『カラドリウス』が目指したもの

 『カラドリウス』は、『雷電』シリーズなどを手掛けたモスから、2013年4月25日に発売されたゴシックホラーシューティング。何らかのスピンオフが即座に出てもおかしくないほど凝った世界観とストーリー、ヤスダスズヒト氏を起用したキャラクターデザイン、ベイシスケイプによる壮大なサウンド、被弾するたびにプレイヤーキャラやボスの衣服がはだけていく“羞恥ブレイク”など、シューティング部分以外の、グラフィックや演出を重視した作風が光る作品だ。

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▲ゲーム性が2Dだが、ステージ開始直後やボス戦のデモなど3Dで展開するシーンもある。立体的な見せかたが臨場感を高めている。

 ゲームシステム的には、3種類あるゲージ制の特殊武装“エレメントシュート”、チップを収集して集める魔導書(1UP)、スコアアイテムのメダルといった仕組みが特徴。“エレメントシュート”は、これで敵を倒すとスコア倍率が少しずつアップしていく効果があるため、スコア稼ぎにも必須。いずれにしてもメインショットだけでは攻撃力不足に陥りやすく、“エレメントシュート”は積極的に使うべき攻撃方法としてデザインされている。

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▲“エレメントシュート”の使用で消費するエレメントゲージは時間で回復。100%の状態で温存してもあまり意味がないので、うまく回転させることを考えよう。

 ただ、こうした独自のシステムはあるものの、ゲーム性は基本的にはシンプルでスタンダード。敵の出現パターンやボスの攻撃パターンを覚え、トライ&エラーで少しずつ制覇していく。そんな王道を地で行く質実剛健な作りで、本質的には1980~90年代のシューティングゲームの遺伝子を受け継いでいると感じる。しかしながら、シューティングゲームはマニアックなイメージを持たれやすく、なかなか手に取ってもらいにくいジレンマを抱えるジャンルでもある。そこで、本作はゲームの核の部分を取り囲むように、これでもかといわんばかりにゴージャスな外装を施しているのだ。誤解なきように断っておくと、決してネガティブな含みはない。シューティングの本質を継承するだけでは、手を伸ばしてくれない層がいる。そこに訴求し、「いかに多くのユーザーに興味を持ってもらい、触れてもらうか」という導線を幾重にも敷くことに腐心している。

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▲難易度は決して低くはないが、敵が弾を撃ってこない“Practice”や、敵弾の多くが破壊できる“Very Easy”、通常弾に対する無敵のオン/オフなど、難易度を細かく設定できる。

 そうは言っても、やはりシューティングゲームにはノーコンティニュークリアーを目指してこそ見えてくる楽しさがある。そうなると、今度はリーダーボードのスコアが気になり始め、自分の限界を目指して何度も遊びたくなる。そんなサイクルにうまくハマれば、シューティングゲームは未知なる熱狂に彩られた、新たな世界を見せてくれるだろう。その意味では、「100万時間遊ぶ」というテーマの企画に向いたゲーム性を持っているのではないだろうか。とりわけ本作には、グラフィックの収集要素などもあり、ストイックに突き詰めるだけではない遊びも多数用意されている。こうしたお楽しみ要素のひとつが、キャラクター固有のストーリーだ。そこで今回のレビューでは、5月15日から配信されているふたりのDLC専用キャラクターにスポットを当てて、そのプレイ感に迫ってみたい。ストーリーに関してのネタバレはしないので、購入を検討している方も安心してほしい。

禁呪に縁深き者たち……追加キャラクターの真価は!?

