『モンスターハンター4』発売記念! 辻本プロデューサー&藤岡ディレクターに聞く『モンスターハンター』の設計図の作り方【前編】

2013年9月14日に、最新作『モンスターハンター4』が発売となった。これを記念して、辻本プロデューサーと藤岡ディレクターに『モンスターハンター』シリーズの設計思想や最新作のお話を聞いた。

●『モンスターハンター』が大事にしていることとは

辻本良三プロデューサー(左)
藤岡要ディレクター(右)

 2013年9月14日に、シリーズ最新作となるカプコンの『モンスターハンター4』が発売となった。すでに国内出荷本数が200万本を突破したことも発表され、非常に好調なスタートを切っている。そこでここでは、最新作の発売を記念して同作のプロデューサーとディレクターであり、シリーズに長く関わってきた辻本良三プロデューサーと藤岡要ディレクターにインタビュー。日本を代表するビッグタイトルとなった『モンスターハンター』シリーズはどのような設計思想で作られているのか。また、『モンスターハンター4』では何が変わり、何が変わらないのか。さまざまな視点からディープなお話を聞いた。今回は、その前編をお届けする。

――まず、比較するものがないので難しいところですが、『モンスターハンター』のアクションゲームの難度はどのくらいのものを想定して作られているのでしょうか?
藤岡 前提として「難しくしてやろう」という考えはないですね。難易度というものをどう捉えて表現するかということもありますが、基本的には正解と不正解がハッキリしているものというのは、その正解が達成できないと失敗になる。その部分が難度の指針になるわけですよね。これに対して、正解達成への道を細くするか太くするか、正解のパターンをいくつ用意するか、どう導くかが難易度のコントロールだと考えています。もちろん“難度が高い”と“意地が悪い”というのは次元の違う話で、ゲームの設計がうまくいっていれば、いわゆるライトユーザーの人がその時々で難度が高いと感じても必ずクリアーできるようになっていると思います。また、クリアーへの導線などもこの設計の部分ですね。『モンスターハンター』では、いきなりプレイヤーに細い道を提示してゆだねる、ということはしません。まず太い道がいくつかあって、それが徐々に狭くなっていき、さらに道が合流して最終的に細い道にいく。そして、そこまでいったときにはプレイが上達している、ゲームが上手くなっている、というのが基本の設計思想ですね。
辻本 アクションゲームの基本ですが、失敗がハッキリわかる、という部分も意識しています。失敗がわからないと、その選択肢が外れていかないですよね。これは例えば攻撃が1回余分だった、など、そういった細かいところもそうです。少しづつ階段を上って行くように、また、階段を上っていることがわかるように導いていけるように、というのは大事にしていますね。
藤岡 アクションゲームはプレイヤーから見ると反応速度が求められそうでどうしても難しく捉えらえがちですが、僕個人が反射神経でクリアーするゲームが苦手なので(笑)、『モンスターハンター』ではゲームの設計として反射神経は要求していません。もちろんものすごく極めようとするとそういった部分も必要になってきますが、それよりももっと前の段階でクリアーできるし楽しめるように考えています。

――そういった設計の部分は、やはりシリーズを重ねるごとに熟成されてきているのでしょうか?
藤岡 そうですね。狙ってやっているものではもちろんないのですが、「ここが厳しすぎる」といった意見を多くいただいたときなどは、やはりどこかで設計が間違っているので調整しなければいけないですからね。ほかにも、モンスターをどう動かせば、プレイヤーが最終的に攻略法を見つけて倒せるようになるのか、といった部分の“コツ”というのはシリーズを作ってきた経験で身に付いたものだと思います。モンスターをこう動かせば、プレイヤーはここに気づくだろう、こういう動きをするとプレイヤーにプレッシャーがかかるよね、という“コツ”です。理論ではなくコツというのは、“このくらいの距離”みたいなロジカルではないところもあるからです。感覚なんですよね。ありませんか? 自分の攻撃は届かないけれど、モンスターはこっちを見ている、みたいないやな距離(笑)。

