音楽とゲームとの“ノリ”が融合した異色のアクションアドベンチャー

 一説によると、メガドライブは何気に宇宙人と縁の深いハードである。本体同時発売の『スペースハリアーII』には3メートル宇宙人に酷似したボスが登場するし、高級外付けオプションのメガCD発売直後には、主役が宇宙人なRPG『惑星ウッドストック ファンキーホラーバンド』がリリースされている。『エイリアンソルジャー』や『エイリアンストーム』なんていう題名のソフトまで発売されていることからも、この説の信ぴょう度の高さがおわかりいただけるるはずだ。
 ……なんて平成のゲームキッズたちを完全に置いてけぼりの前置きとなったが、そんな“世代の空気”も含めて解説したいのが、2012年11月7日にXbox LIVE アーケード用タイトルとして配信が開始された『トージャム&アールコレクション』だ。
 我々ゲームプレイヤーは、『スペースインベーダー』の昔から宇宙人と戦いがちだが、このシリーズの主人公トージャムとアールは、音楽とダンスが大好きという、とびきりヒップでファンクなふたり組。本作には、そんな彼らのドタバタ大冒険を描いた『トージャム&アール』と『トージャム&アール イン パニック・オン・ファンコトロン』が収録されている。

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▲1992年にメガドライブ用ソフトとしてリリースされ、独自の世界観が話題をよんだ『トージャム&アール』。
▲これまで国内未発売だった幻のタイトル『トージャム&アール イン パニック・オン・ファンコトロン』。

 1作目と2作目の見てくれは違えど、トラブルに巻き込まれた彼らを操作して、解決に導いてあげるのが、プレイヤーの役割。音楽アクション・アドベンチャーと銘打つだけに、ゲーム中はつねにファンキーなBGMが流れているのが特徴で、グラフィックやキャラクターも、ひと昔前の(って当たり前だが)海外アニメのようなぶっ飛んだセンス。オリジナル発売当時から、一部ゲーマーたちに強烈な印象を残しているというのもうなずける。
 もちろん「セガの名作タイトルを可能な限り忠実に再現し、新たなアプローチを加えて現代に甦らせる復刻タイトルプロジェクト」がコンセプトの“SEGA AGES ONLINE”の最新作だけに、本作はオンラインでのふたり協力プレイに対応。さらに、スコアやクリアー時間を競うトライアルモードが追加されている。移植は、“SEGA AGES ONLINE”ではすでにおなじみのM2が担当。独自のオープニングムービーや、かゆいところに手が届く細かなオプション設定がうれしい。

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▲画面の位置やボタン設定はもちろん、ゲームの発売地域などまでを設定可能な充実のオプション(左)。新たに追加された遊びを楽しめる“トライアルモード”も用意されている(右)。

見た目はファンキーでも中身は硬派な『トージャム&アール』

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 オリジナルが日本で発売されたのは、1992年3月13日。当時は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の世界的大ヒットで人気ハードとなったメガドライブに、多数のソフトが集まっていた時期。同じころには『鋼鉄帝国』や『まじかる☆タルるートくん』といった、マニアからも評価の高いタイトルも登場していたが、その中でもひときわ異彩を放っていたのが本作の立ち位置だったように記憶している。

 ちなみに筆者は、発売当時に本作をプレイしておらず、友人が妙にハマってクリアーするまでの様子を見ていた程度だったが、そのインパクトの強さはハッキリと覚えている。しかし、このインプレのためにプレイしてみても、当時受けた“珍妙さ”がまったく薄れていないのが衝撃的であった。なにしろ、いちばんの強敵はフラダンサーなのだから、ふつうの感覚では頭上に“?”が浮かびまくりだろう。
 またも前置きが長くなったが、本作の内容をひとことで説明すると、自動生成型のダンジョン・アクションアドベンチャー。ポップな画面からは想像しにくいが、中身はいわゆる“ローグライク”(意味は各自検索!)と呼ばれる硬派な遊びだ。
 ゲームの目的は、地球に不時着したことでバラバラになったロケットのパーツをすべて集め、無事に故郷の星・ファンコトロンに帰ること。プレイヤーはトージャム、またはアールとなり、ランダムに生成される10フロアからなるマップをテクテクと探索し、パーツを探し集めていくことになる。

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▲縦横数画面に渡るトップビューのマップを探索していく。ふたりプレイ時は画面が中央から分割される。

 マップ上には彼らの行く手を遮る地球人が登場するのだが、その種類がこれまた珍妙。ショッピングカートを押したママさんやハチの大群、天使に悪魔にと「お前ら、ホントに地球人かよ!」とツッコミを入れたくなる顔ぶれだ。しかもトージャムとアールは、基本的に自分からは攻撃できないので、彼らからヒーコラ逃げ回りながら、探索していくことになる。ふたりに力を貸してくれるキャラもいるのだが、パッ見で味方と判断するには難しい容姿だったりして、これまた頭を抱えてしまう。

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▲なんとも味わいのある敵が多数出現。フラダンサーのワニヒは、近づくとつられてダンスを踊ってしまうめんどくささ。ほかの敵が迫ってるっての!

