アプリケーション開発者向けのカンファレンス

 日本マイクロソフトは2012年4月24日、Windows 7の後継OSとして開発中のWindows 8で採用するプラットフォーム“Metro UI”の全貌を、アプリケーション開発者を対対象にいち早く紹介する“Windows Developer Day”を、都内にあるザ・プリンス パークタワー東京で開催した。4月24日、25日の会期中には、さまざまなセッションが設けられており、各日の早朝に基調講演も実施。初日の基調講演にはマイクロソフト コーポレーションのWindows&Windows Liveを担当するプレジデント、スティーブン・シノフスキー氏が登壇した。

 “次世代 Windows プラットフォームの可能性”と題された本講演では、現在配布中のWindows 8 Consumer Previewをベースに、改めてWindows 8の概要や理念を紹介。合わせて、日本マイクロソフトの藤本恭史氏によるデモを通じて、ユーザーインターフェース“Metro”の特徴や、キモとなるアプリの説明などが行われた。両者は交互に登壇してプレゼントを行ったが、こちらの記事では最初にスティーブン氏の語った内容からまとめて紹介しよう。

Windows 8は“Windowsの再創造”

 Windows 8の理念についてスティーブン氏は“Windowsの再創造”と説明する。Windows 8では従来通りマウス&キーボードの操作に加え、タッチパネルへの対応が行われており、また昨今話題のクラウド機能も搭載。そして、再創造の中核を担うのが、すでにWindows Phoneでも採用されている新UI(ユーザーインターフェース)“Metro”だ。このUIの採用により、Windowsは「アプリケーションへのアクセスが簡単になり、すべてをクラウド統合することができる」(スティーブン)ようになるという。またスティーブン氏は、Windows 8の利点として動作が軽いことも強調。起動が高速な点と、Metro向けアプリが少ないメモリで動くことが「8のすばらしい基盤だ」と胸を張り、Windows 8という新OSを「7を遙かにかによくしたもの」とまとめた。

▲Windows 8およびMetro UIはあらゆるデバイスに展開していく。

 ビジネスとしてもWindows 8は開発者にとって魅力的な存在になるとスティーブン氏は考えている。Windows 8向けアプリは“Windows ストア”というダウンロードサービスで展開され、マイクロソフトの審査を通れば開発者はそこで自身が開発したアプリを販売することが可能。顧客情報も効率的に得られる態勢となっており、開発者にとっては収入を最大化するための頼れるツールとなりそうだ。加えてスティーブン氏は、Windows ストアの潜在市場の大きさも、アプリ開発者にとっても魅力的な存在になると説明する。具体的な数字は下の写真で確認してもらいたいが、WindowsはAndroid、iPhone、Macと比較して圧倒的な普及台数を誇っている。もちろんそのすべてがWindows 8搭載のPCになるというわけではないが、前述した通りWindows 8は動作の軽さ(7よりも動作が軽快という話も)が特徴となっており、OSの移行はそれほど困難なことではない。つまり、比較的近い将来に下記ユーザーの多くがWindows 8利用者になる可能性が高いというわけだ。

▲Windows ストアの潜在市場の大きさは、ほかのサービスと比較して圧倒的だ。
▲Windows ストアではさまざなコンテンツがジャンル分けされている。

 スティーブン氏からはこの日初となるビッグな情報も発表された。現在実施中のConsumer Preview版に続く“Release Preview”が、2012年6月の第1週に世界各地でスタートするのだ。Release Previewは製品候補版とも呼べるもので、Consumer Previewからより完成度が高められている。

Windows 8のデモで魅力的な機能が明らかに

 藤本氏によるWindows 8のデモでは、休止状態からのログイン、画面構成の説明、そして本OSの主役であるアプリの紹介などが行われた。まずログインだが、Windows 8では従来通りのパスワードログインのほか、PINコード、ピクチャーログインという3つの方法が用意されている。なかでも特徴的なのはピクチャーログインで、これは休止状態の画面を指定された手順でタッチするという、タッチデバイス対応のWindows 8ならではのやりかただ。デモでは海外の遺跡と思われる風景の中で猫が寝ている、という写真を使ってピクチャーログインを実演。写真奥にある遺跡の上部を指でなぞり、写真中央になる赤い石をタッチし、最後に画面手前の猫の鼻を円を描くようになぞる……この3アクションを行うことでPCへのログインができてしまうのだ。あまりにも簡単なので、セキュリティー的な面で疑問が残りそうだが、藤本氏は従来通りのパスワードと同等の機密性があると断言する。いわく、タッチするエリアの指定に加えて、人間の動作という要素が加わることで、きわめてパーソナルなパスが実現しているのだ。

