3日間開催の“BitSummit 2014”も無事終幕

 海外でも高い評価を集めている、日本のインディーゲームの数々。そのインディーゲームを、広く世界へと発信していくことを目的にスタートした“BitSummit”。2014年3月7~9日に京都みやこめっせで開催された“BitSummit 2014 -京都インディーゲームフェスティバル-”は、3月9日に最終日を迎えた。イベントの最後に、“BitSummitアワード”が発表された3日目の模様をリポート。

“BitSummitアワード”大賞は『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』! 最終日をリポート【BitSummit 2014】_01
“BitSummitアワード”大賞は『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』! 最終日をリポート【BitSummit 2014】_02

故・飯野賢治氏の遺志を継ぐプロジェクト、『KAKEXUN(カケズン)』

 2013年に急逝した故・飯野賢治氏が生前残した企画書を実現させるという『KAKEXUN(カケズン)』プロジェクト。その経緯と、クラウドファンディングの告知を兼ねて、ステージでトークショウが開催された。
 まず登壇したのは、飯野氏と約18年に渡り苦楽を共にしてきた、フロムイエロートゥオレンジ代表取締役CEOの江口勝敏氏。去年の“BitSummit”では、直前に亡くなった飯野氏を追悼するビデオが流されたが、まずはその件に関し、James Milkie氏や“BitSummit”のスタッフへ謝意を伝えた。“BitSummit”の根底に流れているのは、“スピリットがパンクであること”と“方法論として、インディペンデントのゲームを世の中に送り届ける”ことだとし、その精神は『KAKEXUN(カケズン)』プロジェクトにも通じているものなのだという。『KAKEXUN(カケズン)』プロジェクトは、飯野氏が亡くなる1ヵ月前(2013年1月)に、江口氏に渡した10数ページの企画書がもととなっている。その後江口氏は、このプロジェクトを実現させるために必要な“仲間探し”をし、プロジェクトの立ち上げに至ったそうだ。ここで、ステージにチーフディレクターの飯田和敏氏、制作ディレクターの佐藤直哉氏(Warp2代表取締役CEO)も登場した。
 江口氏は、飯野氏が生前高く評価していたゲームクリエイターでもある飯田氏にまず相談したのだと言う。飯田氏は「飯野さんの企画を引き継いで、彼の代表作を作ることには、誰でも自分の力不足を感じると思います。シンプルなゲームとして作る方法もあったが、飯野さんの全キャリアを包括するような新しい代表作にしたい」と語った。
 続いて流されたトレーラーには、「コノ宇宙ハナンナノカ」「ワタシハ誰ナノカ」「“チカラ”と“存在”」「宇宙を遊べ」「世界を解け!」といった謎めいたキーワードが並ぶ。

 企画書のキーワードは3つあり、「四則演算を使ったゲームであること」、「マルチデバイスでリアルタイムにプレイできるプラットフォームであること」、そして「脳のオリンピックであること」。脳を使った楽しい遊びで、みんなで競い合うものとのことだ。
 ここで、クラウドファンディングの話に映る。『KAKEZUN(カケズン)』プロジェクトは、じつは“BitSummit 2014”にデモなどを出展しておらず、チラシ1枚+PVで乗り込んできているのだ。しかし、飯野氏とMiklie氏の間柄もあり、ぜひこの場で何かやりたかったという。『KAKEZUN(カケズン)』プロジェクトは、“MotionGallery(モーションギャラリー)”で募集し、目標金額は1500万円。3月20日から60日間の募集期間で目標金額が集まらなかった場合、企画は中止になるとう、いわゆる“オール・オア・ナッシング”の方式を取っている。なかなか高いハードルかもしれないが、「無謀なことほど楽しい」という飯野さんのマインドをベースにしたこのプロジェクト、ぜひ成功することを期待したい。

※賛同者募集サイト(MotionGallery)

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▲右から、江口氏、飯田氏、佐藤氏。
▲「僕らより、飯野さんの写真のほうが存在感あるよね」と飯田氏。
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▲キービジュアルも披露。250万年前の金星が舞台で、なんとプレイヤーは、最初地面の中のマグマだそうだ。「自分は何なのか?」という問いに対し、世界は四則演算で問うのだという。全6部構成で、現在は“チカラ編”と“存在編”となっている。

3日目も充実のミュージックステージ

 この日行われたスペシャルライブはふたつ。まずは、『パンツァードラグーン』や『Crimson Dragon』の音楽を担当した小林早織さんが、壮大な楽曲を披露したのち、彼女とともに“茜~AKANE”というバンドを結成している高橋由美子さん(代表曲『幻想水滸伝II』など)とともに、ステージを披露した。
 そして、最後のスペシャルライブは、『バーチャファイター』や『剣豪』シリーズの中村隆之氏(ブレインストーム)のスペシャルユニット。ステージ上に、京都府PRキャラの“まゆまろ”やラショウ氏らが上がって踊りまくる。まさに破天荒な、トリを飾るにふさわしいパフォーマンスを見せてくれた。

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▲幻想的なライブを披露した小林早織さん(Key)と高橋由美子さん(Vo)。
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▲ステージに観客がどんどん上げられ、タイヘンな状況に。あれ? 右の写真には、オニオンゲームスの木村祥朗さんも!

栄えある“BitSummitアワード”発表

 3日間に渡って開催されてきた“BitSummit 2014”もいよいよフィナーレ。ステージイベントの最後は、“BitSummitアワード”の発表が行われた。今回は9つの賞が用意されていた。
 大賞にあたる“朱色賞”を受賞したのは、開発中のヘッドマウントディスプレイ(HMD)“Oculus RIFT”を使った『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』を出展していた“Vitei”。2002年に設立され、ニンテンドー3DS用ソフト『STEEL DIVER』などの開発実績がある、地元京都のデベロッパーだ。

ビジュアルデザイン最優秀賞:Team Poyhaymen(『ラクガキ忍者』)
ゲーム・デザイン最優秀賞:little big mmo(『Gang of Space』)
オーディオ・デザイン最優秀賞:Winning Blimp(『STRATOLITH』)
ストーリーテラー賞:Flying Carpets Games(『The Girl and the Robot』)
革新的メビウスの帯賞:RIKI(『キラキラスターナイト』)
メディア・ハイライト賞:オニオンゲームス(『Million Onion Hotel』)
ビットキング人気賞:オニオンゲームス(『Million Onion Hotel』)
特別功績賞:ドラキュー(『重装機兵レイノス』)
朱色賞:Vitei(『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』)

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▲オニオンゲームスは、メディア・ハイライト賞とビットキング賞の二冠。
▲地元京都のViteiが、見事に“朱色賞”を受賞!
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▲大賞受賞に大興奮。右は“Vitei”のブースの模様。
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 こうして3日間の幕を閉じた“BitSummit 2014”。最後に、James Milkie氏がスピーチし、「これから、GDCやE3、PAX、gamescom、東京ゲームショウとイベントがありますが、開発者にとって、“BitSummit”が魅力的なイベントになって、よかったと思います。ゲームのすごいところは、不可能なことを可能にすることです。まだ、始まったばかりですが、今年出展した方も、そうでない方も、来年の“BitSummit”に向けて、どんなタイトルを出展してくれるのか、楽しみにしています」と、来年も“BitSummit”を開催してくれることを表明してくれた。向こう一年、インディーシーンがどんな変貌を遂げていくのか想像だにできないが、今後も注目のジャンルなのは間違いない。

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▲受賞者・プレゼンターの全員で記念写真。後ろで、バンザイ姿のMilkie氏、本当にお疲れさまでした!