 ふたりの冒険を助けるフードやプレゼントも、マップ上に置かれている。フードは文字通り食べ物で、敵に触れて減った体力の回復ができる。プレゼントは箱に入っていて、一度開けるまでどんな効果があるのかはわからない。フードにもプレゼントにも、マイナス効果(最悪の場合は即死!)を持つものがあるので、開けるのに勇気が必要。とはいえ、プレゼントには空を飛べたり、敵を攻撃できるようになる便利なアイテムも入っているし、最大16個までしか持てないので、開けずにゲームを進めるのは、かなり難しくなっている。

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▲「何が出るかな♪」と歌い出したくなるプレゼントボックス。効果は出たとこ次第だが、一度開ければ中身が判別できるように。売買もできる。

 と、いささか難しいゲームであるかのような表現をしたが、要するにこのゲームの本質は、その“手探り感”を楽しむことにある。地球という未知の世界にやってきてしまったトージャムとアールのように、限られた情報を頼りに、少しずつ体験を広げていき、冒険のゴールへと近づいていくというのは、ゲーム本来の楽しさであるはず。全編英語ということもあって、ハンパない手探り感があるのも事実。ヒント機能に恵まれた最近のゲームに慣れていると、その理不尽さに腹を立てることもあるが、逆にいえば、それだけ自分で考えて状況に合わせた操作をして解決するという、昔ながらの“謎解き”の要素がパンパンに詰まっているということだ。

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▲探索するほどマップの全体図が明らかに。集めた宇宙船のパーツを確認することもできる。

 とはいえ、なにも手がかりがなくてはただの“不条理・不親切”ゲーム。オンラインマニュアルには、和訳やちょっとしたヒントが掲載されているので、もしこの原稿をきっかけにプレイを始めるのなら、それらを参考にクリアーを目指して欲しい。当時のプレイヤーには有名な隠しコマンドで、宇宙船のパーツが残り1個までそろうというものがあるので、それを使って見るのも手かもしれない(クリアー実績は解除されないけどね!)。
 それから、ゲーム本編とは別に遊べる“ジャムアウト”モードも触れておきたい。このモードでは、選択した音楽に合わせてボタンを押すと、トージャムとアールがラップやリズムを刻むという“音遊び”が楽しめる。「なんだ、それだけ?」と思うかもしれないが、このゲームが発売されたのは1992年で、いわゆる“音ゲー”が生まれる前の時代。それを思いながらプレイしてみるのも、オツなものかもしれない。

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▲ボタン操作で音楽を奏でる“ジャムアウト”モード。同じメガドライブで発売された『ああ播磨灘』の“播磨体操第一”に影響を与えたとか与えなかったとか(筆者妄想)。

アクション性がマシマシとなった『トージャム&アール イン パニック・オン・ファンコトロン』

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 北米を中心にスマッシュヒットとなった1作目に続いて、1993年にリリースされたのが、この項で紹介する『トージャム&アール イン パニック・オン・ファンコトロン』。じつはこのタイトル、国内では当時発売されておらず、日本のプレイヤーが(正規のルートで)プレイできるのは、今回が初めて。参考までに1993年の国内メガドライブシーンといえば、対応ソフトの発売本数がもっとも多かった年で、かつハードの性能を活かしまくったタイトルが多数リリースされた収穫期。そんな時期に、海外ではまたもやイカし(れ?)たタイトルがリリースされていたと思うと、なかなかに胸が熱くなる。
 日本初登場ということで、本作の内容を少し紹介しておこう。ゲームの舞台となるのは、前作のラストで無事に帰還できた故郷の星・ファンコトロン。だが、なぜかファンコトロンは地球人たちの侵略を受けるハメに! 平和な星を我が物顔で駆けまわる地球人を、魔法のビンを使って捕まえて送り返そう、というのがコトあらまし。

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▲ゲーム開始前のデモ画面。ファンコトロンが地球人の襲来を受けた顛末が説明される。

