『クリムゾンシュラウド』の楽曲を手掛けたベイシスケイプ崎元仁氏と、録音専門オーケストラ“gaQdan”にインタビュー!

レベルファイブのニンテンドー3DS用ソフト『GUILD01(ギルドゼロワン)』に収録されているゲームのひとつ、『クリムゾンシュラウド』の楽曲を手掛けた崎元仁氏と、録音専門オーケストラ“gaQdan”のインタビューを掲載。

●録音専門オーケストラ“gaQdan”が作り出す生音とは?

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「クリムゾンシュラウド オリジナル・サウンドトラック」
2012年6月27日発売/配信開始
CD価格:3045円[税込]
配信価格:PCダウンロード(アルバム) 2700円 PCダウンロード(1曲) 150円
着うた 105円 着うたフル、着うたフルプラス 210円
※価格は税込表示です。各配信サイトにより価格が異なりますので一例となります。

 レベルファイブのニンテンドー3DS用ソフト『GUILD01(ギルドゼロワン)』に収録されているゲームのひとつ、『クリムゾンシュラウド』。本作は、『ファイナルファンタジータクティクス』や『ベイグラントストーリー』などを手掛けたことで知られるクリエイター、松野泰己氏の最新作だ。

 本日2012年6月27日、本作の楽曲を収めたサウンドトラック「クリムゾンシュラウド オリジナル・サウンドトラック」がベイシスケイプレコーズより発売/配信開始された。

 『クリムゾンシュラウド』のサウンドディレクターは、松野泰己氏と何度もタッグを組んでいるベイシスケイプの崎元仁氏が担当。サウンドトラックには、崎元仁氏自身が手掛けた楽曲とベイシスケイプ作曲家による楽曲、全29曲が収録されている。楽曲の数々は、録音専門オーケストラ“gaQdan(ガクダン)”の演奏により生録音されたものだ。

 ファミ通ドットコムは、崎元仁氏と、gaQdanを立ち上げたアーティストのTaQ氏(ongaq(オンガク))、gaQdanのコンサートマスターを務める土屋雄作氏にインタビューを行い、『クリムゾンシュラウド』の音楽のコンセプトや、gaQdanによる収録の模様などを聞いた。
※コンサートマスター……オーケストラの演奏をとりまとめる役。一般的には、第一ヴァイオリンの首席奏者がこの役を担う。通称“コンマス”。


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右:崎元仁 Sakimoto Hitoshi
ベイシスケイプ代表取締役社長。『タクティクスオウガ』や『戦場のヴァルキュリア』シリーズなど、多数の作品の楽曲を手掛ける。

中央:TaQ
ongaq代表取締役。アーティスト活動のかたわら、gaQdanの設立(詳細は後述)などに尽力。『beatmania IIDX』シリーズなど、ゲームへの楽曲提供も行っており、2012年6月7日に発売された『TOKYO JUNGLE(トーキョージャングル)』ではサウンドプロデューサーを担当。

左:土屋雄作 Tsuchiya Yusaku
弦楽カルテットCasanova Stringsを主宰するなど、バイオリン奏者として精力的に活動。gaQdanではコンサートマスターを務める。

――改めて、皆さんの『クリムゾンシュラウド』に対する関わりかたを教えてください。
崎元 作曲と、サウンドのディレクションを行いました。
TaQ 収録時の現場監督と言いますか、座長のような役割をやらせていただきました。
土屋 オーケストラのコンマスを担当しました。

――現場監督とコンマスというと、役割が近いように聞こえるのですが……。
TaQ コンマスは音楽をどう演奏するかを考える仕事、現場監督は音楽をどう演奏しやすくするかを考える、“場所を作る”仕事ですね。

――なるほど。では、まずは『クリムゾンシュラウド』の楽曲のコンセプトを教えていただけますでしょうか。
崎元 『クリムゾンシュラウド』は、皆さんご存じの通り、松野さんの作品です。ですので、いわゆる“松野作品らしい”感じは維持しつつ、テーブルトークRPG風のタイトルですので、古めかしい雰囲気を出しました。

――“松野作品らしさ”ですか。
崎元 そうですね。どう表現したらいいか、ちょっとわからないのですが……最初にテーマを書くときって、ディレクターなり、ゲームの方向性を決める人の顔を思い浮かべながら作ることが多いんです。今回は松野さんの顔を思い浮かべながら、「こうやったら喜ぶんじゃないかな」とか、「こうしたら怒るだろうな」とか思いながら作曲しました。

――作品そのものだけでなく、作っている人のことも考えながら作られるのですね。
崎元 曲の基本的な部分はゲームの資料を見て考えますけど、あとはなんだかんだ言って“人”なんですよね。人の顔を浮かべて作る。僕もどうして顔を浮かべながら作っているのか、不思議なんですけど。

