2012年8月20日から、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、ゲーム開発者向け会議“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2012”(CEDEC 2012)が開催されている。ここでは、8月21日に同イベントのショートセッションとして行われた“中東のゲーム市場とヨルダンのゲーム産業”の内容を紹介しよう。

●話好き、新しいモノ好きでスマホ普及率も高い、となると……

 2012年8月20日から、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、ゲーム開発者向け会議“コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2012”(CEDEC 2012)が開催されている。ここでは、8月21日に同イベントのショートセッションとして行われた“中東のゲーム市場とヨルダンのゲーム産業”の内容を紹介しよう。

 講演を行ったのはメディアクリエイト アシスタントアナリストの佐藤翔氏。佐藤氏は、
ヨルダンのゲーム業界団体“Jordan Gaming Task Force”で、同国のゲーム産業の域外進出のための調査・講演を行った経験を持つ人物だ。
 そんな佐藤氏はまず、アラブ諸国の基本的なデータを紹介。アラブ諸国の人口は総計で3.6億人(The state of world population 2011)。湾岸諸国を中心に人口増加率が極めて高いという傾向にあり、いずれの国においても、30歳以下の人口が全人口の50%から70%(日本は約30%)を占め、極めて若い地域だと述べた。公用語はアラビア語だが、歴史的事情から英語もかなり通じるという。
 つぎに、アラブ諸国の人々の特徴として話好き、新しいもの好きであるという点があげられた。そのため、出費におけるコミュニケーションツールの優先順位が高く、スマートフォンの普及率も高い。しかも複数台所有している人も珍しくないそうで、自然とソーシャルゲームの普及率も高くなるのは必然。とくにFacebookの加入者数の増加は著しく、現在の加入者数は約4300万人にのぼり、現在も早いペースで増加し続けているという。
 さらに、アラブ諸国の人々は、可処分所得が高く貯蓄率が低く、若者の購買力も非常に高い(親へのおねだりも含む)という傾向もあるという。

■アラブ諸国のゲーム事情――モバイル・ソーシャルゲームが人気

 続いて、アラブ諸国全体のゲーム市場の特徴が紹介された。まず、アラブ諸国全体の2011年のゲーム市場規模は10億ドル程度(日本円にすると約800億円。ちなみに、日本はコンシューマーゲームの市場規模だけで約4500億円)、年10%以上の割合で成長を続けているが、まださほど大きい市場ではない。その市場のほとんどを占めるのがモバイル・ソーシャルゲーム市場。とくにFacebook向けゲームの成長が著しく、2010年は4.5億ドルを占めているという。
 PC向けオンラインゲームの市場規模は1億ドル程度とのことだが、娯楽の選択肢が少ないアラブ諸国では、ヘビーユーザーの割合もかなり高いという。
 また、モバイル・オンライン・コンシューマーも含め、アラビア語対応のゲームが好まれる傾向にあるが、それが供給不足となっている。ちなみに、コンシューマーゲームも人気だが、プレイステーション3を除いて、海賊版が横行し、利益につなげるのはなかなか厳しい状況だという。

・国別の現状
【サウジアラビア】
アラブ最大のゲーム市場であると同時に、規律が厳しいため、サウジアラビアで問題が発生することなくヒットすれば、アラブ諸国でもヒットする可能性が高いと言われるため、テストマーケティングに適した国とされる。2005年から政府による“King Abdullah Scholarship Programme”が開始され、現在までに約10万人の若者が欧米の大学へ留学。若者の文化の欧米化が著しい。ゲーム市場を牽引してるのは、10代から20代の男性が中心で、コーヒーショップなどで友人とゲームに興じることが多いという。女性はネットサーフィンやテレビ鑑賞に関心が高い。つまり、女性のあいだでもソーシャルゲームが流行ることも十分考えられる。

【アラブ首長国連邦】
アラブ諸国では2番目に大きい市場。とくにモバイルゲーム、スマートフォン向けゲームが有力な市場となっている。コンシューマーゲームも比較的普及。

【その他のアラブ諸国】
クウェートはアラブ諸国では3番目に大きい市場だが、サウジアラビア、アラブ首長国連邦と比べるとかなり小規模。

 ちなみに、北アフリカ諸国はアラブ諸国よりゲーム市場は未発達だが、エジプトにはサウジアラビアに次ぐ、オンラインゲーム市場が存在。

■そしてヨルダンのゲーム市場は……

 ヨルダンの正式な国名はヨルダン・ハシェミット王国。首都はアンマン。面積は、8.9万平方キロメートル(日本の約4分の1)、人口は604.7万人、言語はアラビア語(英語も通用)。意外と(?)治安は良好。ヨルダンは政府がゲーム産業新興政策を推進しており、人材の育成や開発機材・開発環境の提供、ビジネスマッチングの支援などを行なっているという。また、理工系の大学では、ゲーム業界志望者に向けて、ゲームエンジン・ゲームプログラム・デバッグなどに関する授業が多数実施されており、企業と連携した教育も行われている。
 2010年にはヨルダンのゲーム産業振興のために、Jordan Gaming Task Forceが設立。ここでは、モバイルゲーム・オンラインゲーム開発会社、ローカライザーなど、現地のゲーム関連会社6社がメンバーとして活動している。2011年にはJordan Gaming Summitを主催し、国内外から400人が参加するイベントとなり、大成功を収めたという。
 ヨルダンのゲーム企業にはモバイル、ソーシャルゲーム開発会社が多く、そのなかでもアラブ諸国最大規模のゲーム開発会社としてMaysalwardが紹介された。同社のゲームアプリ『Dominoes Pro』はロシア、メキシコ、ベトナムなど6ヵ国で2012年6月の#1 Game Appとなったという。

■日本のゲーム・アニメは人気! 新規参入の余地は大きい

 上記を踏まえ、佐藤氏は、アラブ諸国のゲーム市場のまとめとして、アラブ諸国のゲーム市場はモバイルゲーム・ソーシャルゲーム市場は発展の余地は大きいが、現在はゲーム市場の急速な拡大にコンテンツ供給が追いついていない状況だと述べた。また、近年ヨルダンをはじめとする中東諸国の政府は、IT産業振興の一環としてゲーム産業の育成にも取り組んでおり、こうしたなかから、国際的に成功するゲーム企業が登場していきていると述べた。

 さらに、日本のゲーム企業の中東進出の要点として、日本のゲーム・アニメはアラブ諸国でもさまざまなルートを通じて受け入れられており、その評価も総じて高いという(『UFOロボ グレンダイザー』や『秘密探偵コナン』などが老若男女問わず人気らしい)。欧米からの参入企業も現在のところは少なく、日本企業の新規参入の余地は大きい。成功の秘訣として、中東は地道なネットワーク作り、経験の蓄積がものを言う地域なので、継続的なPRや綿密な情報収集、積極的な情報発信が重要だと説いた。