エネルギー120%充填! 宇宙船ストラテジーゲーム『FTL』の困難な航海【GDC2013】

米時間3月25日から29日まで開催された、GDC 2013。インディーゲーム賞IGFアワードで2部門受賞した『FTL』の開発秘話が明かされた。

●KickStarterの大成功の背後に潜んでいた問題とは?

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▲本講演の翌日、IGFアワードでゲームデザイン賞と観客賞、そしてGDCアワードでデビュー賞を獲得!

 米時間3月25日から29日まで開催された、GDC 2013(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス 2013)。Subset Gamesの『FTL: Faster Than Light』(以下、『FTL』)の開発秘話が明かされた。

 本作は、宇宙船の艦長となり、立ちはだかる敵宇宙船とクルーと艦のシステムをやりくりして戦いながら航海する、一種のストラテジーゲーム。

 非常にシンプルな見た目でありながら、「救護室のエネルギーをカットして攻撃用ドローンを起動! 敵シールド制御室に副砲を撃ちこんでからビームで武器制御システムとエンジンを焼き切れ!」ってな感じに、スペースSF作品のあんな艦長やこんな艦長の気分になれるゲームだ。

 GDC期間中には、インディーゲーム賞IGFアワードで2部門を受賞しているほか、GDCアワードでもSubset Games自体がスタジオとしてのデビュー賞を受賞している。


 本作の開発は、どんなゲームを作るかということが明確に固まっていないままスタートしたという。
 初期コンセプトでは、“SFゲームはいつもアクションに寄り過ぎているので、宇宙船の運営そのものにフォーカスしたタイトルにする”、“シールドやエンジンなどが壊れたり出火したりするのをクルーをやりくりして対応する”、“異種族と遭遇し、テキストベースのやりとりをする”といったような要素は上がっているものの、ゲームそのもののジャンルや規模などは定義されておらず、抽象的なものだった。


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▲初期のラフスケッチに、すでに『FTL』らしさが表れている。

 しかし、とにかく早く開発に着手したかったため、まずは小さな宇宙船のクルーの管理に焦点を合わせたゲームというレベルでスタート。この頃は開発3カ月のプロジェクトと考えていたため、簡易なグラフィックで済むグリッドを使って宇宙船の構造を示すことにしている。

 この最初期プロトタイプでは、隕石衝突などによるトラブルにクルーを使って対処していくサバイバルゲームとなっており、艦内の各種システムの仕組みのようなものは現在の『FTL』と近いが、ゲームとしては面白みにかけるもの。
 細かいマネージメント要素、内装などを加え、それ自体はうまくいったが、決定的に面白さを生み出す部分が足りない。そこで楽しいこととそうでないことを検討し、戦闘要素を入れることに。


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 こうして出来た次のプロトタイプでは、クルーをマネージメントしつつ、2D空間で宇宙船を操作して撃ち合うシューティング的なもの。
 しかし今度は武器・シールドシステムを細かくしすぎて戦略的に設置しなくてはならなかったり、しかもそんな複雑さで複数の敵と戦わなければなかったりして、オートパワー管理を加えてみたりと試行錯誤したものの、相変わらずゲームは楽しいものではないという有様。
 そこで今度は思い切って、シューティング的な宇宙船の操作は廃止し、その分、指揮要素にフォーカス。自船と敵船を分割画面で表示して戦闘を表現するというスタイルに変更。うまくいってなかったシステム管理を改善すべく、パワーレベルなどをアイコンで表示し一覧性を高め、画期的な進歩を得る。

 結局、開発着手から半年後にゲームのコアとなる部分が出来上がる。最後の3週間で大きく転換して、ゲームらしいものに。ゲームの重要な要素であるクルーを円のアイコンで表示していたのをやめ、ヒト型の形で表示することでクルー管理ゲームらしい雰囲気も出てきたという。


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 これでゲームとしてはかなりよくなってきたものの、IGFチャイナに出展した際に、プレイヤーを忙しくプレイさせ続けるだけのコンテンツに欠けていると感じたそう。だが残念ながら、ここからゲームを完成まで持っていくには残念ながら資金不足。
 そこでクラウドファンディングサイトのKickStarterでプロジェクトを立ち上げ、1万ドルをゴールに出資を募ったところ、Double Fine Productionsの成功から始まったKickStarterブームの流れにうまく乗り、なんと1万人弱から希望額の20倍の資金が集まってしまう。

 だが突然、約1万人からの期待を背負うというのはプレッシャーだ。そのプレッシャーから艦のカスタマイズ要素をカットしたこともあったとか。1万人の意見を聞き、やりたくないこと、入れたくないことがあった場合もいちいち説明しなくてはならないというのも大変そうだ。また、そうやって合わせていったことで、それ以前の敏感さ・鋭さがなくなってしまったと感じていたそう。

 そして、必要以上に集まったお金で何を開発するかという新たな課題も。出資したファンたちの期待は高い……自分たちの予想図以上のものを求められている状態だが、リリース予定日を告知して出資してもらっているため、締め切りは決まっているのだ。
 そこでチームは再度コンテンツの評価を行い、サウンドとライティングに追加投資してさらにクオリティアップをはかり、そして新しい船、武器、エイリアンなどの追加開発に投資してボリュームアップするという選択を取る。


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 そしてKickStarterから2ヶ月後、出資者向けのβテストに移行する。ここでの問題はリプレイ性が低いこと。
 しかしKickStarterで出資するような熱心なファンがプレイしたため、そのフィードバックによってゲームの難度が上がり、リプレイ性が向上。ちなみにイージーモードが追加されたのはリリースの数週間前のことだったという。

 リリース直前の時期では、全体をまとまったゲームにすることを重視して開発を進め、何かの“追加”ではなく、“十分”であることを目指したそう。一方で特殊な遭遇イベントやガス兵器などの要素はカット。ゲームは最終的に9月14日にリリースされた。

 当初はこれほどの商業的なゲームにするつもりはなく、ダメなら放り出して次の仕事を探すつもりだったという。コアメンバーのひとりJustin Ma氏は、2年前にIGFで刺激を受け、いま登壇する側になったことの衝撃を語り、「でも仕事はやめない方がいいよ」とつけくわえて講演をしめくくった。


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