――ありますね、プレイヤーとしては非常に困る距離(笑)。
藤岡 そういう距離をふっと作ってあげて、プレイヤーに選択を迫る。これがモンスター側のプレッシャーのかけ方の方法論のひとつなんです。モンスターにとって都合がよく、プレイヤーにも選択肢が残されている距離ですね。この距離が詰まりすぎるとプレイヤーに選択肢がなくなってしまいますし、離れすぎると選択肢がありすぎる。これは他のゲームにもあると思いますが、『モンスターハンター』というゲームの設計だとこのくらいがそういうときの適切な距離、というのは自分の経験と感覚ですね。

――そういう距離感が掴めたことで、大きく変わった点などもあるんですか?
藤岡 モンスター側から仕掛けられるようになりましたね。昔は例えばモンスターが振り向くという行動もその場で点で回るだけでしたから、このときはプレイヤーのターン、というように、モンスターのターンとプレイヤーのターンがハッキリ分かれていました。ですがこの振り向きを“少し下がりながら振り向く”とすると、微妙な距離が生まれて五分五分の状況になるわけです。そうするとそこでモンスターが仕掛ける、という選択肢が生まれて、プレイヤーも選択を迫られる状況に変わる。

――お話を聞いていると、ブラキディオスを思い出します。
藤岡 ブラキディオスは、まさに積み重ねてきた結果のひとつですね。つねにいやな距離でプレッシャーをかけてくるという。メインモンスターとしてプレイヤーの前に立ちはだかる手強さが出せたと思います。

――ブラキディオスは、慣れているプレイヤーでも「苦手だ」という人が多かったですね(笑)。
辻本 そこは、先ほど藤岡が言った道の話で、マルチプレイという道もあるわけです。僕はマルチプレイは、極端なことを言うと「自分ではどうしても無理」となったら、ほかの3人に頑張ってもらう、という方法でいいと思っています。『モンスターハンター』のマルチプレイ部分は、慣れていない人やアクションが苦手というプレイヤーは、上手い人に導いてもらう、4人でいっしょにがんばる、そういうゲームを目指しています。正解の選択肢に“ほかのプレイヤーと協力する、助けてもらう”というものがある形ですね。そして、みんなで狩りに行って、討伐したらみんなの勝利で、同じように報酬を持って帰る。『モンスターハンター4』ではインターネットマルチプレイに対応しましたから、より手軽になっていると思いますよ。

――報酬という点で言うと、例えばなにか“活躍度”のようなものを設けて評価して、それによって報酬の内容を変える、という形は考えませんでしたか?
藤岡 それもひとつのやり方だと思いますし、そういうご意見もいただきます。ですが、『モンスターハンター』のマルチプレイで何を評価するのか? と考えたときに、それがゲームとして目指すものとマッチするのかどうかという部分ですね。例えば“攻撃を多く当てると評価が高い”とすると、それが正解の行動になりすぎてしまうわけです。これではプレイスタイルを縛りすぎてしまいますし、辻本が言った目指すものにも合わない。ですので『モンスターハンター』のマルチプレイでは、個人の頑張りはその場の評価にお任せして、クリアーするという条件さえ満たせばみんなが報酬をもらえるという形に落ち着きました。数字的なものを追い求める部分は、本編とは別にタイムアタックを用意しているので、そこで楽しんでいただければと。

