最速プレイインプレッションも併せてお届け!

『rain』 単なる雰囲気ゲーではない本作の最新情報&プレイインプレッションをお届け_15

 2013年5月30日、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)より発売予定のプレイステーション3用タイトル『rain』について、キービジュアルや新規スクリーンショットなどの最新情報が公開された。またSCEJAは、この情報公開に合わせて事前にメディア向けのクローズドプレゼンテーションを実施。開発陣によるデモプレイが行われたほか、ゲーム冒頭部分(ゲーム開始からチャプター1クリアーまで)のプレイを体験できたので、そのプレイインプレッションも併せてお届けする。

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▲ベンチに腰かけ、泣いている(?)少女。いったいなにがあったのだろうか……。
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▲サーカスの会場、橋の上など、新たなステージと思しき画面写真も公開された。
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▲少女を追う少年の身には、さまざまな困難が待ち受けているのだろう。

フライング絶賛せざるを得ない仕上がりに感激(プレイインプレッション)

 『rain』に触れてみてふと思い出したのが、以前に友人から聞いた、音楽の世界で90'年代半ばに起きたという、ニュー・クラシックソウル、ネオ・ソウルというムーブメントだ。これは70'年代のソウルミュージックに強い敬意を払い、さらに時代に合わせて洗練した新たな構成・解釈でソウルミュージックを復興させようという動きだったそうだ(※友人は音楽業界の人間だが、記者は本職ではないので、聞きかじり程度の知識であることは断っておきます)。このムーブメントの音楽業界における意味、評価などはさておき、『rain』という作品がこれに非常に近い思想で作られているのではないかと感じて、思い出したというわけだ。では『rain』のどういったところがニュー・クラシックソウルに結びつき、想起されたのかを、ここからお話していく。

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 順番が前後するが、まず時代に合わせて洗練されたもの。これは、ありきたりだが、グラフィック、演出、BGM。ひと言でいうなら”世界の存在感の表現”だ。降りしきる雨、濡れた足跡、雨に濡れれば浮かび上がり、雨にあたらなければ消える少年と少女。絵画のようなタッチで幻想的に描かれているにもかかわらず、妙に現実感のある街並。雨音だけが聞こえる場面、静かに悲しげなメロディが流れるシーンなどなど。思い描いた世界を限りなく忠実に再現できるということは、技術の進歩によってもたらされたものに他ならず、その技術を使い、妥協せずに世界を作り上げる。これはいまの時代でなければできないことだろう。「背景なども含めて使いまわしはしていない」という作り手のこだわりも合わさり、『rain』はこの面で非常に高いクオリティーを実現している。ちなみに、すでに公開されているスクリーンショットや動画を見て期待に胸を膨らませている人も多いと思うが、観るのとやるのは大違いとはまさにこのことで、実際にプレイし、大小の演出なども含めて触れてみると、数段上の空気感、没入感が得られることは間違いないと断言しておこう。

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 つぎに敬意の部分。これは、ハードの性能などが制限された中でゲームならではのインタラクティブな楽しさを追求した先人(ゲーム開発者)たちへの敬意、だろうと思う。『rain』では、固定視点、歩く・走る・ジャンプ・調べる(特定の場所でのアクション)だけのシンプルな操作形態という、実にオールドファッションな仕様が採用されている。ゲーム性の部分も、パズル要素とアクションの複合になっており、解法を見つける思考は必要だが、複雑な操作などは求められない(というかできない)。敵役として登場する怪物に襲われると即ミスなため、ヒントは提示されるしリスタートポイントも細かく設定されているが、アクションのやり応えとしては”昔のゲームっぽい”と言っても差し支えないと思う(キャラクターの細やかなモーションなどは、もちろん昔と比ぶべくもないが)。誤解されては困るが、ニュー・クラシックソウルの思想と同様に、単なる回顧主義でこのようなゲーム性が採用されているわけではないということ。制限があるからこその解放感、目的があるからこその達成感。ゲームが持っている楽しさや素晴らしさの本質は、クラシックな手法でも、今風の手法でも変わらない。ならば、かつて好きだった、憧れた手法を採用しようと考えたのではないか。またそこには、全体で見ると少なくなりつつあるクラシックな手法を、語り継ぐ、改めて世に出すという目標も含まれているだろう。時代が進み、(ゲームの中の)世界が広がり、自由度は劇的に高くなり、できることも際限なく増えた。ではそれに比例して達成感や満足度は上がったのか? 「それもいいけど、それだけじゃないよね」と『rain』は問いかけているように感じる。慣れも含めて見えにくくなっているかもしれないが、ゲームという娯楽が常に内包している魅力や楽しさはいつの時代も同じものなのだと。

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 さて、素晴らしいゲーム内世界、強い意志を持って組まれたゲーム性、これらに加えて『rain』の大きな魅力のひとつとなるのが物語だ。『rain』の物語の全貌は、いまのところ開発陣以外誰も知らない。記者ももちろん知らない。知らないのに、それでも魅力のひとつだと言ってしまうのは、すでにいまの段階で、物語の結末、少年と少女の行く末を見届けたくて仕方がないからだ。この気持ちを分析してあれこれと理由付けをすることもできなくはないが、野暮な行為だと思うのでやめておこう。とにかく、物語を最後まで読める日が来るのが待ち遠しい。いまはそれでいいし、十分だ。

 というわけで、実際にプレイしての簡単なインプレッションをお届けしてきたが、現時点での『rain』の印象を簡潔に述べると「多くのファンを生み出すエポックなタイトルになりそうな予感がする」だろうか。説得力のある予感かどうかはともかく、仕事柄多くのゲームを見てきてこういう予感めいたものを感じることはそう多いことではないのも事実。
 本作に、世界中から称賛の雨が降り注ぐ日が来ることを期待(やや確信)しつつ、続報、そして発売を楽しみに待ちたい。(TEXT:佐治キクオ)

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