コアコンセプトは“『エクストリームコンディション』への原点回帰”

 現地時間の2012年4月3日~4日、イタリアのローマにて、欧米メディアに向けたカプコンのプライベートイベント“CAPTIVATE 2012”が開催された。本イベントにて電撃発表された『ロスト プラネット 3』について、プロデューサーのアンドリュー・サマンスキー氏と、ディレクターの大黒健二氏にインタビューを実施。本作の魅力について伺った。

※プレゼンテーションの模様はこちら。


『ロスト プラネット 3』開発者にインタビュー!【CAPTIVATE 2012】_01
▲アンドリュー氏(写真左)と大黒氏(写真右)。

──まずは、『ロスト プラネット 3』のコンセプトをお教えいただけますか?
アンドリュー・サマンスキー氏(以下、アンドリュー) 本作のコンセプトは、シリーズ第1作である『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』への原点回帰です。ユーザーの方からは、“『ロスト プラネット』と言えば極寒の世界”という印象が強いと聞きますし、僕たちとしても、そういう思いが強いのです。ですから、極寒の世界やきびしい環境というところを突き詰めていきたい、ということから企画が始まりました。EDN-3rdという『ロスト プラネット』シリーズの舞台は、『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』から『ロスト プラネット 2』へと時代を経るにつれて温暖化していったのですが、そう考えると、『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』以前はもっと寒かったのだろうと。『エクストリーム コンディション』以前のことはシリーズでもあまり語っていなかったということもあり、今回のような舞台設定にしています。

──本作はシリーズ作よりも、ストーリーを重視しているとお伺いしました。こうした内容にした意図は?
大黒健二氏(以下、大黒) もともと『ロスト プラネット』は、『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』から『ロスト プラネット 2』になるときに、コアコンセプトが大きく変わりました。今回は、ストーリーとシネマティックなゲーム体験をコンセプトに置いており、どちらかというと『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』に近い形になっています。とはいえ、『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』とまったく同じでは意味がないので、より強い“エクストリームコンディション感”というものを、ユーザーの皆さんに体感してもらおうと。そのためには主人公のジムを通じて、彼がきびしい環境で生き抜いていく様子を追いながら、ユーザーもそこに没入してもらうのがいいと考えたのです。

──ジムに感情移入させることが、極寒の地をより体験させることにつながるというわけですね。彼は最初の入植者としてEDN-3rdに来ているわけですが、最初に来たはずなのに、見たことがない宇宙船がありました。あれが物語の謎につながっていくのでしょうか?
アンドリュー まさにその通りです。ジムとその仲間は、初めてEDN-3rdに来た人間だと聞かされています。しかし、ストーリーを追っていくうえで、じつは最初の入植者はほかにいるのではないか、というような手がかりが見つかり、そこからEDN-3rdの過去にまつわる謎に迫っていくのです。『エクストリーム コンディション』や『2』では、EDN-3rdに何度か人間が来て、撤退しているという背景は描かれていましたが、そういったEDN-3rdと人間の関わりというものを、もう少し深く見せていこうと考えています。

『ロスト プラネット 3』開発者にインタビュー!【CAPTIVATE 2012】_02

──ジムの目的は、サーマルエナジーが集まっている場所を見つけて一攫千金を狙うことだと聞きました。本作でのサーマルエナジーは、どういった位置づけになるのでしょうか。
アンドリュー これまでのシリーズ作でのサーマルエナジーは、つねに摂取していないと倒れてしまう、ある種タイマー的なものでした。とくに『エクストリーム コンディション』の世界は非常に寒いので、熱源としてサーマルエナジーをつねに取っていないといけなかったのですね。本作ではそれとは異なり、資源のような考えかたをしています。サーマルエナジーは、現実的には石油のようなもので、一攫千金を狙える資源なのです。ただ、ジムはお金持ちになりたいのではなく、あくまでも家族を楽にしたいと考えています。

──家族思いのジムらしいですね。では、サーマルエナジーのゲーム的な役割は?
アンドリュー 資源ですから、非常に価値のあるものです。今回は探索も楽しんでもらいたいと考えていまして、地中に埋まったサーマルエナジーを掘り出すという新要素を入れました。今回のプレイデモでは、ジムがデータポストを立てているシーンがありますが、あの下にはサーマルエナジーが溜まっています。敵や地中からサーマルエナジーを入手し、それを基地に戻って換金することで、アイテムの購入やユーティリティーリグのアップデート、武器の強化などが行えます。また、一定以上貯めると地球の奥さんからメッセージが来ることなどもありますが、そういった、サーマルエナジーを稼いでいるという感覚を今回は出していきたいと思っています。