――今回は、gaQdanと組んで楽曲を収録されたとのことですが、そもそもgaQdanに演奏を依頼しようと思ったきっかけを教えてください。
TaQ 僕が「やらせてください」と土下座したからです(笑)。
崎元 そんなことはありません(笑)。いまから1年半ぐらい前に、TaQさんがgaQdanを立ち上げたと聞いて、お話を伺ったんです。作曲者として、「まさにそういうものが欲しかった!」というものを的確に提示していただけたので、とにかくいっしょに何かやりたかったんですよね。ようやくこの『クリムゾンシュラウド』で実現できました。

――gaQdanは録音専門オーケストラとのことですが、そもそもgaQdanを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
TaQ 自分はもともと、エンジニア志望で音楽業界に入りました。先輩方に“スタジオのいろは”を学んだ、最後の世代だと思っています。演奏技術とは別に、どうすればいい音楽が奏でられるか、どうすれば収録の数時間を有意義なものにできるか、ということを教わってきました。近年、この“スタジオで録音するとき、どうすればその音がいい録音として残るか”を知っている方が少ないな、と感じたんですね。

――いい音を録音するには、演奏のうまさとは別に、録音に関する知識も必要ということですね。
TaQ はい。ですので、「スタジオでいいものを作るためのトレーニングを行おう」と思い、立ち上げたのがgaQdanです。とくにゲーム音楽は、ゲームをプレイする方のテンションを支える役割を担うものです。僕は緊張感を高めるゲーム音楽を聴くと、音楽につられて緊張してゲームが下手になっちゃうタイプですが、そのようにプレイヤーに影響を与えるテンションの高い音楽を演奏するのと、ふつうに音楽を演奏するのとでは、必要なものが違うんですよ。


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――なるほど。
TaQ また、ゲーム音楽は、いろんな技を使って録音したり、ずーっとおんなじ曲を演奏したりしますから、ある程度のトレーニングと忍耐力が必要になります。gaQdanはゲーム音楽専門というわけではありませんが、僕自身ゲームに楽曲を提供していたこともありますし、やっぱりゲーム音楽はおもしろいものなので、いろいろと演奏させていただいています。

――では、gaQdanの演奏を聴いてみて、崎元さんはどのように感じられましたか?
崎元 演奏に関して言うと、とてもタイトな演奏をしてくれるなぁ、と感じました。僕個人の意見ですが、クラシック主体の演奏家の方にはスタジオのセッション録音での得手不得手がある印象がありますが、gaQdanさんはどの状況でもパワフルに演奏してくれるという印象を受けました。また、長く皆さんで演奏されてきているからか、チームワークがいいですね。
土屋 クラシックの奏者の方は、やはり演奏がとても上手なんです。クラシック音楽は長い歴史の中で培われた演奏のセオリーがあり、いかにそのセオリーに則って演奏するかが大事。しかしゲームの曲は少し違って、「これが正解」というものがないんですよね。雰囲気やユーザーの想像力、楽しさなどを増長させることが仕事で、演奏にも想像力が必要でした。
TaQ ゲームに関する知識があるのも僕たちのウリです。とても上手な奏者に、「剣にエネルギーをちゅいーんと充填すると、3人いっぺんに倒せるときの音楽」と言っても、ゲームをご存知なければ伝わらないんですよね。「クレッシェンドですか?」と言われてしまったり。でも、僕達は「ああ、ちゅいーんですね」と理解できる(笑)。

――意思の疎通が簡単に取れて、ゲーム音楽ならではのよい音が実現できるということですね。
崎元 それと、おもしろい音が出ましたね。たとえスタジオの状況が理想的なものではなくても、いろいろなアプローチをして、状況をプラスにしてくれる。変わった録音方法をお願いしても、ちゃんと上手に録ってくれますし。

――『クリムゾンシュラウド』の収録時は、どんな変わった録音方法を実行したのですか?
TaQ 崎元さんに「もっとせま~くしたい、せま~く」と言われまして……。
土屋 それで、演奏者が一列に並んで録音したんですよ。
TaQ ふつうのオーケストラの配置は扇形ですが、縦一列に並んでみようと。
土屋 それから、みんなバラバラの場所に立って録音してみたり。
TaQ コントラバスがあっちにいて、チェロがこっちにいて……。それがまた、寂しいきれいなメロディーなんですよ。
土屋 壁に向かって弾いてましたからね。
TaQ かなり胸にくる、いい音が録れました。
土屋 “カーテンをどこまで引っ張るか”も試しましたね。

――カーテン、ですか?
TaQ 収録した部屋に大きなカーテンがついていたのですが、カーテンをどう閉めるかで、音の響きが変わるんですよ。ですので、曲によってカーテンの開きかたを変えました。効果があったのかはわかりませんけどね(笑)。自己満足だったかも……。
崎元 いやいや、効果ありましたよ(笑)。


