入れられないという制限下で作る必要がありました。『MH4』ではそういった制限がなくなったので、砂丘らしい地形を入れることができました。旧作をプレイされた方にも、新鮮さを味わっていただけると思います。

『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_09
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_10
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_11

オトモの編成を組み変える楽しさが増す調整

―― オトモアイルーは、どのくらい強化されているのでしょうか?

藤岡 オトモは、単純にレベルの上限を引き上げる強化はしたくないので、装備や合体技などをパワーアップさせています。『MH4』をプレイ中の皆さんは、レギュラーのオトモがある程度決まっていると思うのですが、もっとバリエーションを増やして、組み合わせを変える楽しさを増やそうかと思っています。

辻本 オトモ自身の能力に関わるものや、アクションが変化するものなど、さまざまな要素を追加しています。

――これまで育ててきたオトモは引き継がれるのでしょうか?

辻本 できるだけ、全員『MH4G』に連れていけるようにしようとは考えています。ただ、どの要素にも言えますが、調整内容によっては引き継げない部分が出てくる可能性はありますね。ですから、“ほぼ引き継ぎ可能”と。

藤岡 問題なければ、すべての要素を引き継ぎ可能にしたいですね。いま『MH4』をやり込んでいただいている分は絶対に損をさせないことを保障します。

辻本 現状では、各要素がうまく引き継げるかどうかを検証している段階です。この要素は引き継げて、この要素は難しいといったことはまだ明確には言えませんが、確定次第公表して皆さんに安心してもらいたいですね。装備やアイテムなど、自分でゲットしたものは基本的に全部持っていけるようにしたいです。

藤岡 ちなみに、いまのところは順調です!

―― なるほど。パッケージ版とダウンロード版で引き継ぎ内容に違いなどが発生する可能性はありますか?

辻本 その点についても、大丈夫にするつもりです。『MH4』ダウンロード版から『MH4G』パッケージ版といった、異なる環境への引き継ぎも問題なくできるよう、現在鋭意検証中です。もしかしたら、環境によっては、それに応じた容量のSDカードを用意していただく必要があるかもしれませんが、そのあたりもわかり次第皆さんにお伝えします。

―― 最後に、ファンへメッセージをお願いします。

藤岡 ようやく第1報を公開することができました。これから大小さまざまな情報を順次お伝えしていきますので、ボリューム感に期待していただけるとうれしいです。

辻本 現在、開発チーム一同、総力を挙げて『MH4G』ならではの要素を多数詰め込んでいます。また、どこかで皆さんに本作を試遊していただける機会も設けようと考えておりますし、先ほども言いましたが、現在『MH4』を遊んでいる皆さんが蓄積したデータもできる限り引き継ぎ可能にするつもりです。ぜひ、『MH4』をプレイしつつ『MH4G』を楽しみにお待ちください!

『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_12
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_13
『モンスターハンター4G』スペシャルインタビュー完全版_14