●『モンスターハンター』の独特かつ特徴的な仕様

――『モンスターハンター』はリスクの置きどころがプレイヤーのアクション周りというか、わりとシビアなところに置いてありますよね。最たるものは回復薬(道具)を使うときのモーション(隙)だと思います。いまどきの3Dアクションだと、ボタンを押すだけで即回復だったり、アイテムメニューを開くと時間が止まって安全に回復できる、というものが多いです。ここはやはりこだわっているところなのでしょうか?
藤岡 そうですね。これもシリーズを重ねるごとに少しづつ変化しているところではあるのですが、基本的には、リスクとリターン、メリットとデメリットをはっきりさせて、そこを体感してほしいということをゲームの柱に置いています。回復するためには、モンスターにそれだけの隙が生まれている状態、もしくは他のプレイヤーを狙っている状態である必要がある。回復できるということは、そこは攻撃のチャンスでもある、という設計ですね。いまは自分のターンなのかモンスターのターンなのかを見て判断してプレイすること、そこで生まれる駆け引きを楽しんでほしいと考えています。モンスターがこちらを見ていたら(モンスターのターン)、回復などの行動ができないのは当然ですよね。それ以上のリスクとデメリット、大ダメージを受けたり最悪倒されてしまったりする可能性が発生しているわけですから。アクションゲームというのは、操作しているキャラクターばっかり見ていると、絶対に上達しません。そこを『モンスターハンター』が教えられたり、プレイした人に学んでもらえたらうれしいですよね。
辻本 そこに気づいてもらうための導線というか要素が少し弱いかな、という意味もあって入れたのがオトモアイルーなんです。モンスターがオトモのほうに向いていたら、回復のチャンスですよね。シングルプレイでもそういう状況が生まれることで、体験として感じてもらえるんじゃないかと。1対1だと慣れるまでどうしてもあたふたしちゃいますし、慣れるというのはイコール自分のターンなのかどうかを判断できるということですから。
藤岡 別の視点で言うと、ポチっとボタンを押すと一瞬で回復が完了する、としたとします。そうなると、モンスターの動きを、回復スピードの上がったプレイヤーを倒しにいくものにしなければいけない。試したことはないので想像ですが、ずっと怒り状態のディアブロスと対峙する感じになるんじゃないでしょうか(笑)。

――で、怒り状態になるとさらに……(笑)
藤岡 さすがにそこまでいくと『モンスターハンター』の根本が変わってしまうだろうと思っています。もちろん先々見直すタイミング、少しモンスターの動きを速くしないといけないかな、という時が来るかもしれませんが、いまのところはこの設計でカッチリはまっていると思うので、変えるつもりはないですね。

――リスクという話で言うと、回避の無敵時間もほとんどないですよね。もう少し長かったり、回避中は完全無敵だったりというゲームもありますが。
辻本 アクションゲームの無敵時間って、僕たちが昔アーケードのアクションゲームに関わっていた時からそういう遊び方があって、それが身についている感じなんですよね。
藤岡 一瞬の無敵時間を使った遊びやテクニックがすでに浸透していることを考えるとなくすことはないですが、一方で無敵時間が長すぎると、それだけやってればいいとなってしまいますから、バランスですよね。
辻本 プレイしていて、偶然でも「避けられた!」という、奇跡が起きたような喜びとか嬉しさというのも体験としていいものですし。そこはなくしたくないですね。
藤岡 元々のコンセプトで言うと、『モンスターハンター』は“飛んできたものを避ける”というようなゲーム性ではないので、避けるという行動を重視しているわけではないんですね。回避は立ち回りの中でうまくポジション取りをするためのアクションという位置づけなんです。基本的には「見切った!」みたいなことを楽しむ設計ではないですからね(笑)。ただ、そういう遊び方をしたいという人もいますし、反対に少しでも奇跡の起こる可能性を上げたいという人もいるので、そこはスキルを付けてくださいということで選択肢を用意しています。

――なるほど。いまどきの~ということですと、例えば攻撃したとき、攻撃を受けた時にダメージが数字で出たり、モンスターのHPが見える、プレイヤーのHP、スタミナが数字で出る、ということもシリーズを通してやっていませんよね。
藤岡 ここは、そのゲームのコンセプトやジャンルによって変わると思うのですが、モンスターハンターとして考えた場合は、計算できない感覚を大事にしたほうが良いかと思っています。おおざっぱに言うと、例えばモンスターのHPが1000でプレイヤーの攻撃が100ダメージ与えるから10回攻撃を当てればいい、というように計算できてしまうと、クリアーするにしてもあきらめるにしても、先が見えちゃうじゃないですか。それはやりたくないんですよ。モンスターを討伐するか、自分がやられてしまうのか、そのギリギリまでアクションゲームを楽しんでほしいんです。モンスターのHPが残り1とわかったら、「ここで大タル爆弾使うのは無駄だな」って、それはなんとも味気ない(笑)。わからないから、「やるしかない!」、ボカーン! 「うおおお、倒せた!」となるわけで。また、プレイヤーが、倒されてしまったけれど「残りHP100だったから俺ほとんどクリアーしてたし」となってしまうのもいやですし、反対に残っているHPが多すぎて絶望感を感じさせてしまうのも避けたい。どうやっても倒せない、というモンスターはいませんし、足を引きずったり、部位破壊もそうですね、段階的にプレイヤーがモンスターに歯が立っているというサインは出るようになっているので、それで判断してもらうくらいがちょうどいいかなと考えています。
辻本 マルチプレイのコミュニケーションとしても、数字を計算して効率よく狩りを進めていく楽しさもあると思いますが、『モンスターハンター』は「足引きずった! よし、みんなで大タル爆弾で!」というアナログ感をチョイスしています。
藤岡 残りHP1かもしれないんだけどね(笑)。でも、それでいいじゃないですか。計算が成り立たないとゲームが成立しないものは数字を出さないといけないと思いますが、『モンスターハンター』はアクションゲームですので、それを最大限楽しんでもらうにはどうするのがいいか、というのが基本です。昔の構想では、プレイヤーのHPも出さない、というものがあったくらいです(笑)。モンスターとプレイヤー、両方の状態を見ながら判断して対決を楽しんでほしいという。さすがにそういうわけにもいかないだろうということで、採用はしませんでしたが。

