『Retro City Rampage』たったひとりで17バージョンリリース! その苦労を明かす【GDC2013】

米時間の3月25日から29日にかけてサンフランシスコで行われたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2013から、『Retro City Rampage』についての講演をお届けする。

●「次はプロを雇いますね……」とは本人談

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 米時間の3月25日から29日にかけてサンフランシスコで行われたGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2013から、『Retro City Rampage』についての講演をお届けする。

 『Retro City Rampage』はブライアン・プロビンチアーノ氏が開発したオープンワールドアクションゲーム。『グランド・セフト・オートIII』のディメイク(HD化の逆)として8bitテイストにしてみた個人作品として始まり、完全オリジナル作品として作り直して、海外ではPC、プレイステーション3、PS Vita、Xbox 360、Wiiで配信中。
 インディーゲームとしてはものすごいマルチプラットフォームだと思わないだろうか? しかも本作、ブライアンはプログラマー兼ゲームデザイナー兼プロデューサー兼代表兼庶務&経理兼広報兼アーティスト……というわけで、音楽以外のほぼ全部をたったひとりでやっているのである、そう、各プラットフォームへの移植作業も……。


 いくらか時間差をつけてリリースしたとはいえ、最終的にブライアンが手掛けることになったのは、実に17SKU。このSKUというのは、販売地域やプラットフォームを別に数えたものを指す。
 「え、それはズルい数え方じゃない?」と思うかもしれないが、たとえば同じプレイステーション3版でもアメリカ版とヨーロッパ版とアジア版はそれぞれちょっとずつ違うし、PC版でも記者が持っているGOG.com版(DRMがかかっていない)とSteam版(実績システムほか、Steamとの連動機能を山ほど実装している)ではこれまたちょっとずつ違う。ましてやPC版とXbox 360版なんて、やらなきゃいけないことが全然違うのだ。


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▲ゲームとしては同じに見えても、地域・プラットフォーム別にいろいろ用意しなきゃならない。フツー、本当にひとりではやらないものなのである……。

▲「ブライアン・プロビンチアーノ、大量のSKUに挑み、ここに眠る……。」

▲3年以上の開発期間、1/3はゲームの中身の開発以外のことに費やしたという。本誌でもメールインタビューを受けてもらいましたが、“広報窓口”にメールを送ったら本人からメールが返ってきて驚いた覚えが。

 インディーゲーム旋風が吹き荒れる昨今、本当にいろいろなプラットフォームで個人がゲームを出せるようになったし、また出るようになった。とはいえ、出せる市場に片っ端から出して超マルチプラットフォームにしようというなら、普通は権利を売ってコンソール(家庭用ゲーム機)版はパブリッシャーに任せたり、せめて移植作業担当の人を雇ったりしそうなものである。なんせ、フツーは会社ならそれ専門の部隊がいるかもしれないが、ブライアンの場合は全部ひとりで管理しなきゃいけないのである。

 しかし、結果としてXbox Live アーケードのリリースにあたってD3パブリッシャーと契約した以外は気合の単独リリース。講演では、プログラム上の問題からプラットフォームごとに必要とされる機能(例えば1人プレイ用のゲームでもコントローラーは最大4つ接続されている可能性を考慮する必要がある)、果ては「PR用の素材は作れるだけ作っておくこと」なんていうアドバイスまで、単独ですべてをやった際にわかった注意点を解説していた。

 ちなみにD3パブリッシャーと契約したのは、Xbox LIVE アーケードの個人でのライセンス取得が難しく、また同時期でのマルチプラットフォーム展開を予定していたことからマイクロソフトにパブリッシャーになってもらう方法も使えなかった(時限独占などが求められる)ことから選んだ苦渋の選択とのこと。
 パブリッシャー側にしてみれば「どうせならXBLA版だけじゃなく他のもやらせてよ」という話になりがちなわけだがブライアンとしてはそうしたくないわけで、さまざまなパブリッシャーと話をして実際に契約にこぎつけるまではかなりの時間がかかったようだ。


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▲個人がゲームを出せる時代。じゃあいつ出すか、今でしょ! とはいえリリースするにはライセンスが必要。取得が難しい場合にはどこか企業と契約して配信してもらうという昔ながらの方法を取る必要がある。「最悪の契約はいつも大手が持ってくる」との忠告も。

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▲プラットフォームごとにアーキテクチャも違えばやらなきゃいけない処理も大分違う。

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▲「GPLライセンスのものは使うなよ」なんて、わかってる人には常識の内容も多かったので細かい部分は割愛するが、スクリーンやオーディオ面だけ取っても、考慮しなければならないことがいっぱいあるのだ。

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▲へぇ~っと思ったところその1。「プレイステーションプラットフォームとiOSはメニューに“EXIT Game”を作ってはいけない」

▲へぇ~っと思ったところその2。「ESRB(アメリカのレーティング機関)はダウンロードタイトルの審査が無料」

 売上の細かい内訳も披露され、SteamとPSN(プレイステーション3&PS Vita)がかなり好調で、意外にもコンソールではPS Vitaが一番いい収益をあげたそう。
 またPC版の内訳ではSteamが圧倒的で、「ほかのプラットフォームもやってもいいが、売上ではまったくかなわない」とのこと。特にセール時の勢いがすさまじいそうで、いわく「自分のサイトで宣伝したり、プレスリリースを送るよりもSteamに小さいバナーが出るほうがはるかに効果がある」とか。

 まとめのひとつとして、「全部自分でやろうとしないこと」と語った同氏、質疑応答で「もう一度同じ事をやろうと思いますか?」と聞かれると、いい経験になったし、だからこうして皆さんに情報を共有できたわけだし……とは語ったものの、「次回はプロを頼りますね……。」とのこと。まぁ、そりゃそうだよね……お疲れ様!


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▲左から収益、販売本数、かかった時間(概算)、かかったコスト(概算)。ブライアンいわく「PS Vitaはインディーに結構オススメかも」とか。XBLAはパブリッシャー探しの難航がかなりひっかかってしまった結果に。

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