進化するマイクロソフトのユーザーインターフェイス
日本マイクロソフトは、同社が研究を進める“ナチュラルユーザーインターフェイス(NUI)”について、本日1月28日に記者説明会を開催した。“Kinect for Windows”による導入事例や、最新のNUI技術研究を紹介した。
登壇した、日本マイクロソフト 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長 加治佐俊一氏は、ユーザーインターフェイスの変遷の歴史として、文字によるCUI(キャラクターUI)から、画像によるGUI(グラフィカルUI)、そして最近では、身ぶりや手ぶりや音声などで直感的に操作する“NUI”へと変わってきたと説明。その最たる例として、Kinect for Windowsによる数々の事例を説明した。
まずは、約1年前のKinect for Windowsの発売当初から、活躍が期待された医療や教育分野から。東京女子医科大学 先端生命科学研究所(FATS)が開発した、非接触型画像操作システム“Opect(オペクト)”は、脳外科手術などにおいて、執刀医が無菌状態と集中力を保ったまま、患者情報を表示させたり、手術時間の短縮につなげられるシステムで、すでに東京女子医科大などの医療機関で導入されている。また、障害者活動支援ソリューション“OAK”は、口などの任意の箇所の動きをKinect for Windowsのセンサーが検出し、意思表示や、能動的に活動することを支援している。さらに、介護施設向けテレビゲーム“リハビリウム起立くん”は、ただの起立運動にゲーム性を持たせることで、患者のモチベーションの維持や継続性に役だっているという。
続いて紹介されたのは、今後ますます導入事例が進むと思われる物流やマーケティング分野。“Hello Counter”は、人の流れを計測することで、商業施設の入退店や通路左右の通過人数を計測できる。これらは時間帯や日付別に集計も可能だ。人の流れを計測・把握することで、商品の配置などに役立てることもできる。
また、一風変わった実用例として、体感型・書道フィジカルインスタレーション“AIRSHODOU”が紹介された。これは、広島現代美術館の“ゲンビどこでも企画公募2011”で入選した作品で、文字どおり、Kinect for Windowsの前で書道の要領で字を書くというもの。
マイクロソフトリサーチが進める“NUI”の最新動向
“NUI”について、さまざまな研究を進めているマイクロソフトリサーチ。アメリカでは、じつに900名の研究者が所属しているという、大規模な研究機関だ。近年では、日本人の研究者も増え、現在では6人の研究者が所属。そのマイクロソフトリサーチでの研究事例も、いくつか紹介された。
アメリカのマイクロソフト本社では、広大な敷地内を移動するためにシャトルバスを利用しているのだそう。そして、シャトルバスを手配するシステムとして、Kinect for Windowsが使用されている。シャトルを利用したい人は、音声で行き先を告げるだけで、自動的にシャトルが手配されるというシステム。紹介されたデモでは、3人の利用者(ふたり組とひとり)がいるなかで、まずふたり組の利用者の対応をし、さらに待っている後ろの男性を認識。利用者の会話で、行き先のビルを認識したり、服装(カジュアルかフォーマルか)といったことまで認識できるようになるのだという。セキュリティーの面でも、大きな可能性を秘めていそうだ。そして、“Digits”という、手首につけたセンサーで、指の動きを認識させるシステムや、利用者の部屋全体をプロジェクターとして使用する“IllumiRoom”も紹介された。
約1年のあいだに、さまざまなソフトウェアアップデートをしてきたKinect for Windows。近日中にも、新たなアップデートが予定されており、そこでは“Kinect Fusion”なるシステムが導入予定だ。“Kinect Fusion”は、Kinectを3Dスキャナーとして利用するアイデアで、リアルタイムに3Dのオブジェクトがスキャニングできるというもの。いったい、どんなふうに活用されるのか、いまから楽しみだ。
Kinect for Windowsは、Kinectをすぐれた入力デバイスとして使い、それをソフトウェアの進化により、利用方法の可能性を広げてきた。いまも150以上のプロジェクトが稼働中ということで、さらなる“NUI”の可能性に期待したい。