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▲『クリムゾンシュラウド』の楽曲の収録風景。

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――ところでgaQdanでは、指揮者に合わせるのではなく、ヘッドホンから聴こえるクリック音(一定のテンポを保つためのリズムを刻む音)に合わせて演奏されるそうですが。
土屋 はい、そうです。ゲーム音楽では、バックトラックに合わせて演奏することが多いですから。ふだんの練習でも、ヘッドホンをつけて練習しています。

――ヘッドホンをしながらですか。
土屋 自分の内部の情報だけで、自分たちの演奏を把握するという練習です。だんだんと、クリック音を聴きながら、全体の演奏が把握できるようになってきます。
TaQ クリック自体に反応しすぎると、クリックは無機質なものなので、演奏に感情が出なくなってしまいます。クリックに合わせる技術を鍛えつつ、仲間たちの動きを見て感情を乗せるという訓練が必要なんです。最初は、ヘッドホンをしながら演奏すると怖いですよ。耳を閉じると脅迫観念が生まれてきますから。それでも平常心でいるために、練習時からヘッドホンをしています。
土屋 練習を続けていると、だんだんヘッドホンをしたほうが安心するようになったりするんですよ。


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▲gaQdanの練習風景。皆ヘッドホンをつけている。

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――では、『クリムゾンシュラウド』の楽曲を演奏されてみての感想は?
土屋 難しかったですよ。
TaQ 難しかったよね!
崎元 そうなんですか? すんなり演奏してたから、あんまり難しくなかったのかな、と思ってました(笑)。
土屋 難しかったですけれど、譜面からすぐにシーンをイメージすることができました。映画やゲームなどのシーンに当てる演奏は、いかにオケの全員が共通のヴィジョンを持てるかが大事になってくるのですが、崎元さんの曲は難なく全員にスッと入ってきました。譜面が語り出してくるという感じというか。さすがだなぁと思いました。

――崎元さんの音楽は、どのようなところが特徴的でしたか?
土屋 映画音楽を思わせるような、ダイナミックなレンジがあるオーケストレーションでした。また、楽器の魅力が引き出されると言うか……それぞれのパートが持っている醍醐味を要求される曲でしたね。
TaQ 崎元さんと打ち合わせをしたときのことで覚えているのは、崎元さんが管(管楽器のこと)の話ばっかりしていたことです。曲を聴いたら、確かにブラスが肝だなと感じたので、管の奏者をいつもの倍、用意しました。吹いていると唇がへたってきちゃうので、都度入れ替えて演奏したんです。
崎元 金管の方には苦労をかけました。弦も好きなんですけどね。派手目めの曲だと、管が目立ちますが。

――『クリムゾンシュラウド』の曲を聴けば、「あれ、打ち込みとなんだか違うな」と感じられるでしょうか?
崎元 どうでしょうね? 聴いた人に聞いてみたいですね。
土屋 ゲーム音楽は、プレイしている人たちに心地よく聴いていただけることが重要なので、演奏家が主張しすぎても、引っ込みすぎてもよくないんですよね。
TaQ 言葉ではないもので表現しようとするのが音楽なので、「形容しがたいけど、なんとなくいいよね」とか、「ああ、好きだなぁ」とか、そのように気に入っていただけたら、うまくいったかな、と思いますね。
崎元 僕らは、音楽は人の感情を揺さぶってなんぼだと思っていますが、その点では、それぞれの役割は果たせたと思っています。

――今後、崎元さんがgaQdanといっしょにやってみたいことはありますか?
崎元 もうちょっと、小さい編成の音楽もやりたいですね。よりタイトなものが必要とされる曲を、ノリノリで演奏してもらえると思います。

――また皆さんがいっしょに音楽を作られるのを楽しみにしています。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
崎元 今回の曲は、「新しいことをやろう」というgaQdanさんの気合が伝わればうれしいなと思います。
TaQ 崎元さんという、トップクラスの作曲家の方と仕事ができたというのは、快楽そのものですね。音楽業界にいるものとして、冥利につきます。また、世の中ではいろいろと気分が暗くなるできごとがありますが、エンタテインメントの時間だけは、みんなが素直になれる時間だと思うんです。素直な気持ちで、これからもいいものを作っていきたいと思います。
土屋 いろいろなものが機械化されている時代ですが、そんな中で、僕らは生の音を大事にして活動しています。「人に近い音だな」と楽しんでいただけたらうれしいですね。


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■お知らせ
gaQdanは、2012年10月23日に初の演奏会を開催予定! 詳細は追ってgaQdanの公式サイト→こちらにて告知予定とのことだ。

撮影協力:Cafe' Sucre'(カフェシュクレ)
公式サイトは→こちら




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