なぜレッドブルはゲーム大会“Red Bull 5G”を開催するのか? プロジェクトアドバイザー・松井悠氏に直撃

レッドブルが、ゲームトーナメント“Red Bull 5G”を開催中。5ジャンル(FPS、レーシング、スポーツ、格闘ゲーム、フリージャンル)の大会の決勝が、2012年12月9日に渋谷のクラブ・WOMBで行われる。それにしても、なぜレッドブルがゲーム大会を開催するのか? Red Bull 5Gのプロジェクトアドバイザーを務める松井悠氏に話を聞いた。

 日本にもすっかり定着し、そこらのコンビニで買えるようになったエナジードリンク“レッドブル”。F1チームやサッカーチームを持っていたり、エクストリームスポーツの支援を行なっていたり、大気圏外からの自由落下をスポンサードしたりと、スポーツ関連でさまざまな活動をしている。

 そんなレッドブルが、ゲームトーナメント“Red Bull 5G”を開催中。5ジャンル(FPS、レーシング、スポーツ、格闘ゲーム、フリージャンル)のゲームで予選を行い、その決勝が2012年12月9日に渋谷のクラブ・WOMBで行われるのだ。

 なぜレッドブルがゲーム大会を開催するのか? 「待望の新作も出たし、今日は一発、徹夜でゲーム」なんて時にレッドブルを買う人も多いんじゃないかと思うのだが(ちなみに本誌E3取材班が現地到着して最初にすることはレッドブルを山ほど買うことである)、この関係がありそーでなさそーな感じをスッキリさせたい。そこでRed Bull 5Gのプロジェクトアドバイザーを務める松井悠氏に話を聞いた。

●なぜレッドブルはゲームを支援するのか?

――まず、どういった経緯でRed Bull 5Gを開催することになったのでしょうか。
松井悠氏(以下、松井) 3年ほど前から、レッドブルさんの方でゲームに力を入れるようになっていて、アメリカでMLG(メジャーリーグゲーミング。アメリカ最大規模のゲーム大会)のFPSプレイヤーを、スポーツ選手と同様に“デジタルアスリート”としてスポンサードしたのがそもそもの始まりですね。
 アメリカでは“Red Bull LAN”というイベントもやっていて、回数を重ねるごとにFPSだけじゃなく『スタークラフトII』などのRTS(リアルタイムストラテジー)もやるようになって、そこから韓国のトッププレイヤーもバックアップするようになっているんです。(編注:Startaleという韓国クランをサポートしており、先日ダラスで行われたMLGの秋の大会では若干15歳のLife選手がチャンピオンになった模様)

――海外でのそういった流れがまずあるわけですね。
松井 はい。そこでレッドブルジャパンさんで日本でもゲーマー向けに何かやろうという検討が始まって、「ゲームの近代五種みたいなことはできないか」と、5ジャンルを5種目にしたゲーム大会という、現在の“Red Bull 5G”の原型となる話が出てきたと。

▲レッドブルジャパンのカルチャー紹介ページ。もちろんゲーム情報の記事もある。

――そもそも、ゲーマー層をプロモーション的に重視するというのは何故なんでしょうか? まぁ僕自身、頻繁に飲むので答えが見えているような気もしますが(笑)。
松井 アメリカでのデータなんですが、「どういう時にレッドブルを飲みますか?」という質問に対して、30%ぐらいが「ゲームをやっている最中」と答えていて、しかもそれがスポーツやダンスなどのカルチャーを支援しながらマーケティングのターゲットとしている若い層だったんですね。
――次に支援するならここしかないと。レッドブルとしてもメディアを持っていますよね?
松井 レッドブルにはメディア部門もあって、オーストリアではケーブルテレビのチャンネルも持っていて、長編ドキュメンタリーなんかも作っているらしいんですよね。実はエナジードリンクの展開とメディア事業のふたつのビジネスをやっているという。

――単一のタイトルの大会だとか1ジャンルの大会、例えば格闘ゲームでは“闘劇”があったりしますけど、ジャンルとタイトルを横断した一般参加可能な大会というのはなかなかないですよね。松井さんはeスポーツの大会などを見てこられていて、国内のイベント運営にも関わられていますが、どういった感じに話が来たんですか?
松井 去年の年末ぐらいに、とあるゲームの大会のイベントに協力した関係で人づてにご紹介頂きまして、お会いして「これからのeスポーツは日本でどうあるべきか」といった話をさせて頂きました。具体的なオファーを頂いたのは今年3月ぐらいなのですが、その頃には年末にやることと、種目もあらかた決まっていましたね。
 僕自身、2005年ぐらいからいろんなeスポーツ大会に関わってきた中で、最近はちょっとお断りしている案件も多かったのですが、今回は「レッドブルがやる」というキーワードだけでも、とにかくおもしろい。これは自分が今まで培ってきたものの集大成を注ぎ込むべきじゃないかと思い、「ぜひお手伝いさせてください」と返答しました。

