●楽曲制作秘話が語られる

 レベルファイブの『レイトン教授』シリーズと、カプコンの『逆転裁判』シリーズが手を組んだコラボレーションタイトル『レイトン教授VS逆転裁判』のサウンドトラックCD、『レイトン教授VS逆転裁判 魔法音楽大全』が、本日2013年4月10日に発売された。人気の2作品が共演した本作の楽曲をテーマに、カプコン側のコンポーザーを務める北川保昌氏に、本作ならではのこだわりや楽曲制作秘話などをうかがった。

北川保昌氏
カプコン所属のコンポーザー。これまでに、『タツノコVS.カプコン アルティメット オールスターズ』や、『エクストルーパーズ』など、さまざまな作品の楽曲を担当している。

――今回、北川さんが本作の楽曲を担当することになった経緯を教えてください。

北川保昌氏(以下、北川) まず、『レイトン教授VS逆転裁判』は、レベルファイブとカプコンのコラボレーション作品であるというのが大きなテーマです。『逆転裁判』シリーズの楽曲は、社外の方が担当するケースが多く、今回もその流れで外部の方にお願いしてしまうと、テーマであるコラボレーションという趣旨からズレてしまうため、社内のスタッフの中から僕に白羽の矢が立ちました。

――北川さんは『エクストルーパーズ』の楽曲も担当されていますが、発売日からみて『レイトン教授VS逆転裁判』と開発期間が同時期ですよね?

北川 かなり、かぶっていましたね。スケジュール面だけではなく、『エクストルーパーズ』はテンポのいい曲調なのに対して、『レイトン教授VS逆転裁判』はオーケストラを使ったシンフォニックな曲調なので、そういった意味でもたいへんでした。

――レベルファイブの西浦さん(西浦智仁氏。『レイトン教授』シリーズのサウンドディレクター)とは、どのように分担しながら曲を作られたのでしょうか?

北川 “レイトン”カラーの強いアドベンチャーパートと、アニメ(ムービー)パートの曲は西浦さんが作られて、“逆転裁判”カラーが強い裁判パートは僕が担当するというように、パートごとに作る曲を分けています。ただ、お互いがバラバラに曲を作ってしまうと、音に明確な違いが出てしまうため、西浦さんが作った曲のデータをいただいて、僕のほうで楽器などの音色の調整をさせていただきました。アレンジというよりは、音の整合性を整えるイメージ。ここがいちばんのコラボレーションかもしれませんね。

――最初に西浦さんと使用する楽器や曲調などを打ち合わせされたのでしょうか?

北川 そうですね。開発初期に僕らがレベルファイブさんに行って、「どういうふうに作りましょうか?」と打ち合わせをしました。使用している楽器はもちろん、PCに入っている音源も違ったのですが、話し合った結果、音の方向性がオーケストラやアコースティック調に寄せていこうという結論が出たので、もともとアコースティックな楽曲を使っていた『レイトン教授』シリーズに寄せる形で、音源を統一しました。同じ音楽制作ソフトを使っていたので、スムーズに音源を揃えることができましたね。

――曲調を『逆転裁判』シリーズに寄せるという方向性はなかったのですか?

北川 『逆転裁判』もオーケストラのコンサートを行っていますが、もともとはゲームボーイアドバンスの作品でしたので、電子音のイメージが強いんですよ。コラボレーションという意味では電子音でもよかったのですが、本作は魔法や魔女が登場する中世的な世界が舞台でしたので、ディレクターの巧(巧舟氏。『逆転裁判』シリーズの生みの親)と相談して、管楽器や弦楽器、木管楽器などを使った生音中心の雰囲気にしました。あと、オーケストラ系の楽器だけでなく、民族楽器も取り入れています。

――具体的には、どんな楽器を使用されているのでしょうか?

北川 ツィンバロムやマリンバなどですね。民族楽器的なものはシーンが転換するときや、物語の流れが変わるときの隠し味として使用しています。

――ゲームの序盤では、『逆転裁判』の曲のオーケストラアレンジが多く聴けますね。

北川 最初のロンドンでの裁判シーンなどは、『逆転裁判』のアレンジ曲、魔女裁判に入ってからは、ほぼオリジナルの新曲です。『逆転裁判』シリーズの原点であり、“『逆転裁判』はすべてここから始まっている”ということを重視し、アレンジ曲はすべて『逆転裁判』シリーズ1作目の楽曲から選んでいます。また、英国法廷編で使用したアレンジ曲は10曲ほどあるのですが、すべて巧が選んでいます。

――なるほど。北川さんが本作用としてオリジナルの楽曲を作った際に、心がけたポイントや挑戦したことを教えてください。

北川 “魔女裁判”というキーワードも印象的でしたが、それ以上に『逆転裁判』であるという部分を意識しました。もともと『逆転裁判』の曲は大好きだったのですが、改めてコード進行や音使いを研究し直して、そのうえで“『逆転裁判』が魔女裁判という世界に行ったら”というテーマで、巧と密に話し合いをしながら作っていきました。『逆転裁判』ではキーになる曲がいくつかあるので、成歩堂君のテーマや異議ありのテーマ、尋問の曲などは、原曲を意識しながら本作用に新しく作りました。

――曲作りはスムーズに進んだのでしょうか?