 DLC専用キャラクターは、禁呪にゆかりのある“ソフィア・フルカネルリ”と、“リリスの悪夢”の2体。いずれも人間としての肉体はなく、怨念や精神が実像を結び、禁呪兵器に宿った形態を取っている。価格は1キャラクターあたり560マイクロソフトポイント。自機1機ぶんとしてはやや値が張るが、本作の場合は羞恥グラフィックやストーリーデモ、多人数プレイの会話やエンディングも含まれる。それを考えると割高感はあまりないのではないだろうか。

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▲デフォルトキャラは3名だが、隠しキャラクターの“カラドリウス”とDLCキャラで、機体選択画面は最終的にはこんなに賑やかに!
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◆ソフィア・フルカネルリ/ハウル・ローレライ
数百年前の始祖パラケルスス唯一の弟子で、ステージ間のパワーアップ画面でおなじみのナビゲーターのお姉さん。禁呪の力を安定させるため、みずからの魂を差し出しており、すでに肉体はない。精神のみが“ハウル・ローレライ”につなぎとめられた状態だったが、禁呪が使われたことを感じ取って再び目覚める。

・攻撃系エレメントシュート:Water/water gatling
左右にカギ型のレーザーを展開し、そのレーザーに沿って爆風が少しのあいだ残るショットを連射する。大型の敵に複数のレーザーを重ねるようにすれば、そこそこ高い攻撃力を発揮するものの、該当する敵が少なめなのがネック。レベルが上がるにつれてレーザーの本数が増え、左右に広がっていく。

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【LEVEL1】
【LEVEL7】

・補助系エレメントシュート:Water/mercuric bind
うねるように敵に絡みつくレーザーを発射する、『雷電』シリーズのプラズマレーザーを彷彿とさせる武装。攻撃力は低めだが、絡みつく面積を増やすことでダメージ効率を高められる。その点では、この敵も大型の敵に向いた武装と言える。また、ほぼ画面全域をカバーするため、ふつうに撃っているだけでも勝手に“エレメントコア”が出現しやすい。コアの場所を覚えていなうちは、役に立つだろう。

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【LEVEL1】
【LEVEL7】

・防御・近接系エレメントシュート:Water/acid reaction
自機の周囲に酸のバリアを発生させて敵弾をシャットアウト。通常弾を防いだ場合は、エレメントゲージが回復する特性を持つ。ただし回復量はきわめて微量なため、あまり過信はしないこと。自機の周囲をバリアにすっぽりと覆われるめ、敵機や敵弾がそこを抜けてくる恐れはほとんどない。敵群に恐れず突っ込んでいける。ただし空中物に関しては、耐久力の低いザコ敵限定だ。

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【LEVEL1】
【LEVEL7】

 メインショットは横幅が広く、密度は薄めだが攻撃力はそこそこある。ただし、“エレメントシュート”は全体的に爆発力に欠ける。攻撃系は攻撃範囲が独特で、レベルアップを重ねたうえで全弾当てるくらいでないと高い攻撃力が出ない。防御・近接系も汎用性は高いものの、耐久力の高い敵は撃ち切れないこともある。ボムも威力は低め。総合的な結論として、この機体は攻撃範囲については申しぶんなく、数で押してくるザコ敵には強いが、中型機のラッシュやボス戦は長期戦になりやすい。補助系はザコ、ボスを問わず使いやすいので、ほかのふたつを瞬間火力のあるものにカスタムするのがオススメだ。

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▲ソフィア機が真価を発揮できるかどうかは敵次第。補助系はレーザーが重なる面積が広い超大型の敵や、数で押してくるザコには強い。その中間的な、耐久力が高い中型の敵は不得手。
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◆リリスの悪夢/クロウリング・グラッジ
“リリスの悪夢”は、禁呪の実験により消滅した人間たちの怨念と、機体生成の際に乖離した負の不純物が混ざり合って実体化した存在だ。かつて、実験で消滅した、とある王国の王女の姿をしており、つねに憎悪と破壊衝動に駆られている。機体を器として封印されているため、機体の外に出ることができない。最初の段階からすでに“羞恥ブレイク”が進んだような見た目をしているが、もちろんここから3段階にブレイクする。