●コミュニティからの不満ができるだけ少ない形で大会を実現するために

――実際、どういった関わり方をされるのでしょうか?
松井 役割としてはプロジェクトアドバイザーという肩書きなのですが、プロデューサー側で決めたことに対して、例えば「FPS部門ではどういうルールがいいか?」といった話が出た時に、今そのジャンルのゲーマーたちが普段どんなルールでプレイしていて、ほかの大会ではそれぞれどういったルールを採用しているのかを調べて、提案する。それに伴って、そのルールで大会を進行する上で何が必要なのか、オンライン/オフラインで問題なく試合が進行できるのかといったことも調べます。

▲日本ぷよ連盟のサイト。「落ちものパズルゲーム『ぷよぷよ』シリーズの一層の普及を目指して、広く活動を行う非公式団体」と説明されている。

――そういった所は実際にプレイヤーだったり、プレイヤーコミュニティに近くないと見えにくい所がありますもんね。外野にしてみると一見派手でおもしろそうなルールが、やっている人にしてみれば“ナシ”だったり。
松井 『ぷよぷよ』では、もう何年もやり込んでいる人たちが集まった“日本ぷよ連盟”というコミュニティがあるので、連絡を取って「実は今度こういう大会をやるのですが、皆さんにとって最もいいルールは何ですか?」と聞いてみたり。基本的にはタイトルが決まったところで、コミュニティからの不満が一番少ない形・ルールで大会を進行するためのお手伝いをやらせて頂いている感じですね。
 それと、結構大会にも「いろいろある」と思うんですけど……。

――はい、そういったコミュニティとの折り合いの点では、“いいeスポーツ”と“悪いeスポーツ”がありますね。
松井 最初にプロデューサーさんに言われたのが、プレイヤーに「レッドブルがお金を使って俺たちのコミュニティを利用しようとしている」とか「あいつらゲームわかってないじゃん」と誤解されないような形でちゃんとやりたいということなんです。なのでこちらも、コミュニティやプレイヤーに対するヒアリングをきっちり行なっています。

――ただでさえゲームは遊びの側面と真剣な側面がありますから、プレイヤーコミュニティに企業が入ってきた時に「本気なのか?」という疑念にかられやすいですよね。
 とはいえ、実際にプレイしていても競技的にプレイしている人じゃないとわからない部分や、逆に盛り上がっていても大会の運営上向いていないルールなんかもあったりする。その辺りの摺り合わせをやられているわけですね。
松井 そうですね。プレイヤーサイドだけでなく、オフライン予選でスタッフがやるべきことなど、決めなければいけないことはたくさんあります。レッドブルにはSBM(Student Brand Manager)という大学生のスタッフが各地にいるのですが、大会を手伝ってくれる彼らにもルールや進行をレクチャーしたり。
 僕もプレイヤー上がりなのですが、メーカー主催の大会って、待たされるし、「このルールはないよな」ってことになったり、いろいろ大変じゃないですか。なので、都合がつく限り、選手にストレスがかからないように心掛けています。
 オフィシャルモニターとしてEIZOのFORIS FS2333を採用しているのもそういった部分です。大会によっては大きなモニターが置いてあっても応答速度が悪かったりして、それもストレスになりますので。ネットワーク周りや、ステージのレイアウトなどにも気を遣っています。

――ステージは結構難しいですよね。オンラインFPSなどの大会を見ていても、いわゆる“オフライン慣れ”の違いが結構響くのをよく見かけます。
松井 FPSなどだと本当はプレイヤーに遮音した箱に入ってもらうのが理想ではありますが、それは予算的に難しかったりするので、レイアウトを工夫して、なるべくプレイヤーの目にビジョンが映らないようにしたりとか、MCさんに対して状況をバラさないようにお願いしたりとか配慮しています。そのほかのイベント全体の運営などは、レッドブルさんと僕を引きあわせて頂いた方が担当しているので、そこに関してはあまり関わらず、ゲームの部分に集中しています。

●各タイトルでの見所

――そして今回、『バトルフィールド3』、『グランツーリスモ5』、『FIFA12 ワールドクラス サッカー』、『ストリートファイター X(クロス) 鉄拳』、『ぷよぷよ!!』というラインアップになりました。
松井 そのジャンルで盛り上がっているタイトル、メーカーさんから非常にご協力頂けたタイトルを揃えることができました。