▲写真を触ってロックを解除するピクチャーログイン。

 ログインすると、すぐにWindows 8のキモであるMetro UIが表示される。四角形の“タイル”と呼ばれるデザインでアプリを管理し、画面内に表示するスタイルはWindows Phoneでもおなじみのものだが、PCの画面で改めて見ると、スタイリッシュなWebコンテンツを閲覧しているかのような印象を受ける。一画面に表示されるタイルの20個くらいだが「地下鉄を走る電車の車窓に映る風景にヒントを得て設計された」という藤本氏の説明通り、画面を指で左に向けてスライド(マウスの場合は画面下のスクロールバーを動かす)すると、画面がつぎつぎに切り替わっていく。動作は非常に快適で、いわゆる“ヌルヌルした”動きだ。タイルの位置はユーザーが自由に動かすことができるので、よく使うアプリを一画面目に持ってきたり、あるいは複数のアプリをひとつのタイトルにまとめるといったこともできる。

 Metro UI向けアプリは立ち上げると全画面で表示されるため、従来のWindowsのように画面上部などにメニューバーが表示されることはない。各種設定は画面右から“チャーム”と呼ばれる全アプリ共通のメニューバーを引っ張りだして行うのだ。このチャームはアプリどうしの連携も担っており、たとえばフォトアプリを立ち上げた状態でチャームの“共有”を選択すると、フォトを共有することができるアプリの候補を表示してくれるといった具合だ。

 藤本氏からはメーカーが開発したサンプルアプリも紹介された。マップアプリと連動してピンポイントでの天気がビジュアル的に見られるアプリや、音声と映像で目的地までの道のりを提示してくれるナビアプリなど、いずれもWindows 8ならではのもの。個人的にもっとも驚かされたのは、カプコンの『バイオハザード5』を移植したサンプルアプリ。同社開発のミドルウェア“MT Framework”を使って移植したという本アプリだが、グラフィックはほぼ据え置き機レベルの水準。画面を指でスワイプするとナイフ攻撃など、操作もタッチに対応しており、しっかりと遊べる操作性を実現している印象だ。また藤本氏によれば、タブレット端末で遊べば深度センサーを使い、タブレットを振って敵の攻撃を振りほどくといった機能もあるという。今回はあくまでサンプルアプリなので、実際に商品化されるかどうかは不明だが、Windows 8は今後ゲームユーザーにとっても気になる存在になりそうだ。

▲据え置き機とほぼ同等のクオリティーを誇る、アプリの『バイオハザード5』。

 Windows 8には“デスクトップモード”というものも搭載されている。「Windows 7のすべてを継承しつつ内部的な改革を行った」(藤本)もので、Metro UIではなくWindows 7とほぼ同じUIでPCが操作できるというものだ。デスクトップモードではいままでのアプリも使用することができ、従来通りのスタイルでPCを扱うことが可能。加えて、前述した通りWindows 8は動作が軽くなっているので、より快適な操作が実現するだろう。デスクトップモードの利点はそれだけではない。Windows to goという機能を使えば、USBメモリに自身のPCのWindows 8環境を、Windows 8が入っていないPCにも一時的に再現することができるのだ。具体的に説明すると、Windows to goでブートしたUSBメモリを、Windows 8を搭載してないPCに挿して再起動するだけで、Metro UIを始めWindows 8の環境を構築してくれるのである。セキュリティー対策もしっかり行われており、USBメモリを抜いた瞬間にPCは操作が不可になり、60秒で自動的にシャットダウンし、カスタマーデータも残らない。ビジネスシーンなどにおいて、今後非常に活躍しそうな予感がする機能だ。

 最後に、くり返しになるがWindows 8は2012年6月初週にRelease Previewが予定されている。Metro UIは見た目だけでも十分魅力的なものだが、実際に触ればその機能性に深く感心させられるはずだ。興味がある人はぜひチェックしてみほしい。