――確かに、数字がわからないから、つぎは倒せるかもしれない、もっとアクションの部分を頑張ろう、なるべくダメージを受けないでダメージを与えていこう、という考え方になりますね。
藤岡 「もうちょっとだったかもしれない」というある意味思い込みが後押ししてくれたり、モチベーションにつながるということもありますしね。

――数字として出すものと出さないものをすごく精査しているんだということがよくわかりました。
藤岡 一度数字を出してしまうと、プレイヤーがその遊びに慣れてしまうので、今度は消せなくなってしまうという面もあります。そこは粘り強くというか、しっかり考えていかいかないと、大事なところが崩れてしまいますからね。もちろん出す出さないの精査は常にしているのですが、その時々で『モンスターハンター』の“いま”の全体像を考えたときに、結果的にここまでは出ていないということです。

――出ている数字ですと、クエストの制限時間が50分というのはかなり長い設定ですよね? また、プレイヤーからすると、制限時間って適性な装備と技術があれば、制限時間より少し早いくらいでクリアーできるのかな、という指針と捉える部分もあると思うのですが、基本一律50分です。これはどういった経緯で50分になったのでしょう?
藤岡 経緯というか歴史というか、まず、初代『モンスターハンター』の時代のオンラインゲームの制限時間で考えると、50分って短かったんですよ(笑)。当時のオンラインゲームでは、一度マッチングしたら2~3時間いろいろやって帰ってくる、というのが一般的でした。そしてまあ50分でやってきたのですが、今度はこれが現段階の『モンスターハンター』の設計だとかなり“丁度いい”感じになっているんですね。これは先ほどの話にも通じるんですが、じゃあ30分にしましょうとなると、いまのままだとかなりシビアなので、いろいろな回転を上げたりとか、モンスターのHPを減らしたりしないといけないわけです。ですが、それだと僕たちの考える“手応え”という部分で物足りなさが出てきてしまうんです。やっぱり、押しこんで押しこんで、もう一声、出しきってバーンとやったときにモンスターが倒れた、というくらいが理想なんです。これが、あっさりポテッって倒れちゃうのは、いまの『モンスターハンター』としては違うかなと。
辻本 開発の初期に50分と決まったんですが、人間の集中力がもつのが1時間未満だと思うんです。学校の授業が40~50分なのもそういう理由があるでしょうし、またそれに慣れているということもあります。そういう意味でも、『モンスターハンター』にマッチしているのかなと。ギリギリの装備で行ったときに、40分ちょっとで倒せるイメージでしょうか。
藤岡 指針という点ではあまりそういう意味付けをしているわけではなく、幅を持たせるうえでの上限が50分というくらいですね。その理由は、辻本が言うように人間の集中力が持続する40~50分という感じです。タイムアップを意識させてプレッシャーをかけようという考えはなくて、討伐か3オチ、リタイアでクエストを終わってほしいと思っています。
辻本 ギリギリの攻防になったときに、40分くらいで本当にあと少しで倒せそう、という状況になることが多いんです。となると、40分でタイムアップになってしまうと上限としてちょっと厳しい。なので、50分というのは本当にいい時間なんだと思います。

最新作『モンスターハンター4』についてなど、さらに突っ込んだお話を聞いた後編は後日公開予定。お楽しみに!