竹内氏が『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』にハマった理由とは?

 テレビ番組「たけしのコマ大数学科」や「サイエンスZERO」などで活躍中のサイエンス作家、竹内薫氏。近年ゲームの楽しさに目覚め、現在、ファミ通ドットコムでブログ“サイエンスゲーマー日記”(→こちら)を連載中の竹内氏は、ある日手に取ったアトラスのプレイステーション Vita用ソフト『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(2012年6月14日発売)に大ハマリし、テレビアニメ版も全話観るほどの『ペルソナ4』ファンになった。そんな竹内氏が、勢い余ってアトラスに直撃! 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』のプロデューサーを務めた橋野桂氏に話を聞いた。『ペルソナ4』ファン必見の、この対談の模様をお届けしよう。

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左:アトラス 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』プロデューサー 橋野桂氏
右:サイエンス作家 竹内薫氏

■“黄色”に惹かれて購入した『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』
竹内 僕がゲームを遊ぶようになったのは49歳のときで、まだ2年少ししかプレイしていないんです。それまでゲームはまったくプレイしていなくて、遊んだことがあるのはインベーダーゲームぐらいだったんです。ゲームについては知らないことばかりですので、今日はトンチンカンなことを聞いてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。
橋野 よろしくお願いします。
竹内 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』は、パッケージをたまたま見かけて、買ってしまったんです。どうしてでしょう? 黄色に惹かれたのかな。僕、自分のクルマが黄色なんです(笑)。
橋野 そうなんですか(笑)。
竹内 黄色には、何か意味があるんですか?
橋野 設定したデザイナーは、“注意喚起”の色として、黄色をイメージカラーに選んだようです。
竹内 そうなんですか。その黄色に惹かれてプレイして、僕はすごくハマっちゃいまして。プレイし終えた後の感じがとってもよかったんです。これはどうしてなんだろう? と思い、今日はその理由について伺いたいと思っているんです。
橋野 そう言っていただけてうれしいです。

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■ゲームであっても、浮気はしづらい……。
竹内 僕は、この『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』で初めて『ペルソナ』シリーズをプレイしたのですが、それでもすんなりプレイできたんです。
橋野 シリーズものではありますが、初めてプレイされる方でも楽しめるように、ということはいつも意識して作っています。
竹内 でも、前作『ペルソナ3』に登場した学校(月光館学園)が出てきたりしますよね。
橋野 はい。前作からプレイしている方が、うれしい気持ちになってもらえる部分も作りたかったので。とはいえ、それがゲームプレイに支障を及ぼすような形にはしていません。
竹内 マリーは『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』で初登場するキャラクターですが、なぜ登場させようと思ったのですか?
橋野 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』には、オリジナル版にはなかった新しい物語が入っているのですが、そのことにプレイヤーの皆さんに気づいていただくために、キーとなるキャラクターを作りました。ただ、『ペルソナ4』はオリジナルのストーリーを評価していただいていたので、マリーをどうストーリーに絡ませるかについては、かなり気を遣いました。そこで、オリジナル版ではほとんど描かれなかった、3学期に活躍してもらうことにしたんです。
竹内 マリーを含め、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』では、いろんな女性キャラクターと仲よくなれますよね。メインヒロインに当たるキャラクターはいるのですか?
橋野 いえ、誰がヒロインということは決めていません。恋愛要素を入れたのは、学生たちのジュブナイルを描くうえで、恋愛要素がないのは不自然だと思ったからです。高校生たちが異性に興味があるのは当然ですし、いっしょに事件を解決していくうちに恋愛感情が芽生えるのも自然ですよね。ただ、そこから先のドロドロした部分まで描いてしまうと、ゲームをプレイするのがストレスになってしまうので、人間関係をプレイヤーが選べる前提で、基本的に罰則がないシステムになっています。
竹内 最初にプレイしたときは、「浮気なんて倫理的にいけない」と思って、雪子だけを恋人にしたんです。でも、プレイヤーの中にはすべての女性と仲よくしている人もいるようなので、2周目で「自分もやってみよう」と思ってプレイし始めたんですが……途中から、罪悪感を覚え、けっきょく浮気はできませんでした(笑)。
橋野 (笑)。

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■高校生たちの物語に合う音楽
竹内 映画でもアニメでも、音楽は重要だと思うのですが、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』において、音楽について気をつけていることはありますか?
橋野 音楽を作っているのは目黒(アトラスの目黒将司氏)なので、僕はリクエストしているだけですが……最近は、ゲームで鳴らせる音の質が上がったためか、映画のように、環境音をメインに鳴らすゲームが増えているようですね。でも、アトラスでは、メロディーのある曲を中心に、歌も入れて構成しています。高校生たちの成長物語の疾走感を表現するには、やはり音楽が合うと思ったからです。たとえば、映画は映画でも、青春映画は音楽がしっかりついていたりしませんか?
竹内 そういえば、そうですね。歌が入っていると言えば、『ペルソナ』はライブも好評ですが、どのくらいの人が集まるのですか?
橋野 前回のライブでは、5000人以上の方に集まっていただきました。
竹内 5000人とは、すごいですね。
橋野 エンディングの曲を合唱してくださったりして、とても感動しました。