北川 それが、すぐにオーケーが出るときと、まったく出ないときの差が激しくて(笑)。何度も作り直して、1曲でき上がるのに、最大で2ヵ月近くかかったこともありました。

――『レイトン教授』シリーズの曲も研究されたのですか?

北川 はい、もちろん。コラボレーションなので、しっかり聴かせてもらいました。

――それでは、裁判パートの曲にも『レイトン教授』シリーズの要素が取り入れられているのでしょうか?

北川 それぞれの要素が混ざってしまうと、裁判パートとアドベンチャーパートのバランスが悪くなってしまうので、あえて取り込もうという感じではなく、“コラボレーションするという意識を、どこか片隅に置いておこう”というイメージですね。

――本作の楽曲の中で、北川さんのお気に入りの曲はどれになりますか?

北川 うーん。どれにしよう。……西浦さんの曲も大好きなのですが、単なるファンのような感想になってしまうので、ここは僕の曲の中から選びます!(笑)。終盤の魔女裁判が流れる『大魔女の裁き・開廷』という曲です。じつは、この曲は僕が本作の制作に関わったばかりのころに、「僕が開廷の曲を作るんだったら、こんな感じだな」と作ったものなんです。ただ、現在のものとはアレンジがまったく違う軽いノリの曲で、完成版を巧に聴かせたら「あー、なんか違いますね、コレ」と言われてしまったエピソードがありまして(笑)。

――(笑)。

北川 「これは、なんか違いますね」、「ちょっと軽いですね」と言われてボツになってしまって……。個人的には「これしかない!」と思うほどお気に入りの曲だったのですが、「巧さんが言うなら、違うんだろうな……」とそのまま使わずに寝かせておいたんですよ。そこから2年ほど経ったころに、最後の開廷シーンの楽曲を作ることになって、「これは来たぞ!」と。「イチオシの曲があるんですよ!」ともう一度、巧に同じ曲を提出してみたんです。

――2年越しの再チャレンジですね!

北川 そうなんですよ! 2年熟成させて、「この曲を聴いたら、プレイヤーはすごく盛り上がりますよ! 巧さん、どうでしょう!?」と! ……その結果、ひと言「……軽いね」と(笑)。

――(爆笑)。

北川 しかも、「前に、軽いって言いませんでしたっけ?」とまで言われてしまい……。

――巧さん、覚えていたんですね(笑)。

北川 でも、僕はそこで引き下がらず、「このシーンにピッタリだと思うんです! 責任を持って、クライマックスにふさわしい曲にアレンジしますから!」と言って、アレンジを変えたところ、ようやく「うーん。とりあえず入れますか」と、ようやく日の目を見ることになったんです。

――それでもまだ、巧さんはそんなテンションなんですね。

北川 ええ(笑)。「“とりあえず”なのか……」と思いながらも、結果的に使えてもらえたので、すごくお気に入りの曲になりました。本作を遊んでいただいた皆さんからも結構人気があるみたいなので「よかったな」と。でも、巧からはそれ以上のコメントがなかったので、その曲との出会いがよくなかったんだと思います(苦笑)。

――ちなみに、曲を作るときに巧さんはどのように発注されるのですか?

北川 絵がある場合はまだいいのですが、ゲーム制作ではすでに絵があることのほうが少ないんです。本作は、幸いにも“巧ゲームス”なので、巧の中では絵がすべて完成しているんです。そういう意味で、たとえば「『ゴーストトリック』のこういう曲」といった的確な指示がくる場合が多かったですね。たまに「何かないですか?」といったアバウトなときは難航するフラグでした(笑)。

――(笑)。それでは、最後に読者へメッセージをお願いします。

北川 今回は、コラボレーションという形なので、いわゆるお祭り的なサントラになります。西浦さんが生み出すアドベンチャーパートの曲と、『逆転裁判』のエッセンスを取り入れた裁判パートの曲、そしてムービーシーンの曲という三つ巴で、たいへん豪華な内容になりました。100曲近くにのぼる、レベルファイブとカプコンのコラボレーションの楽曲たちを、ぜひ楽しんでいただければと思います。

レイトン教授VS逆転裁判 魔法音楽大全
■発売日:2013年4月10日
■価格:4200円[税込]
■発売元:カプコン セルピュータレーベル
■仕様:CD3枚組/特製スリーブケース同梱

レベルファイブのコンポーザー・西浦智仁氏が手がけた“レイトン教授Disc”とアニメシーンの楽曲を収めた“ムービーDisc”、カプコンのコンポーザー・北川保昌氏による“逆転裁判Disc”の3枚組。パッケージは特製スリーブケース仕様で、まさに大全の名に相応しい内容となっている。