大作ゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」原作者の処女作がついに日本上陸
小社エンターブレインでは、2013年8月7日にマックス・ブルックス氏の著書「The Zombie Survival Guide」を邦訳した書籍「ゾンビサバイバルガイド」を発売する。価格は1890円[税込]。翻訳は卯月音由紀氏、翻訳監修を森瀬繚氏が務めている。
マックス・ブルックス氏と言えば、第2著の小説「WORLD WAR Z」(文藝春秋刊)の映画版「ワールド・ウォーZ」が今週末8月10日より公開予定。そんな“ゾンビ作家”の処女作が本書となる。
その内容はまさにタイトル通り。ゾンビから生きのびるためのサバイバルガイドとして、ゾンビの生態に始まり、有効な武器や対抗手段、サバイバル術、起こるであろう問題などを解説し、補足として“人類の歴史に記録が残っている”紀元前から2002年までのゾンビ襲撃の記録を収めている。
パロディ映画の名匠メル・ブルックス監督の息子であるマックス・ブルックス氏が、“ゾンビからのサバイバル本”(本書)と“ゾンビと人類の大戦争の口承の記録”(「WORLD WAR Z」)で大ベストセラー作家になるとは、なんとも洒落が利いているじゃあないですか。
ゾンビブームを牽引してきた一冊
今やゲーム業界も映画業界も、海外は大ゾンビブーム。今年のE3でも人気オープンワールドゾンビゲーム『デッドアイランド』のTechlandが開発した新作『ダイイングライト』のほか、カプコン・ゲーム・スタジオ・バンクーバーが開発する『デッドライジング3』、オンラインゾンビサバイバルゲーム『DayZ』スタンドアローン版……と何本もゾンビゲームが発表されていた。
さらには直近のタイトルをいくつか挙げても、今世代最高のゲームのひとつと名高い『ラスト・オブ・アス』も一種のゾンビ的シチュエーションだったり、絶賛日本未発売のダウンロードタイトル『State of Decay』が海外でスマッシュヒットしていたりと、ゾンビの侵攻はしばらく止みそうもない。
映画の方は本当にキリがなくなるので省略するが、ブラッド・ピットが手掛けた「ワールド・ウォーZ」を筆頭に、“インドにだってゾンビが出るし”、“ゾンビのラブストーリーもあるし”、しまいにゃ“多くのゾンビ映画の原型「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のドキュメンタリー”まで今になって作られるほどである。
そんなゾンビブームの中で本書もまたアメリカを中心に広く読まれており、全世界ではなんと200万部のベストセラー。コミックを原作に、ドラマ、ゲームとマルチ展開されてヒットしている「ウォーキング・デッド」(コミックスは飛鳥新社刊)と同じく2003年の刊行ということで、早くからこのゾンビ再ブームを牽引してきた作品のひとつと言えるだろう(映画を例に挙げると「28日後...」の公開よりは遅いが「ドーン・オブ・ザ・デッド」よりも早いぐらいの時期。ちなみにそんな関係上、本書のゾンビは“走るゾンビ”ではなく“歩くゾンビ”である)。
一家に一冊、発生してからでは遅い
そんなわけで、割とどこでも買えるぐらいいろんな所で売っていた本書。記者は一家に一冊とばかりに、海外取材のついでにコミックショップでおみやげとして買っては強制的に同僚に贈りつけていたのだが、比較的読みやすいガイドブック文体とはいえ、270ページ(手元の廉価版)びっちりと詰まった英文を読み通すのはなかなかキツい。
そこで今回の邦訳である。まぁ翻訳の関係上、全部で368ページと本家より100ページほど増えてやがるのだが、ゾンビゲーム・映画好きなら気になる情報が満載で、場合分けや例示をして理由も込みでわかりやすく説明しているので、意外とサラッと読めちゃうんじゃないだろうか。章立てとそれぞれの内容は以下のような感じになっている。
第1章 不死者:伝説と真実
ゾンビ発生の原理から大発生の兆候の見分け方を解説しているほか、ヴードゥー・ゾンビとの違いについても言及している。
第2章 武器と戦闘技術
有効な武器や防具、それぞれに適した使用法を解説。
第3章 防御法
立て篭もる場所と、過ごし方など、ゾンビの襲撃をしのぐ方法を説明。
第4章 逃亡法
感染エリアからの逃亡する際の心構え、必要な準備、移動手段を考察。
第5章 攻撃法
一般市民による集団での殲滅作戦について方法や注意点を論じる。
第6章 ゾンビの支配する世界で
人類がゾンビを食い止められなかった場合、どのように生きていくべきか。数十年単位の行動指針を示す。
第7章 ゾンビ襲撃記録
古代アフリカのゾンビの痕跡、十字軍によって殺害されたエルサレムのゾンビ研究家、マルコ・ポーロが見たゾンビ、江戸時代の対ゾンビ秘密組織……歴史の隙間に残されたゾンビの記録を明かす。
例えばゾンビゲームでも重要な対ゾンビ装備だけでも、第2章“武器と戦闘技術”で48ページも使い、どんな近接武器がいいか、どんな銃が好ましいか、意外に役に立たないのはどんな武器なのか、といったことが事細かく解説されている。まぁガイドブックでしかないので、しくじって噛まれちゃっても特に責任は取れないのであしからず。ちなみに近接武器のベストはバールとのこと。やっぱりね!
(執筆:ミル☆吉村)