・攻撃系エレメントシュート:Dark/phantom glaive
自機の両サイドから、前方に幅広の連射ショットを放つ。メインショットが前方集中型なので、左右に散開しながら出現するザコ敵など、死角をフォローするのに向いている。真横を攻撃できるのも利点。ただし、攻撃力はリリス機の攻撃の中では低め。

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・補助系エレメントシュート:Dark/necrosis witch
補助系は、自機と同じ高さの画面左右端に渦が発生し、そこから前方の緩やかな斜め方向に連射弾を放つ。アレックス機の補助系に似ているが、本機の場合はみずから設置しにいく必要がある。この点は火力を集中させる点では有利だが、ややテクニカル。レベルが上がると弾の発生源となる渦の数が増え、攻撃力が倍化していく。やっかいなザコ敵を処理するのに向いているが、高レベルで全弾ヒットさせるように配置すれば、ボスへのダメージ源としても申しぶんない。

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・防御・近接系エレメントシュート:Dark/parasitic gemini
開閉するように動く、2本のムチ状のショートレーザーを照射する。左右に開閉するスピードはそこまで速くないため、高速の敵弾は抜けてくる恐れがあるが、広範囲をカバーするため使い勝手は良好。敵の正面に陣取れば、メインショット込みで高攻撃力を発揮できる。防御・近接系としては、攻撃力はおそらく全機体中最強。ボス戦でも主力武器になるだろう。

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【LEVEL7】

 リリス機は上級者向けに位置する機体だが、高火力の武装が揃っており、個人的には非常に使いやすかった。メインショットは攻撃範囲が狭いものの、攻撃力が高く、さらにステージが進むにつれてどんどん強くなるオマケつき。ショット幅の狭さは、“エレメントシュート”でカバーすれば問題なし。ボムの威力も高く、ボス戦を手早く終わらせられるのが魅力だ。“エレメントシュート”のカスタムは、攻撃系をより高火力のものに変更し、長所を伸ばす方向で火力特化にするのがオススメだ。

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▲攻撃系以外のエレメントシュートは、強力なメインショットも同時に放てることもリリス機の火力を後押ししている。

思い思いのモードや機体、難易度で遊び尽くそう!

 最後に、新機体を絡めた個人的にオススメの武装カスタマイズを紹介しておこう。

機体:リリスの悪夢/クロウリング・グラッジ
攻撃系:マリア機・攻撃系
補助系:ケイ機・防御・近接系
防御・近接系:リリス機・防御・近接系(変更なし)

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▲火力&弾消し偏重な組み合わせ。攻撃力は申しぶんないと思うが、攻撃範囲に若干難アリ? 補助系はリリス機のままでもいい。

 クリアー済みの機体は“エレメントシュート”をカスタマイズすることが可能なため、最終的にはどの機体も共用できるようになる。これはお気に入りの組み合わせを探すのが楽しい反面、機体ごとの個性が移動速度とメインショットに集約されるということ。全機体が同じような装備になってしまうことが不満であれば、自分でデフォルト縛りなどの制限をつけて遊んでみよう。シューティングゲームは1プレイが30分もあれば終わるものがほとんどだが、その30分には集中力と緊張感をもって挑む濃密な体験が詰まっている。たくさんのゲームモードや難易度が用意されているので、自分なりに目標を設定して、『カラドリウス』を遊び尽くそう。

■筆者紹介:バロンマサール
古参ライター。シューティングに限らず、好きなゲームをさんざん遊び倒したあと「それでもまだ遊びたい!」と感じることがある。そんなとき、人は縛りプレイに走る。はたから見るとただの変態マゾプレイにしか見えないが、当人は至って真剣である。それほどまでに魂が入るゲームにはそうそう出会えないのだが、ゲームを続けていれば必ずそういう作品にめぐり会えるときが来る。そんな衝撃的な出会いを求めて、今日も新たなゲームで遊ぶ……悲しいかな、これがゲーマーの性か。