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■アニメを観ると新たな発見がある
竹内 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』をプレイした後、アニメ「Persona4 the ANIMATION」も観させていただきました。アニメを作るのも、またゲーム作りとは違う難しさがあると思うのですが。
橋野 アニメの制作については、「餅は餅屋」と言うように、基本的にはすべて制作会社さんにお任せしました。ゲームの内容を踏襲しつつ作ってくださり、結果、アニメのファンの方にも、ゲームのファンの方にも「おもしろい」と言っていただけたようで、よかったです。
竹内 アニメもとてもおもしろかったです。観ていると、発見があるんですよ。僕は、最初は攻略本を見ずにゲームをプレイするので、見逃してしまう部分があるんです。それでアニメを観ると、見たことのないキャラクターが出てきて、「あれ、こんな人いたんだ!」って。そこで、2周目ではそのキャラクターに会いに行ってみたり。アニメを観たおかげで、2周目のプレイが深くなったな、と思います。
橋野 そう言っていただけてよかったです。
竹内 やはり、ゲームをプレイされた方がアニメを観るのでしょうか。アニメを先に観て、ゲームをプレイする方もいらっしゃるのでしょうか?
橋野 『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』については、かなりの方が、アニメをきっかけにゲームの存在を知り、購入してくださったようです。なかには、アニメがゲーム化されたんだと思っていらっしゃった方もいましたね。

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■ゲーム作りの辛さと楽しさ
竹内 『ペルソナ』シリーズは、総勢何名ぐらいの方々で作られているんですか?
橋野 4~5人のコアなスタッフで原案を作り、コンセプトを詰めていき、最終的には50人くらいのスタッフが関わって作ります。これでも業界内ではかなり少ないほうだと思います。RPGですと、100人以上が関わることもふつうにありますから。
竹内 橋野さんは、最初から最後まで全体を統括されているのですか? 映画で言うと、監督とプロデューサーを兼ねているような。
橋野 『ペルソナ3』と『ペルソナ4』についてはそうです。ゲームのシナリオやルールを考えるだけでなく、ゲーム雑誌などで、どのように紹介してもらうかということも考えます。デバッグにも関わりますし。
竹内 制作が佳境になると、寝ているヒマもないですよね。
橋野 睡眠時間は確保するようにしていますが、それ以外の時間は、ずーっと仕事していたりしますね(笑)。
竹内 とてもたいへんなお仕事ですね。橋野さんは、なぜゲーム業界に入ろうと思われたのですか?
橋野 僕はアトラスのゲームが好きで、ゲーム業界に入ろうと思ったんです。
竹内 そうだったんですね。でしたら、もちろんゲーム作りは楽しいですよね。
橋野 いえ、9割はずっと辛い思いをしていますが……1割くらい、楽しいこともあります(笑)。ふとアイディアが湧いて、テンションが上がることってないですか?
竹内 ありますね。シャワーを浴びているときとか、ふっと。
橋野 「俺、スゲー!」みたいな。僕の場合、空振りで終わることも多いのですが(笑)、ヒットした瞬間がたまらなくて仕事をし続けている気がします。

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■『ペルソナ』シリーズの位置づけ
竹内 いろんなRPGシリーズがある中で、『ペルソナ』シリーズはどのような位置づけなのでしょうか?
橋野 アトラスは『女神転生』というRPGシリーズから始まったブランドなのですが、『女神転生』は、それまでファンタジーのRPGが多かったなかで、初めて“現代の東京”を舞台にしたRPGだったんです。その世界観を、伝統としていまも踏襲していますね。ダークな雰囲気である『女神転生』に対し、『ペルソナ』シリーズはポピュラーな雰囲気にしていますけれど。現代を舞台にしているからか、すごく身近に感じられる物語になっているのが特徴です。
竹内 なるほど、それで僕も入り込めたんですね。
橋野 まったく違う世界に入って、違う自分を演じるというよりも、半分は現実に身をおいたまま、感情移入していただけるようなゲーム内容にしています。
竹内 それを聞いて、僕が『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』にハマった理由がわかりました。プレイしたとき、「これは(世界に)入っていけるぞ!」って思ったんです。現実とちょっと違うけれど、完全に違うわけではない世界。そこが魅力なんですね。
橋野 映画やコミックなどでは、現代の世界を舞台とするものは極めてポピュラーですよね。ですので、僕らは、自分たちが特別違うものを作っているつもりではないのですが、ゲーム業界においては、ちょっと珍しかったということだと思います。
竹内 自分の中にいる“もうひとりの自分”と向き合う、というテーマも、共感しやすいものですよね。誰しも、自分の中に、見て見ぬふりをしている感情があると思うんです。友だちのことを考えて行動しているつもりでも、心の奥底ではちょっと違うことを考えていたり。ゲームでそういった面を見せられると、自分でも反省させられたりしますね。ちなみに、『ペルソナ』シリーズのプレイヤーは、やはり若い方が多いのですか?
橋野 20代と30代のプレイヤーの方が、ほぼ7割を占めています。
竹内 僕のような50代プレイヤーは少ないですよね。
橋野 割合としては少ないですが、40代、50代の方からもかなりのご意見をいただいています。厳しいご意見も多いです(苦笑)。
竹内 ええっ、そうなんですか。
橋野 たくさんのゲームをプレイされてきた方々ですので、我々がドキッとするような点について、ご指摘いただくことがありますね。いつも参考にさせていただいています。

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竹内 『ペルソナ』シリーズの最新作は、出ないのでしょうか?
橋野 つぎのナンバリングタイトルの開発は進めています。
竹内 本当ですか!? どんな内容なのでしょうか。
橋野 まだお話できる段階ではないのですが、時期が来たら、情報を公開しますので、ぜひご期待ください。
竹内 楽しみにしています。本日はありがとうございました。