――では決勝に向けてのそれぞれの見所を教えてください。
松井 まずは格闘ゲームの『ストリートファイター X(クロス) 鉄拳』から行きましょう。現状でカプコンさんから出た最新の格闘ゲームで、パッチによる調整でかなりよくなっています。新キャラなども出てきて、トッププレイヤーたちがどういう形に仕上げてきているのかを見て頂きたいですね。

 次は『ぷよぷよ!!』。これはもう、想像を絶するプレイと言っていいと思います。大会動画を見ていても、世界が違いますね。手さばき、連鎖の組み方まで見逃せません。プロデューサーさんに提案した時に最初「ぷよぷよ?」と言われたんですが、正直この5タイトルで一番レベルが高いのは「ぷよぷよ!!」か『グランツーリスモ5』じゃないかと思います。本当に、この大会で勝ったら世界一と言えるレベルなんじゃないでしょうか。
――ちょっと異色ですが、極まったプレイヤーの人の対戦は本当にスゴいですからねぇ。自分の積み上がっている所見ないんですよね……。もしかすると一番、自分がプレイしていなくても観ているだけで楽しいタイトルなんじゃないかと思います。
松井 そうですね。もちろん、目当て以外のタイトルでも楽しめるように司会や解説を入れていく予定ですが。

 『グランツーリスモ5』ではポリフォニー・デジタルさんのご協力を頂いて、Red Bull 5G専用の新モデルを作って頂きました。オフライン予選以上では、PlaySeat(ドライバーズシートを模したレースゲーム専用高級シート)のRed Bullモデルと、ThrustmasterのハンドルコントローラーのT500を用意しました。
 これはポリフォニー・デジタルの山内一典プレジデントとお話した時に、試合会場では立ってプレイするのではなくて、これでプレイして欲しいというオーダーもあって、万全の形でプレイして頂きます。

――手に汗握る攻防が見られそうですね!
 FIFAについては『FIFA13』がもう出てしまっているのですが、大会発表時点では発売されていないタイトルだったので、悩みました。運営側としてはまだ誰も触ったことのないタイトルでルールを作るのは真摯ではないと思いましたので、『FIFA12』最後の集大成として大会を行うことに決めました。

――1年以上プレイしてきた成果が見られると。
 そして『バトルフィールド3』ですが、非常にフィールドが広いゲームなので、どうしようか困りました(笑)。8人対8人というのも、機材や募集の面で難しいので。
 でもそこでDLC(ダウンロードコンテンツ)の“クローズ・クォーター”なら狭いので行けるかな、という話になりまして、配信されたらすぐに検証を行なったところ、これなら4対4でできるだろうという見通しがたったので、正式に決まりました。
 エントリーされている方たちの話を伺ってみると、しっかりチーム練習をされているようなので、その辺りの連携も見所ですかね。ただ観戦モードがないので、そこは上手く選手の画面を切り替えながら、ステージ上での解説などで補っていきたいと思います。

●まずは東西対抗。いずれは世界展開も!?

――ちなみに会場のWOMBはクラブですが、ステージはどんな感じになるのでしょう?
松井 今回は東西対抗というテーマに合わせて、土俵をイメージしたステージの上で戦ってもらいます。タイトルごとに入れ替えがあるので、その間はクラブDJがプレイしています。ニコニコ生放送で中継も行うのですが、会場に足を踏み入れて頂ければ、「レッドブルがゲームイベントを解釈するとこうなる」というおもしろい形が見られるんじゃないでしょうか。普段とは全然違う空間が体験できると思いますよ。

――そして勝利特典がおもしろいですよね。
松井 来年のF1日本グランプリに、本大会で勝利した9人の選手を金土日と招待して観戦ツアーを実施します。普通じゃ手に入らないチケットなので一生ものの体験になるんじゃないでしょうか。それとレッドブル一年分が貰えると。

――今後の展開もあったりするのでしょうか?
松井 実は、来年もやることと、5ジャンルで5種目というのが決まっています。それぞれの内訳がどうなるかは未定ですね。FPSなどでは「PCはないの?」といった声もあるので、そういった辺りも検討したいと思います。あとは国際的に広げていくことも考えられているので、どうタイトルを選定していくかも今後の課題ですね。
――タイトルによって、地域とか国による層の厚さも違いますからね。
松井 各国で独立して行うのか、統一レギュレーションでやるのかわかりませんが、そういった流れで、日本からデジタルアスリートが生まれてくるとうれしいですね。公式サイトに「日本のゲーミング界に翼をさずけることを目的」と書いてあるのですが、これで日本のゲーミングシーンを盛り上げて、やがてはプレイヤーたちをデジタルアスリートという形で育てていければ。単発では終わらずにこれから展開していくと思いますが、まずは12月9日、お近くにお住まいの方は足を運んで頂いて、そうでなければ中継を見て頂ければと思います。