──ユーティリティーリグは、土木機械のような位置づけなのでしょうか?
大黒 そうですね。ユーティリティーリグは、シリーズ作に登場したバイタルスーツの前身のような位置づけです。探索をしたり、ドリルで掘ったりすることが目的の機械で、AKと対抗するために作られたわけではありません。とは言え、ユーティリティーリグを使ってAKと戦っていかなければならないわけです。
 バイタルスーツは、『ガンダム』で言えばザクなんですね。ではユーティリティーリグはどうかと言うと、旧ザクや、もしくはモビルスーツ以前の機体になるわけです。僕のようなオールドタイプの世代としては、モビルスーツ前史を体験できるというのは非常におもしろいのではないかと思っていますので、非常にワクワクしています(笑)。

『ロスト プラネット 3』開発者にインタビュー!【CAPTIVATE 2012】_03

──たとえが非常にわかりやすいですね(笑)。ちなみに、ユーティリティーリグは進化したりはするのでしょうか?
アンドリュー 機能が拡張していくイメージですね。今回お見せしたユーティリティーリグは、左手にクロー、右手にドリルがそれぞれついていましたが、、サーマルエナジーを換金したり、ミッションをクリアーすることで、新たにアタッチメントが開発されます。ユーティリティーリグはいろいろな使いかたができます。たとえば氷を砕くドリルを転用し、AKを倒すことができるのですね。ですから入手できるアタッチメントも同じ感覚で、戦闘のみならず、さまざまな用途に使えます。通常では行けない場所でも、何かのアタッチメントを使えば行けるようになる、といった要素も入れていきたいと思っています。

──生身でのアクションについてお伺いします。新たに追加されたアクションなどはありますか?
アンドリュー キャラクターのアクションについては、TPSとして遊びやすく、ということを念頭に置いています。今回は、銃のズームインをどの武器でもある程度できるなど、アクションを追加しました。また、回避を行うと体に雪がつくなど、演出面も強化しています。

──『ロスト プラネット』シリーズというとワイヤーアクションが代表的ですが、今回もワイヤーは使えるのでしょうか?
アンドリュー 特定の場所に向かって射出し、飛びつくことができます。ただし最初から使えるわけではなく、ユーティリティーリグのアタッチメントと同じようにゲーム中で開発して、使えるようになるのです。

──なるほど。本作を制作するにあたり、気をつけている点はありますか?
大黒 先人の苦労を体感してもらいたい、ということがコアコンセプトにあるので、あまり何でもできるようにはしない、ということでしょうか。過去の2作品はアクション性が高かったですが、そういう形でゲームを作ると非常に“軽い”というか(笑)。苦労していない感じになってしまうのです。たとえば雪の中を猛ダッシュすると、あまり寒そうにも見えません。極寒の世界を体験できるような作りにはしたいのですが、かといってそちらばかりに縛られると、プレイするときに感覚として“重たい”ゲームになってしまう。ですから、そのバランスには気をつけています。

──リアリティーと、ゲームとしての爽快感のせめぎ合いですね。
アンドリュー そうですね。雪が深いところでモーションが若干変わるなどの演出もありますが、操作性を考えつつ細かい演出を入れて、いかに寒そうか、というところを表現したいなと思っています。

──ちなみに、オンラインプレイはあるのでしょうか?
アンドリュー 『ロスト プラネット』はマルチプレイが楽しい、ということは僕らも理解しています。今回、キャンペーンモードはジムにフォーカスして、ストーリー重視の作りにしました。では、その過去の世界でマルチプレイを遊んだらどうなるのか、そういったところに期待してほしいですね。詳細については、今後情報をお出しますので、ご期待ください。

──それは楽しみですね。では、シリーズを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
大黒 本作は、僕がずっと『ロスト プラネット』シリーズを作ってきた中で、こういう世界を描きたいと思ったものに非常に近いものです。自分自身が楽しみにしていますし、ユーザーの皆さんに遊んでもらったら、「これぞ『ロスト プラネット』だ」と思ってもらえるゲームになっています。ぜひ期待してください。
アンドリュー 『ロスト プラネット 3』は、これまでのシリーズのいいところを僕らなりにピックアップして、シネマティックに感情移入できるというものに仕上がりつつあります。この極寒の地で、大黒ディレクターも言ったように、これぞ『ロスト プラネット』という作品になっていますので、楽しみにお待ちください。