世界的人気のディズニー/ピクサー映画の世界を体感できる
いきなりだが、ディズニー/ピクサーのアニメーション映画は、日本のジブリ映画と同様、世界的に知名度と人気が高いと筆者は思っている。というのも、ふだんほとんど映画を見ない筆者ですら、ディズニー作品はそれなりに見ているし、作品にまつわる思い出があるからだ。本作は、そんなディズニー/ピクサーの長編アニメーション映画5作品をテーマに、それぞれの映画の世界で冒険ができるのが魅力となっている。1995年に世界初のフル3DCGによる長編アニメーションとして制作された『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、『カーズ』シリーズ、『レミーのおいしいレストラン』、『Mr.インクレディブル』、そして2009年に公開された『カールじいさんの空飛ぶ家』といった、幅広い年代の5作品が楽しめるのだ。
Kinectの直感的な操作がクセになる
本作はKinectの機能をフル活用する。まずはKinectセンサーで自分の体をゲームに読み込ませ、プレイヤー自身がピクサーキャラクター風のアバターとなり、ゲームに登場。そしてそのアバターで、ゲームの舞台“ピクサーパーク”を自由に歩き回ることが可能だ。パーク内には各映画の作品をモチーフにしたエリアがあり、そこに行くことでさまざまなシチュエーションのステージを遊ぶことができる。パーク内やステージでは、自身が腕を前後に振ることで、ゲーム内のアバターが前進。体をひねればひねった方向を向き、その場でジャンプすれば、アバターもジャンプする。おもにこれらが基本となる動作だが、ステージ中は、さらに多彩な動きを楽しむことができる。しばらくプレイをして慣れてきて軽快に動かせるようになると、当然アバターも滑らかに動いてくれるため、気持ちよさを味わえるはずだ。筆者の感覚では、子どものころの、最初は転んだりフラフラしていたりしていた自転車の運転が、慣れるとスイスイ進めるようになったときの爽快感に似ていたように思う。自分の動作がそのままダイレクトに反映される、“動かすこと”それ自体が楽しくなるのはKinectならではだ。
多彩なステージを進むだけでわくわくできる
各ステージは開始前にデモシーンが挿入されるのだが、そのクオリティーは映画と見間違うほど。しかもデモから実際のゲームプレイまで、読み込み時間による切り替えがなく、シームレスに展開するため、没入感が高いのが特徴。たとえば『カーズ』の場合、デモシーンでクルマが走り出したかと思ったら、その状態のまま実際のステージに突入する。初プレイ時は最初の数秒間ゲームが始まったことに気付かなかったほど。「あ、もう操作できるのか!」と、慌てたことを覚えている。
さて、本作で収録されている作品は、等身大の人間が活躍するものもあれば、小さなおもちゃやねずみが冒険するものもある。そのため、それぞれのステージで登場するギミックが同じでも、作品によって受ける印象が異なるのは本作のポイントのひとつ。たとえばカヌーで水上を進む場面。『カールじいさんの空飛ぶ家』なら激流の南米の川を渡ったりジャングルを冒険することになるが、『レミーのおいしいレストラン』ならパリの街や下水道が舞台になるなど、同じ動作で進んでいくシチュエーションでも、プレイヤーのサイズによってステージのスケールが全然違って見えるのでマンネリに感じない。ステージのスケールをとくに感じたのは『トイ・ストーリー』だ。ステージの随所に散らばっているギミックは、我々人間から見たらとても小さなボールや植木鉢などがほとんど。しかし、おもちゃの主人公たちからすると、進むのに邪魔な障害物となって巨大に映る。それらを避けつつ、乾電池を仲間に渡し、機械を動かしてつぎのエリアへ進みラジコンカーに乗る……。人間からすると数十歩の距離を、広大なフィールドとしておもちゃの主人公たちが駆けていくさまは、等身大の人間からは思いもつかない視点の世界が広がっていて、目を奪われた。同じようなアクションの場合、『Mr.インクレディブル』だと力強さを感じる作りになっていたのが印象的。原作がスーパーヒーローものなので、巨大なコンクリートをいとも簡単に持ち上げて投げつけて障壁を破壊したり、かなりの距離の対岸まで跳躍したり、円盤型の飛行機に乗って溶岩のトンネルの中を飛び抜ける様子はまさにヒーローといった感じだ。各作品の特色がよく出ているステージ構成やギミック、デモシーンの演出が満載なので、ファンはステージ背景を眺めているだけでも楽しいはず。
絶対にステージクリアーできる親切な作りが好感触
それぞれの作品はステージクリアー形式となっている。ひとつのステージをクリアーし、そのステージ内で一定以上のポイントを獲得すると、つぎのステージがアンロックされる仕組みだ。アンロックに必要なポイントはそれほど高くなく、ふつうにゴールに辿り着けばだいたいはアンロックに必要なポイントを獲得できるので、心配する必要はないだろう。
また、多くのアクションゲームには体力やHPといった概念があり、それらがなくなるとステージの最初からやり直しになることが多いが、本作にはそういった概念がない。何回崖下に落下しようが、障害物に激突しようが、失敗した地点のすぐ前に戻されるだけで何度でもトライできる。さらには、難所をスキップできるという機能もついているので驚いた。たとえば、どうしても仕掛けを解けず、先へ進めなくなってしまった場合、しばらく時間が経つと場面をスキップするか否かの選択肢が表示されるのだ。アクションが苦手な人も、絶対に最後まで辿り着けるように作られているのはうれしい。
そんなわけで、ストレスなく小気味よいアクションが楽しめる本作は、ディズニー/ピクサーのファンならずともオススメだ。白状してしまうと、収録作品のすべてを見たことがない自分でも、デモシーンを眺めていたり、ステージを進めていくうちに原作の映画が気になって仕方なくなったほど。Kinectの感度も高く、操作性にも問題はない。テンポよく楽しめるゲームを求めている人は、ぜひプレイしてみてほしい。不思議と人を惹き付けるディズニー/ピクサーのアニメーション作品の雰囲気を体感できるだけでなく、爽快なゲームを遊んだときの心地よい満足感を得られるはずだ。
■筆者紹介 サテライト池澤
ゲームとカラオケをこよなく愛するライター。本作に収録された作品の中では『カーズ』と『トイ・ストーリー』がお気に入り。擬人化されたかわいい乗り物たちで道を爆走したり、小さなおもちゃたちを操作し、懸命に人の世界をちょこまかと駆けていくのが楽しい。
Kinect ラッシュ: ディズニー/ピクサー アドベンチャー
メーカー | 日本マイクロソフト |
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対応機種 | X360Xbox 360 |
発売日 | 2012年03月22日 |
価格 | 5880円[税込] |
ジャンル | アクション |