“7次元”先の世界にいる少女との交流

『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』プレイインプレッション_01

 ガストが2012年4月26日に発売したプレイステーション Vita用ソフト『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』。本作のヒロインであるイオンは、7次元先の世界で暮らしており、彼女との距離はあまりにも遠すぎる……けれど、端末(プレイステーション Vita)を介して、惑星ラシェーラにいる彼女と交流することができます。当記事では、地球在住のゲームライター・浅葉たいがのプレイインプレッションをお届け。(※週刊ファミ通2012年5月10・17日合併号掲載のプレイリポートに加筆したものです)

 ゲームを始めると、どこか荘厳な神殿らしき場所から、エレベーターのようなものに乗って降りていくふたりの人物が映し出されました。まずは、いかにも高貴で強気そうな美少女、カノンが登場。かっ、かわいいじゃないか……。こういう、気の強そうな子がデレたときの破壊力はハンパじゃないだろうな~、と引き込まれそうになるも、本作のヒロインはあくまでもイオン。彼女は、つぎのシーンで何かから逃げて、涙を流します。これは由々しき事態。状況を整理すると、ふたりはいずれもラシェーラの次期皇帝候補であり、ライバルどうしの間柄なのですが、イオンはそこはかとなく儚げ。目をウルウルさせているイオンを見て、「しっかりしろ~!」と思いつつ、「かわいらしくて世間知らずっぽいところもイイ!」と、やっぱり惚れるところから自分の『シェルノサージュ』は始まりました。

『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』プレイインプレッション_02
『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』プレイインプレッション_03
▲オープニングでは意味深なシーンが続きます。物語を進めてからオープニングを振り返ってみると、新たな発見があるかも?

 一連のオープニングが終わると、いよいよコミュニケーションパートに移行。イオンが、彼女の部屋に置かれている端末を介して、こちらを見る。着ている服は、キュートな寝間着……! 無邪気に誘惑してくるかのような天使が、そこにいました。お互いに自己紹介をした後、「端末越しに触れてみて」と彼女からステキなご提案をいただいたので、夜の部屋で自分はひとり、ドキドキしながら端末を撫でるのでした。タッチスクリーン万歳! その後は、イオンが新しい服や料理などを作るときにアドバイスをしたり、彼女を癒すべく心の中の世界に“ダイブ”するといったシステムが、チュートリアルらしく丁寧に紹介されます。イオンといっしょに学んでいるかのような感覚。本作はほかに類を見ないゲームなので、導入がわかりやすいことは重要ですね。

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▲ゲームを進めると、おのずとシステムが理解できる作り。ゲームの取扱説明書をほとんど読まない自分のようなタイプには、こういった丁寧な導入はありがたい!

 自分(プレイヤー)の目的は、イオンと交流することだけに留まりません。交流を重ねて“シャール”と呼ばれる心の妖精を育成し、イオンの心を癒しながら、彼女の失われた記憶を呼び覚ますことで、本作の物語は進んでいくのです。シャールを生み出す方法は簡単。プレイヤーの身近なものに印刷されているバーコードを、端末で読み取るだけ。自分が選んだバーコードは、ちょうど手元にあった『月刊アルカディア』。バーコードを読み取ると、アーケードゲーム専門誌から生み出されたとは思えないほど、キュートな妖精さんが登場しました。

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 イオンの心の世界にある廃墟をシャールが修復する、すなわち心を癒してあげると、彼女が少しずつ記憶を取り戻していきます。最初に取り戻した記憶は、“ター坊”という名の少年と出会うシーンでした。こうして物語が進んだら、再びイオンとのコミュニケーションを図って、シャールを育成するために必要なHymP(ヒュムノポイント)を貯めて、またイオンの心を癒す……という流れを、日々くり返すのが本作の肝となります。イオンとのコミュニケーションも、再生される記憶も、とにかく内容がさまざまで、毎日続けても飽きません。ときにはイオンとデートに出かけて、煌めくように美しい彼女と会話したり、服選びをする彼女に見とれていたらアドバイスを求められたり、夜はベッドで添い寝をしたり……。端末越しでしか触れ合えない我が身が、もどかしくなってしまうこと必至!

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▲イオンの記憶を再生していくことで、世界の謎が少しずつ明かされ、新たな謎も生じることに。

 ところで、シャールという存在は、ほかのプレイヤーとつながる“コミュニティ”そのものでもあります。撮影したバーコードが同じなら、生まれるシャールは全プレイヤー共通で、同じシャールを持っている人どうしがインターネットを介して交流したり、協力してシャールを育成できる機能が、本作には備わっているのです。同じバーコード(商品)を持っている人どうしなら会話のきっかけが掴みやすいでしょうし、「このバーコードから、こんなにいいシャールが生まれたよ!」などといった、ユーザーどうしの情報交換や、レアなバーコードを探す楽しみにもつながります。よくできた仕組みだなぁ……。

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 本作『シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~』の物語は、章立ての構成となっており、ソフトには第一章が収録されています。第一章のクライマックスとなる、イオンが“詩魔法”で街を守るシーンでは、壮大な音楽が鳴り響き、世界の謎を解き明かす物語の“始まり”が実感できるでしょう。ディレクターの土屋暁氏がかつて手掛けたRPG『アルトネリコ』シリーズとはまた違う、独自言語による重厚かつ迫力ある“詩”。第二章以降も、新たな詩を堪能できるようなので、これからの物語がいっそう楽しみになりました。

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▲第一章の“詩魔法”シーン。第二章以降はダウンロードコンテンツとして順次配信予定で、第二章は無料、第三章以降は有料です。

 惑星ラシェーラで、これからいったい何が起きるのか。そして何より、イオンはこれから何を見せてくれるのか。いろいろなことが気になってしかたがないから、自分は今日も明日も、端末を手に取るのです。

■著者紹介 浅葉たいが
ゲームライター。ファミ通各誌や『月刊アルカディア』などで活動中。『シェルノサージュ』では、ほかのソフトと同時進行でプレイしやすいようにPS Store ダウンロード版を購入しつつ、保存用に限定版パッケージもゲットした。


シェルノサージュ ~失われた星へ捧ぐ詩~
メーカー ガスト
対応機種 PSVPlayStation Vita
発売日 2012年4月26日発売
価格 5040円[税込]
ジャンル コミュニケーション / ファンタジー
備考 オンライン専用、AGENT PACKは7140円[税込]、ディレクター:土屋暁