 画面を見てわかるように、ゲームのスタイルが横スクロールタイプとなっているのがミソ。前作同様の探索要素に加え、ジャンプの使いかたやタイミングを図るといったアクション性が増していて、遊びとしての充実度を増している。また、背景グラフィックがより緻密かつファンク(というかサイケ気味)に、キャラクターはより大きくなったことで、ゲームとしての“引き”はかなり強くなっている印象だ。

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▲ジャンプアクションを駆使して進んでいく。ステージごとに背景の雰囲気がガラリと変わるのがすばらしい。

 ステージクリアータイプとなった本作では、ステージ中にいる地球人をすべて見つけ出し、魔法のビンを投げつけて捕獲することが目的となる。とはいえ、地球人はやすやすと捕まってくれるわけではなく、ステージ上をちょこまかと駆けまわり、ビンを当てるのにもひと苦労。地球人に触れると体力が減ってしまうので、遠距離からや段差の上からなど、ビンをうまく当てるテクニックが必要となる。

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▲画面下にある矢印を頼りに地球人を見つけ、捕獲することが目的。上下左右に広がるステージを、ジャンプして駆けまわっていく。

 前作ではマップをくまなく探索することが大事だったが、それは本作でも同様で、背景に描かれた木や草などを揺らす(方向キーを上に入れる)ことで、隠されたアイテムや地球人を発見できる。ただし、これまた前作同様にマイナスアイテムもあったりするので、探索ではつねに、自身の危機センサーを働かせておくことが重要だ。ちなみに、パスワードでのコンティニューが可能となったり、キッズモードが搭載されたりと、前作よりユーザーフレンドリーさは増している。

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▲ドアをくぐると唐突にボーナスステージに突入。サイケな画面の中、より多くのアイテム獲得を目指す。

 母星に戻ったためか(?)、主人公は攻撃やジャンプ以外にも、特殊なアクションを使えるようになった。画面内の隠れたものを発見できる“ファンキースキャン”、一定時間無敵になれる“パニックボタン”、強力な掃除機で近くの地球人を吸い込む“ファンキーバキューム”がそれだ。どれも強力な効果を持つが、それぞれストックしたポイント分しか使うことはできない。これらをどの場面で使うかが、攻略のカギを握るというワケだ。

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▲困ったときに役立つスキャン(左)やバキューム(右)といった特殊能力。

 さて、ゲーム全体の印象なのだが……どこか牧歌的だった前作と比べて気を抜けるシーンは少なく、また敵の攻撃もハードになっている。前作の味わいが好きだった人からすると、けっこう面食らうかもしれないが、“自分で探索・経験をして、理解していく”という根っこの遊びは同じだと感じた。プレイヤーによっては、この密度の濃さが好ましく思えるかもしれない。ただすべてのメッセージが英語で、ラップ的なスラングも多いので、ゲーム中のメッセージ表示が理解しきれないのは、もどかしいところだ。
 なお、ステージ6~15までの各ステージに隠されたアイテム10個を探し出すと、真のエンディングが見られる……はずなのだが、締め切りというのは無情なもので、いかんせん筆者はまだ達成できていない。ふたりプレイでは、体力や残りのプレイヤー数を分け合うことができるので、オンラインのフレンドとチャレンジを続けたいと思っている。

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▲中断セーブやロードができるのは、『SEGA AGES ONLINE』版なればこそ。うまくいった状態から何回でも再開できるのは、おじさんゲーマーにはありがたい。

時が経っても色褪せないセンスは、まさに遊びのタイムカプセル!

 紹介した2タイトルともに、音やキャラクターのアニメーションが、ゲームを構成する重要な要素。そのため、静止画とテキストだけで、どこまでその魅力を伝えきれたか、ちょっと自信はないが、プレイしていて思わず体が動き出してしまうような、このタイトルだけにしかない魅力を有していることは間違いない。ぶっ飛んだセンスと、やや難し目のゲームバランスは人を選ぶだろうが、それだけに画像を見てピンとくるものがあった人は、ぜひプレイしてみてほしい。ゲームが現在よりはるかに“遊びの可能性”を夢見ていた時代から掘り起こされた、タイムカプセルになるかもしれないのだから。

■著者紹介:馬波レイ
ヘッドオン』の昔からセガ畑を歩いてきたつもりでしたが、まだまだ未プレイな魅惑のセガタイトルがあるのだなぁ、人生で遊べるゲームの数ってたかが知れてるなぁ、とややたそがれ気味のフリーライター(43)。明日、また生きるぞ!


トージャム&アールコレクション
メーカー セガ
対応機種 X360Xbox 360
発売日 2012年11月7日配信(Xbox LIVE マーケットプレースにてダウンロード配信)
価格 800マイクロソフト ポイント
ジャンル アクション&アドベンチャー