Androidゲームマシンが業界構造を変える可能性も?
▲今年のプレゼンはGame、Chip、Carの三本柱。中でも大きかったのがTegra K1の発表だ。
米時間の2014年1月5日、アメリカのネバダ州ラスベガスで、家電見本市“2014 International CES”を控え、NVIDIAがプレスカンファレンスを開催した。
今年のカンファレンスの最大の目玉は、モバイル向けプロセッサー“Tegra”シリーズの最新作“Tegra K1”。同社のグラフィックボードGeForceシリーズの最新機種に搭載されているチップと同じKeplerアーキテクチャを採用した192コアのハイエンドプロセッサーだ。
“モバイル向け”を飛び越して、プレイステーション3やXbox 360に搭載されているものを性能面で上回り、ハイエンドPCやプレイステーション4/Xbox Oneと同様のDirectX 11世代のグラフィックに対応(そのほか、Open GL 4.4とテッセレーションにも対応)。
Epic Gamesのゲームエンジン“Unreal Engine 4”も動作するという、まさにPCや据え置き機のハイエンドゲームマシンと“モバイル”の垣根を破壊する、圧倒的な性能を持つモンスターチップとなっている。Tegra K1上で動作するUnreal Engine 4のデモ映像が公開されているので、まずはチェックしてみてほしい。
▲Tegra K1は現行のGeForceシリーズ同様Keplerアーキテクチャを採用した192コアのチップ。
▲DirectX 11世代のフォトリアルなグラフィックを実現でき、(搭載する記憶装置やメモリーの違いはあるものの)技術的にPS4/Xbox One世代と同等の表現が可能になる。「モバイルではこの表現はできないからスピンオフを出すか……」といった壁はなくなるのだ。
▲そして発表時「PCと次世代機のみ対応」としていたUnreal Engine4が対応を発表。DX9世代ではPCに追いつくのに8年かかったものが、(2014年にK1がリリースされれば)DX11世代では2年で追いつくことになる。
純然たるモバイル端末への搭載を考えた場合、PS4/XBOne世代の最新のAAAタイトルがそのまま移植できるかというと、記憶容量の違いやコントローラーの問題など、乗り越えなければならない壁もあるが、Tegra K1が持つポテンシャルはそれだけではない。
昨年のCESより続々と発表された、従来のプラットフォーマー以外の新興メーカーによる、リビングTVへ接続するAndroidベースのゲーム機が、Tegra K1の採用により圧倒的なパワーを手に入れるほか、Oculus Riftのようなヘッドマウントディスプレイが“母艦”としてのPCを抜きにスタンドアローンで動作することも可能になる。
もちろん、タッチデバイスとハイエンドPC/PS4/XBOneへの全対応を念頭にゲームデザインされた、ハイエンドグラフィックのゲームがリリースされる可能性もあるだろう。
▲PS3/360を凌駕するCPU/GPUパワーを圧倒的な低消費電力で実現。
▲iPhone 5sなどに搭載されているApple A7の3倍の性能を持つとしている。右側のグラフは「あっちはUE4とか動かないからね」の図。
▲クアッドコアのA15をCPUに持つバージョンと、64ビットのデュアルコア“Denver”CPUを搭載したバージョンの2種が登場予定。
32ビットでクアッドコアCPUを持つ最大2.3GHzのチップと、NVIDIAが設計した64ビットの“Denver”CPUを持つ最大2.5GHzのチップの2タイプが存在し、前者を搭載した機器は2014年の上半期、後者が下半期に発売予定とのこと。
カンファレンス終了後には実機デモも見られ、カンファレンス中にプレゼンされたデモの数々が実際に滑らかに動いている姿や、(最適化が足りてないのか若干の処理落ちはあったものの)FPS『シリアスサム3』などがプレイアブルで出展されているのを確認できた。実際にチップが出荷されて以降、ゲーム業界に新たな潮流を生み出すのか注目だ。
▲顔をアニメーションさせるデモ。皮膚の質感などが素晴らしく(耳の部分でサブサーフェイススキャッタリングの効果なども見られる)、「これ本当に実機なの?」と思っていたら、カンファレンス終了後に実機デモが。
▲こちらはTegra K1でDX11のグラフィックで出したもの。
▲DX9のグラフィックだとのっぺり感。
▲実機デモでは、スライダーでDX11で実行した場合とDX9レベルのグラフィックの違いを見られるようになっていた。
▲グローバルイルミネーションやHDRのほか、攻撃を撃ちこめば光跡で周囲を照らしながら破片がぶっ飛んでいく様子も見られた。
▲Unreal Engine 4のデモ。物理ベースのライティングが可能で、レンズフレアや金属、反射表現なども。
▲ゲームだけでなく、建築のシミュレーションなどもこの通り。革のソファーの皺やフロアーの照り返しなどもリアル。
▲実機デモでは『Trine2』や『シリアスサム3』などが動いていた。
▲PCからストリーミングしながらNVIDIA Shield経由でテレビにゲーム画面を映して『バットマン:アーカム・ビギンズ』をプレイするの図。プロジェクターで巨大スクリーンいっぱいにゲーム画面を映すシーンでも非常に美麗だった。ラグもほとんどなし。
▲もうひとつ、NVIDIA Shieldでゲームをプレイすると若干のコマ落ちが……と思ったら、これは大西洋を挟んだサーバーからクラウドゲーミングしていたのだった!
▲こちらはモニターとグラボが連動してジャストタイミングでディスプレイを書き換えるG-SYNCの紹介。対応モニターは各社から第2四半期に出荷予定。こちらも実機デモを見てきたが、G-SYNCをオンにするとカメラをブン回した時のティアリングなどが激減。
▲NVIDIAはこれまでに築いてきた技術をクルマ業界に応用していく方針。ストリーミング技術を応用し、タブレットからクルマのカスタマイズをしてイメージ画像を見たり……(レンダリング処理自体はサンタクララのスパコンで実行)。
▲Tegra K1も車載用に進出。高い処理能力を使ったADAS(高度なドライバーアシスト機能)を提供する。
▲周囲を認識して交通標識の内容を示したりしてドライバーをアシスト。(前を走るクルマや歩行者を認識する一方、デモでは自転車乗りを認識していなかったが、これはまだ認識用のサンプルが限定されているからとのこと)
▲デジタルダッシュボードでは、メーターなどを物理ベースレンダリングで表示。メーカーの担当者がタブレット経由で素材の質感などを割り当て、自分でカスタマイズできる。